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ポトチャリポラパ/コミック/2005年
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2005年/3月
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2005年/3月/28日
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「東京クレーターのアカリ」1巻 磯本つよし(少年画報社)

・東京に隕石が落ちた近未来。ウイルスやらのためにちょっとした、隔離状態になり、しばらく経ちます。
・そこでの駐在さんアカリがエアバイクを駆って飛び回るアクションドタバタ「さんまの駐在さん」風マンガ。あるいは、アクション配合多い目の「ヨコハマ買出し紀行」気味。

・逆なんですよね。多分、総合でいえば全マンガ家の90%以上が「ちゃんとした背景」を描けないです。その中には、巨匠もいるし、長者番付の常連もいるでしょう。だけど、背景なんざ「アシスタント」が描けばいいことですからね。

・本作では、水没してる元東京の風景。そこをエアバイクで駆け抜けるスピード。ウイルスの影響下で巨大化した生物(人間より大きなカニが建物の内部にびっしりとか)、コントロールが効かずに元首都高に猛スピードで向かってくるタンカーなど、その手の描写はバッチリ以上の「見惚れる」くらいのものがあります。

・ただ、それに比べると人間が。まあ、露出もサービスげにアカリさんは活躍してますよ。メガネ&ショートだし。でも、背景ほど「立ってない」んですよねえ。

・残念!

・あと、オビの「笹本祐一」氏も知りませんから! 残念! 「一部でのみ有名人を起用するとかえって売上逆効果なのでは?」斬り! と、来年あたりは「これなに?」と思われることをあえて書いてみました。
(18:54:02)

2005年/3月/27日
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「征服 魔呼ちゃん」みなづきふたご(ワニブックス)

・変わってきたのか?って気がします。
・萌え4コマありきで考えると、本作、そしてさらに踏み込んでる「だって女だもんっ!」1巻 高松弥生(ぶんか社) なんかは時代の移り変わりを感じます。

・ちょうど、25年くらい前、ファミコンの発売くらい、ロリコンマンガというのがありましてね。今でいう美少女マンガの原点になるものですよ。それは「ロリコン」というシバリがあったわけです。胸のふくらみのない、陰毛もない、いまでいうところの「ツルペタ」な少女がアヘアヘしてたもんですよ。
・このムーブメントが画期的だったのは、これまでの少年向けマンガの美女でもないし、少女マンガのそれでもない、むしろハイブリッドな、ええとこどりなかわいこがいたからですよ。
「ブリッコ」やら「レモンピープル」なんかが発火点になり、瞬く間にジャンルを作りました。そして、それを好む人たち=オタクという図式も成立してきました。

・現在のエロゲーの図式と似てます。エロもありましたが、それ以外にもいろいろあったのです。エロとしてもOKでしたが、マンガとしてもおもしろかったのですね。インディーズ化というかね。ニューウェーブというか、2軍というか。

・そいで、次の動きが出てきますよ。ロリコンの絵柄を継承しつつさらにエロを追及すべく、オッパイが大きくなったりするわけです。わたなべとおるとか影次ケイとかね。より実用に向くようになったわけです。そして、そのために特化していくと。

・これが萌え4コマと、その次の流れに似てるんじゃないかあって。まあ、本作でたとえに出すのはあまり適切でもないんですがね。

・いわゆる「もえよん」だの「ビジュアル4コマ」は実はわりと以前からあるし、エッチな4コマってのもかなりの歴史があります。ただし、ここにターニングポイントがあります。ゲームでいえば「スーパーマリオブラザーズ」に匹敵するもので、アニメでいえば「機動戦士ガンダム」にあたるもの。「あずまんが大王/あずまきよひこ」です。いまやブックオフで1冊100円で400円でそろえられそうなアレですよ。
・いわゆる、萌え4コマというジャンルにおいて、それ以前の流れを変えてしまった巨人です。

・エロと萌えを分離して、純粋培養しておもしろさを加味したのが「あずまんが大王」ですよ。それにたくさんのものを読み取ったためにエロ同人なんかでは盛況になったんですしね。「純萌え」とでも名づけましょうか。

・ほかにもありますが、それ以降と以前ではちがうんじゃないかなと思うわけですよ。断言できるほど読んでないんですけどね。基本的に萌え4コマはつまらないし。

・そいでもって、とかく世の中はインフレーションですよね。だから、エロと萌えを分離してできた純萌えに、エロを足したらもっと美味しいんじゃないか?って思ったりするわけですよ。

・ということで、本作は、アフターあずまんが大王の萌え4コマでありながら、エロ要素が強い、かわいい女の子がキャピキャピやってる学園4コマということです。
・なんていうかなあ、シュガーレスガムにグラニュー糖をまぶしたかのようなノリですよ。蛇足感があります。でも、「それはそれであるかもなあ」とも思うわけです。

・おれも、前記のロリコン→美少女エロの流れのときは、「こんなのは堕落だ」とストイックな潔癖さんでしたが、いろいろと苦味や酸味ばかりの人生の末、「エロは強力な推進力になる」と。

・つまり、パイレーツは「だっちゅーの」があったからいっときでもテレビに出られたってことですよ。

・基本がほのぼのですが、そのためにエロが意外にいいところにヒットしたりするんですよねえ。ファミレスのバイトで、制服のオッパイ部のボリュームが足りないからそこにクリームパンをつめて、それを指でブチュっとつぶしたりするシーンはいいところでしたよ。

・で、男率が0に近いので、それ自体がリミッタかかってるので、あまりエグイことにならないんですよね。これもまた「あずまんが大王」の偉大な発明ではありますね。女子ばかりで華やかにもなるし、一定のリミッタがかかると。

・まあ、ぼちぼちよかったですよ。これからは、こういうエロ要素が濃くなってくるビジュアル4コマ界ではないかと推測するんですよ。
(23:05:57)amazon

2005年/3月/26日
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「CYNTHIA THE MISSION シンシアザミッション」1巻 高遠るい(スタジオDNA)

・知らない人ですが、表紙の血まみれセーラー服金髪少女がかっこいいので買いました。

・カバー見返しに作者の写真と挨拶があるという少年ジャンプコミックフォーマットです。
・そこに著者の写真です。おれ的に、自著で顔を晒してるマンガ家ってのは、かなりアクの強い「おもしろい」マンガを描く傾向にあると思います。パッと思いつくのが、「ジョジョの奇妙な冒険」での荒木飛呂彦氏。あと、美少女マンガ家のしのざき嶺氏。
・本作でもそのジンクスは継続しました。

・拳で語るタイプの少女が登場する読みきり連作をまとめたものです。

・1話目のシンシアは香港人で暗殺者。2話目は多重人格者の殺人鬼。3話目は昼は華道部、夜はストリートファイトの御嬢様。と、様々なアクの強い美少女が登場します。しかも、恐ろしいことに同級生。絶対に入りたくない学校でございますわな。

・で、アクションも、ギャグも、盛りだくさん。エロはないですが、その手のキャットファイト(っていうには残虐シーン満載ですが)がたまらん人には、たまらんことになってます。

・この手のは「美女で野獣/イダタツヒコ」なんてのがありますが、それよりもアンダーグラウンドな感じですか。ぶっちゃけヤクザさんや非合法のニオイが充満してるブラックなものになってます。ああ、だから、なんだろ? 「軍鶏」とか? ああいうノリもあるのかしら?

・で、登場キャラはその両拳にたくさん血を吸ってるのですが、反面、とってもほがらかなキャピキャピした展開もあるというのがすばらしいというか、これだけギャップがすごいともはやギャグになるくらいですよ。

・キャラの魅力も十分、ストーリー他もしっかりしてます(やや「小さい」&「狭い」けど)。アクションもギャグもバシバシ決まります。なにより、キャラの目が活きてる感じがステキね。

・ほぼ唯一残念だったことは、表紙の美少女のパツキンのシンシアが本編に登場しないことかな。「バカ姉弟」の姉みたいなハゲのシンシアなら登場しますけどさあ。

オススメ
(18:29:15)amazon

「死ぬかと思ったH」田中圭一(アスペクト)

・ああ、ひょっとして、個人サイトの書籍化ってのの走りで、もっとも巻数を重ねてそうな「Webやぎの目」の超人気投稿コンテンツであるところの「死ぬかと思った」をコミカライズしたものです。タイトルどおり死ぬかと思ったくらいの恥ずかしアホらし体験を集めたものですね。タイトルどおり「H」に特化したものです。

・えーと、正直、ネットの書籍化ってのは、ハナクソほじりながら「ええんでねえの? おれはそんな金をドブに捨てるようなことはせんけど」派なんですし、この元ネタも実際にサイトで読んだこともありますし、書籍をパラパラと立ち読みしたこともありますが、感想としては上記と変わらないです。
・ただ、これが田中圭一氏がマンガしたら別でさあ。なるほど、絵の持つ説得力や破壊力を改めて感じた次第ですよ。

・なんつーかな、田中圭一=コージー冨田ってのがわかりやすいかな。あるいは、クリカン。田中氏が手塚治虫氏のイタコ的パロディマンガをやりはじめてからのキレったらないですよ。コージー冨田氏もタモリのマネがブレイクスルーだったのと同じですね。本作でも、たぶん、ホンモノが死んでも受けなかったような仕事でしょうよ(意外にやったかもしれんけど)。

・手塚治虫の絵で、おならに火が点くか実験してたり、下半身裸でぎっくり腰で動けない状態で飼い犬たちがきて、バター犬やってるときの表情。ハミキン。雨の中全裸で犬の散歩をしてる変態(犬はレインコート着用)とかを描かれたら、そりゃあ笑うしかないだろ。へたるほど笑うだろうよ。

・まあ、逆にシミジミ手塚治虫先生の偉大さに気がつきますけどね。田中圭一を一応公認してる虫プロもすごい偉大ですけど。だって、宮崎ハヤオチックな絵柄で田中圭一みたいな作風をしてる人がでてきたらスタジオジブリは黙ってるか?ってことじゃないですか。まあ、田中圭一氏に次はクリアしてほしいところでありますけどね。

・サイコーです。もうしわけないですが、むしろ、田中圭一氏のオリジナルより破壊力があるネタもありまして、しみじみ、ホンモノが持つインパクトなんてのも感じてしまいますね。

オススメ
(19:02:38)amazon

「ゼロイン」3巻 いのうえ空(角川書店)

・2巻いっぱいでラブコメやって、そのキャラが3巻で死んだという感じです。

・近い未来、民営の警察、「民警」を舞台に、犯罪の最前線で闘う少女やヘタレ少年を描いた物語です。
・なぜかモテるヘタレ少年。それにホレる2人の凄腕民警の少女2人のうちの1人が殉職します。

・2巻での平和な三角関係げなラブコメにせよ、3巻通して、だれが読んでも「あ、こりゃ死ぬな」というけっこうアカラサマな暗喩表現といい、なんつーかな、ワザとらしいとか、シラけるとかいうレベルをやや超えて、逆にすごいなあと。
・バレバレだけど正面突破で描ききったですよ。これがスゴイよなあと。
・ビジュアルイメージとしては、向こうからイノシシが駆けてくるのがみえる。まっすぐここに向かってくる。このままじゃあぶつかって大変なことになるなあと思う。みんなそう思う。そして、そのままぶつかって大変なことになるんですよ。「なんだそりゃ?」と思うでしょ?でもそういうことなんですよ。

・ただ、ここでマジックが発動ですよ。「そうとわかっている展開をおもしろくみることができる」マジックね。見開きの迫力、アクションのギリギリ感、かわいい女子と、なんつーか、体当たりでぶっ飛ばされる感じですよ。そして、死ぬと。

・んー、香港映画的かしら。ベタな、先を容易に読むことのできる展開。でも、それだからこそ、逆に飲み込まれてしまうという。「男たちの挽歌」をはじめてみたときの感じか。
・本書はそのアクションマンガのわりに顔のアップが多いのですが、それが手抜きにみえない前にでてる感があります。そこいらは絵の勝利ですね。

・で、それから新展開と。今度はわりと殺伐と展開しそうで2巻のヌルラブコメだったときとは大違いで、なおかつ、大歓迎ですよ。
・しかし、肉感的なオナゴよのお。
(20:21:27)amazon

「みかにハラスメント」水兵きき(スクウエアエニックス)

・これはガンガンコミックだけど、どこに連載されていたものでしょうか。とてもエロマンガです。
・もうちょっとくわしく書くと、ジャリ向けエロマンガですね。ジャリがそのモヤモヤした欲望をどうしていいか具体的にわからないときに、それでも本能でエロを渇望してるときに与えると「ウキキキキキ」となるようなタイプのエロマンガ。

・もちろん、大きなオトモダチでも大丈夫ですよ。

・中学生のみかさんがとてもエロエロな目に遭う連作が表題作の「みかにハラスメント」。3編ありまして、「えっちじゃないせかい」「犬のせかい」「子供のせかい」と、タイトルでどういうエッチなことが展開されてるのか想像してごらん。キミの想像したとおりだから。

・あと、コペルニクス的回転の女の子が男になってしまう「かすみオトコノコ」。これもすごいよ。男だから上半身裸でプールに入ってもおかしくない!という論理でセーフになるんですよ。なにが? キミの想像したことだよ。


・エロくない「魔法少女るかなー」ってのもありました。

・んーむ。こういう不条理でエッチな展開になりながらも寸止めな、ジャリエロでは、ここしばらくで1番イヤラシイ感じがしますよ。また、アカラサマに大きなオトモダチなら想像できることをしてますしね。

・ノーパンで高いところに登るというもう30年くらいあるイニシエの展開から、目隠ししてニオイだけで「飼い主」を探すプレイで、首輪して股間をくんくんしたり。はいつくばってミルクを飲んでそれが顔にはねたり、ホースが触手のようにからみついて水が出たりと、エロエロなねえ。

・逆にアカラサマすぎてエロを通りこすバカらしさを換気したりもします。それもまたヨシですわな。狙いではあるんでしょう。エキスパートにもお楽しみいただけます仕様? というか、むしろそっちに特化してるのかな。これで「目覚め」ると、けっこうやっかいなことになりそうですよね。

・まあ、おれはこれ、「呼ばれた」みたいで、すでにかなりやっかいなゆがみ具合なんでしょうね。

・ということで、やっかいな方からはすでにかなりチェックがきてます。そういう方でアンテナ低めの方はチェックしてみてはいかが?
(22:39:02)amazon

2005年/3月/21日
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「死んだ目をした少年」古泉智浩(青林工藝舎)

・ぼくはこのマンガを読んでとても凹みました。イメージ映像でいうと、裸にひんむかれて往来に投げ出されたかのような凹み具合です。

・とりあえず、あらすじを書いておきます。
・地方の中学生らが主人公です。クラスの最下層のデブと死んだ目をした少年がいました。彼らはヤンキーグループにいじめまでいかないイビリを受けたり、死んだ目をした少年が気になるけど、どうやって愛情をぶつけたらいいのかわからない美少女の同級生にクビをしめられて写真を撮られたりしてます。そのたびに彼は専用のヒーローに彼らを退治してもらいます。もちろん、彼の脳内でです。
・そんなプチいじめられっこの彼らの前に、「なにかしたい」歯科技工士の女が現れ、ボクシングのコーチをかってでます。そして、ストーリーがはじまりますよ。

・いろいろな人がいろいろなこと考えてそこらじゅうにいるわってことです。それぞれがそれぞれの範囲内で考えて行動して生きてるってことです。んー、アタリマエのことですね。だけど、それを本作で思い知らされたわけです。
・このマンガ内の登場人物は全員本当に矮小です。吹けば飛ぶようなことを考えてめいめいにうごめいてます。
・主人公である少年はすぐに妄想に逃げ込むことでいろいろなイヤなことを遮断して平穏を守ってそうで、けっきょく、そのためになにか行動しようということはありません。
・少年といっしょにいたデブはボクシングのコーチでやや強くなった自覚をもって、ヤンキーグループの本当は弱くてヘタレをやっつけて自分内のランキングを上げ、少年と距離をおきます。
・ヤンキーグループの頭は、魔裟斗とファンで、魔裟死と名づけるような痛さです。

・そしてポイントは女子ですよ。おれはこんな年齢になっても女子に幻想をもっていたい甘ちゃんだからして、本作の描写は男子のそれより数段きます。
・一見、美少女風にみえて、話のカギを握ってそうな美少女も本当にくだらないことを考えてます。彼女は女王様気質が多分にありまして、自分に従わせることに快楽を覚えてます。それを無意識下におき、どう表現していいのかわからないのです。
・その仲間も、なにも知らないくせに受け売りでテキトーかます女。そんな女をバカにしながらもそのグループから抜け出すことができない女と、まあ、3人とも、そういえば同級生にいたかもしれないけど、なんつーか、それは思い出したくなかったかなと思ったりするんですよね。

・そして、ボクシングを教える謎の女性、釈笛子さんは以前にもマンガに登場されてますよ。非常に前向きで高度なことを考えようとしてるけど、知能に限界があり、息詰って行き詰まっているんですよね。それが、前作だと、「フェラ・ファイト」(カラオケボックスで1曲歌う間にフェラをして出したら金をもらうという戦い)をしたり、強姦しようとした少年たちを格闘技で返り討ちにして説教したりするんですよ。今回はそういった意味でとても意味のあることをされてました。でも、なんか、自分が社会の役に立つことをしたいってイライラしてたりする、なんつーか、足りなさがあります。

・本作の価値観にK-1とモーニング娘。を据えてるのもなんだか非常にひるむ感じ。ああ、今はそうなんだろうなあって。

・とにかく、こんな表現をするとなにさまって自問自答してしまいますが、低レベルな人間が大挙して登場するんですよ。それは、なんつーかな、根本敬氏や、山野一氏、そして古谷実氏なんかと、まったく比較にならないくらいリアルにそこいらにいる感じです。見逃すくらいそこいらにいるのをきっちり拾い上げてるところ、それをそういう風に描くところに古泉氏の底知れない怖さを感じるのです。

・人生でもっともダメな時期として中学生を打ち出されているのはQ.B.B.氏の「中学生日記」ですが、すべてに中途半端でなにがどうしてもしっくりこないのも中学生だったりするんですね。そのイラダチとかなんとかしたいってあがきや、みょうなストイックさ、そういうのが痛くなるくらい描かれてます。

・そいで、「やめてくれえ」と読みながら思うのはおれが未だにそういうのをたくさん引きずってるからなんでしょうね。というか、たいていの人が引きずってるはずですけどね。さもなくば意図的に忘れてるだけじゃないかな。

・本作は、物語だから、最後にカタルシスが用意されてます。ただ、「この先」って考えるとなにもなさそうな荒野におけるカタルシスですが、中学時代に溜飲を下げたことがあるなしは人生において最重要事項であると思いますので、本作の少年はよかったと思う。ただ、物語中のだれにも感情移入できないから、少年に対しても「よかったな」以上の感想はない。たぶん、あの見開き(p180-181)を反芻しつつ「あれがおれの1番だったかも」と思いながら地面にはいつくばって生きていくんだなと思う。

・そして、ここまで思い入れたっぷりに読んでるおれもかなり痛いな。やっと素に戻ってきました。

・おれが監督ならこれを映画化したい。そして、マンガを読まないやつらにイヤな思いをさせたい。で、釈笛子は釈由美子にやらせたい。

オススメ
(20:06:12)amazon

2005年/3月/19日
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「オリオン街」6巻 山本ルンルン(JIVE)

・最終巻。毎月、本作か「マシュマロ通信」が発売されるという蜜月も終焉を迎えるわけですよ。

・でもって、最終巻がすばらしい。これまでもすばらしかったけど、これは到達点じゃないかな。
・泣かせようという力んだ話はまったくないんだけど、すべて泣ける話なんですよ。

・今まで飽きっぽいスモモ(本作の主人公)が編物に没頭したり、骨とう品やのオヤジとの意地の張り合いし、みどりちゃんという親友の新しい友達になじめなかったりと、わりに普通の小学生ライフを送ってます。でも、それぞれジーンとしみる話ばかりです。
・下手ながらも編み上げたベストを着て、ママやみどりにホメられててれるスモモ。
・勝手に恋のキューピッドをしたために迷惑をかけるかハラハラしてるスモモとみどりの2人。
・個人的には骨とう品屋のオヤジにデコピンされるスモモが好きかな。

・ノスタルジーみたいなものもあるかもしれませんが、たぶん、ここでこの文章を読む方は元小学生が多いでしょうし好都合です。

・当初にあったトラウマをほじくるようなことはなくなりましたが、それで浅くなったのではなく、過ぎていく日々にある値千金の宝物 を丁寧に描写してます。だれもが一度はそういう宝物があったんですね。そのお宝映像をバシっと捕らえまして的確に描いておられます。
・あとがきやオビの羽海野チカ氏のコピーにもあるように、自分の中にもスモモやみどりがいるんですねえ。それは男女隔てなく。というか、まあ、女子のほうがクるんでしょうけどね。

・これが、以後の「マシュマロ通信」では、キャラをもっとマンガマンガしたためにこぼれたところですわな。

・ということでとてもおもしろかったです。
(22:24:03)amazon

「マシュマロ通信」7巻 山本ルンルン(JIVE)

「朝日小学生新聞」で好評連載中です。「オリオン街」は終りましたが、こっちはまだまだ続刊中です。アニメも放送中ですって。

・なんだか、こっちはいい意味でも悪い意味でもマンガ的な誇張が大きくなってきてますね。もともと山本氏にはある、ファンタジー&ファンシー風味に趣味がちょっと多めに配合されてます。今後、そうなるのか7巻だけの特徴なのか知りませんが。

・あと、7巻の後半ではまたタッチが少し変わってきましたね。巧い人はどんどんシンプルな線になるというパターンかな。鼻がない描写が多くなりましたね。もともと点ひとつの鼻でしたけどね。でも、けっこうちがうよなあと思いました。そして、共通するのはカワイイってことなんですけどね。

・ジャスミンの話と、サンディの柔道の話がよかった。マンガ的なキャラを立てるパターンの話ですが、いい感じでした。
(22:44:42)amazon

2005年/3月/16日
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「鋼の錬金術師」10巻 荒川弘(スクウエアエニックス)

・10巻ですね。テレビアニメのほうは終ったのですが、映画をやったりもあるそうだし、マンガのほうも笑いが止まらないくらい売れてそうです。
・ま、おもしろいからね。

・あんまり、貶すべきコトバが思いつかないんですよね。

・こないだ、「BSマンガ夜話」で取り上げられていたんですよ。あるマンガに対してあーでもないこーでもないってヨタ話する番組ですね。
・そこで、いしかわじゅん氏がホメながらも「なんか認めたくないんだよなあ」って微妙なリアクションをしてました。
・このリアクションはわかります。もろ手を挙げて、サイコー!としたくないというかね。だから、いしかわ氏もなんかいろいろと苦言みたいのを呈しておられました。「死(描写)が軽い」とか。

・おれは、キャラが淡白ということを前に書きましたよ。艶がないんですよね。また、10巻ではボインが死んだしさあ。

・だけどそれらを凌駕するくらいのおもしろさです。よって貶せないんですよね。

・バランスの人で、構成の人ですよ。これだけチクチクと話を組み上げてるマンガは近年ないんじゃないかい? なおかつ「アストロ球団」か「ドカベン」かってくらい時間が進んでない。何年かかけて一ヶ月くらいしか進んでないんだもんなあ。

・でもって、今回完全に主人公であるエルリック兄がいない状態での前半部がすごいわ。

・マスタング大佐率いるチームとホムンクルスチームとの団体戦で、マスタング大佐1勝です。そして、ヒューズのカタキ討ちもとらせたと。

・で、読者に絶えず注意を促してるんですよね。「こんなキャラがいますよ。忘れてませんか?」「こんな設定もありましたよ」「こういうギャグがありましたよね?」って感じで。このタイミングがバツグンにいいです。

・売れてるワケもわかるけど、ちゃんとおもしろいし、好きだと。ただ、新キャラが増えると、なんとなく不安になってきます。話が複雑だから「破綻」って思うわけですよ。そこいらは実績のない新人ならではですね。

・実際、いしかわじゅん氏もこんな巧いやつがデビュー作って事実を受け入れ難いって、やや嫉妬のノリもあるんかなあって。
(13:24:11)amazon

「オレンジでりばりぃ」2巻 ボヘミアンK&宗我部としのり(JIVE)

・最高。
・おれは基本的にスポーツマンガはスルーしてます。これはわりに昔からそうで、手塚治虫ばりに避けてます。
・いくつかの理由があるんですが、つきつめると「キリがないから」ということになりそうです。

・いやまあ、正直な話、本作はスポーツマンガとは思わないで買ったのでしたよ。タイトルでも、表紙でも、それが「カーリング」マンガとは思わないじゃないですか。
・アイススポーツの一種で、氷上のフィールドに石でできた大きなおはじきを変わりばんこで投げて点数を競うものですね。

・現在宇宙一のカーリングマンガです。ぶっちぎりでおもしろいです。

・マンガでカーリングといえば、週刊少年サンデーで連載されていた学園マンガの名作「ちょっとヨロシク!/吉田聡」にちょっとだけ触れてます。それ以降おれはこのマンガしか知りませんが、仮にほかにあったとしても本書は宇宙一だと確信してます。

・女3(巨乳、ロリ、ダルマ)男3(純情、メガネ、えんどーちゃん)のカーリング部が日々奮闘するコメディタッチだと思ったら、エロいし、エロコメかよ!と思ったら、足元ひっくり返すくらい本格的なカーリングマンガだったり、でもやっぱりエロコメだったりと、とてもいい湯加減でテンポよくバンバンと展開していきます。

・エロとはいえ、基本的に少年誌的なところで連載しているので、まあ、お尻や胸がチラリって程度ですよ。

・1巻よりずっとカーリングしていて、なおかつそれがおもしろいという最良の展開です。カーリングやってみてえ!と思ったりね。その手のカーリング知識も盛りだくさんですしね。あの漬物石みたいなの1個15万ですってよ。ホウキは6000円だってさ。

オススメ
(17:33:13)amazon

2005年/3月/14日
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「ケロロ軍曹」10巻 吉崎観音(角川書店)

・アニメ化やら小学館漫画賞(ケロロ将軍でしたっけ?)やらと、いい意味で調子に乗ってますね。カエル型異星人が侵略するといいながら居候するホノボノドタバタギャグです。

・10巻では少年漫画の王道でもある「ニセモノとの団体戦」ってのが炸裂して、11巻にひいてます。

・ただ、どうだろ? いろいろなところがやや粗くなってきてるとも感じました。
・大きいのは作画かな。MAC仕上げで線が薄いのが気になるかも。あと、いろいろな話を描こうとされてる心意気やヨシなんですが、それに純粋描写力が追いついてないような気がします。「なんちゃって〜」だからOKでもあるんですが、たとえ、なんちゃって(パロディ)だとしても、それは本気でやったほうが効果的なことが多いのでやっぱり残念かな。

・んー、ノリはいいんですけど、やっぱ仕事が立て込んでるんでしょうかね。ところどころほつれてる感じ。
・11巻での建て直しを期待したいところです。つーか、10巻かよ?長いよなあ。
(13:41:11)amazon

「これが私の御主人様」3巻 まっつー&椿あす(スクウエアエニックス)

・アニメ化決定だって。まあ、深夜放送の「大友」向けだそうですが。なんでもかんでもアニメ化でございますね。とはいえ、これほどストイックなエロコメもないんで実はテレビとの相性はいいのかもしれません。

・エスパーより少ない現役中学生メイドを雇う鬼畜な中学生御主人様が活躍するわけですが、2ちゃねるネタやらを中心に、かなり暴走がひどくなってきてる気がしますが、大丈夫でしょうか?
・でもって、ギャグのキレとはうらはらに妙に顔のアップが目立つような画面構成でもあります。3文字で表現しましょう、アップの多用は「手抜き」です。
・おれみたいに、いずみのグレープフルーツより大きいけど、メロンより小さいくらいの丸を半分に切って胸部に貼り付けたおっぱい描写のために本書を購入してるものには、ややさびしいですね。

・しかし、どうも原作者(オトコ)の差し金みたいですが、なんだってこうもストイックなんでしょうかね。パンチラすらNGなんですよ。たとえば、背中越しに着替えをのぞいてキャラはオッパイ丸見えだけど、読者には背中しかみえないなんてアングルやシチュエーションすらないんですよ。そのわりに変態な展開やネタや服装が多いという、かなり寸止めの上にゴム2重でマイルーラにピルにサランラップ3重くらいのプラトニックぶりですよ。

・まあ、それがいいのかもしれませんが。おれがいずみのオッパイに惹かれるのも、全容が露になってないミステリアスオッパイだからかもしれません。

・と、だから、そういうストイックな感じで十分いいので、次の巻は顔のアップばかりは止めてちゃんといろいろ描いてほしいものですね。
(14:10:14)amazon

「神社のススメ」1巻 田中ユキ(講談社)

・おれにはよくわからんけど熱狂的なファンが多そうな作家さんです。だから、「アフタヌン」で連載とかきいたときは妙に合点がいったもんどす。

・神社を舞台にしたラブコメ。神主と巫女の恋など。

・んー、主人公(新米神主)が15歳の巫女さんにホレて、「うわー、おれロリコーン」みたいな苦悩したりする感じかなあ。

・でもって全体的なトーンはあまりにも題材とかけ離れていたからわからんかったけど、どことなく佐々木倫子(おたんこナース&動物のお医者さん)風味かな。佐々木氏は下半身方面のネタは周到に避けてますからね。
・あとは、雁須磨子も隠し味で入ってるかな。別に隠してないか。どっちかというとこっちかな。まあ、その2つのええとこどりといった感じ。

・あとは、神社ウンチクさね。神社という特殊なところでありながらどこか会社的だったり、ああいう職場ならではだったり、巫女さん図解があったりと。

・キャラの魅力が薄いのが弱点なんですね。もちろん、おれ的に。ほかの方には、15歳のヒロイン巫女をはじめとしていろいろ硬軟取り揃えてありますからねえ。
(14:35:07)amazon

「鉄腕バーディー」8巻 ゆうきまさみ(小学館)

・おもしろい。6巻の終わりに「戦争」とかいってたのが1巻分ディレイがかかってようやく戦争になってきた巻ではあるなあ。
・それぞれがそれぞれの思惑に則って「ちゃんと」行動してる。そしてそれを総じて「ストーリー」と呼ぶ。実際問題、「ご都合主義じゃないストーリーはない」とたがみよしひさ氏あたりがいっていた言葉は正しいのですが、それをそうと感じさせないのが物語を提供する側の義務だと思いますよ。ゆうき氏はそれをキッチリ果たしてます。8x8くらいのルービックキューブがゆっくり回転していく感じで、それぞれが動いていきます。

・だから、ここにきて大きく動いたようにみえてまだそうでもないってのがあるんですよね。たぶん、おれがゆうき氏だったらイライラで死にそうになりますよ。「これはこうだから早くこうだって描きたい!」って感じで。
・でも、タイミングをしっかり量って、ここだ!って瞬間で適切な描写をしておられるのです。すこしばかり律儀で生真面目すぎるほど適切だと思います。

・8巻では美少年千明さんがいろいろとエッチな目に遭ったりしてよかったですね(もちろん、そういうマンガじゃないですよ)。

・あと、巻末のおまけマンガ最高! こんなやついるわ。というかおれだわ。
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「日本一の男の魂」14巻 喜国雅彦(小学館)

・なんだか、ヒロシネタとか、マギー審司の「耳大きくなっちゃった」ネタとか、こういう流行に乗じた薄っぺらいネタが逆にこれほど決まるマンガもないですよね。ホメコトバですよ。

・元ピチカートVの小西氏が「昔はエヴァーグリーン的ないつまでも聞くことができる音楽しか作りたくなかったが、あるときから、その年に1番旬の音しか作りたくなくなった」などとインタビューに答えてましたが、喜国雅彦氏も以前なにかのインタビューで「でてくる女子高生が女子高生に「こんなのいないよねえ」といわれたら筆を折る」なんておっしゃってまして、ああなるほど、ヒロシネタやマギー審司ネタが決まるワケだよなあ。もはやヒロシも賞味期限が迫ってるし、マギーもかなり冷蔵庫のスミでカラカラに乾いてますものねえ。

・個人的には大好きな「精子の精」(下ネタで困ったときに現れるフェアリー)が登場した巻ですね。出しどころが難しいみたいであまり登場しないのですが。

・あとは、非笑いのショートコミックのほうが断然味わいをましてきましたね。あの、痴女伝説のネタは感心しました。あと危篤の女性が大勢の声で生き返るネタ。あと、足の似顔絵か。

・ということで枯れてきてるの? って、もうすぐ50だもんな。枯れるわそりゃ。
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「賭博墜天録カイジ」2巻 福本伸行(講談社)

・変則二人麻雀「17歩」がいよいよはじまったわけですね。へんな賭博で命かけるよマンガです。

・この2人麻雀がわりとおもしろそうなルールです。ただ、それに加えてイカサマ対決と、イタズラに複雑になってる印象があります。しかも、たぶんですが、「裏切り」とかカイジにおいての定番の展開とかもありそうね。

・そこいらはルールに飲み込まれてなんかよくわからんようになった「HUNTERxHUNTER」のGI編みたいなことはないとは思いますが(たぶん、福本氏は冨樫みたいな執筆態度を嫌いそう)、複雑すぎてダイナミックさがなくなるのはもったいないなあと思ったり、それすらも折込済みかなと思ったり。

・まあ、ゆうき氏にせよ、福本氏にせよ、どうも「巧い」人ってのはガマンのできる人ですわな。おれみたいにショートケーキのイチゴを最初に食べて、あーあ、と思いながら残りをムシャムシャ食べるようなタイプはダメ。

・ということで、福本氏も、ドーン!って圧倒する旨味を用意しておられるんでしょうが、今のところ、墜天録はピリッとしない展開だなと思います。
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「ホムンクルス」5巻 山本英夫(小学館)

・人気があるみたいです。なぜ?

1.ナットクできる:おれも好き
2.ナットクできる:おれは嫌い
3.ナットクできない:おれは好き
4.ナットクできない:おれは嫌い
5.興味がない

・この5通りのヒット作への接し方がありますが、おれはちょうど3と4の中間点といったところです。つまり、共通点として「ナットクできない」わけですよ。スピードワゴン. 井戸田 潤の「あたしゃ認めないよ!」ってギャグの通りですよ。

・なにをナットクできなくて認めないのかというと、おおむね、ヒットしてるということかな。いわゆるパンピーがなにが楽しみで本書を読んでいるのかってのがわからない。
・5巻では女子高生とホームレスが、えらい気持ちの悪い性行為をしてます。そういうところがエロいからか?

・というか、おれ自身が、その先の読めない展開に気持ち悪さを覚えてるからかなあ。

・トレパネーションというのをしました。デコの頭蓋に孔をあけることです。その手術をされたホームレスは「みえる」ようになりました。そして、女子高生と出会い、なんか知らんけど、カーセックスしてる5巻です。

・んー、都会を巣食うココロの闇とか、そういうのを描いてるってことでいいのかしら? それとも山形弁のホームレスが東京さの女子高生さレイプしたで、ええ気味だすってことか? 山形弁がよくわかりませんが。

・なにが怖いってこれをオカズにしてる人がいるかもしれない世の中ですわな。

・まあ、トレパネーションよりトレハロースということでね。
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2005年/3月/11日
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「MOONLIGHT MILE」10巻 太田垣康男(小学館)

・10巻から展開が変わりますね。新章突入といったオモムキがありますね。というより、地に足ついた宇宙マンガの足が離れていきつつある感じです。いよいよ、「SF」のエリアに足を突っ込んでいきます。

・ISAという宇宙の国連みたいなものが作られます。そして、月にはたくさんの人が暮らしてます。月からのエネルギーを求めての会議を宇宙で行います。そして、「ムーンチャイルド」。

・相変わらず、宇宙の持つ、神秘みたいなものに後ろ足で砂をかけている感じが気に入りませんが(宇宙の広がりがなく、たとえば、密室劇、U-BOAT内部や、山間の洋館での話みたいにみえる)、各国の様々なかけひきや取引をじわじわと展開していくのは、「それはそれで」とってもスリリングです。

・そして、ムーンチャイルド奪還という、ものすげえおもしろい展開が11巻に待ってるので(巻末予告にありました)、それはもう11巻も発売されたらノータイムで買わないとダメなのです。
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「彼岸島」10巻 松本光司(講談社)

・あー、松本クンはなにが描きたいのかね? だれか教えてはもらえぬか。
・吸血鬼のいる島にいった一行はワヤクチャな目に遭ってます。そして、主人公は、超人になってしまったので、普通の吸血鬼はまったく敵じゃなくなったのでどんどん化け物みたいのが登場してスケールがダダ漏れで大きくなっていきます。
・そして、ラスボスが再び登場です。ラスボスはクビを斬られたのに生きてるのです。クビを斬られて生きていて再び登場ですよ。

・一応、ラスボスと闘いながら11巻につづくですが、11巻じゃあ終らない感じだなあ。なんていうか、コミック版「バトルロワイヤル」げな悠久の時の流れになってきました。牛歩時間です。おれはこのタールの中を歩くような、ドリフのスローモーションでプレイバックコントみたいな展開がきらいです。

・念のためにいっておくとおもしろいです。この展開は血湧き肉踊るものです。少年漫画の黄金パターンですもの。だけど、こういうのは極力否定していかないと。すでに10巻ってのは長すぎだろうよ。
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「Rock’n Roll is DEAD ロックンロールイズデッド」清水栄一&下口智裕(大都社)

「無敵番長バクライガ」の人の習作集か。
・いや、正直、「無敵番長〜」ってのはもはやほとんど印象が残ってないくらいなんですよ。2人でやってるわりに残らないマンガだったよなあって、まあ、おれ内の「イマイチ」フォルダに叩き込んであります。

・だから、本作はかなり考えて考えて考えて買いましたが、残念でした。

・7編くらいの短編からなってます。ガレキに命をかけるガレキ対決マンガ。タイムパトロールのお姉さんと出会い騒ぎに巻き込まれる少年のサンバイザーが「どうよ?」と思うターミネーターげなマンガ。意思のあるカマと死神少女のコンビという「ソウルイーター」げな話2種。

・そういう感じ。表題作は、ロック少年がギブソンを手にして、死神とロックで闘うマンガです。

・ああ、よくわかりましたけど、おれ、島本和彦氏が好きじゃないのが彼らの作風と合わない最大の要因なのかもしれませんね。そういや、「バクライガ」もそうだったな。忘れていたのを思い出しました。

・だから、逆にいうと、島本チックな拒否感が出てるということで、島本和彦氏が好きな人にはイケると思いますよ。むやみに熱い男たちが登場したり、かわいい少女が登場したりして、熱くて熱くてあらぬほうに脱線する感じのパワーはあります。

・あと、ロックを語りがちのマンガ家の好きなのはハードロックってパターンはここでも健在。これはなんでだろうね?

・バクライガと島本和彦好きは楽しむことができると思いますよ。
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「マシュマロ通信」6巻 山本ルンルン(JIVE)

・どういうペース配分で連載されてるのか未だによくわかってませんが、「オリオン街」の刊行も合わせると毎月発売されてる感じがするんですが6巻目です。

・ひとつわかりましたね。クラウドは泣かせろと。
・クラウドという生きてるヌイグルミがサンディー一家に住んで起こるドタバタほがらかオールカラーマンガです。
・6巻では2回もクラウドが泣いてます。サンディーがプレゼント用に作っていたカップを割って。新しいキャラが自分と交換されにきたと思い込んで。あと1回1コマだけ泣いてますけどね。
・そして、クラウドが泣くと、おれの中のサディズムがむくむくと屹立してきますよ。なんか、エロいコトバですよね、屹立。

・まあ、もうちょっとわかりやすくいうとキューンとするんですね。かわいいですよ。とてもいいです。あと、泣いてるクラウドに対するサンディーのリアクションもとてもいいです。

・やや線が簡略化してきましたね。一般的にどんどん線は簡略化される傾向にあります。逆にどんどん書き込む人もいますけど(井上雄彦など)、段々1本の線の責任が重くなりますね。もう、かなり現在はいい絵だと思います。頂点なのかその先があるのかわかりませんが、かなり簡潔になってます。簡にして潔しと。

・パンジーって黒クラウドが新登場した6巻でした。
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2005年/3月/8日
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「だって女だもんっ!」1巻 高松弥生(ぶんか社)

・ぶんか社の4コマなんて久しぶりだなあ。水田恐竜ぶりか。最近みないねえ水田恐竜。

・ということで、ぶんか社って一時期TVCMしたりゲーム作ったり有料サイトやったりあちこちやった挙句にどうなったのかよくわかりませんが、本作は、「みこすり半劇場別館」という「へえ、そんなのあるんだ」ってはじめて知ったようなところで連載されていたものです。

・本作は衝撃的です。萌えかと思ったらエロでした。しかもド直球。
・あーと、小池田マヤ氏他の有象無象が描いてるストーリー4コマ形式になるんかな。4コマ1セットでゆるく話がつながってるというもの。これの元祖って神保あつしって方だと思うけどどうだろう? まあ、彼の場合は、次に設定とか持ち越さなかったかな。あと、筆吉純一郎氏も割合と早い段階から、このパターンだったな。いまや、空想科学大戦の方ですけどね。

・母娘が住んでます。母は30歳台、娘は女子高生で彼氏がいます。肉体関係ありです。そして、母はSMクラブの女王様を娘にナイショでやってます。そのクラブに彼氏がバイトとして入ります。あとは親子丼うめえ!って展開です。

・作者は男女で、作画と原作が完全に分かれているというわけでもなくいろいろな分担みたいですが、これが非常に大きいですね。
・男が1人で描くほどねちっこくなく、女が1人で描くほどサッパリしてない。
・たとえば、小池田マヤのエロはあまりエロくないか、「そこまで描かれるとヒクわ」ってになります。これ、だいたいエロマンガ描いてる女性作家に共通してますが。つまり、ポイントがちがうわけです。それは逆もまたそうでしょうや。

・そこいらのバランスがとてもいい!と思うわけです。男女にアピールしてるような。いや、おれは女じゃないからわかりませんが、声を大にしていいたいのは「(少なくともおれの)ポインツはちゃんと押さえてある」ということですよ。

・ロリーな娘と、グラマラスでおっとりとしてながら未亡人でなおかつSMクラブの女王様でテクニック抜群とのコントラストを軸に、ハラハラドキドキや、ほかのキャラも美味く作用し、なおかつ、ちゃんと4コママンガとして成立してる(4コマ目には一応オチがある)ってのが律儀というかなんというか、藤子不二雄の精神というかね、「2人だからがんばれる!」ってね。別に恋人や夫婦じゃないようですが。

・エロなのにサッパリした絵ってのもおれのツボでしてね。おれはどっちかというと劇画の書き込みの多い絵(原哲夫とか)より、断然こっちのほうが好きです。

・でもって、つづきまくる、母親との本格浮気という1巻でのクライマックスはそこいらのストーリーエロくらいいい感じでしたよ。エロいなああって。まあ、30歳台がまるでセーフなおれだからそう思うかもしれないけど、熟女好きのヤングにはもっといいでしょう。

・男性の打算的なところと、女性のせつな的なところがよく描けてると思います。

オススメ
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「世界の終わりと魔法使い」西島大介(河出書房新社)

・やった。これだろこれ。ということで、描き下ろし第2弾ですが、前作比250%でおれには好みですね。

・おれは「その絵にふさわしい話」ってのがあると思う派です。井上雄彦の絵で「ちびまる子ちゃん」はおかしいだろ? つまり、そういうことさ。
・そして、ややオカルトですが、絵は話を呼ぶし、話は絵を呼ぶと思ってます。描いた絵に話は擦り寄っていきますし、話に絵は擦り寄っていきます。おれはそう思いますよ。だから、マンガ家の絵が変わっていくのは話のほうによっていくのだし、作風が変わるのは、絵のほうに話がよっていくのです。

・前作「凹村戦争」もファンタジーだし、本作もファンタジー。だけど、本作のほうがより絵に合ってます。

・テーマはズバリ、「おれジブリ」。「おれがジブリだったらこうするぜ!」って感じで展開してます。もちろん、あとがきなどによるともっともっと高尚な「引用」や「思い入れ」があるみたいですけど、高尚すぎて知らんし。

・魔法が使える国で魔法が使えない少年がいました。みんながほうきで飛び交ってる中、「科学」で飛ぼうとしてます。そして、図書館でみたサーフボードにヒントを得て、エアボードを作りましたが、それで、みんなが恐れている魔物がいる森に不時着してしまいます。
・そして、謎の魔法少女と出会うワケです。

・前作ゆずりの多大な「情報」もありますが、1作の童話として、「お話」が、その多大な情報にたよらなくても強い。ここが大きなところですね。

・冒険、アクション、サスペンス、ファンタジー、SFなど盛りだくさんにつまってますし、前作同様の箱庭な世界も相変わらずいい感じではあります。

・そして、前作同様、グッとくる絵が多数あります。もしかして、おれが西島作品を買うのはそれがあるからかもしれない。クライマックスあたりはグッときっぱなしですよ。なんつーか、音楽や効果音が聞こえてきますよ。
・そういった意味ではずっと映画的ですよね。アニメ化希望ですよ。ジブリの宮崎じゃないワクでやってほしいかな。同時上映は「コッコさん」とかで。
オススメ
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「キューティーハニーa GOGO!」1巻 永井豪&伊藤伸平(角川書店)

・おー、あの伊藤伸平が、あの「キューティーハニー」を描くんですね。とりあえず、原作:永井豪というよりも、本作のアプローチは、庵野秀明監督の実写版「キューティーハニー」をマンガ化するということでして、この後取り上げる「キュ〜ティ〜ハニ〜 SEED」ってのはマンガ版のそれで、なおかつ、ダイナミックプロダクションがプロデュースしてるし、原作者の永井豪氏の特別寄稿みたいのもあります。
・複雑だ。

・ついでにいえば、講談社からは、「マジンガーレディー」って、マジンガーZの世界をマンガでリメイクしたのもありました。おれはスルーしましたが。

・んー、永井豪氏というか、ダイナミックプロは版権商売をはじめたんですね。まあ、それはともかく、アニメタルじゃないけど、過去の名作を「萌えリメイク」するってのを読むことができて面白いです。

・まあ、そういった意味じゃ、本作はいきなり反則なんですけどね。
・世界観をきっちりレンタルして、キャラや名前も借り上げておいて、正々堂々と自分のフィールドに取り込んで展開してます。とても男らしいスタンスです。

・そして、キューティーハニーでありながら、「東京爆発娘」だったり「楽勝ハイパードール」だったり「モルダイバー」だったりと、キッチリ「伊藤伸平」ワークスに手篭めしてるのがすばらしすぎます。

・ぶっちゃけ、永井豪がシットしそうなくらいちゃんとキューティーハニーしてるんじゃないかなあ。これがホンモノって思うくらいです。足りないのはエッチさくらいで。っても、真ん中のハート型のアナからのぞく胸の谷間に爪が立てられて、線ができて、血の玉がプツプツと浮かんできたりするのはそのスジにはアピールするんじゃないかな。

・伊藤伸平特有の無表情っぷりがネックかね。口が「−」な感じの顔。アンドロイドのキューティーハニーがより無機質っぽくみえてそれはいただけないなあと思った。
・その無表情で、スカす感じの演出が多いです。それで、ドガチャカ起こってる怒涛のアクションをひょうひょうと行ってるってパターンですが、今回は、ややそれを抑え目で、「普通」の展開がありますね。とくに1巻ラストはややくさいくらいでしたが、とても新鮮でよかったです。映画の早見青児もこんなかっこいいの? マンガやアニメじゃ、「ウヒャーおっぱいまるみえー」って感じじゃなかったか?

・ぼくはこのマンガはとても売れてほしいのでオススメ
(22:09:54)amazon

「キュ〜ティ〜ハニ〜 SEED」1巻 永井豪&星野小麦(秋田書店)

・永井豪、萌えリサイクル大会の本命でしょうか。
・本作はそういった意味では最前線の画期的さですよ。なんたって、全然キューティーハニーじゃねえもん。

・キューティーハニーがええなあというモテナイ君のところに女の子が降ってくるわけですよ。で、「ダーリン浮気は許さないっちゃ」ってねえ。
・で、隣りに同じクラスのヒロインがいて、妹がいて、先生がいて、このマンガでのキューティーハニー役の女優がきてと、まあ、モテナイ君を中心にだらだらと広がるハーレムものになっていくと。
・で、着替えがみえたり、水でTシャツが透けて下着がみえたり、自転車2人乗りで胸の感触があったりね。

・んー、これはキューティーハニーじゃないだろう? まったくカケラも面影がないんですよね。たとえるなら、シド・ヴィシャスの「MY WAY」のカバーみたいなパンクな姿勢ですよ。

・というか、ものすごいぶっちゃけますと、女子以外の描写力がもうワッハッハ状態なんですよ。というか、女子も「あ!」ってときがありますよ。
・ものすごい2Dなんですよね。キャラや背景が「パラッパラッパー」あるいは、「ペーパーマリオ」ライクな感じでねえ。ああ、マンガの世界は2Dなんだなと思ったりねえ。

・ということで、永井豪ちゃんの応援文に負けないようにがんばれよ。
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2005年/3月/4日
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「シトラス学園 完全版」山本ルンルン(太田出版)

・単行本未収録分を含む「シトラス学園」全話に短編を加えた初期ベストですか。

・ジャケットが秀逸なんですよね。下記のリンク先を参考にしていただくといいんだけど、「ロデオの恋人/ザ・バーズ」のパロディ風になっているのはともかくとして、ポイントはその背景色です。黒です。

・出世作であろう「マシュマロ通信」や「オリオン街」はフルカラーのコミックですが、本作は口絵と中の4p以外はモノクロです。
・横井軍平氏(ファミコンの十字キー作ったり、モノクロのゲームボーイ作った人。あと、ワンダースワンも)じゃないけど、マンガに大事なことはカラーってことではないですし、アメコミやBD(フランスのマンガ。高い)とちがい、モノクロだからこそその文化は大きく花を開いて、世界に誇れるものになったと思います。本作もとても「カラフル」な作品集だとは思います。

・その意味の「黒」と、もうひとつ大きいことは、内容も「黒」なんですよね。

・やっと最近の「マシュマロ通信」で、ペンネーム通りの作風になってきたんですが、それまでは「どこがルンルンやねん」ってな、けっこうな小学生ダークサイドを描いてるのです。ヨーロッパ風味のハイカラな背景やキャラがものすごい和風なウエッティな、かえって小学生だからこその純粋な権力争いみたいなものを描いてます。
・そして、その黒さが全開なのが本作の「シトラス学園」なのです。

「シトラス学園」は、「CUTiE COMIC」と「Vanilla」の2誌にまたがってますが、前者のほうが強力に黒いですね。とくに、女子が登場する話の、カサブタをめくる感は強力です。女子にはどう映るのかよくわかりませんが、おれは内田春菊や岡崎京子あたりの女の子の生理を描く系でありながら小学生キャラで、そのエゴもより純粋に感じられて、「うひゃー」と思います。

・シトラス学園のあるクラスを舞台として各キャラが毎回主人公がちがっていろいろって感じの展開ですが、スージーという委員長が超強力なんですね。
・母親と2人暮らしなんですが、かなりルーズな母親で、家庭内1人暮らしのようなオモムキで孤独に暮らしてるスージーですが、「いいこ」ゆえに、そのことを母親やまわりにぶつけられない。そして、孤独に耐え切れず、クラスの女の子たちが持ってきてた、「サミーちゃん人形」をかっぱらい、彼女たちと食事するようになる。
・この後、さらに強力な展開がありますが、実は、こういうかなり毒素の強いものもハッピーエンドなんですよ。ほとんど「ナウシカ」で腐海の底はキレイみたいな世界。

・ただ、その女子編ほど男子はえぐく描かれてないのが、やっぱ、女子の世界と男子の世界はちがうんだなあと思ったりね。

・これらがとてもカワイイ絵柄で展開してるのが山本ルンルン氏の個性なんですね。それが「シトラス学園」ですでに1回目のピークに達していたのですね。
・少女時代のトラウマをキュートでキャッチーなラッピングで包装してお届け!って感じ。

・そして、絵が話をひっぱるなんて現象が起こったみたいで、「かわいい」が話もかわいくしていってます。でも、それで正解でもあると思います。かわいい、メルヘンな、ファンタジーな、「マシュマロ通信」もおもしろいしね。

・スペースハンター、ウサギイヌなど、「マシュマロ通信」までつながる世界もすでに完成してるんですね。

・シトラス学園以外の短編などは、なるほど、水野純子氏なんかと似た作風になるんだなあと、かえってわかりやすかったりします。

・最近はオールカラーだったり忙しいからダメなのかもしれないですが、本作は鬼のように書き込みがあります。とくに背景。
・そういったいい意味で「鬼気迫る」初期の作品集です。とてもおもしろいです。
オススメ
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「駅前の歩き方」森田信吾(講談社)

「モーニング」で不定期に載ってて、「へんなマンガ」と思っていたですよ。
・いまや、時代劇マンガの森田信吾っていったほうが通りがいいんでしょうかね、その森田信吾氏が現代を舞台に描いた、半ルポなグルメマンガ。なおかつ、コメディ。

・主人公の作家と担当編集の珍道中で、「常食」という、そこではアタリマエのように食べられているけど、めずらしいものを探し求めるマンガですね。ご当地B級グルメですか。

・長野県伊那市のローメン、静岡県の桜海老たっぷりのかきあげソバ、秋田県の路上でババアが売ってるババヘラアイス、群馬県大泉町のブラジル料理、などなどね。

・それにご当地のドラマなども盛り込んでにぎやかにほがらかに進行するというものです。

・個人的には森田信吾氏の「栄光なき天才たち」が未だに最高傑作です。タイトルどおりの「偉人伝」にならない偉人を取り上げてるドキュメンタリー風マンガです。ヤンジャンの良心と呼ばれてた時期もあります。今は「花平バズーカ」が良心ですが。
・その中で、鈴木梅太郎氏をとりあげたときがまたコメディだったのですね。それを思い出しました。

・また、才能の無駄遣いじゃねえの?ってくらいの画力を惜しげもなく投入して、なおかつ、きっちりしたロケハン敢行(たぶん、森田氏本人の趣味も入ってそう)して、現地の人なら、「あ、こりゃ、あそこだ」ってものすげえ場所が特定できそうなくらいの写実描写ですよ。
・で、コメディと。正直、「コメディ」として期待されては困るかな。そんなゲラゲラ笑えるとかってもんじゃないですし。

・で、とにもかくにも「食べたい」と。おれも、ご当地の「ご馳走」より、こういうものが食べたい。

・マンガ家はマンガで勝負という潔さが森田氏にはあるようで、未だにどういう人なのか、どういう嗜好なのか作品からは伺いにくいところがあるのですが、本作はそれがもっとも「薄い」ので、ファンとしては、「少なくとも森田氏は長野県伊那市でローメンを食べている」ってのがわかってうれしいようなおもしろいような。なにげにファン歴20年になろうとしてますしね。

・ということで、できうるならば2巻が読みたかったなあ。まだまだ常食はあるだろうし。
オススメ
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「GO WEST!」4巻 矢上裕(メディアワークス)

・最終巻。
・西部劇時代のアメリカで両親を探しに西へと目指す、日本人のナオミが生き別れの兄(黒人)と父(白人)と西へと目指す、すちゃらかウエスタンマンガ。

・ラストまわりの爆チュー問題かよ!ってツッコミたくなるほどのデタラメぶりがすごいね。そりゃあ、スチャラカだからなんでもありだろうけどさあ。でも、それでもさわやかだったしOKです。

・おれはとにかく目的地である「西のはて」のビジュアルがとても好きだったんですね。あの感じはとても胸がわくわくしまして、そのノリを保ったまま最後まで駆け抜けられたのでよかったと思います。
(18:15:05)「amazon

「二十面相の娘」4巻 小原 愼司 (メディアワークス)

・なにがどうしてどこからつまらなくなったのだろう? 1巻から2巻はぐんぐんおもしろくなっていた記憶があります。でも、この4巻は読むのがきつかったです。

・ぶっちゃけた話、1巻でも呈した苦言ですが、小原氏の画力でこの題材は荷が重いんですよね。とくに背景のノッペリした感じがとてもいただけません。よくみると細かく書き込んであるところもあるんですけどねえ。なんつーかなあ。

・で、話のほうも、二十面相が復活したところですが、このマンガは着地点がみえないので、復活したがどうした?って感じになりますし、先がわからなくてワクワクするには、いろいろと足りない感じです。とくに画力。

・と、われながら2巻のときとは感想がちがいますね。評価が不安定に揺らぐ人で、それはつまりおれの中でどこのフォルダにいれていいのか決めかねてるってことですね。

・しかし、なにがしたいんだろう?
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「破戒 〜ユリ・ゲラーさん、あなたの顔はいいかげん忘れてしまいました〜」松尾スズキ&山本直樹(小学館)

・すごい組み合わせのマンガですよね。

・印刷工場の2代目が汲々としながらもそれなりに暮らしてる毎日ですが、美女・ミツコの登場で変わっていく。

・PSYSって男女ユニットがかつていましてね。あのー、「シティハンター」のアニメ主題歌なんかが有名でしょうかね。男のほうは後に「パラッパラッパー」なんかを手がけてすっかりゲームの人になったし、女性の人は「チューボーですよ」のテーマソングを歌ったりされてますよね。

・これ、1stアルバムをプロデュースしたムーンライダーズの岡田徹氏によると、2人とも、音楽の趣味嗜好がちがっているけど、お互いに、歩み寄ってるところがおもしろかったそうですよ。

・あー、つまり、本作もそれ。

・松尾スズキ氏といえば、河合克夫大先生とのユニット「チーム紅卍」として、「お婆ちゃん!それ偶然だろうけどリーゼントになってるよ!!」や「読んだはしからすぐ腐る!」などの名作をモノにされてますが、明らかにそれとはスタンスがちがいますし、山本直樹氏も、いつもの山本テンポみたいなのはありますが、それにちがった空気が混入されてる跡が見受けられます。

・つまり、お互いにリスペクトなのか気をつかってるのかはわかりませんが、歩み寄ってる感じがとてもおもしろかったです。

・ていうか、それは、巻末のぐだぐだしてる対談を読むとある程度わかるような気がするんですが、ぐだぐだしすぎてて読めないから推測です。たしか、最終回は松尾スズキ氏がタッチしてないとか。

・基本的にいつもラストをスカす、アンチクライマックスが作風になってる山本直樹氏の作品で、かなり、最終回らしいラストでよかったですよ。「キャリー」

・この作品の根幹でもある、「ヤリッパナシ」「ヤラレッパナシ」って概念はとても沁みましたね。ヤリッパナシの人はなにをやってもOKになるし、ヤラレッパナシはなにをやられてもOKという。これ、勝ち組負け組ってやつよりドーンと響きました。おれはヤラレッパナシなんだろうなあと思ったりさあ。
・そう、実は、悪夢なのは、主人公がミツコに会わずに、あの人生が続くことですよ。ヤラレッパナシの人生。「未来世紀ブラジル」?

・まあ、結論として「イヤな気分になる」作品なんですがね。

・女性はこれを読むとどう思うのだろうか? 女性の感想を聞きたいかも。
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