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夢 守 教 会
†† 第三話「輝きの先」2/(2)
◇
「ちょっと親心っていうか、兄心っていうかさ」
リューシが手にした竹刀を竹刀立てに戻しながら、優希に話しかける。
「この前家に行った時、理子ちゃんがあんまり島谷君の話をするものだからさ。ちょっと妬けちゃったというか。そこでほら、島谷君は空手の達人だと理子ちゃんが言うじゃないか。一剣術家として、君を試してみたくなった、みたいなね」
「はあ」
優希が困った顔をしている。当の私がそうであるように、リューシの意図をはかりかねているのだろう。
「あはは、大丈夫大丈夫。君は合格だよ。超合格」
パンパンと、長年つき合いのある友人のようにリューシは優希の肩を叩いた。
「君は強い。だからさ、これからも理子ちゃんを守ってやってくれ」
優希にそう伝えると、「さて」と呟いてリューシは着ていたスーツの上着を整え、道場の出口に向かって歩き始めた。
私と優希は、そんなリューシの後ろ姿を黙ったまま並んで見送る。
「俺は本格的にやることが出来たから、もう君を守ってはやれないと思う。だから理子ちゃん、」
そういえば昔。ずっと友だちでいようと約束したことがある。
「最後の時間まで、島谷君と一緒にいるんだよ」
道場の出口でそう言い残すと、リューシは振り返らないまま去っていった。
なんなんだよ、お前。
陽気に現れて、優希と立ち会いたいとか意味分からなくて。
それなのに、そんな哀しいことを言い残して去っていくなよ。
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