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夢 守 教 会
†† 第四話「花の名前」1/(6)
菖蒲の花/マイナス4
父さんと母さん以外の来訪者には、興味がない。
そう思っていたわたしは、「存在革命計画者」を名乗るこの男の来訪にも、別段心を動かされることはなかった。
それでも一応の会話を成立させたのは、本当に単なる暇つぶし以外の意味はない。
男が語りはじめる。
「はじめはね、『家族』という枠組みから抜け出したくて、家出をしたんだ。
だけどすぐに僕は今度は『町』という枠組みに取り込まれた。
もちろんそこからも抜け出すために、今度は僕は町を出た。でもね、次は何だと思う?」
暇つぶしにわたしは答えてあげる。
「次は『国』。そこから抜け出しても今度は『世界』でしょうね。終わりがないわ」
「そう、そして『世界』を抜けても『永遠』が待っている。僕は、僕だけになりたいというのに。
『●●家』の僕ではなく、
『●●町』の僕ではなく、
『●●国』の僕ではなく、
『世界』の僕ではなく、
『永遠』の僕ですらない。
あらゆる既存の『枠組み』に干渉されない、ただの僕になりたいのに」
男の告白は、夢想に思える。あらゆる『既存』から干渉されない存在など、世界の摂理に反している。わたしには、それが分かる。
「なんでそんな話をわたしにするの?」
暇つぶしの会話に飽き始めたわたしに、ゆっくりと男が告げる。
「自分が殺される理由を、知っておきたいかと思ったんだ」
/菖蒲の花マイナス4・了
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