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 エンジンチューニングポイント
■エンジンチューニングポイント
ガソリンエンジンの角パーツを素材から見た要素を含めて、チューニングのポイントを解説する。
  1. シリンダーブロック

    シリンダーブロックの材料は、鋳鉄とアルミ合金鋳物の2種類があるが、ターボ車の多くが今でも鋳鉄ブロックを使用している。アルミブロックも殆どが鋳鉄ライナーを鋳込んで作られている。鋳鉄は一見古い素材のように思えるが、合金材料として多量の酸素(C)を含有するので、摺動性(潤滑性)が良くシリンダー材料として優れている。一般的には片状黒鉛(C)が析出したパーライト(鉄の結晶構造)地のFC鋳鉄(ねずみ鋳鉄)で作られているが、一部の高性能エンジンではより強度が高いバーミキュラー鋳鉄(芋虫状黒鉛鋳鉄)が用いられている。

  2. 鋳鉄ブロックの特性とチューニングの要点

    鋳鉄は鋳造時の残留応力のせいで時間と共に歪みが出てくる。この歪みは熱層歴を受けた時間にも左右される。また、砂型鋳造のため型ズレも生産段階では許容範囲内で許されている。

    ベテランチューナーは、解体屋で型ズレの無いブロックを探してきて、それを更に防水シートに包み1〜2年寝かせて(鋳物を枯らす)から使用している。そうして枯れたブロックをボーリング(ボアアップ)する時は、ダミーヘッドをヘッドガスケットをはさみ装着して、エンジン組立時と同様の応力をかけてからボーリングしている。(シリンダーヘッド装着時、シリンダーが真円筒となる)
    最近はスズキをはじめ日産の新エンジンもこの工法を採用している。さらなる完全真円を目指して、オイルパスに浸けてブロック温度をエンジン回転時と同じ温度まで上げてボーリング、ホーニング(回転砥石仕上げ)するチューナーも少なくない。シリンダーボーリングと並びブロックにクランクキャップを取り付けて、クランクシャフトのスラスト方向の真円をだすラインボーリングを実施する場合もある。
    どこまでやるかは、コストとエンジンチューナーとのコンセプトによるが、少なくともダミーヘッドボーリングまでは実施すべきと考える。

  3. シリンダーブロックの加工

     ブロック加工の第一段階は、鋳砂落としである。連続鋳造マシンで鋳造された生産エンジンのブロックは、ノックアウトマシン、サンドブラスト等で鋳砂を落とし洗浄されるが、生産エンジンとしては合格でもチューニングエンジンとしてはまだ残る鋳砂の脱落の危険性と、オイルの戻りが悪くなる問題がある。ベテランチューナーはリューターでブロック裏の鋳肌を磨き、徹底して鋳砂を落とし、高圧のスチームで長時間洗浄する。
     次なる加工はブロック-ヘッドのオイル穴、冷却水穴の整合性をガスケットに合わせるリューター加工であるが、生産エンジンの精度もかなり良くはなっていて大きな不整合は少なくなっている。しかし、砂型鋳造である限りは誤差は残る。
     最後にシリンダー最下部の面取りがある。ピストンは下死点でサイド方向に首を振る(サイドスラップ)この時、シリンダー最下部がシャープエッジであると、ピストンがかじり、大きな抵抗となりアブレッシブ磨耗を引き起こす。大体1Rくらいをリューターの手加工で面取りし、研磨して手で触って角がない事を確認する。このかじり抵抗を想像以上に大きく、かつてBMWのF2エンジンではコンロッドをロングタイプに変更して、短足ピストンを使い、首振りを減らして最高回転数を上げた程であった。


    「エピソード」

    日産のRB26(GTRのエンジン)はコンロッドの軸間長が126mmしかなく、136〜144mmのロングコンロッドが使えたL型エンジンに比べ、高回転ではかなり不利であった。2バルブSOHC、ターンフローの原始的?エンジンのL型が、チューニングしたエンジンでは、むしろRB26よりも高回転のレスポンスが良かったのは、このコンロッドの長さにあった。
    RB26はボンネット高さを下げる要求と、フロントドライブシャフトをオイルパンへ通す為、コンロッド長を短縮した。同じ要求をBMWはエンジンを傾斜させる事で解決した。レースの経験の差と言えるかも知れない。パーツメーカーのKレーシングがサブブロックを製作し、ブロックを下げたのも、ひとえにロングコンロッドを使う為である。この場合、エンジンマウントでエンジン位置を下げて搭載する。

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