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 ノッキングとプレイグニッション Knocking and preignition について

■ノッキング(Knocking)
 
 ガソリンエンジンの出力向上はノッキングとの闘いの歴史でもあった。
「ノッキングさえ出なければ壊れなかった」「ノッキングが出た為にパワーが頭打になった」の言葉は、ガソリンエンジンの限界がノッキングにあることを示している。そのガソリンの機関の大敵!ノッキングの影響を説明する。

 オットーサイクル(予混合火花着火)をとるガソリン機関では、あらかじめ空気と混合したガソリン(混合気)を圧縮する(断熱圧縮)。断熱圧縮され温度が上昇した混合気に火花着火する訳だから、急速に高温高圧となり未燃焼混合気(エンドガス)が自己着火をおこすことがある。
 この時の衝撃波は300m〜2000m/秒にも達し、燃焼室内に激しく衝突を繰り返し温度境界層をμmに
薄くする。薄くなった温度境界層を通して2000℃の燃焼熱がピストン、シリンダー等に急激に移動し溶損する。
 ノッキングやプレイグニッションを含めた「異常燃焼」をかつてはデトネーション(detonation)と表現していた。
ところが英語のdetonationには「異常」の意味は含まれていない。英語のdetonationとは火薬の正常な爆発(爆ごう)のことで、その燃焼速度は一番遅い黒色火薬でも1500m/sec、ニトログリセリンでは6000m/secもあり、この速い衝撃力で破壊する。
ノッキングによるエンジン燃焼室の破壊は、温度境界層の剥離による急激な熱移動によるもので火薬の爆発とは根本的に破壊原理は異なる。
(但し、米語のdetoneeshonは「超音速の衝撃波を伴う爆発燃焼」の意味を持つ)

 アルミ合金ピストンが2000℃にもなる燃焼熱に耐えられるのは、吸気毎に混合気(ガソリンの気化潜熱)に冷却された温度境界層の断熱による。

 ガソリン機関の熱効率には30%の壁が存在すると言われている。(小型ディーゼル機関は40%位)最も効率の良い4バルブDOHC機関でも28%くらいである。
 もしオクタン価120のガソリンが量産出来るとすれば、圧縮比13:1以上に上げることが出来35%を超える熱効率が得られ、CO2排出も減らせる筈だが、その高オクタン価ガソリン製造により多くのエネルギー消費があり、トータルのCO2排出量の低減は得られない。熱効率(CO2排出低減)の点でガソリンエンジンの未来は厳しい。

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