内部調整の政策/政治分野

 内部調整の基本的な役割は、国民が負担を分かち合いつつ、何らかの公共の事業を行うことによって、国民の生活や産業を全般的に向上させることです。最初に、国民生活に関連する政治分野の政策領域を見てみましょう。

1.財政政策

 財政政策は、内部調整系のみならず、集団的戦略系や秩序維持系の政策領域にも関連します。しかしながら、他の領域では、財政的な裏付けは本質的なものではありませんが、内部調整においては、財政政策が、その本質にかかわってきます。
 財政政策は、歳入と歳出の二面に分かれます。歳入は、誰がどれだけ負担するのかを決める課税政策の上に成り立っています。税負担の論理には、国民間の連帯性(相互扶助)に基づく論理や、均等平等や比例平等を原則とする合理性の論理、あるいは、強者有利の力の論理?などがあります。現在では、連帯性と合理性の論理の組み合わせが主流ですが、それでも、負担のレベルや根拠をめぐる議論は尽きません。
 もう一方の歳出面は、財源の使途、つまり予算の編成が中心課題となります。これには、事業の公私の線引きも含まれます。どの事業を公共の事業として行うかを決めるのは、まさに、政治問題となるからです。この問題に関しては、”小さな政府”と”大きな政府”という、二通りの考え方が対立しています。

2.生活インフラストラクチャーの整備

 水道や電気を引き、あるいは、道路や鉄道を敷設することは、国民の生活向上に大きく貢献します。領土において、基礎的なインフラストラクチャーを整備することは、国民生活を豊かにする有効な手段となるのです。ただし、この領域にあっては、敷設の場所や順番などが争点となり、しばしば、利益誘導型の政治の温床となることもあります。

3.社会保障政策

 社会保障制度とは、国民が、安心して生涯を送れるように、公的な制度や事業を整備しておくことです。国民全員に対しては、健康保険制度や公的年金制度などがありますし、また、障害などのために生活を送ることが困難な人々に対しては、国民間の相互扶助に基づいて、社会福祉政策などが行われています。

 以上の内部調整系の政策領域は、国民の生活水準や満足度と密接に結びついています。その一方で、財政負担を要するために、国民間の意見や利益が分かれたり、対立したりし易い分野でもあるのです。


 
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