「芸人」永六輔(岩波新書) |
・ベストセラーの「大往生」的な、名語録。タイトルどおり芸人さんに聞いているものでございますね。 ・基本的に無名の人による名語録ということになっており、本書内の言葉は誰がいったのか書いていない。 ・あと、歌の日本史と、「芸人」三波春夫氏との対談と。 ・これが、普通に淡々とおもしろかった。やっぱり、文章は短くないとなあと。要点をついてなおかつ、スパっと言い切り。長い文章は悪とすら思うよおれは。 > 「テレビに出るたびに、 どうしてこんなことで、こんなにギャラをくれるんだろうと思いますね」 「騒ぎをつくって騒ぐ。 それがテレビ屋の常識です」 「話半分っていうでしょう。 それなんですよ。 テレビ半分なんです」 > ・って、こんな感じ。テレビネタがおもしろかったですね。あと、プロスポーツも芸のうちということでいくつかある。 ・ほーとかへーとかいいながら読み終えました。 ・日本音楽の歴史というのも興味深い。永氏は、「今は予約してCDを買う時代」としておられる。そういわれれば、アタリマエのようにしてるが、かなりおかしなことではあるんだよな。そしてそれが如何に売れるかはどれだけの宣伝をできるかにかかっていると。たしかにいまクチコミで売れる音楽やらないわな。それはすべてがそうかもしれない。 ・おれなんかはサイトに照らし合わせてついつい考える。芸=テキストサイトとして。ま、ここで引っ張ってもいつものワンパターンになるので、やりませんが。 ・巻末の三波春夫氏との対談もおもしろかった。なにげに深いところを聞く、永氏のテクに感嘆。 ・まー、勉強になりました。 (02/11/29・17:36:00) |
「食わせろ!!」景山民夫+山藤章二(講談社) |
・今にして思うと、講談社ってレアなのかしら。 ・景山氏とイラストレーター山藤章二氏がタッグを組んで、新聞連載をしたもの。山藤氏のご指名で景山氏になったそうだ。 ・おれなんかは、筒井康隆氏しか知らんが、実は非常にたくさんの人のイラストを描いてるそうで、野坂昭如氏、山口瞳氏、吉行淳之介氏、井上ひさし氏、などなど。すげえビッグネームばかり。 ・で、まあ、景山氏のエッセイ。それを受けての山藤氏のイラストで応酬。このパターンを確立したのは、山藤氏なんだな。最終回で、山藤氏が文章、景山氏がイラスト(下手です)という「飛び道具」(文中表現)でそこいらを書いてました。 ・ほー。それは知らなかった。「ロッキンオン」なんかでよくみますよね。 ・時期的には小説家になりたてのころで、かなりイケイケ状態の景山氏のエッセイ(ま、おれもこれだけ読んでると、かぶってるのがある)に、ときには茶化し、ときには、さらにボケ、ときには賞賛し、と、様々なテクで対応しておられる。 ・ま、こんなバカなこというやつもあまりいないだろうが、つくづく巧い。「週刊朝日」で似顔絵道場みたいのをやられているから、そこいらは当然だけど、それ以外の絵が非常にいい。女性もかわいいし。 ・ということで、実は、新聞連載ということで、わりに薄味。それに山藤味が混ざっており、異色作でありながらも、非常におもしろい。 ・全国どこでも100円均一だろうから、ブックオフの金券とか余ってたらいかが? (02/11/29・18:19:15) |
「ゲーム業界のフシギ」がっぷ獅子丸(太田出版) |
・これで、すっかり太田出版っ子になってしまうのか?がっぷ獅子丸センセイの最新単行本です。 ・すさまじいなと思ったのは、「初出一覧」で、季刊の「CONTINUE」での1pのコラム7回分がモトになっているということですね。7pのコラムを1冊にしているってのはなかなかできない離れ業ですよ。まー、ほかすべて書き下ろしなんで、実質書き下ろしの単行本ですね。 ・内容は、タイトルどおりですか。ゲーム業界の愉快な出来事をがっぷセンセイのステキな文章と、かわかずお氏のマンガでおもしろおかしく書かれているという、前作「悪趣味ゲーム紀行」と重複するスタイルです。 ・悪趣味〜とのちがいは、ゲームレビューがなく、そのかわり、ステキなオジサマがたとがっぷセンセイの熱い対談が収録されていることで、このメンバーが、ちょっとオタチアイなすごさなんですね。 ・まず、「デスクリムゾン」などのゲームを世に出したエコールソフトウェアの真鍋氏、「Theガッツ」というガテン系の筋骨隆々な女性が多数出てきてカラリとした濡れ場を演じる異色エロゲーの制作者、「炎多留」という業界初の本格ホモゲーの制作者、あと、誰かよくわからんが、萌え系のアニメ製作者がラインナップ。 ・それぞれのゲームは前記の「悪趣味ゲーム紀行」を読めばくわしいリプレイがありますので、それを参考にしてもらえばいいとまったく商売上手なことになっております。 ・がっぷ氏は、やはり、レトリックが上手ですね。豊富な語彙から、「なるべく」万人にわかるように、かつ、おもしろい言葉をチョイスしてます。それがまた事実をモトに構成してあるところが2重におもしろいと。 ・煮詰まって、すべてのデータが入ったPCを金属バットで叩き壊して逃げた男とか、逃げ回るシナリオライターを捕まえて、金返せといったらナイ。なら、階下のサラ金マシーンで借りろったら、フリーで社会的保証がないから20万円しか借りれなかったりとか、SCE(PSの会社ですね)の締め付けが厳しいので、たて読みでSCEの悪口を書いたり、隠しファイルにテキストで悪口を書いたりして、見つかったりとか。 ・実は、「悪趣味ゲーム紀行」でも使ったネタもあるんですけどね。そりゃまあ、しょうがないっすね。 ・で、対談はというと、これがまたアクの強い人ばかりで、それをうまくノせたりして、いろいろな話を聞き出したりしてておもしろかったですが、やっぱり、アクが強いもの同士の対談ということで、あ、この人とは話ヅライだろうなと、対談シロウトのがっぷ氏の悪戦苦闘ぶりを楽しんだりと、なかなか愉快な読み物にはなってます。 ・相変わらずの高品質でしたよ。オススメしとこっかなー。 (02/11/28・14:15:58) |
「ベストセラー本ゲーム化会議」麻野一哉・飯田和敏・米光一成(原書房) |
・世にあるベストセラー本をゲーム化したら?という命題にゲーム屋3人があーだこーだ話している本ですね。 ・取り上げられた本は「世界がもし100人の村だったら」「冷静と情熱のあいだ」「チーズはどこへ消えた?」「模倣犯」「PLATONIC SEX」「バトルロワイヤル」 ・ってな感じ。 ・これさ、もう一個シバリをつけておけばよかったのにと思う。それは、「少なくとも原作本と同程度の売上が見込めるゲーム」って。あきらかに投げてる回とかあってねえ。それはそれでおもしろくはあるんだけど、もっと、そこいらは大真面目にやったほうが面白みが増したような気がする。なにせ、「冷静と情熱のあいだ」なんざ、キーチェーンゲーム(もしくはiモード)にしようとかいってるんだし。 ・とはいえ、まあ、普通に売れるゲームとするならどうしたってアドベンチャーになってしまうから、そこいらが難しいところではあるんだけどね。 ・で、ゲーム化したとしてイチバン面白そうなのはやっぱり「バトルロワイヤル」だな。どう、おもしろいかいってしまうとネタバレになるけど、後半のゲーム中死ぬと実際死ぬってのは抜きにしたとしても絶対におもしろいと思うんだけどねえ。まあ、ヒントは「空談師」だね。 ・で、本としておもしろそうなのは「新「親孝行」術/みうらじゅん」ですね。というか、もう買いましたし、読みました。この後書こうとしてるくらいで。そして、それ以外の本は笑ってしまうくらいに読んでません。おれは本は読まないようにしてるんだ。なぜなら、サイトを更新する時間がなくなるから。 ・うむ。でも、なんとなく読んだ気になるし、前書きにあった「文芸を全く違う器に入れて評価するという、今までにない新しいタイプの「書評」として成立」してますね。 ・それぞれの脚注(3人がかわりばんこに担当)もおもしろかったし。 ・全体的におもしろかったすよ。(2002/11/09・19:06:13) |
「新「親孝行」術」みうらじゅん(宝島社新書) |
・んー、「アイデン&ティティ」以来だし、もしかして活字だけの本ってのははじめてかもしれないなあ。 ・本書は、「ベストセラー本ゲーム化会議」麻野一哉・飯田和敏・米光一成(原書房)で新たに知った本で唯一欲しかった本だったし、絶対におもしろいと確信したので買いました。で、ビンゴ!というワケです。相当笑いました。 ・ココロから思っての親孝行というのはなにかとムリがあるので、「プレイ」としての親孝行を提唱しているのが本書なのです。「放置プレイ」「聖水プレイ」のプレイと同義語ですね。つまり、親をご主人様と見立てて、「親孝行」という名のご奉仕をするべくテクニックとアドバイスをこんこんと説いているのです。 ・もう、これだけで目からウロコ。で、内容がまた素晴らしい。ウロコ何枚はまってたんだ?と自問したくなるほど、ボロボロボロボロと。 ・まず、親孝行をする人を「親コーラー」と呼ぶ。そして、親孝行界のスーパースターはえなりかずき氏。えなりに心酔している人を「エナリスト」と呼ぶそうです。もう、これだけでフラフラのクラクラ。 ・親孝行旅行。あえて別部屋にする理由とは?「ホテトル嬢」テクとは?バーチャル「川の字」の真髄とは? ・帰省テク。台所をまずチェックの理由は?母親が絶対によろこぶヒトコトとは?食卓でスキヤキの場合の席の鉄則とは? ・妻活用法。親コーラーとして妻をどのように活かすか?そしてその究極の方法とは? ・親孝行寿司。究極の親孝行プレイの意味とは? ・などなど。超実用的なテクが満載だ。これさえ読めば明日から親コーラーってなもんよ。 ・これが新書で出ているというのがまず大きなギャグになっているというのを評価したい。内容もお堅い文章になっており、それがさらなる笑いを喚起する。そして、要所要所に「これ見てトドメに笑い死ね!」とばかりの写真がある。こういう周到なギャグの仕込みに感動すら覚える。 ・そして、おれの親もそうだったよなあと。とくに死んだ母親のことをいろいろと思い出したな。「そういえば…」って感じで。 ・前記の「ベストセラー本ゲーム化会議」でも、飯田氏が「今、親子のカタチは様々だからそれを網羅した続編を」との声には同感だ。飯田氏も片親なんだな。 ・まあ、ぶっちゃけ、みうらじゅん氏基準で展開している。いわく、親とは別に住んでいる。1年に1回程度会う。結婚して子供が居る。そして、男性専用みたいなところがある。 ・それでも応用できるところ、そのまま使えるところなど盛りだくさんだ。絶対活用できる。 ・「孝行をしたいときに親はなし」みたいなのは事実であることをおれは痛感してるし、これを読んで両親がいる人、とくに男はぜひ、親コーラーになっていただきたいものだ。 ・とくにラスト、実践親孝行旅行のドキュメンタリーはサイコーでした。オススメ。(2002/11/09・19:32:05) |
「イルカの恋、カンガルーの友情」景山民夫(角川書店) |
・エッセイ集ですね。考えて見れば、「ガラスの遊園地」以外の小説っておれは読んだことないし、おれにとって景山民夫氏とはエッセイストであるわけだな。だから、結構マメに押さえていただいているんだけど、本作はなかなか手が出なかった。なんでかというとタイトルが原因。 ・景山氏、1998年1月26日逝去 享年50歳なんだけど、それまで、波乱万丈な人生を送っておられまして、有名なところで「幸福の科学」という宗教団体に所属されており、講談社の抗議デモの先頭に立ったりされてましたよ。 ・おれ、このころの景山氏は苦手でね、なんとなく、そういうスーパーナチュラルげな、宗教じみた内容をこのタイトルに嗅ぎ取ったので、回避してたんですね。でも、古本屋100円ならやぶさかでない。よって購入という次第。 ・そして、これがまた滅法おもしろい。ちょうど、時期的には、小説家活動に専念する手前から、なってバリバリとやっておられるころだな。時間軸でいえば1984年から1987年。 ・内容がまたすごい多彩。なんでもあり。自分の過去から当時の流行語「新人類」まで、女性に花を贈る話からトルコ風呂の話まで。この降り幅の広さは、おれが読んでいる分の氏のエッセイと比較してもNo.1じゃないんかな。 ・元放送作家ということで、タレントなどのネタ。警察官の息子であるからして、普通と少しちがう過去。まあ、後に単身アメリカに行ってる。その直接的なネタこそなかったけど、世界各国を旅行したネタ。ウンコの話。ビートたけし氏、せんだみつお氏、ダメAD。数々の人のおもしろい話。そして、本人がイチバンおもしろい。 ・で、作家としては直木賞受賞されているということで、少なくとも、あるレベルの文章を書けないともらえないもんだろ? ・つまり、ガッカリするほどおもしろいと。なぜ、ガッカリするかというと、おれも、一応サイト上で文を書いてますんで。それと比較すると、あまりの落差にガッカリするわけです。 ・今ならたいていの作品は古書店で100円均一です。ぜひ、読んでそのおもしろさに触れてください。それで、できるなら、イッキに読まないでチビチビと。通勤で、あと2駅で目的地ってときに1本だけ読むとか、そういうペースがいいですね。おれはトイレで読んでましたわ。(2002/11/05・18:39:03) |