それでは、集団的な戦略決定と実行の系統に属する政策には、どのようなものがあるのでしょうか?
1.防衛政策
防衛政策とは、集団が自己保存をおこなうためになくてはならない政策領域です。この政策の対象は、国家の三要件に向けられています。つまり、外部からの攻撃に対して、物理的な手段を用いても、国民、領域、主権を守ることが、この政策の目的となります。防衛に失敗しますと、主権を喪失する場合がありますので、防衛政策は、全ての政策の根幹にある政策領域と言えましょう。
2.安全保障政策
安全保障政策とは、複数の国家間関係の中で、自国の安全保障を追求することです。最も普遍的な枠組みとしては、国連による安全保障体制がありますが、本質的な難題や制度的な問題があり、実際には機能しない可能性があります。そこで現実には、同盟関係や地域的な多国間機構を通して集団的な安全保障体制が築かれる場合が少なくありません。
3.外交政策
有事ではなく、平時において対外的な関係を構築する役割が、この外交政策です。政府は、自国の国益にかなうように、友好関係や敵対関係を使い分けることになります。また、外国において災害や動乱などが発生した場合、在外公館は、現地の自国民の保護の役割を果たします。
4.公安活動
これらの政策領域の他に、万が一、敵対関係にある国が、自国の内部にあって破壊活動などを行う場合には、それを防ぐ必要があります。この内部破壊を阻止するための活動が、国内で行われる公安活動です。この意味において、公安活動は、戦略系の政策としてとらえることができます。
5.情報収集・諜報活動
防衛政策をはじめとして、政府が、国家の戦略を決定するに際しては、その判断材料となる質の高い情報が必要です。外国にあってこの情報収集に当たるのが、情報・諜報活動です。
以上に述べてきた戦略系の政策を、政府が円滑に遂行することによって、国家の三要素は守られることになります。これらの政策領域が主権的であるとされるのは、それが、国家存立の基盤を支えているからです。そうして、現在では、政府は、自国の安全を守るとともに、国際秩序全般の問題にも対応しているのです。
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