【 母親の病名は脳幹梗塞 】


 母親(阿部ナカ)の病名は「脳幹梗塞(のうかんこうそく)」でした。
 医師から説明を受けたりネットで調べたところ、素人なりに次のような理解をしています。間違っているかもしれません。

 脳幹(のうかん)は大脳皮質で処理された情報を脊髄に伝達して実際の行動に反映させる器官であり、脳と脊髄の間を取り持っている。脳幹は脳の一部で、中脳、橋(きょう)、延髄という部分をまとめて脳幹と呼び、生命維持のために重要な働きを担っている。
 中脳には、視覚や聴覚、眼球運動などの中枢があり、音の刺激で眼球を動かしたり体を動かす反応を担当している。
 は、上部の中脳や大脳と下部の延髄以下の部分の連絡路で、呼吸調節にも関係している。
  一番下にある延髄には生命維持に欠かせない呼吸中枢と心臓中枢、咳、くしゃみ、発声、吸綴(吸引)反射、嚥下、唾液分泌、涙液分泌、発汗などの中枢の神経核がある。

 脳幹の機能が停止した状態を脳死、厳密には大脳、小脳、脳幹、脊髄のすべての中枢神経系の細胞が死滅した状態(全脳死)を脳死といい、大脳の機能が失われて脳幹だけが生きている状態は植物状態である。

 脳梗塞(のうこうそく)は脳の組織が死んでしまう病気で、その原因は脳の血管が詰まることである。血管が詰まると組織に血液が来なくなり、血液が来ないと酸素や栄養素が足りなくなって組織が死んでしまう。
 脳梗塞が脳幹に起こった場合を脳幹梗塞と言い、さらに細かく分けて、中脳梗塞・橋梗塞・延髄梗塞と呼ぶこともある。
  脳幹梗塞の症状は障害された場所によって違い、中脳梗塞では眼球の動きが悪い・動かない、意識障害、目をつぶって倒れたまま反応がないなどの障害が起きる。
 延髄梗塞では、飲み込みができない(嚥下障害)、呼吸停止、心臓の停止、意識障害、目をつぶって倒れたまま反応がない等の症状が現れる。

 母親は意識がなく目を閉じたまま横たわった状態で、声をかけても抓っても反応はありませんし、瞳孔に光を当てた際の対光反射もありません。
  「中脳には、視覚や聴覚、眼球運動などの中枢があり、音の刺激で眼球を動かしたり体を動かす反応を担当している」という観点からすると中脳はダメージを受けているのだろうと想像します。
 一方で、呼吸はしていますし、唾液は飲み込み、咳・くしゃみが出たり、欠伸をすることもありました。また、口腔ケアをするために口を開けようとすると力強く歯を食いしばりました。八十代後半で入れ歯ではなく、すべて自分の歯だったのですから、立派なものです。
 医師は、CTやMRI画像から、大脳の損傷はあまりないようだ、との説明をしてくれました。

 脳梗塞が起こったときにまず行われる主な治療には次のものがあるそうです。

*血管の詰まりを解消し、再発を防ぐ治療
血栓回収
血栓溶解療法(rt-PAなど) rt-PAは発症から4.5時間以内にしか使うことができない。
抗凝固療法(アルガトロバン、ヘパリンなど)
抗血小板療法(アスピリン、クロピドグレル、オザグレルなど)
*脳保護療法(エダラボンなど)
*悪化を防ぐ治療
脳浮腫の改善(マンニトール、グリセロールなど)
手術(開頭外減圧療法)

 母親に投与されたのは、次の薬でした。ただし、これらは私が確認した回数と薬品名であり、他にも投与があったのかもしれません。

 初日に投与
ノバスタンHI(アルガトロバン水和物):脳血栓症急性期<ラクネを除く>の改善 (抗凝固療法)

 初日から5日間投与
キサンボン(オザグレルナトリウム):脳血栓症<急性期>の運動障害の改善 (抗血小板療法)
ラジカット(エダラボン):脳梗塞急性期に伴う神経症候,日常生活動作障害,機能障害の改善 (脳保護療法)

 投薬してもらいましたが、残念ながら意識が戻ることはなく(ただし、症状に現れないものの何らかの改善があったのかもしれません)、植物人間状態で過ごすことになりました。

 その後、上述のような容体を見ていて常に考えたのは、「何の刺激も感じないのだろうか、それとも感じているけれど反応できないだけなんだろうか」ということでした。
 そして、どの程度なのかは分かりませんが、何かしらを感じ取っているのではないかと思うようになりました。



国立循環器病研究センターのサイト [63] 脳梗塞の新しい治療法
図1 これまでの脳梗塞急性期の薬物治療(国内)
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph63.html#t-pa-2

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