†† 夢 守 教 会 ††  第三話「輝きの先」5/(6)

  巫和の世界/マイナス6

 奇蹟が起こり、助かったお母さんは半身が麻痺して言葉がろくに話せなくなっていたけれど、それでも私とお父さんは神様に感謝した。
 退院後、中学二年生のはじまりから、私達の新しい生活がはじまった。
 日中お父さんが会社に行って、私が学校に行っている間、お母さんをヘルパーさんに頼み、学校が終わった後、お父さんが帰ってくるまでは私がお母さんの面倒を見るという生活だ。
 放課後の友だちとの時間や、部活動といった無標な中学生のいとなみを諦めるのは最初はちょっと寂しかったけれど、すぐに気持ちに整理をつけた。もうお母さんは私がいなくては生きられないのだから、私はお母さんの側にいるべきだと思った。
 トイレの介助に、着替えや身辺のお世話、介護食作りと、やることは大変で私は疲れることも多くなったけれど、夜からは会社から帰ってきたお父さんが代わってくれたので、まだ、私は大丈夫だった。
 少しでも良い生活をと、私はお母さんが倒れる前に我が家に設置されていたパソコンでレシピを調べて、料理の腕の上達を心掛けるようにした。お母さんもお父さんも辛い顔をすることが多かったから、せめて美味しいものでも食べてもらって元気になって貰わないと。そう思って、私は勉強の合間に料理の研究にいそしんだ。
 それが、人の痛みが視えてしまうというやっかいな子どもを大切に育ててくれた、お父さんとお母さんへの恩返しのつもりだった。

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