思考原理の説明(16)
1)広辞苑によれば、
思考実験=現実の実験の一つの極限として、思考上だけで成立すべき実験。
一つの理論体系内での演繹推理の補助手段として用いる。
不確定性関係を説明した、ハイゼンベルグのガンマ線顕微鏡に関する思考実験が有名。
とあります。
主に、物理学などの自然科学の分野で用いられる思考手段だと思いますが、
下記のように、算数・数学でも理解の補助手段として有効であるように思います。
2)[例1] 8.4÷0.7の商はなぜ、84÷7の商と同じなのか。
@まず、8.4÷0.7を
思考原理:
■ 「つまり・例えば」で思考する。=抽象化と具体化の連携(同値類別化⇔モデル化)
に基づいて
次のような具体的な問題に置き換えます。
「8.4mのテープがあります。これを0.7mずつのリボンに切断していくと、何本のリボンがとれますか。」
A次に、10倍に拡大して見える思考上のルーペを用意します。
そして、そのルーペでこのテープ切断作業を観察したとします。
すると、観察者には、84mのテープを7mずつのリボンに切断しているように見えます。
勿論、とれるリボンの数は、「実際」と「ルーペ上の観察」とで違いが生じるはずはありませんから、
8.4÷0.7=84÷7=12
と考えられます。
3)[例2]8.5÷0.7を計算するとき、
上記[例1]の結果に基づいて
これを85÷7に置き換えて計算すると、商が12であまりが1となる。
しかし、8.5から0.7を12個取り除いたあまりは1ではなく、0.1である。
なぜ、あまりは85÷7の場合の1/10になるのか。
@[例1]の場合と同様の思考実験を考えます。
すると、「10倍のルーペ上の観察」では、
7mのリボンが12本とれて、さらにあまりが1m残るように見えるはずです。
しかし、「実際」はどうでしょう。
リボンの数は同じ12本ですが、あまりはルーペを介して見ていませんから、1mではなく0.1mです。
つまり、
8.5÷0.7を85÷7に置き換えて計算したとき、
商はそのままで構いませんが、あまりは元どおりの1/10にしておかなければなりません。
4)どうでしょう。わかりやすいと思いませんか。
なお、この思考上のルーペを凸レンズの拡大ルーペから凹レンズの縮小ルーペに持ち替えれば、
・840÷70=84÷7=12
・「85÷7=12あまり1」に対して、「850÷70=12あまり10」であること
なども同様に説明できます。