雨  act8 Mel

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ごめん、待った?
あなたがまた来週って言ってくれたから、メル嬉しくって昨夜はよく眠れなかったの。
ちゃんと約束通り来てくれたんだね。

あ、ごめん。
疑ってたわけじゃないよ。
でもせっかくのお休みなのに、わざわざメルなんかと会ってくれるかなぁって思ったら、やっぱり無理かなぁって。

ありがとう!
あなたはいつもそうやって元気をくれるんだね。
だからメル、あなたに会う度に少しずつ強くなっていける気がするの。


・・・雨、やまないね。

ご、ごめんなさいっ。
あなたのせいじゃないよ。
メルね、雨が降ると悲しいお話を思い出しちゃうんだ。

えっ、いいの?
・・・うん、わかった、話すね。

ある冒険好きの男の人が雪山に登ってね、あと少しで頂上という時に、突然吹雪になって、その人は道に迷って力尽きてしまったんだって。
でも、その人は死ななかったの。介抱してくれた人がいたんだ。
男の人が気づくと、ひとりの美しい女の人が心配そうに覗き込んでいたの。
ひと目惚れした男の人は彼女を自分の村に連れて帰ろうとしたけど、その人はただ悲しそうに首を横に振るだけだった。
何度言っても自分に付いてきてくれそうにないその人を諦めて、男の人は山を降りたんだって。
一度も後ろを振り返らずに。
でもね、その女の人も男の人のことが好きだったんだ。
彼の背中を追って山を降り、やっと後ろ姿を見つけて名前を呼んだ時、急に雨が降り出した。
男の人は自分の名を呼ばれて振り返り、女の人が追いかけてきてくれたとわかって大喜びで駆け寄った。
でも、彼の手が彼女に届くことはなかったの。
女の人は雪の精だったの。
激しい雨に打たれて、あっという間に消えてしまった。
男の人に笑顔だけ残して・・・。
それから雨はすぐにあがって、女の人が消えたところから虹ができたんだって。
虹はおっきくて、雪山に続いていた。
男の人は虹を追っていけば女の人に逢えるような気がして、どんどん追いかけて、そしてとうとう村には戻らなかった、そんなお話なの。

メル達の星では虹は幸運の前触れだって言われているから、みんなの言う通り、このお話のふたりはきっと幸せになってるって、そう思いたいんだけど、ダメなの。
男の人はどうして女の人に付いてきてくれない理由を聞かなかったの、どうして彼女の気持ちをもっとよく考えなかったのかなって思ってね。

メルだったらせっかく出逢えた『たったひとりの一番大切な人』をひとりで残したりしないよ。
その人が付いてきてくれないんなら、メルがその人に付いていく。
だって、『たったひとりの人』なんだよ。
その人を無くしてそれから普通に生きていくなんてできないもん。

メルは見つけたの。
『たったひとりの人』
そう、あなただよ。
これからどんなに時間が経っても、どんなに月日が流れても、この気持ちは変わらない。

だから教えて。
メルはあなたの『たったひとりの人』になれる?


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雨降りデートシリーズ第八弾です。
トロワ未プレイの為、成長前のメルちゃんです。
火龍族のメルは、実は水龍族のパスハより気性が激しいんじゃないかって思います。

2003.2.4


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