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夢 守 教 会
†† 第四話「花の名前」4/(5)
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魔人に飲み込まれた少年の心象風景に、煌びやかな炎が現れたのを木間謙信が認識した刹那である。
魔人の巨腕が、突如として現れた疾風に別たれて、空間に強い意志を瞳に携えた少年が現れる。
パン、という乾いた音は音速の拳。少年の認識武装は、紅蓮のイメージを宿した烈火の両拳であった。
「オレはアンタが誰か知らないけれど」
少年の右手は空を割いて照準を絞り、左拳は圧縮されたまま弾丸として装填される。
「人の痛みを、弄(もてあそ)ぶなよ!」
繰り出された拳に宿る心象イメージは、最早火炎を超えて、光である。少年の小さな左拳から解き放たれたのは、巨大なイタミの魔人を覆い尽くす、閃光の巨砲。その、太陽を思わせるような原初の光の前に、「痛み」という人間存在と不可分な認識が包まれていく。魔人が、掻き消されていく。
それはあるいは、ただ痛みが分かる人間が、同じ人間の痛みを癒したような。謙信がそんなことを思いながらその光景を刮目していた時、フと、少年の背後に、懐かしい音を聴いた気がした。
それが錯覚だったのか、あるいは謙信と共感した少年に宿った、謙信自身の心象に深く刻まれている彼女の音を、鏡を見るように聴いてしまったのか分からない。けれどもそれは、謙信が愛した花の名前を宿した小さな少女が奏でていた音と同一のものだった。
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