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ポトチャリポラパ/コミック/2007年
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2007年/2月
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2007年/2月/26日
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「鳥丸学園ガンスモーキーズ」1-2巻 たもりただぢ(エンターブレイン)

・コミック表記では「SideA」「SideB」ということになってますがつまり全2巻。やっぱこれくらいのマンガはいいなあ。手が出しやすい。知らない名前でもすんなり買うことができる。

・横暴な生徒会はすべての同好会を「(学園に)益がない」とつぶそうとしました。そこにサバゲー同好会が宣戦布告。戦って勝ったらなんでもいうことを聞けと。そしてアクションマンガがはじまるわけです。

・オビには「眼鏡+学園ラブコメ+パンチラ・ガンアクション」とあります。

・大きなポイントは眼鏡です。サバゲーの2人、生徒会長、生徒会役員、風紀委員、風紀委員顧問あたりがメインの登場人物ですが、眼鏡をかけてないキャラは3人だけ。あとみんなメガネ。あとついでにいうと男もサバゲー部の2人と生徒会に1人、風紀委員に1人ということです。

・この場合のメガネが持つ意味合いはわりと大きくて、まあ「カワイイ」ってのはありますよ。メガネっ子選び放題ってのはありますが、それよりも、この戦いに体育会がからんでいないということの象徴としてのメガネです。
・かなり激しいアクションが繰り広げられるマンガではありますが、体育会系のニオイがないのですね。

・戦いはタッグマッチで全2巻で大まかに4回あります。生徒会側の武器はナギナタ、弓道、剣道ですよ。それにサバゲー同好会は「おもちゃ」で対抗するわけです。そう、エアガンね。
・このアクションがおもしろい。エアガンを使った実践格闘ってな雰囲気を漂わせ、中国の武器であるトンファーのように、エアガンのマシンガンで相手の竹刀を受け、片方の手でBB弾を発射するんですよね。だから、「道」的な感じなんですね。「柔道」「剣道」と同じような意味合いで「サバゲ道」「ガン道」といった風情。このモデルガンを使った戦いがとにもかくにもおもしろい。

・で、セーラー服に、ナギナタの竹刀や剣道の竹刀を持ってスカートを翻して戦う。サバゲーのほうは学ランにモデルガン。足にホルスター。ほら、体育会系のニオイがしないでしょ?

・しかも、負けたら「なんでもいうことを聞く」というルールによって負けた生徒会女子がコスプレしたりしてねえ。2度美味しいわけです。

・そういうノリですし、オビにあるように、パンチラやらそういう「オタクい」お色気サービスもあります。ただ、怒涛のアクションシーンのほうに目を奪われがちですがね。

・この状況でこのルールだからこそ成立する戦いってのがまたおもしろいんですよね。実際、モデルガンや剣やナギナタがホンモノだったらこのアクションは成立しませんもんね。遠くからバキュンで終わりですし。そんなバトルロワイアルみたくないし。

・余談!

・こういう文化部と生徒会のバトルったら文化部マンガの永遠のマスターピース「究極超人あ〜る/ゆうきまさみ」がありますね。あれも、生徒会vs文化部のサバゲー対決で、そこでの「健全」なルールがかなりいいアクセントでしたよね。

・余談終る!

・本作の短所はそのアクションシーンにもありますね。アクション描写は完璧ですがなにせ長い。グダグダの「グダ…」ってほど長い。ページ数にして300ページオーバーで4回のバトルってのはどうよ?と。本腰入れて圧縮すれば1巻に収まりそうよ。構成ももうちょい詰めることは可能だと思った。

・あと、メガネ見本市なだけあってもキャラを見失うことはないですが、名前は見失ったね。「月島秀人」がだれかわからなくてややストレスった2巻でした。登場して下に名前が出るだけで覚えさせるパターンでしたのでね。

・生徒会長がかなりかわいくて「ツンデレ」の「ツン」を演じ切れてない。主人公やサバゲの部長の性格を掌握しにくい。生徒会役員の女性がヒス気味。全キャラは内面でもうちょっと色分けしてコントラストをはっきりさせることができたような気がする。

・それぞれのキャラの目の下の「巨人の星」の幼少時の星飛雄馬のような「ヒゲ」はなに?とか顔にトーンが多すぎてロケ地はフィリピン?とかいろいろとツッコミは搾り出せます。

・でも、「一気呵成」です。しかも読み終えたあと「ほおおおお」と声をあげたくなるくらいでした。スピーディーに息をつかせず読ませるのですよ。

・よくできてます。それにしても生徒会長がかわいすぎ。短所でもあるけどカワイイことが長所にならないワケがないじゃないですか。カワイイでいえばカバーとったシカケがまたカワイイなおい。ちょっと赤面したですよ。

・かぎりなくオススメしたいところですが次回作がもっとすごくなりそうなので。というか2巻でややグダグダ感が増したので。たもりただぢという名前は覚えました。
(18:37:23)amazonamazon

2007年/2月/23日
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「ロリコンフェニックス」1巻 松林悟(富士見書房/角川グループパブリッシング)

・オビが「ニニンがシノブ伝」の古賀亮一氏。あー、「ぱにぽに/氷川へきる」の1巻のときのあずまきよひこ氏のオビコメントのようなもんね。「公認」風味をかもし出すというか、四の五のいわせなくする効果があると思われますよ。

・ということで、古賀亮一氏の作風に濃く影響を受けているギャグマンガですよ。

・美少女小学生を狙う謎のBL団。それに完全と立ち向かう正義のロリコン鳥のフェニックスとの戦いを描いたギャグマンガ。BL団もフェニックスもおかしな男ということで一致。ビジュアル的には鳥のマスクを被った半裸サスペンダーの男がフェニックスで、BL団も似たようなもの。


「変な人とかわいい女の子が生き生きしてる漫画」


・前記の古賀亮一氏はオビにうまくまとめてありますよ。そう!すなわち、古賀作風。おかしな男にカワイイ少女がメインで進行していくショートギャグ。

・そう考えると本作は、本作が存在することでかえって古賀亮一氏の完成度の高さを知らしめるデキになっています。残念なことですが。とくに残念なのが絵かな。絵をはじめとしてすべてがワイルドピッチ気味ですね。

・ただ、1点勝っているところがありますし、そこのところにすごく将来性を感じますし、「脱古賀」への突破口となりうるのが、「動いている」ということです。かなりアクションが豊富でフェニックスとBL団の戦いを軸に「ドタバタ」がイイ感じですね。身体を張った笑いですか。

・ただ、その「動いている」という長所そのものが全体をややワイルドな方向に持っていきがちなところがネックなのかしらね。長所でもあり短所でもあるというか。

・同じ下ネタを持ってくるにしても、なまじキャラが動くものだからより派手に下品に映るんですね。古賀作品ではあまり女性キャラは「汚れ」をしないのですが、本作の小学生ロリキャラはかなりいろいろな目に遭います。着替えシーンあり、入浴シーンあり、フェニックスの股間に顔をうずめたり、スカートめくりにあったりね。うーん、これってひょっとしたら作者の性癖に関係があるのかしらね。本作はエス気味かね。


な!!コイツ パクったケロ!? 経験の差を思い知るケロ!!


・ま、本書でのセリフですが、おれの書きたいことを代弁してくれてます。古賀作品の下ネタにあって「セーフ」だったり「OK」にしたサジ加減はやはり経験のタマモノだったりするんですよね。
・あとは生来持ち合わせてる「品」かもしれないなと思ったりもします。

・もっとも下品がえらいとかダメってことじゃないです。この場合、下ネタの練りこみ具合が足りなくて、下ネタにスジが通ってない感じが青かったり苦かったり若いってことでね。それらが引っかかるということです。ライナーから手で力任せにむしって作ったプラモデルのようにバリがあちこちにあるなあと思いました。チクチクするんですよね。それが新鮮だったりもしますが、おおむね「雑」という1文字につながりがちです。

・とくに脇役のぞんざいさがややひいたりしますね。母親やら警察官の描写はあんまりすぎる気が。昭和50年代やん。というか、そもそも母親は本作においてけっこうキーになるツッコミ役であるのでもうちょっと作りこむか、あるいはいないものにしたほうがよかったんじゃないかと思うのですがね。限りなく中途半端。

・ただ、んなこといいつつも、爆発力や可能性を感じられます。というか実際に起こっている。動きが基本のギャグはそれがなんであれドカーンとくることが多いですね。

・ま、でも、ネタやギャグより、とりあえず女の子を可愛く描くことを至上目的にすると早いと思いますよ。そこに関しては現状はっきりと低レベルだと思います。タイトルが泣きますよ。「ロリ」の最初の2文字でもう過敏反応してる人の醒めていく音が聞こえるようです。プシューと。

・んで、個人的には銭湯のタオルネタが好きだったり。


お前はカンタンでいいな…


・セリフはこれが好き。

・そもそも、このあけすけで救いやフォローがなさすぎるタイトルもどうかと思ったり。そういった意味も含めてチクチクするよなあと。

・2巻まで買おうかな。
(18:08:32)amazon

「グレースケールチルドレン」1巻 あきづきりょう(メディアファクトリー)

・高校生プロマンガ家の青春ストーリーです。学校ではマンガ家であることをナイショにしておりますが下級生の女の子が年齢をごまかしてアシスタントで入ったり、同級生のコがいてパンチラがみえたりです。あと、姉がいたり、ボインの師匠(近所の小説家)がいたりします。そいで悩んだりよろこんだりオッパイむにゅっとしたりパンチラみたりしてる青春です。

・かと思うと毎話、なんかよくわからないモノ(女性がパワードスーツを着込んだ風)と、ロボット風な敵と戦う話がだいたい後半にインサートされてます。たぶん、姉がそのパワードスーツ着て戦ってるんだろうと思いますが。

・すごくブレてる。絵がブレてるし、設定も話もブレてる。

・わりにイマドキ珍しい、トランプのスペードを逆さまにした、丸いほおにチクチクのアゴなりんかくで、アゴ自体が「アイーン」とばかりに前面に突き出してる位置に首があるって1980年代な絵です。もちろん、目の中の処理や、女体の影などのトーンワークは今のそれですが。
・のってもそっても「大胆だなあ」とだけ思うコマ割りに、「お遊び」な書き込み過多で、背景は省略するとき唖然とするほどデフォルメったり、もちろん、いわゆるデッサンは合ってるのが少ない感じです。そういった意味じゃものすごく随所にひっかかる絵。

・勉強とマンガとどっちを取るってシビアな話があったり、海水浴でひたすらイタズラタコを追いかけるって話があったり、かと思うと、主人公の生活に前記の戦いパートが食い込んできたりする展開もあります。ここいらを「ナンデモアリ」ととるか「試行錯誤」「実験」と取るか

・んー、正直、戦いのところは100%よくわからないし不要かと思うのです。ヘビの足の靴下のためのソックタッチくらい不要。このように設定に「滑り止め」みたいな複雑な構造にする「いたずらに複雑」ってのはオタクな作風の方の必須条件ですからね。

・それらすべてでもないけど、その複雑やブレも含めて作者のサービスじゃないかと思うのです。作者の持ってる「エンターテインメント」をありったけ搾り出してぶちまいているのですね。そこには好感であります。

・だけど、意図的?と思うくらい荒くて粗いのはなんだろう?

「もっと描きたかったことがあったんですが…」ってあとがきにあるような終わり方になりそうな予感が。

(12:51:22)amazon

「逃亡日記」吾妻ひでお(日本文芸社)

・意外にあちこちで山積みだったりするのです。これまでの吾妻ひでおを知らない人が食いついてるんだろうなと思います。
・本書は描き下ろしマンガがちょっとであとほとんどインタビューというマンガ内で言及されているとおりの「失踪日記」の便乗本ですね。

・ま、ここはポトチャリポラパの「コミック」のところなので、前口上の「受賞する私」と「あとがきな私」をメインに取り上げて、また愚にもつかないたわごとをドロドロと吐き出していこうかと思っているのです。とりあえずマンガの前にある「MANGA」という表記はヘドが出そうなので止めてほしかったなあ。
・あ、そうそう。この本の1番ダメなところは装丁やデザインな。なんだかセンスが感じられないなあ。グラビアもなんだか変な色合いだし。

・失踪日記のときの話より、マンガを軸にざらりと半生を振り返るところ、Chapter3〜5までがそれですね。
・それによるカッコたるマンガ観を見受けられますし「不条理日記」というタイトルのマンガを描いておられたわりにアンチ不条理ギャグのスタンスを持っておられるのがおもしろい。鴨川つばめ作風を全否定。

・そして、それを踏まえて「受賞する私」を読むとすごくおもしろい。失踪後からどんどん全盛期(うーと、スクラップ学園の2巻くらいか)の絵のキレがよみがえりつつありますが、内容的には失踪日記時のものに留まっているのがすごくおもしろい。普通逆なんですよね。
・ちょっと前(っても10年くらい経つか)に流行っていた復刻マンガブームは、すでに「ジャンル」として続いております。ちょうど昔の音源のCD化みたいなもんか。
・それを受けて、当時の人気作を現在のマンガ家に描いてもらう復活企画が一時流行りました。こっちのほうは2〜3の生き残りや復活成功者以外は消えかけてる流行ですね。

・これらはすべて往年の絵ではないんですよね。ずっと現役の人でもそうですが、当時のタッチは損なわれるのですね。それは流行り廃りや技術の推移、道具が変わる、あるいはCG化などのテクノロジーもカンケイするかもしれませんが、当時の絵を再現できる方は、いつの時代の絵も描くことができたらしい手塚治虫氏のような天才か、ずっと同じタッチの絵を描き続けた人だけです。

・ただ、話の内容はわりあいと当時の雰囲気を出すことができるんですよね。コマ割りとかギャグの間とか話作りのクセのようなものは劣化というか変化しにくいようです。

・ところが、吾妻氏は、モトがすごかったのもあるし、今にして思えば「ななこSOS」の後半より徐々にキレが悪くなってきてたのかもしれんなあ。

・で、失踪日記のときに1回リセットしてる感じ。今やれるノリを重視している。だから、同人誌とか、ハヤカワ文庫版の「ななこSOS」なんかのあとがき描き下ろしショートコミックのノリは当時とはちがう。ま、まだ絵のキレもすごく悪いころですが。

・それはものすごく厳密にストイックにそうしてるというより現状「自分が1番おもしろいものを描く」というすごくシンプルなシバリに忠実なだけのように思える。

「受賞する私」。「失踪日記」により3つの賞を受賞したときのレポートマンガです。かなりの有名人が出演されますが、この似顔絵がすごくおもしろい。
・マンガ家の描くマンガ家の似顔絵には、一定のパターンがあるというか、当人の描く自画像を尊重してそれに準ずるって伝統があるように思えるのですね。たとえば、手塚治虫氏の似顔絵にはベレー帽みたいな。本作だととり・みき氏が登場しますがカラクサの風呂敷に、レイバンのサングラスに横分けではないですね。すごくチョイ悪オヤジのイイオトコに描いてあります。伊藤理佐氏も、けらえいこ氏もしかり。んでもって、なぎら健壱氏や松本零士氏などを見る限りけっこう写実的であることがわかったりしますよ。

「不条理日記」で安彦良和といっしょに登場した高千穂遙氏もすっかり今の自転車オヤジの顔になってましたしねえ。

・そもそも、吾妻氏本人が巻頭グラビアのとおりすごく似ていらっしゃる。ま、あの出自がよくわからない両目の大きさがちがうところはともかく。

・あ、あと重箱のスミを書かせてもらうと、「金平 de R」 金平守人(エンターブレイン)での、「失踪日記」パロディで描かれていた「エマ」の森薫氏が、本家でも描かれていておもしろかったなあ。美人ってことでFA?

・で「失踪」以後の最大の特長は読み応えが増したことかしら。1ページ1コマの情報量が格段に増えたために読み応えがすごくある。それがこれまでのノリやグルーブを損ないがちだった弱点も、いつしか飲み込んですごくおもしろくなっている。その間などに昔のエッセンスがみえかくれしてるところなんか絶妙。

・だから、往年のノリとは微妙にちがうのですが、絵だけは往時に近づいてるというおもしろい状況です。50歳過ぎて右肩上がりです。今は久しぶりにけっこうなファンになってる自分を発見しますね。とにかく吾妻氏の新しいマンガが読みたくてたまらない。このままじゃ連載雑誌とか探して読み漁るようなマネまでしそうだ。

・インタビュー集も、「失踪日記」の最上のサブテキストたる出来栄えではありますよ。
(15:17:24)amazon

2007年/2月/18日
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「恋する放課後」槍衣七五三太(コアマガジン)

・久しぶりの成年コミック紹介しますよ。

・早速ですが、コピーを思いつきました。

「エッチのとき、彼にだけみせる笑顔を描くことができるマンガ家」

・と、基本的にラブラブなカップルのエッチが上手い作家だよなあと思います。
・本作では、陵辱系も半レイプモノもありますが、やっぱりカップルが愛を確かめる目的でいたしてるのが断然いいですね。

・エッチシーン自体よりも、そこにいたるまでと、そこにいたってからでも、恋人同士ならではのやりとりがすばらしいですね。そこが本作の価値を高めています。真骨頂ですね。セックス自体の快感よりいちゃいちゃしてるときの快感を描いてる。

・とくにおれが最初にであって「買おう!」とココロに誓った「せんぱいのバカ」が最高にいい。完璧ですね。学校を舞台としたマンガで、変化球でもあり直球でもあります。初っ端にこれをもってくるところ、自信作なんだろうなと思います(ま、雑誌掲載の逆順?って気もしますが)。

・体育祭で学ランを着て応援団をやることになった本田ちゃんが、いつもサボってばかりいる先輩を探しに保健室に。学ラン姿を先輩にみせる目的ですよ。いつものように人のいないところでサボる先輩に説教しつつも、結局、ホレた弱みでエッチがはじまってしまう。そこにいたる展開。

先輩(説教されて)「褒めてんだよ?かわいいと思うよ。本田ちゃんのそういうところ。だから本田ちゃんの事好きになったんだよ」

本田ちゃん(ドキッとしながらも気を取り直し)「ま、まぁ人は自分にないものを他人に求めると言いますしねえ〜」

先輩「ほほう 言うようになったじゃないか」

本田ちゃん(いーだの顔で)「先輩に毎日鍛えられてますからねえ」

本田ちゃん(のびをしながら)「…でも、もう少し休憩するくらいならいいかな〜 なんて…」

そして、先輩が寝ているベッドの小さく「ちょこん」と座り「えへへ〜」と笑います。


・この「ちょこん」ですよ。この近くに座って甘えたいという感じ。でも、まじめな本田ちゃんだから、小さく座ります。そしてテレ笑い。

・この2pがあるかないかでマンガとしての質はぐっとちがうのです。ここもエッチのバリエーションにするという手段もあります。2pあれば1回射精シーンを描くこともできますしね。だけど、このシーン。2人の距離感にカンケイ、あと本田ちゃんのかわいさ、ぐっと奥行きを醸してるんですよ。

・学ランを着ている女の子とエッチなんて変化球も新鮮でいいですし、これが突拍子もないわけじゃないありうる学校の風景だし、体育祭という風物詩もあり季節がわかるし、人気のないところでエッチという、学園モノの最大のネックである「たくさん人を描く」というのも回避できる。まあ、それでも風景とかないマンガだよなあとは思いますが。下手な風景描きこみすぎて違和感アリアリなのよりはマシか。

・つづく「やさしい恋人」では、小さい女の子と、大きい男の子の学生カップルの話です。

「メル ブルックスのサイレント ムービー」というサイレントムービーのパロディ映画さながらに、小さい女の子はシャイなのでヒトコトも発しないまま(エロマンガなのであえぎはするんですが)物語が進行します。そして、その映画同様、唯一ヒトコトだけ発するセリフが大変いいんですよね。これもがんばってがんばってしゃべらせなかった。

・かように作品はそれぞれ上手いとしかいいようのないアクセントがいくつもかませてあります。エロマンガ自体のバリエーションにもつながりますが、それよりも、エロマンガのエロシーン以外での工夫やアクセントがすばらしいと思いますね。

・それは1話だけ浮いたようにある陵辱系「大高平の一族」でもそうだね。花嫁のお色直しに、親族に強姦されるって話ですけどね。
・完成度は高いけど、やっぱり、ラブラブカップル話で統一してほしかったなあとは思います。再読したときは読み飛ばしたし。

・絵としてはPC処理で、ツリ目でおっぱい普通に大きい。エッチシーンにアブノーマルなのは少な目。エロポインツはなんだろう。わりとそれも目立つものがない感じです。無毛があるか。上記の「せんぱいのバカ」と「やさしい恋人」以外は、普通に発育されている女性ばかりですが、無毛です。というか、女性ばかりじゃなくて男も無毛。といっても尼さんと坊さんがいたしてるって意味じゃないですよ念のため。

・あと、女性陣はなんとなく後藤真希氏を連想させました。もちろん整形前の。

・成年コミックはダテじゃなく、そのシーンはとても気合が入ってますが、たぶんに、槍衣氏は、そっちじゃないところを描きたい欲が高いと思われます。つまり、カップルのイチャイチャだけで終るようなの。

・ま、あとがきに添えてある本田ちゃんのとびきりの笑顔が最高です。それだけでも買ってよかったなあと思います。本田ちゃんはわりと槍衣キャラのパターンからはちがうのですけど、このまま活躍できるようなポテンシャルを秘めてる気がします。
・実用にはむかないかもしれませんがいいエロマンガです。
(11:44:07)amazon

2007年/2月/13日
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「かんなぎ」 2巻 武梨えり(一迅社)

・2巻です。ノーマークで1巻を買っておもしろくて心待ちにしていた2巻です。だけど往々にして「えー……」と意気消沈してしまいがちな現代マンガ界です。本作は意気消沈することはなくてとてもよかったです。

・神木から生まれたナギさんと暮らす少年。あとモロモロでハーレムマン風な広がりをていしてきているコメディです。もう「伝奇」とかカンケイねえんじゃないの? それより居候ギャグマンガのほうが似合っているような。

・そう最大にして数少ない難点は、物語全体の行く末ですね。どこに向かっていくのか2巻でもよくわからなかった。ということは3巻でもわからないのか?というイヤな疑問が。

・あと思ったのはなにげにマンガで最重要なのはコトバということですかね。

・本書の絵の美味さは1巻から引き続いておりまして、老若男女すばらしく描き分けており、学園マンガで、数々の魅力的な女性を描いており、それでなお主人公のナギさんのぬきんでたかわいさを表現できているところです。あだち充にも高橋留美子にもできないスキルです。

・たとえば、白亜というナギさんの妹が登場されます。2巻の表紙になってますね。このトモダチ2人の描写。彼女らをああいう風に描写できるのがスゴイですね。カッコたる人物描写の力量がないととてもムリなことです。

・白亜、つぐみ、ナギと美人3ショットにありながら、それぞれちゃんとちがう魅力を兼ね備えているってのもすごいことですしね。

・そして、コトバです。美味い絵に美味いコトバがないと美味い女性描写とならないのがマンガの難しいところです。

・もっと話を大きくします。日本のマンガが世界のほかのマンガ(ってほどくわしくないし、実際問題発展してないだろうけど)よりぬきんでているところは、コトバにあると思います。

・だれが発明したのかよくわかりません。たぶん、手塚治虫氏が発端になり、広げていったところであることはまちがいないんでしょうが、マンガのキャラは、その台詞をいうための表情でそれを喋ってます。


「何それっ!?」


・2巻27pのつぐみさんのセリフです。仁が食パンにソースをかけ、ナギがうまい棒具に食パンをロールして食べているサマをみていったセリフですが、まさに「何それっ!?」以外にあてはまらない表情をされております。

・ま、それだけじゃなく、コトバ使いのセンスがまた絵以上にすばらしいのが本作のありがたいところですね。
・ナギさんはいわゆる昔のお姫様コトバなんですよね。「妾(わらわ)は〜じゃ」ってのね。この使い方の自然さは驚異。ときおり混ぜる「アホ助」「ソース魔人」「シャットユアマウス」などの崩れたコトバがズバンと決るんですよね。

・まあ、100%といえるのですが、コトバ使いが下手で売れているマンガ家はいませんからね。絵のそれより確実です。「絵が下手」というマンガと「絵だけ」というマンガだと前者のほうが売れている可能性は高いです。モノにもよりますけど。
・調査中で結論は出しませんが、一見、真逆のようですがエロマンガなんてのもコトバが重要だったりすると思うのです。最重要かどうかは微妙だしいろいろな要素があると思いますが、エロい絵が上手ければ売れるって単純なものではないようです。

・そういえば、本作、エロ方面でもかなり強まりましたね。 主人公がお姫様口調っていうか、神様ってことで共通している「神ぷろ。/國津武士」にもありましたが、貧乳なのに胸の感触に主人公ドキドキってのはトレンドなのでしょうか。なんとはなく「おおっ!」て思ったですよ。まあ、國津武士氏の場合はその道一筋のプロなんですがね。

・ということでおもしろかったです。ナギさんがとてもかわいい。この先、キャラ以外のところでひっぱるなにかを期待。そう、期待させるマンガなんですよね。
(18:28:17)amazon

2007年/2月/12日
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「警察犬キンゾー」 1巻 佐々木恵(集英社)

・月刊少年ジャンプで爆笑連載中の警察犬マンガですね。爆笑ってほどギャグはない気がします。

・人間嫌いの雑種野良犬キンゾーが交通事故に遭い、警察犬訓練所の職員に拾われる。そして、警察犬としてその拾った新米と努力する。

・監修がついており警察犬や犬そのものの知識も豊富にちりばめられながらも「マンガ」なところは極力マンガということで展開していきます。
・たとえば、警察犬の適正がある犬種というものは7種類に決っており雑種はありえないとか。そもそもキンゾーはすごく小さな犬ですしね。

・動物の設定でいうと、動物同士は会話できて、人間とはできない。たまに二足歩行したり手を使ったりもあるって、かなりユルイです。

・で、毎回、事件に巻き込まれては、キンゾーの持つ危険をかぎわけられる特殊能力で結果的に活躍するという展開。

・2冊出した読みきり集がおもしろいので購入を踏み切りました。この2冊の読みきり集で動物が登場するマンガの評判がよかったので動物マンガにしてみたそうです。

・その読みきり時からの変化というと、より「ONE PEACE」の影響が濃くなってることと、女性キャラがとてもかわいくなったことかしらね。こうみてみると、ONE PEACEってのはいつの間にか道の真ん中にいるし、みなから目指される位置にあるんだなあと思うです。あまりにも新しいことをしてない作風なので気づきにくかったですが、それだからこそ王道ということでもあるんですねえと、そう認識してましたが、本作を読むことで、それなりの「ONEPEACE」芸風みたいのがあるかしらと思いました。バックに「ドン」って描いてあったりするの。

・ただ、絵自体が似ているワケではないです。どこかでみた流れだと思いますが今は思い当たりません。そして正直、絵の魅力が大きいわけでもないです。ただ、短編集からは格段に画力がアップしましたし、紅一点のエリート訓練員の女性はすごくイイです。全体的にはとても丁寧ですが、「ヘタじゃん」といわれがちな絵ですね。そんなことはないんですけど、いわれるだろうなとも思わせます。あと、キンゾーをはじめとして動物描写もいいです。良くも悪くも昔の少年漫画誌。もっというと、月刊少年漫画誌の絵ですよ。

・そう、話もそうなんですよね。リアル一辺倒でもないし、マンガ的過ぎるわけでもない。まあ、昨今の基準ではマンガ寄りかしら。

・ああ、ものすごいぶっちゃけてシンプルに評価させてもらおうかしら。
・おれが中学生のころだったなら、「週刊少年ジャンプ」でも連載できたかもしれないクオリティ。

・いや、でも、今こそ、本作みたいマンガマンガしてるマンガが人気でてアニメ化するとおもしろい世の中だと思うんですけどね。

・ぼくは気にいりました。月刊少年誌を定期購読してる方や、していた過去がある方は、おれのこの気に入る感覚をわかっていただけると思います。
(17:50:27)amazon

2007年/2月/9日
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「大江戸せくすぽっぷ」 1巻 中津賢也(少年画報社)

・ヘンなマンガ。
・舞台は江戸時代。性交人形、すなわちダッチワイフがある江戸。人形といえども、魂を込められるのでアンドロイドかしらね。不慮の事故で人形になった妹と、魂をヤリトリできる男がいろいろな事件を直面するってコメディです。

・ここいらの設定のすべてが謎。ベテランの方なので、スムーズなマンガではあるんですが、その当初の設定は、なんでそういうことを思いついたのかよくわからないんですよねえ。江戸ってのもわからないし、あきらかなオーバーテクノロジーの性交人形。それらに魂を吹き込むという展開。
・たとえば1話紹介。
・性交人形の夜鷹が噂になる。サムライを特に好んで商売する。彼女のちょっと変わった趣味として、事後、背中を切りつけてもらっている。それは生身の人間だったころ、自分を無礼討ちしたサムライに復讐するためだった。

・と、柴田昌弘氏のお祝いマンガ(オビもコメントしてる)のとおり、そういう設定だと、エロエロなマンガになりそうなもんだけど(せくすぽっぷはオランダ語でダッチワイフのことらしいし)、実はそういう要素が限りなく薄かったりするのがまた不思議。かといって、まったくないわけじゃなく、関節がいかにもな人形と性交してるってシーンもいくつかあります。最後の妹人形がおかしくなって兄をレイプしようって話はかなりエロかったしさあ。

・そういうサジ加減が絶妙なんですよね。ベテランだよなあと思いますし、それにしてもヘンなマンガだよなあとあらためて思ったりもするのです。(16:26:41)amazon

「働け!メモリちゃん」 2巻 若狭たけし(集英社)

・衝撃の1巻から1年くらい。グダグダOLギャグマンガもついに2巻目を迎えることになりました。1巻のノーマークからの破壊力は薄れたものの、独特の味わいは2巻でも健在のままでした。

・2巻ではよりギャグマンガの容貌がこなれていた感じで、1巻での普通のマンガを描くテクニックでバカギャグマンガを描いているというヘンさは薄れてよりギャグマンガとして素直に楽しむことができるようになりました。ま、痛し痒しなんですがね。

・相変わらず、「さわやか下ネタ」とかオビにあるように、ストイックさが緊張すら漂うくらいにあるエロの線引きもおもしろかったりねえ。エロを避けてるからこそ余計に目立つエロとかねえ。

・2巻では、メモリちゃんがクーラーが効き過ぎて寒いからって部長から借りた寝袋に入る話がエロい。寝袋のジッパーが壊れて出られなくなったところにオシッコにいきたくなる。だけど、寝袋から出られない。だから、応急処置として、顔を出すところにお尻を出すというシーンがありまして、それが思わぬイイトコロに入りましたよ。「なんかいいね」と部長がおっしゃったとおりです。

・ギャグとしては、大ゴマ使ってメモリちゃんに千昌夫のモノマネさせるってのが、かなりたくさんのクエスチョンマークが頭に浮かんだいいギャグだと思います。

・相変わらず、このマンガの周囲にはなにもないねえ。つまり、似てるものがありそうでないってことです。荒野に建ってる一軒家ライク。
(17:27:12)amazon

「発明軍人イッシン」 1巻 阿倍秀司(秋田書店)

・もしもシリーズか。

「もしも、少年チャンピオンでドラえもんが連載されていたら!」

・ま、それだと、実は「おまかせ!ピース電器店/能田達規」があるんですけどね。それよりは秋田書店っぽいです。というか、秋田書店と少年画報社の藤子不二雄割り当ては「A」氏でしたからね。

・南極に氷付けになっていた潜水艦に生き残った少年が東京の孫の家に居候することになりました。彼は16歳の少年でありながら超天才でいろいろな発明をして、どうしようもないDQNのひ孫を「助ける」というテイで実験体にしてクククと笑うという、居候ギャグです。

・全16巻の「番長連合」というのを連載しておられたようで(未読)、いわゆるヤンキーケンカマンガの絵柄で、モロ「チャンピオン劇画」とでもいうノリでいながら、最後には大爆発する発明ギャグという組み合わせのB級感がまたさらに秋田書店色を高めます。おれの「チャンピオン」感は、ヤンキーケンカマンガと、あとエロいマンガと、浦安鉄筋家族です。それにばっちり合致。

・これのいいところは、この軍人クンもたいてい爆発に巻き込まれてヘロヘロになって終るというところで、発明品を悪用するやつは痛い目に遭うという藤子F不二雄氏が提言したセオリーをちゃんと遵守しているところです。
・この軍人、天才だけど、かなり根性が腐っていて、自分の発明品はかなり私利私欲のためです。でも最後に爆発することでそのしっぺ返しを受けるという健全機能が働いているのですね。そこが少年誌連載。

・しかも、各キャラクターの根性がだいたい腐っていて、なおかつだいたいひどい目に遭ってるのがまたおかしい。ジャイアン役もしずかちゃん役もひどい目に遭ってるんだよね。そこいらはドリフのコントみたい。というか浦安鉄筋家族的か。女性キャラも平等にひどい目に遭ってるしね。あと冒頭の「もしもシリーズ」ってドリフだし。

・で、劇画の絵で、しかけが大きいので、思わぬ破壊力が生まれていたりする。

・いい意味でも悪い意味でもバカだねーとニヤニヤしながらよむマンガですね。
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「特攻!メイドサンダー」 1巻 やぎさわ景一(秋田書店)

「ロボこみ」の人の次回作だった。何度か、書店で手をとっては、「メイドのギャグか。ありきたりかな」とスルーしていて、あるとき気がついてあわてて手にとったのです。そうしたら、やっぱ「ロボこみ」の人のマンガだからよかったのです。

・親が仕事でいなくて1人暮らししている高校生のボクのモトにメイドさんがくることになりました。でも、そのメイドさんは特攻服を着て、さらしを巻いて木刀を持った女性でした。

・ということでの、ヤンキーがメイドという構造のギャグマンガですね。

・いや、実際、ものすごい弱い設定で、なおかつ、メイドさん自体、ヤンキー体質の性格なこと以外は美人だし巨乳だし仕事はバッチリだし、ガラッパチなわりにややツンデレ傾向にあるという、かなり高いレベルの設定。なおかつ、主人公になる高校生も普通のいい性格。なんで、逆にさらにキャラとして弱かったりするんですよ。

・だけど、おもしろいのがやぎさわマジック。

・すごく丁寧に手堅くおもしろさを積み上げていくんですよね。キャラもゆっくりと増えていくし、そのキャラもじっくり丁寧に描かれていきます。この手の地道に話を紡いでいく方も秋田書店には意外にったら失礼ですが多いですよね。

・いわゆる主人公を好きで、メイドと2人暮らししてることにヤキモキしてる正統派ヒロインのコの微妙なゆがみ具合(妄想好きのゲーム好き)や、メイド斡旋センターの別のメイドは「武士道」なメイドだったりとかねえ。

・基本、性善説の作者のようで、いい人ばかりが登場します。みんな腹黒い「発明軍人イッシン」とは好対照でありますね。

・ということで、表紙がやや誤解を生む感じだったのが残念ですね。
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「アイドルのあかほん」 1巻 氏家ト全(講談社)

・1巻のようですけど、完結してるっぽい。

「妹は思春期」「女子大生家庭教師濱中アイ」の作者の新作は、アイドルを描いたものでした。
・小学生中学生高校生の3人組アイドルグループの日本一下ネタがエロくないギャグマンガ。

・1巻で終ったということもあるけど、正直なところ、「妹は〜」も「女子大生〜」も、見失いがちだったキャラが本作では見失わなかったのが大きいね。
・今回、ギャグを減らしてもキャラを掘り下げるというパターンを選び、それが功を奏している感じ。
・10歳だけど芸歴9年。妙な下ネタを使う(陰毛がらみが多い)ユーリ。元気で元気に下ネタを繰り出す女子中学生シホ。普段無表情でいざとなるとアイドルスマイルの女子高生カルナと、バランスも取れていた。

・でも、1巻で終ったっぽい。じゃあなぜ?と思った。やはり下ネタが少なめだったのが敗因か。氏家ト全マンガを全力で使用する人っているのか? まあ、ほんの奥底でコチョコチョ程度にくすぐられるところはあるような気はするけどさ。ま、それにしても今回は少なめだったのかしら。ここいらのサジ加減は難しいね。

・そして、たぶん、多くのファンは、その微妙さを愛しつつも、「おれは好きだったんだけどね」という評価を下しそうな気がする。もちろん、おれも含めて。
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2007年/2月/5日
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「やっぱり心の旅だよ」 福満しげゆき(青林工藝舎)

・あまり、福が満じゃない作風の方の最新作は、エロマンガ集でした。満が「マン」だったと。オヤジギャグですみません。

・オビの書いてある「いつもと同じような短編」が2本続いたあとエロマンガ編に突入します。

・掲載誌も「ウォーA組」とか「跳んデモ!!女のHな話」とかそれっぽいところです。


「たとえエロマンガでも、ちょいと個性を出したい」


・という理由で描かれたエロマンガと、「それでは売れない」と悟ってからのエロマンガと掲載されてます。ただし、悟った後のエロマンガには注釈があったりします。

・男は相変わらずジットリした感じの方々ばかりで、基本、女性恐怖症で、ままならない感じでエロマンガを展開してるのがやはり作者の持ち味なんだなあと。

・たとえば、「透視!!超能力青年Zと物体X」という作品では、下着姿の女性を老人とひたすら取り合う青年を描いてます。老人は女性を捕まえるなり、挿入しようとします。それを力ずくで止めた青年は劣情を催しては、これだとあの老人といっしょだと自制しますが、そうしてるうちにまた老人に殴られて女性を奪還されます。それを繰り返すというマンガです。

・いつもの短編「ツキノワグマ」では、売れなくて女房に愛想つかされたマンガ家の家に宇宙人が押し寄せてくるのを「ホームアローン」的に迎え撃つということですが、なんだかすべてうまくいかない。煮えたぎる油をかけようとコンロに火をかけたら、息子が気を効かして消火してたり、転ばせる目的でおいた息子のミニカーは踏み潰されて息子が半狂乱で泣き叫んだり。

「おねえさんのキック」では、長年ストーカーを続けていたおねえさんに告白したらOKされて、同棲を促されますが、そこで女王様と奴隷となり、どこかでひっぱりこんだ男としてるのを縛られた状態でみるという責め苦を受ける。このパターン、作者の他作品でもみたことがある。

・いろいろと考えたりしながらも、女性に対してままならい感は相変わらずすごいです。

・その一方で吹っ切れたかのようにズコズコやってるのは、ずっと乳首を隠していたグラビアアイドルがついに解禁したときのような、「ああ、いや、うん、そうかそうか」って気分になりますね。

・そうなんですよね。これまでの作品群で「この人のエロマンガっておもしろそう。女の子もすごくかわいいし」と思っていましたが、実際はそうでもなかったと。マンガではよくあることです。少年誌で描いていた人がいざエロマンガで描くとアレ?ってなるのって。

・だから、ちょっとエッチ気味ないつもの福満しげゆきマンガとなります。強固な個性はやはり揺るがないワケです。

・そして、1番は非エロでトリをつとめる表題作だったりするのです。中年男性の「旅」なんでしょうね、それを描いたものです。すごく溜飲が下がりそうでそうでもない作品です。

・ホームレスになったオッサンがホームレス狩りにあったけど少年たちを返り討ちにしてしまう話。この救いのないドロドロした暴力からは、「ままならない」けど意思を貫き通すって感動があります。だけど同時にそれはすごく大変そうだなとも思いますね。

・あ、でも、これ書くためにぺらぺら読み返したらエロいよ。うん。十分エロい。
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2007年/2月/2日
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「ぴよぴよ」 水上悟志(少年画報社)

「惑星のさみだれ」の作者の短編集2巻目。

・1巻が「げこげこ」だから2巻は「ぴよぴよ」ということで、露店から買ってきた「絶対にニワトリにならないヒヨコ」と少女とお父さんのギャグ大河3部作短編からはじまります。

・カブトと面と日本刀を常時身につけている以外は完璧な少女に告白される「魔界斬妖剣 ドキドキ地獄変」
・自分にしかみえない妖精「がんばってちゃん」と、妖怪「やめよーぜ」がいるダラダラ男子高校生話「がんばってちゃんとやめよーぜ」

・28歳の魔法少女が、作者の中ではおなじみの町(妖怪と人間が共存してる)で活躍する「サンダーガールと百鬼町」
・同じく百鬼町シリーズの「風穴頭と百鬼町」など収録されてます。

・まずオープニングの「ぴよぴよ」からノックアウトです。藤子F不二雄発(かどうか微妙ですが、とくに異論反論はないでしょ?)の「おかしな居候モノ」でありながら、3話でドンドン年月が流れていくというのは新しいですよね。1話は小学生。2話は女子高生。3話は結婚前日です。

・いわゆるモノノケがいる世界という図式がお好きそうなのは、前短編集や、もうしわけないけど読んでいない長編「散人左道」や、「惑星のさみだれ」でも重々承知しておりますし、それを描きたいがための工夫もビシビシと感じられます。すなわち商業価値を持たせることと書きたいことの両立というかね。
・それが本作では最高にこなれています。普通の世界でいながら、そこにおかしなものがいるという作品をうまく金の取れる「商品」として成立させてるすばらしい「作品」群です。

・そんな中、おれが1番好きなのはリプレイもので、モノノケがでない「えらぶみち」です。3日連続同じ夢をみる。そして3日連続同じ2月14日が繰り返される。それはなぜ?というモノです。作者のセルフ解説でもありましたが、短いページにうまくリプレイものを組み込んでます。

・たぶん、すべてのメディアにおいて時間モノってのは難しいジャンルじゃないかと思うのです。日本には(あと近隣アジア諸国もわりと)前記の藤子F不二雄氏がいますし、「ドラえもん」がいますで「時間」モノの認識率は世界でもトップクラスだと思われます。ただし、それでもなお表現する側としては非常に難しいネタではあると思います。個人的にはすごく「ひっかかる」ネタではあります。
・そして久しぶりによくできてるものにお目にかかることができたと思います。

・どれもあっさりしてる絵柄で、クールに進行するようにみえて、みんな熱血なんですよね。それがまたいい。

・ということで、1冊トータルで「いいものを手にした」というヨロコビに満ち溢れています。

オススメ
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「メトロ・サヴァイブ」 2巻 藤澤勇希(秋田書店)

・完結巻。地震パニックマンガだと、やはり2巻くらいが適当なのかなと思ってしまいます。ただまあ「こっちのほうね」という感じで、広げられそうなところは「肩透かし処理」でしたね。すなわち、まとまってましたが、やや打ち切り臭が漂う結果に。

・商業高層ビルの地下を走る地下鉄の中で大地震に遭遇。やっとのことで地下からビルの1Fに這い上がると地獄の釜の底にいて脱出不可能な状態になっていた。そして他の生き残っているものとの諍いの末、主人公チームは絶望の中、食料のない地下へもどることを余儀なくされた。

・2巻ではいきなりバイオレンス度が増し、バンバン人が死ぬようになってきてる。1巻でもたくさんの死者がいましたが、それは地震の被害によるものが多かったですが、今回は人が人を殺すということで、主人公グループが、上階にいるホストグループの非道な暴力におびえるという図式。
・つまり、残念なことに2巻では地震パニックマンガではなかったのです。ハイカラなコトバでいうとディザスターサバイバルね。

・ま、結果的に悪人はそれなりの目に遭うというカタルシスはちゃんと提供されてますし、ラストの盛り上がりも、メインの伏線もちゃんと活かしてあったので、まとまりはあります。ただ、細かいところや、このまま人気が出たら、あそこはああなって続いていったんだろうなあとかは随所にあります。

・なんていうかな、予算を使った超大作のVシネマって矛盾した感じがします。だから、逆に、気楽に楽しむことができますし、単行本2巻分で1200円くらいは十分にありますよ。
(18:42:27)amazon

「神ぷろ。」 1巻 國津武士(メディアファクトリー)

「カワイイ」絵を描くなと思いました。

・これ、「萌え」って表現したほうがいいんでしょうが、「萌え」というのはいろいろとはさんであるややテレ隠しの要素があると思うのですよ。「萌え〜」とか、本気でなにかに向かっていうって行為はおれ内にはないです。「萌え」という感情は理解しているつもりですが。

・おれはやはり「カワイイ」というのが反射的にきますね。感情としてダイレクトにカワイイが先走ります。

・で、まあ、本作は久しぶりにかなり強力にカワイイなと思いましたよ。

・おんぼろ神社の神主をやってる男子高校生。ある日、「神」が降臨します。戦神の「刀鳴(となり)」さんです。少女です。で、戦神じゃウケが悪くて賽銭など収入が滞るので、縁結びの神様になれるようプロデュースを申し出ます。そいで、男子高校生と神様の縁結び神社としての繁盛を目指せプロジェクトが始動するわけです。

・といって、その実、ハレムマンガ的に女性キャラが増えつつも、毎回「メイド神社はどうだろう?」的な思いつきに、イヤイヤながらもテレながらも、刀鳴さんはそのカッコになるというコスプレマンガでもあるわけです。

・いや、けっこうループな話でね。毎回、刀鳴さんと高校生がケンカしては、刀鳴さんがカッとして飛び出したりとか、いくつかのお約束があります。コスプレもお約束ですし。高校生も毎回殴られますし。それでいて全体的にロリ度数高目のお色気交じりのホノボノギャグです。

・けど強力にカワイイと。すべての批評点を「カワイイ」で上書き更新してしまうほど。はじめて「Dr.SLUMP」を読んだときのような感じ。正確には内山亜紀氏の「あんどろトリオ」のほうが近いかもしれないけど。
・そして、価値観の多様化とかを持ち出すまでもなく、今回は、上記の業界を揺るがしたほどの衝撃はないとは思われるので、ややおおげさなところを引き合いに出したことは認めますが、おれ内のビジュアルショックは同等です。

・あと、3作品とも「カワイイ」とは思いましたがそれがエロにつながってないところも似てる。「神ぷろ。」もお色気シーンはもともとパンチラと胸タッチくらいしかないんですが、それらも全部「カワイイ」に飲み込まれる感じです。「エロい」すら上書き更新です。

・まあ、おれだけの「カワイイ」だからしてオススメはしませんが、この全体を漂っているホノボノとした空気は悪くないですよ。
(19:31:17)amazon


・[ケージバン]