†† 夢 守 教 会 ††  第三話「輝きの先」1/(3)

  1/

「砂糖、何個入れる?」
 優希のその一言で、ラップトップパソコンの画面を眺めながら何処かに飛んでいってしまっていた私の意識が現実に引き戻される。
 気が付けば、二つ並んだティーカップに優希は湯を注いでいる所だ。慣れた手つきから、女性の給仕を私は連想した。男の場合は、執事になるのだろうか。女の子のボディーガードから宗教組織の参謀、おまけに執事業までこなすこの少年は中々多才だな、などと人ごとのような感想を抱く。
「ん、二個」
「理子ってさ、もしかして甘いモノが好き? なんかそれって、普通の女の子っぽいよね」
「なんか引っかかる言い方だな。好きっていうか、頭が回るようにある程度とるように心掛けてはいる。知ってたか? 脳って、使うと凄いエネルギーを消費するんだぞ」
「らしいね。そうか、君の頭の回転の速さは定期的な糖分の補給に裏打ちされていたんだ」
 はい、と角砂糖を二つ溶かした煎れたての紅茶がラップトップパソコンの脇に置かれる。
「サンキュ」
 ティーカップに口をつけると、香ばしい香りが鼻をついた。安物のティーパックで入れたものと言ってもバカにはできない。砂糖の甘さと独特の香りが私の味覚と嗅覚を刺激して、心地よい気分になる。
 なるほど、大人が休憩時間によく飲むのも頷けるな。私はそんなことを考えながら、しばし疲れた頭に糖分が行き渡っていくような感覚に身を任せた。
「首尾はどう?」
「うん。今の所そんなに目新しい情報は無いな。二件とも、WEB上のメディアも、事実の伝達と、ちょっと不安を煽るような論調の主観記事が少し掲載されているだけだ」
 そう、現在私は菖蒲さん経由で哲学研究室に設置したインターネット環境を使って、最近この町で起きた二つのある事件の情報を収集していた。
「モトムラくんで終わりだったら良かったのにね」
「ああ、でも菖蒲さんはあの時も、もっと行き着く所まで行けばこうなるってことは言ってたしな」
 私が調べている二つの事件とは、殺人事件である。
 そのどちらも、夜間に刃物で急所を一突きという過激な代物だ。
 そして、そのどちらに関しても、私達「夢守教会」の顧問たる菖蒲さんは、背後にブレイン教会が関係している可能性を指摘していた。
  1/(4)へ

夢守教会TOPへ