第2話「邪悪な作戦を阻止せよ!」

 土曜の夜ともなると、シルクネットは、アクセスできずに、回線があくのを待つ会員が続出するほどの活気を見せる。会員は、皆、パソコン通信を生活に上手に取り入れ、楽しんでいるのだ。
 だが、最近、「ちょっと疲れた」「手がだるい」といった書き込みが目立つようになった。
 彼らは、仕事や家事などのせいだろうと、気にもとめていなかったのだが・・・・・・。

* * * * * * * * * *

「ツーツーツーツー」
 部屋で雑誌を読んでいた、紅の疾風は、ブレスレットから発する通信音に、はっ、とした。鈴木博士からの呼び出しだ。
「よし、初出動だ!腕がなるぜ!!」
 紅の疾風は、愛車でしあわせ町児童公民館へと急いだ。
 地下の秘密基地には、既に、4人が集まっていた。
「紅さん、おっそぉ〜い。リーダー失格よ。」
「仕方無いだろ、あおば。僕が一番遠くに住んでいるんだから。」
「でも、さすがプロのレーサーですね。普通じゃあと10分はかかりますよ。」
「まさか、正義の勇者がスピード違反したわけじゃぁないだろうな。」
「おい、博士が来たぞ。」
 鈴木博士は、中央にある、唯一ひじ掛けのある椅子に座ると、話しはじめた。
「奴等が動きはじめた。それも、巧妙な手口を使っておる。君達は、「生体電気」というのを知っておるかな。簡単に言えば、全ての生物が持っている生命の力だ。奴等は、その生体電気のエネルギーをシルクネットの会員から奪おうとしているのだ。」
「博士、ちょっと、待ってください。生体電気エネルギーを生物から取り出す方法、というのは、理論上、認められただけで、動物実験もまだのはずです。」
「ほう、黒海君、専攻の宇宙物理学以外の講義も受けているようだな。そうだ、学会では、まだ、実験もしていない。だが、我々の敵は、その方法を見つけたのだ。しかも、パソコン通信を使って、エネルギーを奪っているらしい。」
「一体どうやって?」
「シルクネットには、各界の著名人の会員もかなりいる。生体電気学の権威といわれる教授も会員だ。ハンドルネームは『satoru』さん、彼なら、エネルギーを取り出す技術を開発できるだろう。だが、教授は、最近行方不明となっている。」
「えっ、あの、satoruさんが、そんなすごい教授だったんですか!」
「最近、見かけないと思ったら・・・。」
「まさか、satoruさんが、敵の一味では・・・。」
「そんなことはないわ!文章を見れば人柄はわかるでしょ。自ら悪事に手を染めるような人じゃないわよ。ねえ、博士?」
「おそらく、誘拐され、無理やり協力させられているのだろう。そこで、諸君に、satoruさんを救出してもらいたい。」
「了解!」
「チェンジシルク!」
 瞬時にコンバットスーツに変身した5人は、出動した。

* * * * * * * * * *

 ここは、とあるインテリジェントビルの一室。椅子に縛りつけられた男が、必死に縄目を解こうとしている。そこへ、魔神獣、エネルゲーターがやってきた。
「逃げようとしても無駄だ。おまえにはもっと強力な、生体電気エネルギー採集装置を作ってもらわねばならんのだからな。」
「それは、できない。一度に奪うエネルギーの量が、これ以上増えれば、人は、急激に年を取ってしまう。」
「我らが総帥の崇高な目的のためだ。なんとしても作ってもらうぞ。女房と子供が可愛くないのか?」
 と、その時、
「そうはさせないぞ!!」
 5人の勇者が現れた。
「くらえ!目つぶしだ!!」
 閃光が、エネルゲーターの目をくらませている間に、satoruさんの縄をほどく。
「さぁ、ここは我々に任せて、早く逃げて。奥さんとお子さん達も、無事救出しました。」
「ありがとう。君達は一体・・・。」
「シルクネットの平和を守る、シルクファイブです。さ、早く。」
 satoruさんを連れ出し、安全な所へ逃がすと、エネルゲーターが追い掛けてきた。
「き、きさまら、よくも、邪魔しやがって・・・。何者だ!」
 ぴしっ、と、一列に並び、5人は、名乗りをあげた。
「シルクレッド!」
「シルクブラック!」
「シルクブルー!」
「シルクグリーン!」
「シルクホワイト!」
「5人揃って、我ら、通信戦隊シルクファイブ!!」
「シルクネットの会員の平和をおびやかす、エネルゲーター、我々が相手だ!」
「うぬ、こしゃくな・・・。」
 シルクファイブは、次々と、技を繰り出し、魔神獣を攻撃する。エネルゲーターがふらふらになったところで、5人は、合体技を出した。
「シルクパワーネット!」
「くそぅ、なんだこの網は、身動きがとれない。」
「今だ、必殺技、スーパーPowerクラッシュ!!」
「ぎえええぇ〜〜〜〜〜。」
 どっかーん!5色の炎が炸裂し、エネルゲーターは粉々に砕け散った。

 こうして、シルクネットは守られた。
 だが、敵は、また新たな作戦で、ネットをおびやかすだろう。
 彼らは闘う、シルクネットに平和が訪れる、その日まで。
 がんばれ、シルクファイブ、負けるな、我らのシルクファイブ!
(第2話おわり)




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