†† 夢 守 教 会 ††  第三話「輝きの先」5/(18)

  巫和の世界/0

 深夜。家を覆っていた痛みの一つが消えていることに気が付いた私は、パジャマ姿のまま、お母さんとお父さんの寝室に赴いた。
 ああ、やっぱりこうなったんだなと、私は不思議なほどその光景を自然に受け入れた。背中を向けて佇んでいるお父さんの向こう側で横になっているお母さんの喉元に、私の部屋にあったはずの赤い柄のナイフが突き立てられている。
「巫和、お前も死ぬか?」
 振り向いたお父さんが、青い柄の方のナイフを片手に持って、低い声で私に聞いてきた。
「私はやりたいことがあるから、まだ死にたくない」
 ここまで頑張ったお父さんの目と、重なって視える肥大した痛みを冷静に見つめながら、私は答えた。
「そうか」
 それだけを言い残して、とても自然に、お父さんは青い柄のナイフを自分の喉元に突き立てた。

 仲良く転がっている喉元にナイフが刺さったお父さんとお母さんの死体を見下ろしながら、私は心の底から理解した。 やっぱりあの方が言っていた通り、この世界はどうしようもなく間違っていたんだ、と。

       /巫和の世界0・了      
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