あー、いらっしゃい。
待ってたんですよー。
おや、髪が濡れてますよ・・・?
えー? 雨が降ってるんですか?
そ、それは、ちっとも気が付きませんでした。
えーっと、どこかにタオルがあった筈なんですけどねー。
あっ、もう拭いちゃいました?
すみませんねー、気が利かなくて。
いえね、あなたがもうすぐ来てくださるって、そう思うだけで落ち着かなくて、さっきから部屋の中を行ったり来たりしてたんですよ。
それくらいなら窓の外を見れば雨が降ってることに気付いたでしょうにねぇ。
そしたらあなたをここまで濡れてこさせないで、途中で出迎えられたのに、ほんとに気が利かなくて・・・。
あの、私、何か変なこと言いました?
あー、その、そんなに笑われると恥ずかしくなっちゃいますよ。
・・・・・。
えー、お願いですから、そんなに見つめないで下さい。
わかりました。負けましたよ。
あなたは、そう、笑ってていいですから、ええ、私もあなたの笑顔は好きですから・・・。
あっ、今のは、えーっと、その、ああ!
お見せする物があったんです。
ちょ、ちょっと待ってて下さいねー。
・・・・・、お待たせしました。
これなんですけどね。
そう、植物の芽ですよ。
つい先日発芽したんですけどね、これ、何の芽かわかりますか?
って、いきなり言われてもわかる筈ないですよね。
実はね、これ、私の故郷から持ってきたもので、雨待ち草なんて呼んでましたけど、正式な名称はわからないんですが、
これね、十年以上も前に採取して、そのままずっと忘れちゃってた種から発芽したものなんです。
ええ、面白いでしょう?
私の故郷では雨が滅多に降りませんから、植物も知恵を働かせて雨が降るまで何年も待ち続けるようになったようなんですよ。
そして、雨粒の音を合図に芽を出し、あっという間に生長して一週間から十日ほどで枯れてしまうんです。
種だけ残してね。
何かもの凄くのんびり屋なのか、凄くせっかちなのかわからない植物ですが、花はそれは見事なものなんですよ。
それでですね、あなたさえよければ、持って帰って花が咲くのを見て欲しいんです。
長くて十日間程の命をあなたに見守っていて欲しい・・・。
私がこんなことを言うのは可笑しいですかね。
でもね、雨待ち草を見ていたら、何だか自分に重ねて、ああ、私はあなたに会うまでずっと種でいて、
あなたに会ってやっと芽吹くことができたんだってそんなふうに思っちゃったんですよ。
この想いに行き場がないことは知っています。
だからこそあなたに見事に花が咲いたところを見て欲しい、そして残された種を私に返して欲しい・・・。
えっ?! 今なんて?
種は返さない・・・?
で、でもそれでは・・・。
い、いいんですか?
あなたも同じ想いだと、そう受け取っても。
あー、本当にいいんですね。
私は種に戻らなくてもいいんですねー。
それなら、一緒に見ましょう。
雨待ち草の見事な花を。
これから、何度でも、何回でも、ね。
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雨降りデートシリーズ第十三弾です。
ルヴァ様って、自分からは告白してくれそうにないと思っています。
一生懸命、「あなたのことが好きなんですよー」ってコッソリ(笑)想い続けているひとじゃないかなぁと思います。
それが態度に出て、周りから見ればバレバレなんだけど、本人はあくまでコッソリと。
でも、女の子の方から告白されたら、そりゃすぐOKですよね?
2003.7.1
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