†† 夢 守 教 会 ††  第三話「輝きの先」5/(14)

  巫和の世界/マイナス2

 お母さんが毒の言葉を吐くようになった。
 お母さんの心からの言葉じゃない。脳の損傷がお母さんにこんな口汚い言葉を言わせているんだと自分を納得させようとしたが、感情は中々追い付いてこなかった。
 こんなに、死ぬ思いで介護しているのに、「巫和は役に立たない」とか、「巫和は人間じゃない」とか、罵詈雑言を浴びせられるのが辛かった。
 それでも歯を食いしばって笑顔を作り、トイレを介助し、着替えを手伝い、介護食を作り続けた。
(いっそ死んでしまえばいいのに)
 口から出かかった言葉を必死に飲み込むと、私は自室に駆け込み、机の引き出しから取り出したナイフで畳をメッタ刺しにした。
 カッと両瞳を見開いて息切れするほどナイフを畳に突き立てた私は、この頃から、「何かが間違っている」可能性を思考の片隅で検証するようになった。

 ちなみにこの頃、竜志様から最初のメールが届いた。
「間違っているのはこの●●」
 実に明解な解答に、私はその一通だけで心を掴まれた。

       /巫和の世界マイナス2・了      
  5/(15)へ

夢守教会TOPへ