降り出してきちまったな。
濡れるぞ、俺のコートの中に入るといい。
あっちで雨宿りするとしよう。
どうした?
ああ、すまん。
俺に歩幅を合わせるのは無理というもんだな。
・・・お前はそんな小さな身体で良く頑張っていると思うぞ。
はは、何を突然と思ったろうな。
だが、俺の正直な感想だ。
お前は外見に似合わぬ強い精神の持ち主だ。
俺が言うんだから間違いない。
自信を持っていいぞ。
・・・ここなら濡れんだろう。
おい、もういいぞ、コートから出ても。
どうした?
何莫迦なことを言っているんだ。
俺のコートから出たくないなど。
全く、お前はわからんやつだな。
大人かと思えば子供で、しっかりしているかと思えばとんでもないことをやらかす。
俺は不安なんだ。
お前が何かやらかしてないか、・・・困っていないか。
俺がまだ子供だった頃の話だ。
近所の子供らとかくれんぼをしていて、俺がオニだった。
大方は探し当てたが、ひとりだけ見つからない。
やがて、雨も降り出してきた。
俺はみんなを家に帰し、雨の中を探し続けた。
何度も名前を呼んで走り回り、それでも見つからなくて、大人を呼びに行こうとしていた時、
ふと覗いた廃材置き場の隙間にその子はいた。
こちらの苦労も知らず、すやすやと寝息をたててな。
・・・俺は、お前を見てるとあの時の気持ちを思い出す。
雨の中心細く思っているんじゃないか、誰も探しに来てくれなくて泣いてるんじゃないか。
結局の所、お前は安全なところにいて、こちらの心配を余所に楽しそうに笑っているんだとしても、俺は・・・。
俺はお前の笑っている姿を見ていたい。
俺に心配をさせないでくれ。
俺の傍を離れないで欲しいんだ。
お前を守るのは俺ひとり、そう言っても構わないか?
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雨降りデートシリーズ第七弾です。
ヴィクトール様、近所の子供の中でもリーダー格だったでしょうね。
頼りになる兄貴が齢を重ねて厚みを増し、立派な大人になりました。(^^)
でも少年の心を無くしたわけではなさそう。いいキャラですね。
2003.2.4
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