無題 ☆ アンジェリーク Special・その後 ☆

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1☆スウィートエンディングのその先は

 心を通わせたふたりは見つめ合ったまま動かない。

えっと、何か言わなくっちゃ。何か・・・
「・・・あの」
「なんだ?」
「えっと、あの・・・お召し物、暑くないですか?」
「これか?暑いというより、重い」
「・・・・じゃあ、ずっと着ていらっしゃらなくても・・・」
「そうだな」
 えっ?!何?!ちょっと、クラヴィス様、何するのー?・・・あ、そっかぁ。ロ−ブの下に服は着てらっしゃるよね。とーぜん。もぉ!顔が火照っちゃう。あ、そうだ。何か飲み物。
「あ、あの、飲み物お持ちしますね」
 えっと、たしかアイリッシュ・カフェがあったはず・・・
「キャッ!」
 何かにつまずいた!クラヴィス様のロ−ブ?た、倒れるー!あれ?大丈夫みたい。・・・・・!気が付くとクラヴィス様の腕の中。以外と逞しい。
「すみません・・・」
 見上げると紫色の瞳。なんて優しい・・・。こんな目をされる方だったんだ。
「大丈夫か?」
「はいっ!」
「・・・お前はやわらかいな・・・。女性というのは皆こういうものか」
「くすっ。そりゃ、男性よりは、そうじゃないんですか」
 言いながら、簡易キッチンに向かう。あ、あった!アイリッシュ・カフェ。美味しそうに飲んでらっしゃる。よかったー。あれっ?もうお帰りになるのかな?
「もう少し一緒にいたいのだが、そうもしておれぬのでな」
「なにかご用事があるんですか」
「女王陛下に報告せねばなるまい」
 あっ!そうだ。女王試験の途中だったんだ。
「あの、わたしも行きます」
「いや。私ひとりでいい。それより、もう一度だけ聞くが、本当に良いのだな?女王の座を諦めると?」
「はいっ!」
「私は、この手を離さないで良いのだな?」
「はいっ!クラヴィス様。決して離さないで下さいね」
「フッ。では行って来る。・・・そんな顔をするな。大丈夫だ。大騒ぎになるだろうが、お前は心配しなくていい」
 大丈夫?そう。大丈夫ね。クラヴィス様がそうおっしゃるんだもん。何か、すっごく大きな手に包まれてるみたい。気持ちいいな。


2☆報告

 謁見の間で、女王と補佐官。それにクラヴィスの三人が向かい合ってる。

「あなたが訪ねて来るなんて、珍しいことですね。何かあったのですか?クラヴィス」
「陛下、女王候補のことで申し上げることがあります」
「女王候補・・・。二人とも立派にやってるようですが、何か?」
「アンジェリークが候補を降りたいと申しております」
「何ですって?まさか、アンジェリークが?」
「いいのです。ディア。そう。それをあなたが言いにきたということは、あの子は女王としてより、あなたと共に生きることを選んだのですね」
「陛下?何を?まさか。クラヴィス?」
「はい。女王陛下」
「・・・そうか。それは安心だ」
 女王陛下の思わぬ言葉に、ディアもクラヴィスも驚いて陛下の顔をのぞき込んだ。ヴェールで隠された表情は伺い知れ無かったが、口元は確かに笑っていた。
「あなたとジュリアスは、本当に長い間守護聖としての務めを果たしてくれた。疲れもするであろう。ジュリアスも言葉には出さずとも、その疲労はたいへんなものであろう」
「あのものは、私と違って強さがある。私などと一緒になさってはなりません」
「クラヴィス!【私など】と言うものではありません。それでは、あなたを選んだアンジェリークが可哀想です。あの子が諦めたものの大きさを考えてごらんなさい。あなたはあの子にとってそれと同じ、いえ、それより大きな存在なのですよ。」
 一気に言い終えた女王は、また優しい口調に戻って話しを続けた。
「私は心配だったのです。あなたがどんどん心を閉ざしていくのが。あなた自身が闇に沈み込んでしまうのではないかと思えたほどです。でも、この女王試験が始まってからあなたは変わりましたね。こんなにもあなたを変えたのがアンジェリークなら、あの子は
あなたにとってかけがえのない人。幸せにおなりなさい、クラヴィス」
「ありがとうございます。では、女王候補は・・・」
「ロザリアひとり・・・。明日、彼女と全守護聖を集めて話しをしましょう」
「今日中に手紙を。お願いね、ディア」
「はい。陛下。・・・アンジェリークといつまでもお幸せにね。クラヴィス」


3☆理由

 謁見の間の扉前でディアがアンジェリークを見つけ、嬉しそうに駆け寄る。

「ようこそ。女王陛下がお待ちですよ」
「あの、ディア様、その、怒ってらっしゃいませんでした?」
「まさか。大丈夫ですよ。さ、中にお入りなさい」
 ディア様も大丈夫っておっしゃるんだし、さぁ、アンジェリーク、勇気を出すのよ。クラヴィス様のためにも。
「おお、アンジェリーク。こんなに朝早く、すみませんでした」
「おはようございます。女王陛下」
「おはよう。早速ですが、昨日、クラヴィスからあなたのことを聞きました。女王候補を降りたいと?」
「はい」
「それは何故ですか?」
「はい。あの、わたし、クラヴィス様が好きになってしまいました。女王候補としてすべての守護聖様たちと平等に接しないといけないのに、ただ一人の方に心を奪われてしまいました。このまま女王試験を続けたら、ほかの守護聖様にも、エリューシオンの民にも迷惑がかかります。それはいけないと思いました。だからです」
「ふふふ・・・。正直な答えですね。よかろう。認めましょう」
「えっ?!本当ですか?女王陛下」
「最近、クラヴィスは変わりました。穏やかな優しい目をするようになったのです。それはあなたがいたからなのですね。・・・クラヴィスを頼みます」
「はいっ!女王陛下」
「陛下、クラヴィスが来たようですわ」
 わっ!クラヴィス様。なんだか今お会いするのは恥ずかしいわ。
「おはようございます」
「おはよう。クラヴィス。今アンジェリークの気持ちを確かめたところです」
 やだ。こっちを見てらっしゃる。うわぁ、恥ずかしい!
「アンジェリークの女王試験降板を認めましょう」
「ありがとうございます」
「あとしばらくすると、ロザリアと守護聖たちがやってきます。皆が揃ったところで女王試験終了を告げることになる。・・・本当に良いのですね?」
「はいっ!」
「よい返事です。・・・ディア、もう時間かしらね」
「ええ。陛下」
 あぁ、ドキドキする。でも、クラヴィス様も一緒だし・・・。
「どうした?ずっと私の後ろに隠れているのか?」
「えっ?あっ、すみません!」
 やだ!わたしったら、いつの間にかクラヴィス様にしがみついていたんだわ。ロザリア達が来るんだもん。ちゃんとしなきゃ。


4☆仲間

 九人の守護聖と二人の女王候補が並びそろって。

「今日特別に集まってもらったのは理由があります。女王陛下よりお話があります」
「皆、朝早く呼び立ててすまない。実は、女王試験を終了することになった」
「どういうことですか?」
「ジュリアス。陛下のお話はまだ済んでませんよ」
「はい。失礼いたしました」
「アンジェリーク、こちらへ」
 足が震える。でもいかなくっちゃ。
「クラヴィス、こちらへ。アンジェリークの手をおとりなさい」
「アンジェリークの女王候補を降りたいとの願いを聞き届けました。理由は見ての通りです。・・・私はこの二人を祝福します。皆はどうであろう?」
 ああ、クラヴィス様の後ろに隠れてしまいたい。誰も認めてくれなかったらどうしよう・・・。ふと視線を感じて見上げると、優しい紫の瞳が【大丈夫】って言っていた。うん。大丈夫!・・・あ、リュミエール様!
「おめでとうございます。お二人はとてもお似合いですよ」
「ありがとうございます!リュミエール様」
「なーんだ。最近みょうにキレイになったと思ったらこーゆーことだったワケ?オメデト」
「アンジェリーク。君だったら素敵な女王になると思ってたけど、そうやってクラヴィス様と一緒にいる姿も素敵だよ。おめでとう」
「よぉ!お嬢ちゃん。おっと、これはもう言えないな。何てったって、本物の恋を知った大人の女性になったんだからな。なかなかお似合いじゃないか。幸せになれよ」
「あの、ぼくね。何だかとっても幸せな気分だよ。だって、大好きなアンジェリークが幸せになるんだもん。クラヴィス様とずっと仲良くね」
「えーと、私も何だか嬉しいですよ。あなたがたがねぇ。いやー、ちっとも気づきませんでしたよー。本当におめでとうございます」
「まったく、あんたって子は。でも、いいのよ。女王になるのは最初から私だって決まっていたんですもの。あんたが途中で抜けようと私には関係のないことだわ。でもね、これだけは覚えていて。あんたは結構いいライバルだったわ。絶対幸せにおなりなさいよね」
「ありがとう、ロザリア」
「ったく!しょーがねーなぁ。途中で止めちまうなんてよぉ。ちぇっ!クラヴィス、ぜーったいに幸せにしてやってくれよ!こいつ結構気に入ってたんだからよぉ!」
「お前に言われるまでもない、ゼフェル」
「クラヴィス」
「なんだ、ジュリアス」
「お前、女王候補に手を出したのか」
「ま、有り体に言えばそうだな」
「・・・・・。アンジェリーク、お前はこの男を理解できるのか?」
「理解っていうのはちょっと違う気がします。なんていうのか、そばにいらっしゃることが嬉しいんです」
「ほお。良い答えだな。クラヴィス、お前は幸せになれ。アンジェリークと一緒なら可能だろう」
「では、ロザリアの女王決定ということで、皆異存はないな。ならば、あと少し働いてもらわねばなるまい。ディア、フェリシアの建物の数はいくつか?」
「60ですわ、陛下」
「そう。ロザリア、今からそなたに私の力を贈る。そなたはこの場で必要なだけ育成を頼んで、中央の島まで建物を建てるのです。わかりましたね」
「はい。女王陛下。では、ジュリアス様、育成をたくさんお願いしますわ」
「たくさん育成するのだな。わかった」
「オリヴィエ様、育成をたくさんお願いします。オスカー様、育成を・・・・ランディ様、・・・・・・・・・・・・・。クラヴィス様、育成を少しお願いいたします」
「よかろう。贈ってやろう」
「・・・よろしいか?ロザリア」
「はい。女王陛下」
「では、守護聖たちは星の間へ。私たちはこちらで見守っていましょう」
 わあ!はじまったみたい。フェリシアにどんどん建物が建っていくわ。すごーい。
ジュリアス様のプール付き豪邸が二軒も。オリヴィエ様のはドーム型かな。これも二軒。
オスカー様のお家は重厚ね。ランディ様のはテント?リュミエール様のお家って可愛い。
マルセル様のはガーデニング向きね。ルヴァ様のお家って学校みたい。ゼフェル様のはロボットが住んでそう。あ、あと一つで中央の島だわ。クラヴィス様のお力でどうぞお家が建ちますように。あ、ついに到着!
「おめでとう!ロザリア!」
「おめでとう!よくやりとげましたね」
「ありがとうございます。ディア様、アンジェリーク」
「ロザリア、よくやった。では、こちらへ」


5☆内緒事

「おかえりなさい、ロザリア。あれ?女王陛下とディア様は?」
「・・・・私に託されて行ってしまわれたわ」
「そんな・・・。クラヴィス様、女王陛下はもうお戻りにならないのかしら?」
「そういうことも考えられる。死にゆく宇宙を閉じるにはかなりの力が必要だ。女王といえど、そう簡単にできる仕事ではないからな」
「そうだな、クラヴィス。それでは、三日後に新女王の即位式を執り行うことにする。よいな、ロザリア」
「はい。ジュリアス様」
「それまでは、二人とも女王候補ということで、特別寮に留まってもらう。ロザリアには女王の仕事について学んでもらわねばならない。アンジェリークはロザリアの補佐をして欲しい。今だけのことだがな。他の者は聖地へ移る準備をするように。」
 それからは、もうたいへん。ロザリアはジュリアス様がつきっきりで教えてらっしゃるし、女王陛下がいらっしゃらなくても民の望みがなくなるわけじゃないから、ひとつひとつ守護聖様に伝えて、引っ越しの準備もしなくちゃいけないし、あーあ、クラヴィス様と会う時間もないわ。ちょっと淋しいな。
『ピンポーン』
 こんなに夜遅く誰かしら?ひょっとしてクラヴィス様?・・・あ、ロザリア!
「どうしたの?こんなに夜遅く」
「やっとジュリアス様から解放されたのよ。女王の仕事って気が遠くなるほどあるのよ。
あんたじゃ務まらなかったわね。きっと。・・・ちがうのよ。そんなこと言いに来たんじゃないの。ねぇ、あんた、この先どうする気なの?」
「どうするって?」
「クラヴィス様とのことよ。あんたはどうしたいの?」
「わたしは一緒にいたいわ。ずっと」
「ふーん。じゃ、聖地についたらどうするの?部外者は立入禁止よ。家に帰るの?」
「クラヴィス様のところにいたい・・・」
「何言ってんのよ!そんな不道徳なことは許しません!・・・あんたねぇ、結婚しなさい」
「えっ?!」
「結婚するのよ!クラヴィス様の妻になるの!そうしたら堂々と一緒に住めるじゃない」
「・・・・・」
「嫌なの?」
「まさか!そんなわけないけど、クラヴィス様が何とおっしゃるか」
「莫迦ねぇ。クラヴィス様には内緒にしとくのよ」
「ええーっ?!」
「ジュリアス様とも相談したんだけど、あの方の性格からいって、絶対言わないほうが上手くいくって」
「そんなぁ。いきなり押し掛けても’帰れ’って言われるに決まってる」
「誰がいきなりなんて言った?ちゃんと式をあげるのよ。女王の即位式のあとでね」
「ロザリア・・・」
「ステキじゃない?女王としての初仕事が結婚式なんて」
「ロザリア・・・。ありがとう」
「じゃ、決まり。忙しくなるわ。クラヴィス様以外の守護聖様にはお教えしなくっちゃね。協力してもらいましょ。あ、そうだ。花嫁を前にして腹をくくれないような男なら、そっちからふっちゃいなさいよ。じゃあね」
 結婚!わたしが?クラヴィス様と?あーん!ドキドキして眠れそうにないわ。明日はもっと忙しくなるのに・・・。


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