やぁ、デートの日が雨だなんてついてるよね。
今、意外そうな顔をしたね?
隠したってダメさ。
あーあ、まさか君まで雨は悪い天気で、晴れは良い天気、って決めつけてるなんてね。
ねぇ、君は知っているはずだよ。
この退屈な聖地が雨の日にどれほどその姿を変えるか、どれほどの色彩が加えられるか、
そして、どれほどの調べが奏でられるかをね。
ああ、笑ったね。
どうやら僕の言いたいことをわかってくれたらしい。
君は不思議な人だね。
僕たちが出会って一体どれくらいの時間が経ったっていうんだろう。
僕の人生からすれば、君の人生にしたってほんの僅かな時間だろう?
それなのに、どうして君は、僕のことがわかるんだい?
まるで僕の心が硝子張りだとでも言うように簡単に見透かされているみたいじゃないか。
くすっ、それがさ、驚いたことに、嫌じゃないんだ。
さっき雨の日はついてるって言ったよね。
白状するとね、本当は僕も雨の日は嫌いだったんだ。
君と会うまではね。
・・・・・。
雨の日は淋しげなメロディを運んでくる。
繰り返し、繰り返し。
あれは誰だったんだろう。
朧気な輪郭とぬくもり、そして淋しげなメロディ。
あれは僕が幼い頃の記憶なのか、それとも何かで見た映像なのか。
雨は否応なしに奥底に眠る記憶を呼び覚まし、僕の心をかき乱す・・・。
ところが君と出会ってから、雨の日に聞こえてくるメロディが変わったんだ。
快活に、弾むようなリズムで。
やがてそれにとろけるような甘美な調べが加わって僕の心に入り込んだのさ。
もうあの淋しげなメロディは聞こえない。
さて、君はどうする?
僕の心を塗り替えた責任は重いよ。
くすくすくす・・・。
まいったな、ここで謝られちゃね。
わからない?
君がすることは謝ることじゃない。
たったひとこと言うだけでいいんだ。
僕と一緒に生きていく、ってね。
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雨降りデートシリーズ第十四弾です。
このシリーズも残すところあと一回。あともうしばらくのおつき合いを願います。
セイラン、この人のセリフを考えるのはオスカー以上に難しいです。陳腐なセリフになってなければ良いのですが・・・。
この人と「良い関係」を保つのはものすご〜く努力が要りそうです。洗い物ほったらかしにしてゲームなんかしてちゃあ、一発で愛想を尽かされちゃうでしょねー。はは・・。
2003.7.1
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