第14話「にせ物?本物?大混乱!」 前編 |
ここはシルクファイブの秘密基地、言わずと知れた、しあわせ町児童公民館の地下である。鈴木博士とシルクファイブのメンバーは、テーブルを囲んで話し合っている。 「カードにブレスレットのレプリカ、シルクバギーのミニチュア、シルクファイブ秘密手帳まであるなんて・・・・。」 「それと、さっき見つけたマスコット人形。」 「おまけにシルクファイブショーだろ。」 最近、街に、シルクファイブグッズが出回り始めたのである。販売している店の主人に聞くと、これは絶対にはやるからと、熱心に勧められ、仕入れたそうで、売れ行きは好調だそうだ。 「敵の仕業にしては変よね。」 「鈴木博士、本当に知らないんですか?まさか、これがシルクファイブの運営資金源じゃあないでしょうね。」 「わ、わしを疑うのか?知らぬと言ったら知らぬ!!」 「誰の仕業にしろ、明日のショーを見に行った方がよさそうだな。」 「シルクファイブの諸君、そうしてくれたまえ。」 「了解!!」 * * * * * * * * * *
もちろん、敵の組織も、このシルクファイブグッズの情報を手に入れていた。 「ゆ・許せぬ!!私の計画を邪魔するばかりではなく、このような物を社会にばらまき、子供の歓心を買おうとは。しかも、人気が出てきているというではないか!!」 「ははっ、本来、このような人気は、総帥が受けるべきもの。それを阻むシルクファイブ、決して許せませぬ。」 「ショーなど、成功させてなるものか。ぶちこわしてまいれ!!」 このように、敵は、シルクファイブがこれらのグッズを作ったと勘違いしているのであった。 * * * * * * * * * *
Mデパート屋上の特設会場。青空に春のそよ風が心地好い。観客が集まってきている。シルクファイブグッズを手にした子供もかなり見受けられる。 「へ〜、結構人気あるのね。」 「敵の姿は見えないようだけど。」 「警戒は怠るなよ。」 四方のスピーカーから、アナウンスの声が聞こえてきた。 「みなさま、大変お待たせしました。ただいまより、通信戦隊シルクファイブショーが始まります。」 そして、壇上に現れた司会進行役のお姉さんは・・・・。 「え、ええ〜〜!!」 マイクを手に、にこやかに登場したのは、『吉田もー』であった。 「みなさん、こんにちは〜!・・・・あれぇ、元気ないなあ、もう一度、こんにちは!」 「こんにちは〜〜〜!」 「は〜い、今日はシルクファイブのショーにこんなに大勢のお友達が集まってくれました。ショーの前にみんなにお願いがあります。みんないい子だから、守れるよね。」 シルクファイブの驚きをよそに、ショーを進めていく吉田もーであった。 * * * * * * * * * *
話は、半年前にさかのぼる。吉田もーは、シルクネットの平和を守って闘うシルクファイブの噂を聞きつけた。この暗いことばかりの多い世の中に、一筋の光を見た思いのしたもーは、持ち前の好奇心と実行力で、シルクファイブのことを調べてみたのである。 独自の調査の結果、彼女はこう結論を出した。「これは売れる」と。 さっそく、シルクファイブグッズを作り、自ら店を廻り、店主を説得して商品を並べてもらったのである。もちろん、つてを頼りに、子供向け雑誌に紹介してもらったり、近所の子供に頼んで、サクラになってもらって買いに行かせるなど、地道な努力が実を結び、ようやく、売れ行きが良くなってきたのだ。 こうして、天下のMデパートの屋上でショーを開くことができるまでに、人気がでてきたのである。 * * * * * * * * * *
「よし、このデパートだな。」 魔神獣が戦闘員を引き連れ、Mデパートにやってきた。 「おい、屋上へいくぞ!」 「ははっ!」 * * * * * * * * * *
テーマソングを歌い終わり、壇上に、魔神獣の着ぐるみの人が2人現れ、観客の子供達を脅している。と、そこにシルクファイブ、いや彼らに扮した5人が登場した。 『おい、魔神獣!子供たちから手を離せ!』 『このシルクファイブが、貴様等を倒してくれる!』 『ええい!ブルーモジュラーコードサンダーを受けてみろ。』 子供たちは大喜びである。 「ちょっと、あたし、あんなに太くないわよ。」 「でも、あのコンバットスーツ、かなり忠実に再現しているよな。」 そこへ、もう一匹、魔神獣が現れた。 「へえ、あいつよくできてるな。迫力あるじゃん。」 「でも、あんな魔神獣、見たことないわよね。」 「適当に作ったんだろ。」 「おや、なんか様子が変だぞ。」 なにやら、シルクファイブ役の人達がとまどっているようだ。もーさんも台本を見て首をかしげている。 「あ、あれはっ!」 そこに、もう一組、シルクファイブが現れたのだ! |
第14話「にせ物?本物?大混乱!」 後編 |
《ふはははは・・・、本物のシルクファイブは俺達だ。おい、魔神獣、子供を捕まえるのだ!》 なんと、新たに現れたシルクファイブは、魔神獣の味方という設定のようである。子供達は面白がり、わざと捕まる子供もいる。 それを見ていた元祖のシルクファイブは変な設定のショーだとは思ったが、そのまま続きを見ていた。 《よおし。こいつらは人質だ。やい、そこのシルクファイブ、武器を捨てろ!》 《ほら、早くおしよ。あたいらは、気が短いのさ。》 始めからいたシルクファイブは、逃げ腰になり、おろおろしている。子供達も、次第におびえはじめ、逃げ出す親子もいる。吉田もーさんの方を見ると、デパート側の責任者らしき人と口論しているようだ。 「おい、様子が変だ。ひょっとしてこれは・・・。」 元祖シルクファイブの5人は、急いで物陰に隠れて変身し、もーさんの所へと行った。 「我々は、本物のシルクファイブです。何かあったのですか。」 「ええっ!またシルクファイブが!!」 「落ち着いて下さい、もーさん、私達は本家本元、元祖シルクファイブです。」 「・・・・。本当に本物なの?ああよかった。大変なんです。ショーの最中に、勝手にあの魔神獣とシルクファイブが現れて、メチャクチャにしているの。」 「それでは、あれは予定していたことではないんですね。」 「もちろんです!あんなの私がやめさせてやるわ!」 舞台へ駆け寄ろうとするもーさんと押しとどめ、元祖シルクファイブが舞台へヒラリと登り、偽シルクファイブが驚いているスキに、子供達を救出した。 「貴様等は何物だ!我々が相手だ!」 《おおっ、お前達はシルクファイブ?そうか、予備がいたのか。》 「違う!我々が、本物のシルクファイブだ!」 「そうよ!こっちのシルクファイブは関係ないわ。」 「皆さんは怪我ありませんか、さあ、早く、逃げてください。」 『あ、あなた方は、本物の・・・。』 『ありがとう、でも、私達にも闘わせてください!!』 《ふん、面倒な。両方片付けてしまえばいいのさ、やっちまえ!》 こうして、3組のシルクファイブが入り乱れての闘いが始まった。 * * * * * * * * * *
しかし、3組とも、同じ姿であるため、元祖、真似、偽物の区別がつかず、闘いは混乱してしまっていた。 「おい、ブルー、早くモジュラーコードサンダーで、こいつをやっつけろ!」 『え、私、そんな武器持っていないわ。え〜い、けっとばしちゃえ!』 『おい、やめてくれ!僕は敵じゃない!』 「じゃあ、こいつか!!」 《オレは味方だ。》 「あ、そうか。すまん。」 《ばかめ、騙されおって。オレのパンチをおみまいしてやる。》 「う・・・・。こいつ!!」 《へへ、見てみろよ、かなりのダメージだぜ。》 「私は元祖シルクよ!2段キック!!」 『よし!3人掛かりで取り押さえろ!!』 『今だ!元祖シルク、やっつけてくれ。』 《わかったよ。ほ〜ら、このレーザー銃をおみまいしてやる。》 「きゃ〜、放して!私、本物よ!!」 《騙そうたってそうはいかないぜ、へっへっへ・・・。》 『おい、変だぞ、お前、にせ物か!』 「そこ、何しているんだ、早く放せ。」 《何だ、何だ、仲間はどこだ、お前はどっちだ?》 『え、あの、その・・・。』 《面倒だ、とにかくぶちのめせ!!》 『きゃ〜、助けて、こいつ、偽物よ〜〜〜!』 「そうか、くらえ!電光パンチ!」 「な、何をするんだ、偽物は、そっちだぞ。」 「すまん!よおし、お前だな。」 『キャー、助けて〜〜!!』 * * * * * * * * * *
敵の魔神獣は、もちろん、ただ手をこまねいてこの戦いを見ていたわけではない。しかし、魔神獣自身にも、自分の仲間と、本物、真似している奴等の区別がつかず、混乱していたのである。 「ええい!このままでは、わけがわからぬ。戦闘員よ、元に戻れ!!」 魔神獣の一声で、偽物は、瞬時に戦闘員の姿へと変身した。 「しめた!これで、楽に闘えるぞ。」 「さあ、皆さん、これ以上は危険です。逃げてください。」 こうして、ようやく迷うことなく闘えるようになったシルクファイブは、次々に戦闘員を倒し、残るは魔神獣だけとなった。 「く、くそう!ええい、これでも食らえ!」 魔神獣は必死に闘うが、チームワークのとれた5人の前に、次第にパワーダウンしてきた。 「よし、今だ、シルクパワーネット!」 「必殺!スーパーPowerクラッシュ!!」 「ぎえ〜〜〜〜〜〜〜」 どっかーーーん!!魔神獣は消え去った。 * * * * * * * * * *
闘いが終わると、吉田もーが、走ってやってきた。 「ありがとう、シルクファイブ。本物をこの目で見ることができて感激です。」 「もーさん、皆に怪我がなくて、よかった。ところで、シルクファイブグッズのことですが・・・・。」 「ええ、ええ!あなた方は、本物のスーパーヒーローよ!これからも私は、グッズを通してあなた方の応援をしていくわ、いいでしょ、ね、ね!!」 腕をむんずとつかまれて、ね、ね、と迫られたホワイトは、あまりの迫力に言葉につまってしまった。 「ああ、良かった。反対されるかと思って、心配してたの。これからは、シルクファイブ公認として、堂々と商業ベースにのせられるわ。よおし、急がなくっちゃ。じゃあね!」 吉田もーは、あきれる程の早さで駆け去っていった。 そして、後には、茫然と立ちつくすシルクファイブの姿があった。 (第14話おわり) |