●カンボジアの旅第1日(2003年1月14日)
前日の夜勤から帰ってきて、そのまま準備にかかる。ほとんど思いつきの旅行なので旅装などは後回しになっていた。この時期に夏服を引っ張り出し、適当につめる。そのあとちゃんと片付ければいいのだが、どうせ帰国して洗濯してまた詰めて……ケースはそのときに収納に戻せばいいや、と出しっぱなしにしたまま。まるで泥棒に物色された部屋の光景。
朝7時には家を出るつもりでいたが、準備ができていなかった分、点検などに慎重になりすぎて結局5分ほど遅れた。歩いて阪急西宮北口駅まで約30分。予定していた7時30分の空港リムジンバスには間に合わなかった。次の8時5分の便に乗る。朝の空港バスは各停留所でそれなりに客も乗り込んできて、これならばそうそう路線が打ち切られることもないか(ヨルダンの項など参照)と安心。空港で航空券を受け取る、いわゆる集合時間は9時10分になっていたが、結局10分ほど遅刻。だからどうっていうことはなかったが。
カンボジアにいる間、冬服がかさばって邪魔になるのがいやだったので、いでたちは秋物長袖シャツにトレーナー、秋物ブルゾン。空港の待合室は冬でもそれなりの温度が保たれているからであろう、もう暑くなってきた。上着などは脱いでしまいこみ、すでにすっかり南国気分。
11時10分タイ航空623便で出発。座席には余裕があり、隣も空いていたので気兼ねなく眠りこける。6時間ちょっと、バンコク現地時間15時30分到着(時差2時間)。シェムリアップ行きへ乗り換えのため、バンコクエアーウェイズの窓口へ。1997年に来た時は実感できなかったが、結構こう歩かされると大きな空港であることが分かる。18時発の便には時間が早すぎて、手続きは1時間ほどお預け。同じように乗り継ぐ日本人ツアーの団体がほかに2、3つほど。比較的若い男女が多いツアーは待っている間もなごやかでなんとも楽しそうだ。こちらは結構手持ち無沙汰。
バンコクエアーウェイズ942便。日本人の客室乗務員もいて、言葉あやしい私でも安心。弁当のような機内食をいただき、そのきれいなおねえさんにカンボジアの出入国カードと税関申告書をもらって記入していたら、1時間ほどの飛行もあっという間。出入国カードは予想外に小さく、これはカンボジアにいる間になくさないようにしないと。
シェムリアップに19時ごろ到着。降り立った空港ではリリリッと虫なんかが鳴いていて、日本でいうとお盆過ぎから9月上旬といった感じ。長袖はやはり暑い。入国審査の列に並ぶ。ガイドブック「地球の歩き方」(また、それかい!)には、ここでビザを取得する際に係官が必要以上の金銭を要求し、くすねるようなことがあるように書いてあったが、旅行客も多く、警察も必要以上に配置されていて、とてもそういう不正を働けるような雰囲気ではなかった。入国カードの書き方を親切・丁寧に説明している警察官もいたし。それでも入国ビザをここで求める人も多く混雑していて、少々経費が余分にかかっても日本で取っておいてよかったと得心する。入国。17日プノンペンに移動する便を確保できていないので、航空会社窓口がないものかとうろついて2階などにあがってみたりしたが、本当に事務所などがあるだけで、見当たらず。明日、市街で確保することにしよう。
空港からホテルまでは約8キロあるのだが、すっかり日も暮れてしまって、ここはより安全にタクシー(規定5ドル)を使おうと決める。バイクタクシー(相場は1ドルらしい)もあるのだが、二輪なんて京都支局にいたときにミニバイクに乗っていたぐらいしかないし、そういえば95年ベトナムに行った時に乗ってはみたが、振り落とされるんじゃあないかと怖かったし。カンボジアの道は未知だしねえ(しゃれ?)。荷物背負って乗っていて、ひったくられたりしたら軽いけがではすまないだろう。というわけでタクシーの窓口に並ぼうとすると、私の名前を掲げた男が近づいてきた。はて、旅行会社には航空券とホテル手配を依頼しただけだが……。男は20代から少なくとも30代前半か。人相を見る限り悪人には見えない。信じていいものかどうか不安が残るが、とりあえずその男の車に乗ることにした。
車は日本社製の大衆車。前窓にそれらしい旅行会社の名前が英字で書いてあるが実在するものかどうか。男に、どうして私が来るのを知ったのか、旅行会社から派遣されてきたのか、車は会社所有なのか個人のか、などと聞こうとしたのだが、私の語学力が乏しいようで、話が噛みあわず。それでもホテルまでの送りは、無料であると理解できた。男は晩ご飯に伝統舞踊のアプサラの踊りの鑑賞はどうかと勧めてきたが、先ほど機内食を食べたばかりで食欲もなく、とにかく眠りたかったので断ってホテルに直行。明日の観光で男に案内してもらうことにして8時の約束をする。彼にとっては、夕食の送り迎えで小銭を稼ぐ、それ以上に明日以降、私に車を借り上げてもらうのが主目的ということなのだろうが、それでもホテルまで送ってもらっておいて心づけさえ払わなくて本当によかったのかなあという気持ちが残る。まあ、いいか。それにしても、私が来ることを彼はどうやって知ったのだろう。この疑問はいまだ解けない。
投宿したプロムホテルは、オールドマーケットのすぐ隣にあり、クラシックな感じ。とにかくふろに入り、疲れていたから、まだ9時になるかならないかという時刻だったが、眠る。