第1話「結成!シルクファイブ」

 パソコン通信。それは、現代のコミュニケーション手段の一つである。
 だが、人々を便利にするための、その通信網を悪用しようとする、邪悪な目的を持つ者がいた。
 これは、そんな悪と闘うために立ち上がった、勇者達の物語である。


 ある夏の蒸し暑い夜、しあわせ町児童公民館に、5人の若者が集まった。彼らは、パソコン通信中に、同じメッセージを受け取り、その指令どおりにこの児童公民館の館長室へとやって来たのである。
「じゃあ、皆、シルクネットの会員なわけ?」
「そのようだな。」
「女2人に男が3人か・・・・・。俺たちだけがあの指令を見たのか。」
「あれは、絶対に文書保存できないような、特殊なプログラムを使っていたみたいよ。それを特定の人物だけに送るってのは、かなり難しい作業のはず。」
「でも、選ばれた勇者ってのは、何なんだろう。それが知りたくて、僕は来たんだ。お、そろそろ、指定された時間だ。」
 その時、突然、もう一人の人物が現れた。その白衣を着た中年の男は、5人を見回してこう言った。
「やあ、よく来てくれた君達。君達は、地球の平和を守る勇者として選ばれたのだ。」

* * * * * * * * * *

 白衣の男は、5人を地下の秘密基地に案内した。そこは、児童公民館の地下とも思えないほど広く、コンピュータなどの機材が壁を埋め尽くしていた。
「君達をここに集めたのは、わしだ。皆、初対面だろうが、通信では、よく知っている仲間だ。全会員の中から、わしがこのコンピュータで適任者を選んだのだ。私は鈴木博士。普段は、公民館の館長だが、この基地では、博士、と呼んでもらおう。さ、君達、自己紹介がまだじゃないか。早くはじめたまえ。全てはそれからだ。ただし、ここでは、皆、ハンドルネームを使いたまえよ。」
「じゃ、僕から。僕は『紅の疾風(くれないのはやて)』だ。プロのレーサーだ。」
「俺は、『黒海(こっかい)』。東都大学の学生さ。」
「あ、あたしは『あおば』よ。高校生なの。」
「私は『緑雨堂(りょくうどう)』です。コンピュータ雑誌のライターです。」
「『しらかば』。拳法道場の師範。」
 自己紹介が終わると、博士は、並んで立つ5人の前を行ったり来たりしながら、話しはじめた。
「君達も知ってのとおり、シルクネットは、全国に膨大な会員数を持つ、パソコン通信のネットで、その運営の円滑さは、他に類をみないほどだ。だが、そのシルクを狙う奴が現れたのだ。奴等の規模も正体もまだわからぬが、シルクネットを自分たちの手中に納め、世界征服をたくらもうとしているらしい。わしは、そんな邪悪なやつらが現れた時のために、何年も前から、この基地を作り、準備を進めていたのだ。シルクネットを守るため、世界の平和を守るため、君達の協力が必要なのだ。どうか、仲間になって欲しい。」
 博士は、話し終えると、5人に頭を下げた。
「博士、頭をあげてください。僕は、博士と一緒に闘います。」
「ま、人助けってのもたまにはいいかもな。」
「なんかわかんないけど、楽しそうじゃん。」
「この基地のシステムを使わせてもらえるなら、協力しましょう。」
「わかった。闘おう。」
「ありがとう。共に闘ってくれるか。さすがわしが選んだだけのことはある。さ、それでは、君達に、このブレスレットを渡そう。これは、特殊軽合金で作られている。さまざまな機能があるが、それは追って話そう。では、紅の疾風君、君には、リーダーになってもらおう。」
「はいっ、了解。」
「では、ブレスレットを装着したまえ。」
 5人の若者は、特殊軽合金のブレスレットを左手首に着け、両手を胸の前でクロスした。5色の光がきらめき、瞬時にコンバットスーツ姿に変身した。
「シルクレッド!」
「シルクブラック!」
「シルクブルー!」
「シルクグリーン!」
「シルクホワイト!」
「5人揃って、我ら、通信戦隊シルクファイブ!!」

 こうして、シルクネットを守るため、通信戦隊シルクファイブが結成されたのである。
(第1話おわり)




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しあわせ町大バザール

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