「くすっ、良いことを思いつきましたわ」 補佐官の執務室でロザリアは自分の思いつきに満足して笑みを漏らした。 もうすぐ女王陛下の誕生日。 日頃多忙でお疲れ気味な陛下の為に、楽しいパーティを企画したのだが、内容がどうしてもありがちになってしまう。 何か目新しく、陛下が喜びそうなものを、と、頭を悩ませ、ついさっき思いついたのだ。 ”仮装パーティ”を。 「皆さん、陛下の誕生日パーティを盛り上げるために皆さんにも協力していただきますわ。こちらのくじを引いて番号を記入して下さい」 女王補佐官の命令とあらば是非もない。 守護聖達も、教官達も、協力者達も、良くわからないままくじを引くことになった。 「ふふっ、では、三日後のパーティ当日に」 三日後、誕生パーティの朝、集まった守護聖、教官、協力者達の目の前にはくじ番号と名前のカードが付いた”衣装”が用意されていた。 あっけにとられて目をむく人々に対峙するように、補佐官が無言の圧力をかけて微笑んでいた。 ”着るべし”と。 「えへっ、すっごく綺麗だね。ふたりとも本当の女の人みたい」 「メル、それは誉め言葉じゃないってわかって言っているのかい?」 「あぁ、セイラン、メルを責めないでください。元はと言えばくじ運が悪かったということなのですから」 「ふーん、お優しい水の守護聖様は”くじ運が悪い”で済ませてしまえるんですね。僕はごめんだな」 「ですが、子供の”なり”をさせられているジュリアス様やチュチュ姿のルヴァ様に比べたら私達などましな方では・・・・」 「!!!」 「あー、ジュリアス、あなたは良くお似合いですねぇ。短い吊りズボンに赤い蝶ネクタイが素敵ですよー」 「・・・そなた、本気で言っているのか?・・・まあいい。陛下は殊の外お慶びのようだからな・・・」 「ハァ〜イ!・・ちょ、ちょっとルヴァ! 何でチュチュ姿にターバンなのさ?!」 「まぁいいじゃありませんかー。あなただって原始人なのにお化粧してるでしょー?」 「キャハハハ、まっ、誰だって譲れないモノってあるよね」 「お、おいっ! そこ退いてくれ!」 「ゼフェル、ジャグリングしながら玉乗りなんかして危ないじゃないですか」 「しゃーねーだろ?! ピエロの服と玉とクラブがワンセットだったんだからよ」 「下手だなぁ、ちょっとかしてみろよ」 「な、何しやがるんだ、このランディ野郎! ・・・おめー、そーゆーコトは上手だよな。でもよ、赤いずきんかぶって、スカートはいて玉乗りはねーだろーに」 「わー!ランディ、玉乗り上手だね!」 「マルセル? 何だい、その格好?」 「うーん、よくわからないんだけど、カードには”座敷童”って書いてあったよ・・・。う、うわぁ!!」 「何だ? あれは?!」 「やぁすまん、驚かせてしまったようですな」 「ヴィクトールさん! 何ですか、それ?」 「いやぁ、俺にも良くわからんのです。”ダースベーダー”というらしいが」 「ダースベーダーと言うのはハリウッド映画の悪役ですね」 「お、お前・・・。補佐官殿の命令とは言え、不憫だな」 「いえ、何事も経験を踏まえた上での研究ですから。最も、バニーガール姿をしたからと言って研究に役立つとは思えませんが、少なくとも度胸はつくでしょう」 「えらい! エルンストさん、研究者の鏡ちゅーのはあんたのこっちゃ! 表彰状上げたいくらいやわ」 「それは遠慮しておきます。あなたはチャーリーさん、ですか?」 「はい、はい。チャーリーでっせ〜。あ、あかん、こんな喋り方したら。ホッホッホ、チャーリーですわよ〜」 「少々気持ち悪いとも言えますが、似合ってはいますね・・・」 「ホッホッホ、お蝶婦人としては嬉しいですわ〜。まぁ! あそこで着物に埋もれて眠ってらっしゃる方はどちらかしら〜? ・・・ひょっとして、あれ、クラヴィス様?」 「ええ、そうですよ」 「ティムカさん、えらい格好ええなぁ。ほんで、クラヴィス様の衣装って何か知ってるん?」 「あはっ、ありがとうございます。さっき、起きてらっしゃる時にお聞きしたんですが、”十二単”って言うそうですよ」 「ふ〜ん、十二単言うんかぁ。そりゃあんなモン着てたら眠とーなるわな。で、ティムカさんはピーターパンやね?」 「はい! ティンカーベルの代わりにマルセル様のチュピをお借りしました」 「ほぉ? 永遠の少年か・・・。何を着せても似合うのは俺だけじゃなかったようだな」 「オスカー様! うわぁ、僕、一瞬見とれちゃいました。それってドラキュラ伯爵ですよね?」 「まぁ、怖い。ドラキュラ伯爵って夜な夜な美女の生き血を吸いに来るのよ」 「うわぁ、それじゃあ気を付けなきゃいけませんね」 「アナタは大丈夫なんじゃない? ホラ、陛下は美女の生き血って仰ったんだから」 「もう! レイチェルったら!」 「・・・お三人方・・・。と、ところで、陛下と女王候補生のお嬢ちゃん達は何の仮装なのか、このドラキュラめにお教え願えますかな?」 「は〜い! サボテンブラザーズで〜す!」 ・・・お後が宜しいようで。
るーさんにいただいちゃいました♪「ゴスロリブラザーズ」(命名:まゆ)イラスト。 2003.7.9 |