価値決定のための制度

 憲法は、人々が安心して日常生活を送り、野蛮と暗黒が支配する世界とならないための、抑止の仕組みを定めています。独裁国家や弾圧国家が出現することは、その国のみならず、他の諸国にとりましても不幸なことなのです。
 統治上の価値の決定とは、この文脈において、国家並びに国民にとって決定的な意味を持ちます。国家が他国から信頼される国家となり、また、そこに住まう国民が幸福となる機会が開かれているか、否かは、統治上の価値の実現の如何にかかっているのです。憲法は、国家と国民を運命づけているのです。
 そこで、憲法の制定や改正に際しては、多くの民主主義国家では、最終的な判断は、憲法制定権力を持つ国民に任されています。例えば、日本国でも、改正法案自体は議会が提案しますが、改正の実現には、国民投票による過半数の賛成が必要です。また、アフガニスタンやイラクの例に見られますように、憲法制定議会の招集、制定議会における草案の作成と決定、国民投票による採択、憲法の交付と施行、という手続きを踏むことが、およそ標準的な憲法制定過程となっています。つまり、憲法の制定と改正こそ、国家の統治上の諸価値と制度の決定にかかわる究極の手段なのです。


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