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夢 守 教 会
†† 第三話「花の名前」2/(3)
菖蒲の花/マイナス2
「それは『存在』しているとは言わないわ」
「そうだよ、だから『存在』を革命すると言っている」
男が片手を上げると、男の手に、紫色の長い槍が現れた。否、現れたのではなく、元から男が手にしていたものを、はじめてわたしが認識した。
「わたしの認識を操作していたわね? あなた、名前を捨てたと言っても、正体が分かってよ」
「それを知ったとして、今から死ぬ君はその認識を誰にも伝えられない。誰からも認識されない存在は、存在していないのと同じことだ」
本当に、『生』というものの幕切れは何とあっけないのだろう。
何の躊躇いもなく男が手にした槍でわたしの胸を貫いた時、わたしはそんなことを思った。
/菖蒲の花マイナス2・了
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