無敵戦隊グレートセインツ再見参!

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「あ、あの、ジュリアス座長? 本当にこれを上演なさるのですか?」
「勿論だ。何か不都合でもあるのか?」
「・・・できません」
「何?!」
「私にはとても・・・」
「何を言う。お前になら可能だ」
「でも・・・・・」
「お前がこの劇団に入団してきた時、何と言ったか覚えているだろう?」
「はい、あの、幅広く演技の出来る良い役者になりたい、と」
「今は違うのか?」
「い、いえ!」
「ならば問題ない。お前にならできる。期待しているぞ」
一方的に会話を終わらせて、ジュリアス座長はトレーラーハウスへと消えて行ってしまった。
残された劇団員のリュミエールは、先日渡されたばかりの台本を握りしめ、ただ呆然とジュリアスの去った方向を見ていた。
「リュミエールさん!」
背後から明るい声がする。
「リュミエールさん、すごいですね、主役じゃないですか。今度の上演が楽しみだなぁ。うふっ、私も頑張りますね。・・・あの、どうかしました?」
アンジェリークはリュミエールの様子がおかしいことに気付き、下から顔を覗き込んだ。

海の色と森の色を混ぜたような不思議な色合いの瞳が心配そうに覗き込んでいる。
リュミエールは驚いて持っていた台本を落としそうになった。
「えっ? あ、あの、すみません、アンジェリーク。何か仰ったでしょうか?」
「大丈夫ですか? どっか具合でも悪いんじゃないですか?」
「いいえ、大丈夫です。あの・・・」
「えっと、今度は主役ですね、って。それで、私も頑張りますね、ってそう言ったんですよ」
「・・・・・」
「ひょっとして、リュミエールさん、困ってるんですか?」
「困ってる? ああ、そうかも知れません。今回の役柄に戸惑い、困っているのです」
「大丈夫ですよぉ。リュミエールさんお上手じゃないですか」
「・・・・・」
「あの、私がこんなこと言うのって生意気に聞こえるかも知れませんが、 リュミエールさんの悪役って奥が深いっていうか、その、一緒に演っててもドキドキしちゃうくらい素敵です。だから、頑張ってみて欲しいんです」
「アンジェリーク・・・」
「リュミエールさんならできますよ」
「・・・あなたもジュリアス座長と同じ事を言うのですね」
「それなら、座長さんもあなたのことを信頼してるってことですよね」
「信頼して? 私を?」
「はい」
にっこり笑うアンジェリークにつられてリュミエールにも笑顔が戻った。あんなに悩んでいたのが嘘のようだ。
自分は信頼され、期待されている。そうでなければこんな台本が通るはずがない。
そう思うと勇気が湧いてくる。演れそうな気がしてくる。
「ありがとう、アンジェリーク。私は信頼に応えたい。・・・演ってみようと思います」
「やったぁ。うふっ、いい舞台にしましょうね」
「ええ」
手を振って去っていくアンジェリークに手を振り返し、リュミエールは台本に目を落とした。

地球侵略を目論むトルヴィク帝国参謀アイラム、これがリュミエールの役どころだ。
トルヴィク帝国は絶滅の危機にさらされていた。
星の寿命が尽きようとしていたのだ。
住民の殆どは比較的安全な近隣惑星へと降り立ったが、トルヴィク帝国の属する星系自体が終末を迎えようとしているため、恒常的な移住は考えられなかった。
別の星系に移住するしかない。
移住可能な星を求めてトルヴィク帝王自ら探索を始め、そしてとうとう移住に最適な星を見つけたのだ。
つまり、地球を。
トルヴィク帝王は地球人を抹殺し、死に行く惑星で移住の時を待つ人々を地球に住まわそうとする。
しかし、地球には無敵レンジャーグレートセインツなるものがいて、移住計画は阻止される。
あと少し、と言うところでグレートセインツに邪魔をされ、地球は悪の手から守られるのだ。
これが今までのストーリーだった。

ところが、今手元にある台本は今までのものとは趣を異にしていた。
今までのが地球サイドの話だとすると、今度のはトルヴィク帝国サイドの話になっている。
当然、トルヴィク帝王役のヴィクトールや、参謀役のリュミエールの出番が多い。
多い、どころか、リュミエールに至っては主役扱いである。

リュミエールは台本から目を離し、ふっと遠くを見て目を細めた。
その表情からはいつもの穏やかな笑顔が消えていた。
射すくめるような視線で相手を見下し、冷ややかな笑いを浮かべる悪の参謀。
トルヴィク帝国参謀アイラムになりきったリュミエールだった。


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