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夢 守 教 会
†† 第四話「花の名前」3/(1)
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夜。
眠りにつけずに瞼の中の黒い世界を見つめていた僕は、ドアの方に人の気配が現れたのを察知して、ゆっくりと目を開いた。
少しだけ上半身を起こして部屋の入り口のドアの方を見やると、人が、そこには少女が立っている。
本当に、色んな人が入ってくるドアだな。誰とも交流できない気がすると思っていた以前の不安をよそに、僕はそんなことを考えてちょっと面白くなってしまった。
「理子?」
窓から射し込む月明かりに照らされたその少女は、紅色の袴と白い胴衣を身に纏っている。明かりが朧なので確認できないけれど、それぞれに何やら凝った刺繍が施されている。一目で、僕は神社の巫女を想起したけれど、しかしながら、その顔を、凛とした瞳を見間違うはずがない。髪を下ろしているのもいつもとは違う。それでも、この少女は理子に相違なかった。
けれど、少女はゆっくりと首を横に振り、こう答えた。
「永遠(とわ)」
聞き慣れた理子の声が、別の名前を僕に告げる。
「私の名前は、夢守永遠(ゆめもりとわ)よ」
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