枠組み維持のための制度

 枠組みを維持するという、機能系の政策とは異なる性質をもつ事柄に対して、どのような制度が適しているのか、という議論は、これまであまりなされてきませんでした。通常は、枠組みに関する憲法や法律が制定され、様々な場所で作用することによって、枠組みは維持されています。例えば、公立学校における国旗掲揚や国歌斉唱は、しばしば個人の自由を侵害するとして訴訟事件に発展したりしますが、これらもまた、法律に基づいた枠組維持のための制度として理解できます。
 このように、枠組みの維持とは、国民をまとめる役割を担うことから、基本的には保守的であるという特徴を持ちます。しかしながら、それでも、枠組みをめぐる立法上の議論が起きることがあります。近年では、各国とも、外国人労働者の受け入れや国籍法などが議論の対象となっています。こうしたメンバーシップに関する決定には、国民投票の制度を導入するという方法が適しているかもしれません。何故ならば、メンバーシップとは、入国や国籍取得を望む人々と、受け入れる側の人々とが、相互に合意を形成しませんと、後々双方ともに不満が残るからです。
 枠組みの維持に関する政策に対して、どのような制度を築いていくべきか、という問題は、まだまだ議論の余地のある課題です。しかしながら、枠組みの決定と維持は、やはり、国民の合意を要するとした方が、民主主義の本質には適っているとは言えましょう。


 第5章へ戻る  
   
第5章へ戻る