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6☆準備

 翌日は目の回るような忙しさだった。朝一で占いの館に行ってサラさんに占いしてもらって(だって不安だったんだもの。うふっ。大丈夫)、ロザリアと少しだけ話しをして、守護聖様に育成のお願いをして、それから衣装合わせ!真っ白なウェディングドレス!ロザリア、あなたって何ていい人!あなたが時期女王でよかった。部屋の片づけもして、気が付くともうお昼。えっと、お昼はどうしよっかな。クラヴィス様のところへ行こうかしら。そうしよっと。
「クラヴィス様」
「アンジェリークか。女王補佐の役目、ごくろうだな。もう片づけはすんだのか?」
「はい。かばん一個ですんじゃいました。クラヴィス様の方はもうおすみですか?」
「私の私物と言えばこの水晶球くらいなものだからな。それより何か用だったのではないのか?」
「はい。あのー、お昼をご一緒しませんか?」
「ああ、もうそんな時間か。食事を誰かと共にするのは久しぶりだな。よかろう、食堂へいくか?」
「はいっ!」
「では行こう」
 廊下を歩いていると、珍しく小走りで駆けてらっしゃるルヴァ様を発見。
「はぁ、はぁ、段ボール、段ボールっと・・・」
「こんにちは、ルヴァ様。どうかなさったんですか?」
「あー、こんにちは。はぁ。本を詰めるのにですねー、段ボール箱が足らなくなっちゃったんですよー」
「ルヴァ、この女王試験の間にどの位の本を増やしたのだ?」
「えーと、私にもわかりませんねぇ。そういえば、クラヴィス、こっちへ来るときに手伝っていただいたんでしたねー」
「・・・しかたがない。昼から手伝ってやろう」
「ほんとうですか?いやーうれしいなー。実を言うと、途方に暮れてたんですよー」
 このお二人って仲がいいのかしら。少なくとも悪くはなさそうね。
「ルヴァ様もお昼ご一緒にいかがですか」
「あっ、もうそんな時間だったんですね。でも遠慮しときますよー。お邪魔しちゃ悪いですからね」
「・・・だそうだ」
「くすっ。じゃ、行きましょう、クラヴィス様」
「うむ。では後でな、ルヴァ」
「お待ちしてますよー」
 楽しいお食事の時間が終わって、それからはもう、何が何だかわからないくらい忙しかった。即位式の準備、結婚式の準備、守護聖様たちとの打ち合わせ・・・。
「はぁい、アンジェリーク。ちょっといいかな?」
「あっ、オリヴィエ様。なんでしょうか?」
「ちょっとドレス見せてね。やーね。貸して、なんて言わないからさ。私が着れるわけないじゃん。ふぅん。キレイね。OK。わかった」
「???何がわかったんですか?」
「メ・イ・ク。アンジェリークってば口紅一本も持ってないでしょ。まかせといて。私が宇宙一の花嫁に仕上げてあ・げ・る」
「あ、ありがとうございます。オリヴィエ様」
 あー!いよいよ明日なんだわ。ロザリアの即位式と、わたしの結婚式・・・。ううん。
不安なんか感じてる暇はないのよ、アンジェリーク。聖地への引っ越しもしなくちゃいけないし、明日は、明日は・・・・。あーん!もう!なに考えてるのかしら、わたしってば。
クラヴィス様の様子見てこようかな。そうしよっと。


7☆明日は

「クラヴィス様」
「アンジェリークか。夜遅くまでごくろうなことだな」
「あー、アンジェリーク。お陰で助かりましたよー。やっと済みました。今聖地便に乗せたところなんです。これで明日は手荷物ひとつで・・・!あー!大変な物を忘れていました!惑星儀も運んでもらわないといけなかったんです!聖地便さーん!待って下さーい!」
「クスクス・・・。ルヴァ様ったら」
「いよいよ明日だな」
 どきっ!まさか内緒事がばれちゃったの?
「ロザリアが女王になり、お前は女王候補からただの人に戻る。ただ人は聖地に住めぬ。・・・もし、お前さえ良ければだが・・・」
「聖地便さん、こっちです。はい、この惑星儀。これをお願いしますね。はぁ、良かった、間に合ったー。これで明日は・・・。あれ?クラヴィス、アンジェリーク、どうかなさったんですかー?」
「あ、ルヴァ様。えっと、クラヴィス様、お話の続き、明日でもいいですか?」
「そうだな。このような時に言うべき事ではなかったな。明日にしよう」
 ごめんなさい、クラヴィス様。何を言いかけていたかわかっていると思います。明日は結婚式なんですよ。ここで打ち明けられたら・・・。ううん。だめ。
「もう夜も遅い。部屋まで送ろう。・・・ルヴァがな、妙なことを延々と話すのだ」
「妙な?どんなお話しをされたんですか?」
「最初は即位式の話しだった。それから、いろいろな式典の話しになって、最期には結婚式の式次第について事細かに話し出した・・・。お陰ですぐにでも式に出られるような気がしてきた・・・。フッ、冗談だ」
「クラヴィス様・・・」
「さぁ、着いたぞ。ゆっくり休むのだな。明日も忙しいぞ」
「クラヴィス様」
「ん?」
「クラヴィス様、わたし、不安なんです」
「アンジェリーク・・・」
 クラヴィス様?あ・・・・・・・・。このまま時が止まればいい。クラヴィス様の胸、クラヴィス様の腕、クラヴィス様の唇・・・。人の声がする。あ、ロザリアも帰ってきたんだ。
「あの、えっと、ロザリアも帰ってきたみたいだし、あの、離して下さい」
「・・・? ああ、そうだな」
「おやすみなさい、クラヴィス様」
「おやすみ」


8☆即位式

 謁見の間に全守護聖とロザリアが並んでいる。アンジェリークは少し離れて目立たないところに控えている。

「女王と守護聖の名において、ここに、試験と終了と、新たなる女王の誕生を宣言する」
 はじまったわ!新女王の誕生かぁ。ロザリア・・・、いえ、もう陛下ってお呼びしなくちゃいけないのね、とってもきれいだわ。あっ!女王陛下とディア様!よかったぁ!ご無事だったのね。・・・えっ?!今わたしの名前をお呼びになった?
「はいっ!」
「アンジェリーク、少し見ぬ間に綺麗になったな」
「女王陛下、ディア様、よくご無事で」
「うむ。もしロザリアとそなたさえ良ければ、しばらくのあいだ補佐官として女王の仕事を手伝ってもらいたいのだが、どうであろう、ロザリア?」
「それは、ありがたいお言葉です」
「そうか。アンジェリークは?」
「あの、はいっ!わたしでよければよろこんで!」
「これで安心だな。では、もう会うこともなかろう・・・。皆、新しい宇宙でがんばって欲しい・・・」
 あ、女王陛下とディア様がまたいなくなられた・・・。もうお会いできないのかしら。でも、補佐官?しばらくのあいだって、どれくらい?あら、こうして女王の座のそばに立っていると、クラヴィス様のすぐ近くね。クラヴィス様・・・。もうすぐ結婚式。
なんか変だわ。・・・。守護聖様達がお祝いの口上を述べられてるっていうのに、ちっとも頭に入ってこない・・・。


9☆結婚式

「皆に新女王からの最初の仕事を申しつける。これより、闇の守護聖・クラヴィスと、アンジェリーク・リモージュの結婚式を執り行う。皆、用意するように」
 クラヴィス様が口を開く前に皆はちりぢりに駆けていき、その場には女王とクラヴィスだけが残された。
「なるほど、知らぬは私のみ、というわけか・・・」
「なにか異存はありますか?クラヴィス」
「当人に知らせないというのは、どういうことかと思うが」
「アンジェリークは知ってました」
「そのようだな」
「クラヴィス、知っていたらどうしてました?」
「フッ・・・。たしかに逃げ出していたかもしれぬ。そういうわけなのだな」
「そういうわけです」
「それなら私は、ただ感謝して受け入れよう。アンジェリークが承知ならそれでいい」
「あの子があなたを選んだのがわかるような気がします。信頼しているのね」
「信頼?よくはわからぬが、そうかもしれぬ」
「さて、用意が出来たようです。あとは花嫁が来るのをまつだけ」
「あのーお話中すみません。よろしいですか?僭越ながら、私が司祭をつとめさせていただきます。えーと、楽隊の方、用意はいいですかぁ?オリヴィエがまだ?ああ、来ましたね。花嫁さんも到着したようです。では、クラヴィス、こちらで花嫁さんを迎えてくださいねー。」
「ルヴァ、昨日の講釈はこのためだったのだな」
「さ、さぁて、何のことでしょー。あ、いいですか?では、オリヴィエ、リュミエール、演奏をお願いしますね」

 扉のこちら側

「さあて、行くぞ」
「はい。あの、ジュリアス様が花嫁の父役なんですか?」
「お前に父と呼ばれる筋合いはないぞ。しかし、悪い役回りではないな。本当に綺麗だぞ」
「あ、ありがとうございます」
 扉を開けると、拍手で迎えてくれたのはランディ様、ゼフェル様、マルセル様の三人。
ふふっ、この三人は聖歌隊になる予定だったのに、ゼフェル様の大反対で取りやめになっちゃったのよね。『おめー自分の結婚式ぶち壊すつもりかよ。いいか、オレに歌わせようなんて金輪際思うんじゃないぜ』だって。俺だけ役が無い、なんてぼやいてたオスカー様は、カメラマンね。オリヴィエ様とリュミエール様は楽器演奏。ルヴァ様が司祭様。
そして、わたしの最愛の夫になる人が待ってくれてる。わたしって宇宙一の花嫁だわ。
「汝、この男を夫とし、健やかなるときも、病めるときも、苦楽を共にし、死が二人を分かつまで添い遂げることを誓いますか?」
「はい、誓います」

                 Fin



とらまるさんに差し上げた、初めて書いたアンジェものの二次創作です。
アンジェリークSpecialで初めてのLLEDのお相手はクラヴィス様。この頃は”二次創作”という言葉も知らず、無我夢中で書いたお話は今では恥ずかしくて読み返せませんが、 記念すべき(?)第一作ということと、とらまるさんが作ってくださった壁紙が素晴らしく、自慢したい気持ちもあって、こちらに再掲載いたします。
舌足らずで稚拙な文章を最後までお読みくださってありがとうございました。

☆とらまるさんが付けてくださったコメント☆

このお話はまゆさんが天に召された塩沢さんの追悼の意を込めてお書きになりました。
暖かくて読んだ後に幸せな気持ちになるお話です。
みなさまも読んだ後に塩沢@クラヴィスさまが心安らかである事を私たちと一緒に願っていただければうれしいです。
そしてまゆさん、素敵なお話を本当にありがとう。
私のHPに掲載させてもらえて光栄です。これからも宜しくネ。
イラストを載せる事も検討しましたが、時間の関係上無理があったのと素敵なお話なので何もつけない方が良いと感じたのであえてこのまま掲載しました。
とらまる自信はクラヴィスさまをモチ−フにした壁紙を作成して塩沢@クラヴィスさまに捧げたいと思います。

2000.5.16
2000.08.02(掲載)
2004.12.18(再掲載)


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