番外編:プラネタリウム
「迷!?探偵クリス」
〜冬なんだけど天の川のお話、しちゃうんだから〜!の巻〜

トップへ
戻る
タイトルヘ
戻る

 なんか恒例になってる感もあるが、プラネタリウムの声を当てているとの情報が入り、当然行くことになる。今回の場所は愛知県安城市。実はこのお話、小学校用の教材の為に作られたもので、見ることが出来ずに悔しい思いをしていた作品。それが、要望があった為だかは定かでは無いが、リメイクされ、こうして一般公開されるようになったということだ。
 しかしながら、投影は土日のみで1日3回。年末は仕事が忙しいので、善は急げと言う事で、初日に行くことになった。新幹線のこだまで三河安城まで行き、乗り換えて隣の安城駅下車。うーんなんとも寂れた町だなぁ…駅前のパチンコ屋は2件とも潰れているし、コンビニは無いし。目的先の「安城市文化センター」は歩いて5分ぐらい。すぐ見つかった。
 立派な建物だけれど、客は全然居ない。ポツポツ見えるのも老人ばかり。もう町の雰囲気がそのままここにもって感じ。
 階段をあがり、2階のプラネタリウムへ移動。只今開演10分前。お客さんは自分の他に老人が4人。寂しい…寂しすぎる。ここで係員による説明。
 今回の番組は迷探偵クリスと言うことで今回が初めての上映となります。ちょっと寂しいですけれど、皆さんよろしく楽しんで行って下さい。
 そりゃ係の人も思うわな。観覧料は50円。中学生以下無料。安い!と思うより、なんか流行らない末期のお店みたいな感じでちょっと悲しくなりました。

 毎度のことながら、こう言った情報だけで遠征するのは緊張する。アニメなどとは違い、ホントに出てるのか?を確認しに行くワケだから、一声を聴くまではどうにも落ち着かない。
 
ナ:ナレーター(飛田展男)
ピ:助手ピーボ(阪口大助)
ク:クリス(堀江由衣)

ナ:無限に広がる大宇宙。そこには様々な犯罪がうごめいている。そんな巨大な悪に敢然と立ち向かう一人の少女がいた。その名も!……名探偵クリス!
と、かっこ良くタイトルが映し出されるが、「名」が「迷」に変る。ドタバタ劇に期待がかかる。

ピ:ピーボー、ピーボー……やあ皆さんこんにちわ。安城市文化センタープラネタリウムへようこそ。最近景気はどうですかぁ?お小遣い上がってます?全く明るい話題が少ないですねぇ。まあきっとなんとかなりますよ。
ナ:オッホン…
ピ:今、声がしたような…
ナ:ウオッホン!
ピ:誰もいないのに声だけが…お、お化け〜!?
ナ:何言ってるんですかぁ、私ですよー。この番組のナレーターでーーす!
ピ:ナレーターさんか、ビックリしましたよ、ホント。で、何の御用ですか?
ナ:何の御用ですか?って、あのね、この番組のタイトルお忘れですか?
ピ:タイトル??あぁ、そう言えばなんか、こーんなタイトル(画面上にタイトルが映し出される)が出たような気がしますねぇ。
ナ:名探偵クリス!さっき私がカッコよくナレーションしたでしょう。あなたクリスさんですか?台本では一応「美少女探偵」ってことになっているんですけど〜。かなり違いますねぇ。
ピ:違いますよー。僕はクリスじゃありません。僕はピーボ。探偵クリスの助手をやっています。
ナ:で〜?だーかーら、主人公のクリスさんはどうしたんです?主人公が出なけりゃ話にならないでしょうが。
ピ:あぁ……クリスはですねぇ……今……そのぉ…

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ナ:これは〜…
ピ:いっ!ヒヒヒヒィ〜。決してクリスのいびきじゃありませんよぉ〜。美、美少女探偵がこんな豪快ないびきをかく訳無いでしょー。

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ピ:うあー、ちょっと!クリスったら〜!!
ク:んー。何よピーボー。アンタがうるさいから眠れないじゃないのよー!
ピ:クリス。あのですね。
ク:とにかく!もう一眠りさせてもらうわね!今度は静かにしててよぉ!
ピ:ちょっとクリスったらぁ。もう番組始まってるんだよ。
ク:事件も起って無いのに探偵が出ても意味無いでしょー。事件が起きたら起きるわよ!
ピ:クリスぅ〜〜。

いびき(がぁーー……ごぉーーー……ムニャムニャ)
ほちゃの登場シーンの中では最悪(笑)では無いだろうか。いつもなら、「よし!ほちゃだ!」と思うところが、「えっ???いびき??」でしたから。

ナ:ハッハハハハ…なんてひどい主人公なんだーぁ。
ピ:ボク、あまりの失望の為に電子頭脳がショートしそうです。ナレーターさんどうしましょう?
ナ:ハッハハハ…ってまあ、そんなに私に言われましても、基本的に私ナレーターですので、あんまりストーリーに関わることは出来ないのですよ。
ピ:ですよねー。
ナ:ま、ともかく、事件が起れば良いのかも知れませんねぇ。そうすれば、あの人目を覚ますわけでしょ?
ピ:そうだ、そうですね。よーし、事件を探そうっ!

(ワーイワーイ……)

ナ:今、ちっちゃいモンが何かワーイワーイって飛んで行きましたけど…
ピ:ミニピーボ。ボクの分身です。小さくてもボクのように優秀なロボットなんですよ。きっとクリスが飛び起きるようなとっておきな事件を探してくれるはず!
ミニ:ワーイワーイ大変だ!大変だ!

ピ:ね。早速戻って来たでしょ?さ、報告だ。
ミニ:大変だ!大変だ!夜空の星が大変だ!
ピ:夜空の星がどうしたんだい?
ミニ:大変だよ。夜空の星ってよくみるとこんな(☆)形してないよ。☆の形してないよ。
ナ:あの〜…。このコ何を言ってるんですか?
ピ:星の形がこんな風(☆)になっていないって言ってますねぇ。
ミニ:大変だ!大変だ!……
ピ:クリス〜。

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ナ:この程度の事件じゃダメみたいですね。
ピ:いや。小さいかもしれないが、これも事件の一つ!探偵ピーボ、調査に向かいます!

<夜空が映し出される>

ピ:どの星にしよっかなぁ…。お、あの星。あの星が夜空で一番明るいぞ。ん?データによると、あの星はシリウス。またの名を”ドッグスター”なーんてボクにピッタリな星だろう。犬型ロボットとしてはこの星にするべきでしょう。では皆さん、これよりピーボがあのシリウスまで接近して、どんな形をしているか確かめて参ります。ワープ10秒前。目標シリウス。5,4,3,2,1.ワープ!

<シリウスのアップ>

ピ:あちゃちゃちゃちゃちゃ…。助けて、クリスーーー。

ピ:クリス…。クリス…。
ク:んーー、何よピーボ。もうゆっくり寝かしてよー。ん、ちょっとピーボ。アンタどこにいるの?
ピ:ここです…(真っ黒焦げのピーボ)
ク:ヒッ!何やったのアンタ!
ピ:それが…星の形を調査しようと……(泣)
ク:バカねぇ。星がこんな形(☆)してるワケ無いじゃないの。しれにね、こんなに静かに小さく見える夜空の星たちだけど、実はね、あの太陽と同じにガンガンに燃え盛る星なんだからぁ!
ピ:太陽と同じだってぇ〜!
ク:そうよ。シリウスなんで私たちの太陽より、もっともーーっと大きな太陽なの。ピーボ、アンタこの星が何て呼ばれてる星か知ってる?
ピ:えーと、あの星はシリウス。別名ドッグスターと言いまして…
ク:そーじゃなくて、シリウスって言葉の意味よ。「焼き焦がすもの」って言うのよ。
ピ:ヒァーーーー…。

ピ:はぁ。けど驚いたな。この可憐な瞬きが全部太陽みたいな星だなんて。でも、これで星がどんな形なのかわかりましたよね。ねぇ、クリス。あれ?クリスー?

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ピ:また寝てる…。早く事件を見つけないと番組が終わっちゃうよ。
ミニ:大変だ!大変だ!天の川ってホントの水が流れているんじゃ無いんだって。大変だ!大変だ!
ピ:だぁーーー
ナ:あ、あの。天の川って七夕の天の川ですか?本当に水が流れてると思っている人がいないと思いますけど。
ピ:はぁ…。と、とにかく、天の川を調べに行かなくちゃ!探偵の仕事は調査することなんだから!
ナ:はいはい。じゃ、いってらっしゃーい。

ピ:天の川と言えば七夕物語。七夕物語と言えば夏の夜。あ、どーしよう…。また夏になるまで待たなきゃいけないぞ。どーしよう。どーしよう…。あーあああぁぁクリスーー。
ク:うっさいわねー。何で夏まで待たなきゃいけないのよ。
ピ:だって、天の川は七夕物語で、七夕物語は夏の夜でぇ……えーと…あーあああぁぁぁ
ク:まったくもう!泣いてるヒマがあるんだったら、もう一度星空を見て御覧なさいよ。
ピ:星空?

ピ:冬の星空を調べたって天の川なんて。ん?気のせいかな?星空に帯みたいにぼんやりと光ってる。
ク:あれが、冬の天の川よ。
ピ:冬の天の川?そんなウソでしょ?だって、天の川って言えば七夕で、七夕と言えば夏の夜空で。
ク:いいから、調べてこーーーい!
このセリフ。ピーボは飛ばされるし、まんま”成瀬川なる”でオモロカッタです。それにしても、低学年向きの番組のリメイクなので、同じ言い回しが多く、何度も聞き手に確認させる場面が多いです。

ピ:あれ?何も見えない。真っ暗になっちゃったぞ。あーあぁ、SOS、SOS。
ク:こちらクリス。こちらクリス。ピーボ応答せよ応答せよ。オーバー。
ピ:こちらピーボ。助けてぇ〜クリス〜。
ク:こらこら泣かないのぉ。落ち着いて、辺りを見てごらん?何が見える?
ピ:何がって?クリスー。
ク:何が見えた?
ピ:光です。渦です。沢山の光が渦になって輝いています。なんて綺麗なんだろう。ねえクリス。あれは一体なんですか?
ク:それは銀河系。沢山の星たちが集まってる場所よ。
ピ:星たちが?

ク:簡単に言うと、ピーボ。アンタは星空を越えた場所にいるのよ。
ピ:えぇぇ!?それじゃあ、あの中に地球もあるんですか?
ク:その通り。地球も月も太陽も、さっきみたシリウスだって、銀河系の光のほんの一部なんだから。今、アンタが見ている銀河系を地球から見ると……ほらちゃーんと見えてるでしょ?
ピ:あの、ボクには見えないんですけど…。
ク:アンタに言ってるんじゃないの。プラネタリウムの皆さんに言ってるの。
観客数5名の為に、わざわざスミマセンねぇ。と言い返したくなってしまった。

ク:改めまして、私はクリストファーリンクス。みんなはクリスって呼ぶわ。この辺りはとっとは名の知れた探偵なの。何か困ったことがあったら、この私。美少女探偵クリスにおまかせよ!
ナ:番組が始まっておよそ14分。台本上20ページにして、ようやく主人公の登場である。
ク:ま、まあまあナレーターさん。細かいことはいいじゃないの。オホホホホホ。
ピ:あの、クリス。
ク:何よピーボ。うるさいわね。
ピ:銀河系をこっちで見たらどう見えるのかって所で話が止まっているんですけど
ク:あ、あぁそうね。プラネタリウムの皆さん、解った?解った人が手を挙げてー!
ク:ふんふん。あーなるほどー。解る人は解ってて、解らない人は解らないっと。おっけー。それじゃあ解らない人の為に、私が教えてあ・げ・る。

ク:あの雄大な銀河系はこの夜空のどこに見えてるのか、と言うと。じゃーーん、北から南にボンヤリと帯のように光ってる天の川。この天の川が地球から見た銀河系なんです。きゃは!
ピ:えーー?天の川が銀河系ですってー?こんな広大な光の渦が天の川だなんて。とても信じられないですよ。
ク:ピーボ。そこから見て地球って、銀河系のどこにあるか解る?
ピ:えーっと。んんー??だめです。とても見分けが付きません。
ク:そこから地球が見えるわけないでしょう。私たちの地球はね、銀河系のこの辺りにあるのよ。(画面上に表示される)
ピ:えー。こんな端っこなんですか?
ク:ここは、銀河系の中心から、およそ2万8000光年離れたオリオン湾と呼ばれる場所。巨大な銀河系の辺境の地ってとこかしら。私たちの地球がある太陽系は、さらにそのオリオン湾の端っこ、辺境の離れ小島って感じでしょう?
ピ:非常に簡単に言うと、ドラ焼きの一番端っこって訳ですね。
ク:ま、まぁね。そのドラ焼きの端にある地球から見ると、ドラ焼き…じゃ無い、銀河系は丁度横からみた姿。川のような模様、天の川として見えるって訳よ。
ピ:つまり、天の川に流れているのは、水ではなくて、沢山の星だったってことですね。ふー、良かった。これでまた一つ疑問が解決されました。こんな宇宙の果てまで来たかいがありました。
ク:まあ、何もそんなトコに行くまでもない問題なんだけどね。でもまあ、とにかく、天の川の正体が無数の星たちが集まった銀河系だってこと。そして天の川は、夏だけに見えるものじゃない。秋にも冬にも、南十字座でお馴染の南半球の夜空にも見えるものだってこと。

ク:ど〜ぉ、ピーボ。そこから見ると、天の川が夏の夜空でしか見えない訳じゃないってこと、解るでしょう?
ピ:え…え〜っと。そうですね、なんとなく。
ク:なんとなくですってー!
ピ:だって、冬の天の川って、夏と比べるとおとなしい感じがするんです。それに、春の天の川とか秋の天の川ってあんまり聞かないし。
ク:それわー。だからー。

<説明>

ク:(説明口調)銀河系の中心には、星が沢山集まっているでしょう。地球から見た星空が、この銀河系の中心に向かっている時が天の川が一番濃く見える時。つまり夏の夜空ってわけ。
ク:今見上げているのが夏の星空。七夕の織姫はココ。彦星はココに光っているわ。2つの星の間には、キラキラ光る天の川。七夕物語のお話通りでしょ。このい正座はいて座。ケンタウルス族の一人ケイローン姿って言われてるの。いて座の見えるこの辺り。天の川が一番幅広く見えるのがわかるかな?この方向に銀河系の中心があるのよ。
ク:夏がどんどん行き過ぎるに連れて天の川は西へ西へと傾いていく。秋になると天の川は地平線の向こうに沈んで行って、明るい星が少なくなっていくのが解るでしょう?でもね、夏の星空、秋の星空って言っても、その季節だけしか見えない訳じゃないのよ。一晩中星空を見ていると、明け方近くには夏の時期でも冬の星たちまで見ることが出来るんだから。だって、星はいつも動いてるんだもの。よく言われる季節の星空ってその時期の見やすい時間。だいたい夜の8時頃の星空を言うの。
ク:だんだん東の方から明るい星が昇ってきた。もうすぐ冬の星空が主役の時間。夏と比べると幅は狭くてうっすらとしているけど、天の川もちゃんと見えてきたでしょう。冬の星空は夏の星空とは反対方向。こっちの方向を向くことになるの。銀河系の中心から逆方向になるから、夏よりも星が少ない天の川になって見えるのよ。
ク:夜空に見える天の川は、昔から世界中で、いろんな見方や呼び方をされてきたの。エジプトでは”空のナイル川”。ヨーロッパでは”ミルキーウェイ””乳の道”。タイの人達なぜか”豚の道”なんて呼んでるの。でも、この冬の天の川にピッタリなのは北欧の国スエーデンでの呼び名よねぇ…”冬の道”。凍てつく星空に流れる冬銀河。う〜ん、ロマンチック〜。なんだか、イイ感じの音楽が聴こえてきそう〜。

ク:いいわねぇ、まさにプラネタリウムって感じよねぇ。なんだかバタバタした番組続けてきたけど、ここらでちょっとムードを替えて、冬の星座達をご紹介することにしましょう。
ク:空気が澄んだ冬は、星が一番綺麗に見える季節。”冬の道”。冬の天の川のせせらぎが、小さな光のきらめきとなって、私たちにそっと囁きかけるよう…。そんな囁きに答えるように見上げてみると…
ク:”オリオン座”88ある星座の中で一番綺麗で一番目立つ星の並びが私を迎えてくれる。伝説の狩人オリオンの姿。月の神アルテミスとの悲しい恋。天の神によってその愛は引き裂かれ命を落とした悲しい狩人。星になったオリオン。その肩に光る赤い星はベテルギウス。その左足に光る白い星はリゲル。赤いベテルギウスと白いリゲルを含む4つの星は冬の星空のシンボル。そして、オリオン座の三ツ星はアルテミスからのラブレター。星に書かれたラブレター。「好・き・よ」。

ナ:しかし、愛は移ろぐもの。星になったオリオンは新たな愛を追い求めたのであった。

ク:ちょっと何よ!イイ感じだったのにぃ!
ナ:聴いていたら何だか私もナレーター魂に火が付いちゃいまして。ちょっと交代させてもらいますよー。
ク:何よ。勝手に!今、私がロマンチックに語っている最中だったのに。
ナ:(咳払い)ウォッホン。オリオンの見上げる先に新たな愛の輝きがそっと輝いている。

ナ:プレアデス星団。400光年の彼方に輝く誕生したばかりの星達。およそ500もの星が集う大星団。日本では平安の昔より、「すばる」と呼び、その美しさをめでた。ギリシャではこの輝きを可憐な7人の娘達に見立てた。天を支える神アポロスの娘達。プレアデスに熱き眼差しを送り続けるオリオン。しかし、その愛も眼差しの前に、怒れる眼差しが立ち塞がる。おうし座。神々の王ゼウスの化身。その目に光る赤い星。アルデバラン。「従う者」。おうし座はプレアデスに従うが如くオリオンの前に立ち塞がるのだろうか。それとも、オリオンとプレアデスとの愛を許さぬ神の意志なのだろうか。二つの星座の戦いは悠久なる時間の中、永久に続いて行く。

ク:ハイハイハーーイ!次は私にやらせてー。
ク:この星はシリウス。その意味は…

ナ:「焼き焦がすもの」その名の通り、シリウスは地上から見えるどの星よりも白く輝く。そんな焼き焦がすものをくわえる星座。おおいぬ…
ク:おおいぬ座。オリオンが愛した月の神アルテミスの猟犬ライラプスの姿。主人の代わりに星となり、オリオンと共に星空を駆ける。シリウスがあんなに眩しく燃えるのは、愛を伝えるアルテミスの心なのかもしれない。
ナ:天かける犬はもう一つ。その小さな姿をしるす星はプロキオン。こいぬ座。その瞳に光る星はゴメイザ「泣き濡れた瞳」。こいぬの瞳を濡らすのは誰なのだろう?
ク:それはきっと、悲しいけど幸せな兄弟のため。こいぬ座の見上げる先に輝く二つの星が語る物語。
ナ:この星はカストル
ク:この星はポルックス。
二人:ふたご座。
ナ:兄のカストルが命を落とした時、弟のポルックスは自分の命の半分をカストルに分けた。
ク:そして兄弟は星座になったの。二人は冬の天の川の岸辺で永遠の時を共に過ごすの。
ナ:天の川。「冬の道」が導く星座達のシンフォニー。
ク:凍てついた空気の中、私の心に暖かく灯る。

(パチパチパチパチ…)
ナ:いやぁーー
ク:良かったんじゃない?良かったんじゃない??
ナ:クリスさんも中々感動的な語り口でしたよ。
ク:ナレーターさんこそ!さすがナレーターさんだけあったわー。
ナ:そ、そ、そうですかー!
ク:すごい感動しちゃったー。
ナ:うれしいなー。はははー。
ク:どう?ピーボ?これで冬の天の川の事、結構解ったでしょ?ピーボ?ちょっと、ピーボったら!

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ク:ちょっと信じられない!アンタ寝てるの?人のさんざん説明させておきながらー!ちょっとピーボ。ピーボったら、もぅ!

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ナ:こうして、探偵クリスの活躍により、銀河系の謎は解明された。地球に再び平和な日々が訪れたのだ。
ク:ちょっとナレーターさん。何をいきなり締めのセリフを語り出すわけ?
ナ:あーそのー。もう番組もいい時間ですし。
ク:だって!まだなんも事件が起ってなかったじゃないのよ。私、探偵よ。こんな程度の活躍でエンディング!って訳にはいかないの。
ナ:そうは言われましても、無理矢理事件を起こすわけには…。それにクリスさん。あなた番組の前半、ほとんど寝ていたわけですし。
ク:うっ、うるさいわねぇ。睡眠は美容の基本よ。美少女探偵がお肌を荒らす訳にはいかないの。

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ク:起きなさい、ピーボ!ったくピーボったらー。
ミニ:大変だー、大変だー。
ク:うっさいわねぇ。どうせまたたいした事件じゃ無いんでしょ?こうなったら美容の為にもう一眠りしてやるんだから!
ミニ:大変だー、大変だー。怪盗ドクターゲイルが星空の宝石を盗むって言ってたよ。大変だー、大変だー。
ナ:ドクターゲイル。天才科学者にして、全宇宙に指名手配される宇宙一の怪盗である。そのゲイルから犯行予告が届いた。さあ立ち上がれ美少女探偵クリス!君の推理が宇宙を救う。

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ナ:おーぉ…、そ、そうきますかぁ。あーえーとそれじゃあ。立ち上がれ探偵クリスの助手ロボットピーボ!君の優れた電子頭脳が平和を、お、おお?

いびき(がぁーー……ごぉーーー……)

ナ:はぁー、番組の残り時間も無いことですし、ま、いいか。それでわ、次回名探偵クリス。第2話「盗まれた星空の宝石の巻」をご期待ください。はぁ、これでいいか。はーあ、さてさて、次の出番はあるのかなぁ。主役の二人があれじゃあな。

 時間にして約35分の内容。序盤はいびきだけ(笑)。後半は星の説明をクリスが受け持ったのでかなり喋っていました。クリスの印象は気が強くちょっとわがままな感じ。説明の部分は普通にナレーション風での喋りで、二役楽しめました。今までのプラネタリウムとの決定的な違いは、明らかに遊ばれて作られており物語の内容的には薄かったこと。でも、この遊び部分のおかげで、今までで一番楽に観れたかな。
 
聞いた話によると、ラストでナレーターが言った「第2話:盗まれた星空の宝石」と言うのが、以前、学校教材で使われていた話だそうだ。なのでこの2話は存在すると思われる。こうして今回、折角一般公開用の作品を作り、投影されたのだから、この番組終了後は、連続物として教材用の2話を是非流してもらいたい。クリスも作品中で

だって!まだなんも事件が起ってなかったじゃないのよ」

と言ってることですし、まともな探偵役堀江由衣を見たいですね。