六本木と麻布台
2011年12月
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東京メトロ乃木坂駅5番出入口 |
東京メトロ千代田線の乃木坂駅5番出入口を出て、目の前の通りを左へ。今日まず目指すのは、国立新美術館です。 |
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国立新美術館 西門 |
間もなく通りの左側に、国立新美術館の西門が見えて来ました。ここから美術館の敷地内へと入って行きましょう。
ところでこの辺り、昭和史の中のある重大な出来事と関わりのある場所なんです。 |
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国立新美術館 |
平成19年、東京大学の生産技術研究所跡地にオープンした国立新美術館。写真右側の建物が黒川記章設計の本館で、左側の白い建物は特別展示室がある別館です。しかしこの別館、オシャレな本館に比べると些か時代遅れのデザインに見えるんですが・・・ |
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国立新美術館 別館 |
実はこの建物、旧日本陸軍の麻布歩兵第三連隊(略して歩三)の兵舎の一部が保存されたものだったんです。元々ここ新美術館と、隣接する政策研究大学院大学の現在の敷地は、戦前までは歩三の駐屯地だったのでした。 |
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お隣の政策研究大学院大学 |
時は昭和11年2月26日未明、指揮官の陸軍将校らに率いられた1,400名を遥かに越える兵が、当時の内閣閣僚を含む要人たちを襲撃して9人が死亡8人が負傷、首都東京には戒厳令が布かれるという未曾有のクーデター(未遂)事件が発生します。いわゆる2.26事件です。 |
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国立新美術館 正門 |
この襲撃に関わった兵士たちは、大半がここ歩三と、そして目と鼻の先にあった麻布歩兵第一連隊(歩一)に所属する兵士たちでした。
美術館の敷地内を抜けて、正門前まで出て来ました。目の前を走る小さな通りを左へ。 |
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正門前の通りを左へ進む |
この通りの周辺の住所は港区六本木7丁目。目前にそびえる超高層ビルは、旧防衛庁本庁の施設跡に建てられた東京ミッドタウンで、ショッピングセンターやホテル、オフィス、美術館などが入る複合ビルです。以前はこの界隈、麻布竜土町と呼ばれ、写真左側の辺りには町の名を冠した人気西洋料理店の竜土軒がありました。
そして2.26事件を主導した、若手の隊付将校を中心とする主要なメンバーたちはこの竜土軒などで度々会合を持ち、時の岡田啓介内閣を武力で倒して軍部を中心とした新たな政権を打ち立てるべく、「昭和維新」「尊皇討奸」を旗印に襲撃の計画を練ったのでした。 |
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現在の龍土軒 |
因みにこの写真は、別の機会に撮影した西麻布1丁目にある現在の龍(竜)土軒。当時あった所からは南西へおよそ700m程離れた場所にある、瀟洒な老舗フレンチレストランです。 |
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外苑東通りを渡る |
新美術館前の小さな通りを正門からおよそ200m程歩いて来ました。目の前を横切る大きな通りは外苑東通り。この交差点を渡って直進し、今度は東京ミッドタウンの敷地内を歩いてみましょう。 |
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ミッドタウンガーデン |
交差点を渡るとすぐに東京ミッドタウン。中心にそびえる超高層ビルの周りには、ミッドタウンガーデンと名付けられた緑あふれる公園が造られています。 |
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散策路からショッピングセンターへの架け橋 |
そして公園の散策路は、東京ミッドタウンの敷地内を大きくぐるりと1周しています。 |
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檜町公園へ |
散策路を進んで行くうち、次第に辺りの雰囲気がだんだん変わって来た様な気が・・・
何が違うんだろう?
ちょっと和風の庭園みたいな感じになって来たゾ。 |
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急流もあります! |
実は、ミッドタウンガーデンと隣り合わせの港区立檜町公園へと、気付かぬ間に入って来ていたのでした。江戸時代この辺りには長州藩毛利家の中屋敷があったことから、その敷地跡に造られた檜町公園に当時の雰囲気を残したんでしょうね。 |
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港区立檜町公園 |
それほど広い公園ではありませんが、大名庭園の散策気分をちょっとだけ味わって行きましょう。 |
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「歩一の跡」の碑 |
情緒を味わいながら歩いていたら、散策路の傍らに「歩一の跡」と刻まれた石碑を見つけました。
と言う訳で、ここ東京ミッドタウンや檜町公園の辺り、嘗ては麻布歩兵第一連隊の駐屯地だった場所でした。 |
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檜町公園を歩く |
既記の様に、昭和11年2月26日の雪が降りしきる未明、尉官を中心とした若手の将校らが率いる大部隊は永田町の首相官邸、赤坂の蔵相私邸、三宅坂の陸相官邸、霞が関の警視庁などのほか、多数の襲撃先や占拠先を目指して、ここ歩一と歩三の駐屯地を出発して行きます。 |
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突き当りの外苑東通りを左折 |
結局この反乱は、3日後の2月29日に討伐隊の包囲の後鎮定。指揮官の将校らは陸相官邸内で検束、下士官と兵は原隊に返され、その後指揮官の多くが渋谷の陸軍刑務所で処刑されました。
さてさて、そうこうしている内に東京ミッドタウンの周りをぐるりと廻って外苑東通りに戻って来ました。ここは左折。 |
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六本木交差点 |
外苑東通り沿いを歩くと、間もなく六本木交差点が見えて来ます。ここは六本木繁華街の中心です。交差点を越えて、そのまま外苑東通りを進んで行きましょう。 |
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六本木の街を歩く |
こうして六本木の街を歩いていると、ン十年前のまだ所帯じみていない若い頃に、夜な夜なこの界隈で遊んだのを思い出すのであります。 もちろん健全な遊びですケド。 |
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飯倉片町交差点 |
今はなきスクエアビルにあった、大きな置物の象がいるディスコのネペンタ、DJが居た炉端焼き屋の鬼太鼓、今なお健在で頑張っている、老舗ライブハウスのケントス
etc
知る人ぞ知る・・・ かもしれないけど、おじさんとしてはとっても懐かしいのでありマス。 |
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外務省飯倉公館 |
次に見えて来た飯倉片町交差点も越えて、外苑東通りを更に先へ。
通りの左側に、鉄のフェンスで囲まれた建物を見つけました。これは外務省の飯倉公館。 |
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外務省飯倉公館 |
海外の要人との会談や接待などに使用される、外務省の施設です。 |
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麻布郵便局 |
外務省飯倉公館のお隣には、麻布郵便局があります。建物は昭和5年竣工、鉄筋コンクリート造りのレトロで重厚な雰囲気です。 |
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麻布郵便局向かいに白い建物が |
麻布郵便局と通りを挟んだ向かい側に、白い大きな建物が見えて来ました。ロシア大使館です。 |
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ロシア大使館 |
周りにはたくさんの警察官の姿が見受けられます。ソビエト大使館の時代から、物々しい雰囲気は変わってないなぁ。 |
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外苑東通りを外れて左折 |
ロシア大使館を右手に置いて、外苑東通りが緩い左カーブの下り坂に差し掛かる手前を左に折れましょう。 |
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狭い通りを直進 |
大きな外苑東通りを外れて、今度は小さな通りをそのまま進んで行きます。 |
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三年坂 |
突然前方の視界が開け、都会に残された美しい景色が目の前に広がりました。ここは麻布台。三年坂と呼ばれる坂を下って行きましょう。 |
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道なりに進む |
台地から窪地へ下りて来ました。この先も当分道なりに歩きます。 |
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今度は上り坂 |
たった今三年坂をおりて来たばかりで、今度は上り坂です。起伏の激しい東京の土地を下ったり上ったり。 |
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又また大使館が |
通りをはさんだ左右、ほぼ向かい合わせに、又またふたつの大使館が現われました。六本木、麻布の周辺には各国の大使館が集中しています。 |
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スエーデン大使館 |
通りの右側にあるのはスエーデン大使館。丸くカーブしたオシャレな建物で、ロシア大使館の様な物々しさはありません。 |
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スペイン大使館 |
そして通りの左側はスペイン大使館。門扉が閉ざされていて中の様子はうかがえませんが、ここも静かな落ち着いた雰囲気で、外観は一般の古い洋館の様です。 |
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ホテルオークラ別館 |
再び通りの右側に目をやると見えて来たのは、ホテルオークラの別館。三本の指に入る、日本の老舗ホテルです。 |
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大倉集古館 |
そしてその先の交差点右側には、白い壁に囲まれた大倉集古館があります。ここはホテルオークラの創立者大倉喜七郎の父である、実業家の喜八郎が創立した美術館です。 |
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大倉集古館入口 |
館内には大倉親子が収集した絵画や古美術品を中心に、多くの価値ある文化財が展示されています。 |
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普賢菩薩騎象像(左) 薬師如来坐像(右) |
館内の展示物を観るには入館料が必要ですが、建物の周りに並べられたたくさんの屋外展示物は観覧自由。 |
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八角五重塔 |
と言う事で、博物館の外庭に造られた屋外展示場をゆっくりとひと回り。ここにも中国や朝鮮などを中心とした、東洋の貴重な歴史ある仏像や仏塔などがずらりと並んでいました。 |
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霊南坂 |
大倉集古館を過ぎると、通りは長い下り坂になりました。霊南坂です。 |
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ホテルオークラ本館 |
坂の手前右側にあるのは、ホテルオークラの本館の建物。 |
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白い塀の向こうにあるのは? |
そして坂の左側に目をやると、白い塀がずっと先まで続いています。そう言えば、さっきからちらほらと見えていた警察官の姿がにわかに増えて来ました。一体どうしたんでしょう?
実は、白い塀の向こうにあるのはアメリカ大使館だったんです。 |
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アメリカ大使館 |
霊南坂を下り切ったら突き当りを左折。アメリカ大使館の大きなビルを左手に置いて、道なりに進んで行きましょう。 |
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六本木通りを右折 |
やがて正面に見えて来たのは首都高速道路。そして、高速道路の高架下を通る大きな道は六本木通りです。一旦これを渡って右に折れ、六本木通りを直進します。 |
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溜池交差点 |
すぐ先に、広い大きな溜池交差点が見えて来ました。これを左へ。 |
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溜池山王駅出入口 |
交差点の脇にある、東京メトロ銀座線の溜池山王駅出入口に到着です。 |
参考文献 |
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昭和史発掘 |
松本清張 著 |
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二.二六事件 |
高橋正衛 著 |
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図説2.26事件 |
平塚柾緒 著 |
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二.二六事件全検証 |
北博昭 著 |
★交通 |
東京メトロ千代田線 乃木坂駅下車 |
★歩行距離 |
約 4.5 km |
周辺地図
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