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ポトチャリポラパ/コミック/2007年
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2007年/7月
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2007年/7月/31日
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「トロイメライ」島田虎之介(青林工藝舎)

・解説の村上知彦氏のいうとおり、「まんがを読んでいる」ことを忘れてしまうマンガです。
・だから、おれはマンガ読みより、普段マンガを読まない人や、マンガに対してある程度の距離をおいてる人にこそ、書店で手にとって欲しい1冊だと思うのです。
・もっというと、映画的。これまでの作品もそうでしたが、本作はほとんど、劇場版アニメなんかによくある、アニメをマンガにしたオールカラーのコミックみたいのがあるじゃない(あれって「銀河鉄道999」が最初か?)? ああいうノリで、「映画ありき」の作品のように思えてしまいます。

・とくに、本作はストーリーが明確で、前作、前々作に比べるならば太い線が最初から最後まで引いてあるのが特長かもしれません。その分、映画的手法や、いつでも「カメラ」があること(でも、実際に実写映画化すると膨大な金がかかるトリッキーなカメラワークだろうが)を意識するような画面作りなどに入り込むこともできる。正直、前2作は複雑すぎてそこまで気がまわらなかった。

・ヴァルファールトというピアノをめぐる話です。
・このピアノは、20世紀初頭のカメルーンの木を切って作られました。そして、ジャカルタに渡りました。それが2002年に東京にあります。「壊れたのでなおしてほしい」。そう依頼を受けた調律師の戸田ナツ子さん。彼女はなにげなく鳴らした1音に心を奪われます。
・しかし、修理を依頼した人から不可解なキャンセルが。
・一方、カメルーンの呪術師が息子にいいます。「呪われたピアノが鳴らされようとしてるので止めろ」と。

・ジグソーパズルを連想しました。ゆっくりとなにもない空間に1枚づつピースが置かれていきます。最初は適当にバラバラに置かれていきますが、あるとき、そのピースとピースをつなぐ1枚がはまり、そこに何らかの図柄が映ります。それでなんの絵があるのか推測しますが、別のところのピースからはまたちがう印象の絵がみえます。そして、最終的には「こんな絵だったのか」と、1枚の絵が姿を表します。

・これまでの作品はルービックキューブのような複雑さがありました。それに比べると、ストーリーは1直線に徐々に加速をつけて展開します。

・そして、すべての謎にキレイな答えが用意されており、その答えはより大きな謎と感動を与えつつ、クライマックスへとつながっていきます。

・ジグソーパズルが完成したときに涙を流すことはないでしょ。そういうのとちがった感情の昂ぶりを感じますよね。読後感はそれに似てます。

・2002年の6月11日に物語はクライマックスを迎えます。2002年、カメルーンが日本で有名になったことがあります。思い出すことができますか? そう、ワールドカップです。このワールドカップが物語に非常に重要にからんできます。だいたいカメルーン代表といっしょに呪術師は訪れますしね。

・6/11にカメルーンはドイツと戦いました。ドイツは、ピアノのためにご神木を切っていった敵です。そして呪いがかけられてます。そして再びドイツと戦う前に、呪いを解かないと地球は終わるのですよ。そして、物語に関わる全員が同じ舞台に立ったのも6/11!

・奇跡の出会いが奇跡を生んだって感じですかね。
・その奇跡は作者の途方もないくらいの精密な作業により、丹念につむぎだされる。たとえば、少ないセリフの端々があらゆるところに「つながっている」感じ。絵もそう。いくつかの場面や時間をつなげるテクニックの見本のような細かさ。すべてが上質な滑らかさ。高いアイスクリームのような舌触り。

・一例を。ここでのポイントは「音」です。
・140p 壊れたピアノの本格的な修理がはじまります。イラン人のアブーがシロアリが食っているところを削ろうとノコギリをピアノにあてます。「きります」とセリフとともにノコギリが動きます。「ザッザッザッ」と音がします。
・142p ピアノの持ち主の過去に場面が変わります。ジャカルタ暴動の真っ最中です。持ち主のもとに不安そうな市民が大勢集まっています。彼らは心配そうにノイズ交じりのラジオを聴いてます。ノイズは「ザッザッ」と音をたてます。
・145p 持ち主は「(お客様に)もてなしを」と、ピアノを弾きはじめます。ここでラジオの音が消えます。人々はピアノに聞き入ります。曲は「トロイメライ」です。
・147p 「美しい音楽を聞いたよアブー」というセリフでピアノの音である音符が消え、アブーのノコギリを引く「ザッザッ」という音に変わります。ノコギリ1部のアップ。アブーの顔のアップ。ここで2コマだけ2002年の東京に戻ります。そして、見知らぬ男が前記のセリフをいってることがわかります。
・148p 画面は一変してます。アブーの回想による1980年代のイランになっています。そして、「ザッザッ」という音はノコギリを引く音ではなく、アブーがスコップで塹壕を掘っている音に変わってます。そして、見知らぬ男はアブーのイラン時代の友人で、アブーに向かって、楽しかった夢の話をし、その夢に向かうために殉教したいとぼやいてます。夢の話は、ピアノ曲「トロイメライ」に合致してます。


“トロイメライ”とはドイツ語のトラウム(夢)から派生した語で、「夢みごこち」といった意味です。( [クラシックMIDI ラインムジーク]より引用)


・つまり、ジャカルタ暴動におびえる民衆にいっときでも夢をみてほしいとの思いでの選曲でもあるわけですよ。

・149p またしても舞台はジャカルタになってます。ピアノの演奏は軍隊によって止められています。

・そう、アブーのノコギリの音、ラジオのノイズ、塹壕を掘る音、「ザッザッザッ」という音は、同時に軍靴の行進の音の暗喩でもあるわけです。

・ま、この後は読んでほしいのですが、頻繁な時空と舞台の変化がそれぞれのセリフや擬音や暗喩によってまったく違和感なくつながっています。そういうミラクルは随所にあります。しかも、それは100pはさんだ後とかにもありますからね。

・黒と白の2色が基本で、トーンレスな、イラストレイテッドな画質もさらに磨きがかかってます。シンプルな線のキャラクターたちの顔がおどろくほどの情報を与えてくれます。

・様々な読後の余韻があります。3回読みましたけど、読むたびに新たな発見と、新たな感動がありますね。また読み返す「気楽さ」があることがこれまでの作品に比べての最大の秀でたところかもしれない。読めば豊潤な物語と複雑怪奇なスイスの時計の内部のような構造ですが、奇跡のように入りやすい。

・くわしくないんで「ねーよ」とかいわれたらすみませんとしかいいようがないんですが、STUDIO4℃あたりが劇場用アニメとして作ったらどうだろう?と思うのですがね。

・あ、いっこわからんのだけど、結局、「白い呪術師」はあれで正解だったのだろうか? 有名なほうの呪術師はなにもカンケイがなかったのか。そこいらサッカーにくわしくないからなあ。

・ま、ともかく、「このはたごや」に、まだまだ忘れ物があるような気がするので何回も読み返すでしょう。答えは必ず本作内にありますし、あわてずにゆったりと読み返します。

・あ、こういう書き方すればひっかかる人いるかな。「今、手塚治虫氏がご存命なら、1番嫉妬する才能だろう」

オススメ
(19:30)amazon

2007年/7月/30日
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「気がつけばいつも病み上がり」安田弘之(秋田書店)

「ショムニ」の安田弘之氏の病気エッセイコミック。エッセイコミックで1冊ってはじめてかしら。そんな感じがヘンに思えるくらいキャラとして安田氏はおなじみな感じがします。それはたとえば、他作家の作品でも異彩を放っていたりしますからね。松田洋子氏のマンガとか。

・闘病エッセイです。病気に貴賎はないでしょうが、入院したり余命宣告がつくものではなく、毛ジラミからはじまって、水虫、痔、魚の目、と末端系が続いて、若い時期の鬱の話に向かう。そこまでいったら、ぶわーっと話題が拡散して、普通のネタもまざってくると。性格ネタ、前世診断体験、はぜ釣り、飼っていたウサギ、パチンコ等。
・もともと「アニマルプラネット」という動物のエッセイネタでいくつもりが、最初の動物に「毛ジラミ」を選んだのが運の尽きだったみたいで。ま、最後には飼っていたウサギネタになって帳尻が合うったらなんだけどね。

・安田氏のエッセイはけっこう文章量も多いし、吹きだし文字も手書きであるのですが、読みにくいとか、読むのに時間がかかるって感触がない。
・なんつーか、死にコマや死にネームをすごくうまく利用しているのが勝因なのかなと思ったりする。

・たとえば、18p。幼少時、ハチは抵抗しなければ刺されないとのことでハチがワンワンいってるところ黙って、「私は電柱」と暗示をかけてますが、「無理」というでかい囲みネームとともに刺されてます。そのときの「無理」という文字の大きさと、バックの絵の小ささなどのバランスが抜群に上手いよなあと思う。
・ほかにも随所にそういう画面の使い方の妙を感じるところが多々あります。

・内容としては、魚の目退治の話のグロさを担当編集のリアクションで表現する。
・水虫退治のクスリを飲んでないことを医者に怒られたとき、お気に入りの看護師とアイコンタクトで「怒られちゃったあ」ってするところ。
・若いころ、鬱をこじらせて失踪。富山県のK市(って黒部市?)の山中のプレハブで朽ち果てようとしてるネタ。もしかしたら、将来「ショムニ」を描く人は富山県で自殺するところだった?と思ったり。
・新興宗教にハマった経緯もすげえな。こんなに冷静に描かれると、かえって怖さが増す。

・あと、やはり思うのは、安田氏の描く人間はすべからく魅力的だということかね。とくに女性ね。前記の看護師さん、表紙のも同一人物なんだろうけど、エラがはっていて、線の目で、デカイ口と、美人と該当するパーツはないのにかわいいんだよね。担当編集のS原さんも、安田氏の奥さんも、名もない背景のような女性もみんなかわいい。すごく「女サイコー」ってなリスペクトが漂ってくるんですよね。

・それでいて、結局、ごった煮になるのは、本作でもネタにされておられる飽きっぽさか、読者へのサービス精神からか、最終的にはおなかいっぱいデザート分の別バラもいっぱいってなるのですね。

・なにを描いても「安田弘之」になるのは、どことなく吾妻ひでお氏をホーフツとさせますね。実は近いところにいらっしゃるのかしらね。お互い失踪されてるし。
(15:24)amazon

「罪と罰」1巻 落合尚之(双葉社)

・なんだろう。すごくイヤな読後感。いや、まだ物語はほとんとはじまってもいないのだけども。

・いろいろあって実家を出て大学に入ったけど、結局ひきこもってる男が主人公。
・偶然、援助交際の女子高生をみかける。彼女を観察しているとその元締めをみつける。男はそいつを殺そうと思う。そして接触を図る。

・そういうのを文学的なアレで描いてますね。

・前作が、派遣社員OLが主人公のすちゃらかギャグで、その前が、「鉄人28号」をリメイクした「鉄人」と、作風の幅があるにもほどがある作者ですが、この2作は原作付で、それ以前のは、やはり本作のようにダークなトーンのマンガだったことを思い出しました。心理描写とかスキなんでしょうかね。精神の世界とか。

・内省的な主人公のほうに完全にフォーカスが合っており、隠隠滅滅と話が進行していきます。だから、援助交際ネタとはいえそうエッチいシーンはなくて、フトコロに入り込むために、援助交際を強要されてる女子高生とホテルに入るけど、そういうシーンはないんですね。

・強要されて援助交際をする女子高生。強要している女子高生。そして主人公。この3人ともどこか浮ついた感じがして、だれにも感情が入り込みにくい。とくに強要している「害虫」と主人公が評している悪玉女子高生(昔いたバイトと顔がソックリ)が、いかにも裏がありそうな、逆に薄っぺらい作り物っぽい感じがイヤだなあと思った。

・そうなんだよな。すごくしっかりした世界に、すごくウソっぽい薄っぺらなキャラがドラマを演じている感じなんだよ。その薄っぺらさが逆にリアリティをかもし出している。「逆に」「逆に」うるさいでしょうが。

・とはいえ、現状、まだホメてみて「つかみはOK」って段階でしょうね。この先どうグジュグジュになるんでしょうか。ハッピーエンドってありえるんでしょうか。そこいらのシカケがうまく開花するとおもしろくなりそうです。それが次巻でわかるといいなあ。
(19:44)amazon

2007年/7月/28日
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「暴れん坊少納言」かかし朝浩(ワニブックス)

・もしものコーナー、「もし、清少納言がツンデレだったらー」というマンガです。

・もっとあけすけにいうと、「清少納言=涼宮ハルヒ」ってことかしらね。はっちゃきでツンデレで不思議少女な清少納言さんの少女時代を描いている平安絵巻です。

・本文中でも紹介されているとおり、清少納言の「枕草子」は、「技巧も何もなく 彼女の純粋でむき出しの主観…ただそれだけ」とのことで、紫式部(本書にも登場)の「源氏物語」をはじめとする色恋ネタの中にあってすごくアナーキーな「あたしはこれが好きっ!」って突き抜けたものなんですよね。だから、ハルヒの性格というか、ツンデレな感じがビッタリなんですね。

・ということで、女房として宮仕えして、枕草子を書くまでの清少納言さんの活躍を描いた青春マンガです。

・ほどよいアレンジ、ほどよい時代考証、ほどよいドタバタとなっているのですが、もうひとつはっちゃけてない印象。

・かかし朝浩氏の水準に意欲さをプラスし、時代考証他で重くなっているのでテンポやアナーキーさをマイナスにした感じでしょうかね。すごくカンタンに評価すると「小さくまとまっている」と。

・最後、紫式部の源氏物語人気に発奮して「枕草子」を書きだすところは素直に感動できました。「枕草子」を読み直してみようかと思った。
・ちなみに、28歳で宮仕えになったときはバツイチ子持ち状態だったので、少女でツンデレってのは完全に嘘なのねって、そういうネタバラシ4コマも描き下ろしてございますよ。
(14:27)amazon

「怪異いかさま博覧亭」1巻 小竹田貴弘(一迅社)

・カバー裏の、ソロバン小僧の柏くんが提灯持って歩いている姿がとてもかわいかったので買おうと踏み切りました。
・こういうちょっとSDキャラっぽいので、かなりマンガ家の絵のレベルがわかります。もっとちがういいかたをするならば、おれの好みかどうかがくっきり分かれます。

・ということで、このかわいさなら絵はバッチリだと思って購入したならば、予想をはるかに上回るくらい絵がすばらしかったのでございます。

・舞台は江戸時代。見世物小屋が軒を連ねていた両国にある売れない小屋「博覧亭」の住人がおりなすドタバタマンガ。

・妖怪を見世物にしたいと、探したり捕まえたりしてますが、すでに、ろくろ首の少女と、前記もしたソロバン小僧って2人の妖怪がいるんだよね。それなのに、主人公の博覧亭のご主人はまた探し回るってね。

・絵ですね。すばらしい絵。おれの好みど真ん中。「3」を横にして「山」みたいにした口がすきなんですよ。ネコの口ですか。

・デフォルメもシリアスもいいし、かなり「動いている」。背景は省略気味だけどうまくごまかしているし、ゲストで登場したオカピ(伝説の動物麒麟として見世物にしようと)がまたかわいいのよ。

・話は妖怪がらみのネタだけど、もうひとつ地味にほのぼのと展開する。「恐怖」との接点はゼロ。わりと蛇行気味でテンポも遅めなので、かなり好みが分かれるところかもしれない。
・ギャグも「えー、このギャグはどこがおもしろいのかと申しますと…」的なまわりくどさがあるか。
・これだけのキャラと、江戸時代両国の見世物小屋で妖怪って美味しいネタを使っているわりにはうまくまわしてない感じがもどかしいか。

・おれはもう絵が好きだからして。色の白いはナントヤラで、OKなんです。とくに八手ちゃんってショートカットの恥ずかしがりやの怖がりやの忍者がサイコーです。カバーめくったおまけのセクシーコスチュームがたまらないのです。

・ファンになりました。2巻も楽しみです。
(08:31)amazon

2007年/7月/26日
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「ラブやん」8巻 田丸浩史(講談社)

・現実にくだらないこと、つらいことがあっても、笑うことによってけっこう紛らわせることができる。


ボウボウなのを
ツルッツルにする
コトとかは
可能かね?


・ぼくは本書の138ページで「わははははは」とかなりでかい声で、「狂ったの?」と奥さんに心配されるようなイキオイで笑うことができてすごく幸せでした。

・ありがとうカズフサ、ありがとう田丸浩史。マンガを読んで笑うのは最高だ。マンガを読んで笑うことができるあいだはまだ大丈夫だ。そう思ったよ。

・ま、笑うネタが「どうよ?」とは思いますがね。

・ロリ・オタ・プーの三拍子そろった主人公に、彼の恋愛を成就するまで居候することになったキューピッドの「ラブやん」とのグダグダしたダメでダメでたまらない日々の記録。

・時間が過ぎているようで、カズフサさんが29歳になり、30歳にリーチがかかり、幼馴染がついに結婚してしまったりとかいろいろありますが、カズフサさんは基本ダメ。ラブやんもかなりダメに感化しきっているという、例の田丸作品特有のねっとりとした「田丸世界」に浸ってます。

・あ、前の巻もそうだった気がしたけど、顔の後ろにアップの顔の背景ってパターンが目立ったかな。
・登場人物(かなり幅がある)がけっこう集まってサバゲーしてるって考えてみればへんなマンガやなあ。「炉気」もそうだし、「ロリ・オタ・プー」とか、ネーミングセンスも独特だもんなあ。

・まあ、昨今無節操にアホみたいにアニメ化してるので、そろそろ本作の順番じゃないの?
(19:04)amazon

「日常」1巻 あらゐけいいち(角川書店)

・ぼくはぼくを笑わせてくれた人やモノなどをリスペクトすることにしてます。
・本作は笑わせてくれたのでリスペクトすることにします。

・そう、ギャグマンガです。表紙の授業中の風景に感じるものがあったので買いました。実は教室でたくさん机とイスが並び、そこに生徒が座っている絵ってのは描きにくい絵かと思いますが、それに挑戦しているという努力もついでに買いました。

・学園ショートギャグということで、「あずまんが大王」発、「ぱにぽに」経由、「有象無象」の1本です。

・えーと、基本、女子にフォーカスが合うってのは掟になってますが、本作は、女子だけにまかせてられないようで男子も立った人がいます。
・あ、キャラが少ないってのもあるけど、「ぱにぽに」よりキャラを把握できてるな、そういわれてみれば。

・ロボットの女子と、貴族の男子が、わかりやすいキャラの立ちをしてるかな。まあ、こういうのは「滑り止め設定」だしね。

・8話目からかね。おれ的に「エンジンがかかってきたな」と思ったのは。そして、9話目。ほぼサイレントで話が進みます。メイン登場人物が3人だけの話で、なおかつサイレント。コタツの上でトランプタワーを作るというだけの話ですが、ここで、爆笑しました。92pです。
・おれは「えの素/榎本俊二」というギャグマンガが大好きですが、それのサイレントでは笑えませんでした。でも、これは笑ってしまった。

・8話目から、リアクションがおもしろくなったんですね。ギャグに対して、おもしろい顔のリアクションを描くようになって、それがいい感じだったのです。

・くわえて、8話目以降、ネタが細かい「あるある」なネタになってきました。8話目「たたいてかぶってジャンケンポン」。9話目「トランプタワー」。10話目「試験前夜」。11話目「試験」。12話目「弁当のウインナーを落す」といった具合で。

・ま、イキオイだけって意見もありますし、ちょっと耳を傾ける用意もできているのですが、それでもおれは爆笑したからなあ。

・おもしろかったですよ。女の子もかわいかったし、キャラ見失い警報はないし(というか把握する必要もあまりない感じか?)。
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2007年/7月/21日
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「女いっぴき猫ふたり」2巻 伊藤理佐(双葉社)

・WEBで連載していたエッセイマンガの2巻目です。完結です。

・相変わらず、かなりポイントのちがうエピソードのカット&ペーストぶりと、みょうなストイックぶりと、反面、「大丈夫?」と心配したくなるくらいの自分&他人の暴露っぷり。

・たとえば、とり・みき氏、山本直樹氏、けらえいこ氏と登山にいってます。3ページ4コマ6本で6エピソードを紹介してますが、登山中のネタは、けらえいこ氏がウソをついたってネタが全てだったりします。たぶん、他のメンバーが同じネタをマンガにしたら絶対に取り上げないか、取り上げたとしても1コマくらいのエピソードじゃないかと思ったりするのです。

・たとえば、エッセイコミックの金字塔と思っている「やっちまったよ一戸建て!!」の家を「いろいろありまして」で、引越ししてます。その「いろいろありまして」のところはマンガ化してません。伊藤氏、バツイチでらっしゃるんですが、そのときもわりとなにもなく離婚しましたってことになってます。

・そういうところの「いろいろ」のほうをつっこんで描いたほうがおもしろくなるのは、西原理恵子氏や内田春菊氏のそれをみればよくわかるとおり。

・つーか、その「いろいろ」が進行しているであろうとき、このマンガでは近所の野良猫をケータイの待ちうけにして、自分のところの猫にバツが悪いのでエサを多目に出して「浮気する男の気持ち」を知っているわけです。
・伊藤氏は「どうして?」ってくらい描かないところは描かないんですよね。「描きたくない」からなんでしょうね。それはよくわかります。でも、その「描きたくない」ところのポイントもわかるところとわからないところがあるんですよね。それを描きたくないのに、どうしてそれを描く?とか。

・とくに微妙なラインの上にある「小心者、キレる。」とか。
・映画上映中にケータイが鳴り、それに出て話をしてる高校生(推定)に、伊藤さんたら、かなりキレるんですよ。しかも、ギャグめかしてますが、すごくイヤな怒り方をしてらっしゃいますね。それを自分がかなりイヤなやつにみえるだろうと自覚しつつも、そこをギャグのポイントとしてチクチクと描写してらっしゃるんですよね。

・高校生の後ろから座席を蹴り「出ていけ。それかここにいる皆さんにお金かえしなさい」と。
・その後、ヘタレの虫がざわついて、出ていったガキがまちぶせしてたら?とシミュレートして、反撃用にハンカチをこぶしに巻きつけているのですね。
・これ、インパクトあるけど、ドン引きの話だよなあ。

・ま、基本的にはお気楽独身女性と飼い猫2匹のせまい範囲内でのマンガなんですけどね。

・あと、他人(身内も含む。この場合作者以外ってこと)へのゾッとするくらいの冷静な観察眼もすげえよね。
・自分の家にくる宅急便の人で1本作るんだからな。

・ということで「ユルユル」を装ってますが、けっこうシビアなところが見え隠れする伊藤さんなのでしたー(めざましテレビ今日のわんこ風に)
(15:40)amazon

「サムライうさぎ」1巻 福島鉄平(集英社)

「週刊少年ジャンプ」に連載してます。ジャンプって世界一読まれているマンガ雑誌だと思われます。そこで描いて、なおかつ大人気(オビによると)だそうです。

・つまり、ジャンプで連載するということは世界一読まれるマンガを描くという栄誉がえられるわけですよ。自分がそうなると仮定します。すると、本作を描くってのはどういうことなんだろうなと。

・江戸時代、15歳の武士が主人公。嫁がもういます。そして、日本一の剣術道場を作る夢をもってます。

・最近、デフォルトのユル目な時代考証ばかりの中に比べると、やや練ってあります。江戸時代の武家社会の窮屈さとかね。

・あらすじが語りにくいマンガなんですね。ほのぼのマンガかと思ったら、つづきものになったり、登場キャラの過去とかあったり、アクションもあるし、いろいろな「受け」を用意している状態。どういう風にも展開できますよって感じ。ま、ゴリゴリのバトルやアクションにいく可能性は低いかね。絵のレベルは高いけど、アクション描写はそれほどでもないしね。作者も得意じゃないようだし、そっちにいきたくないように感じる。

・本作はどこに向かうのかよくわからないのが弱点。最近のマンガはこういうのが多いですが、本作はその中でもけっこうみえない。
・おれは同じジャンプ連載で、アニメ化された「銀魂」を途中でやめました。上記と同じ理由です。どうなりたいのかよくわからなかったから。だから、すごい少数派ってことを自覚してますから安心してください。

「水戸黄門」って時代劇ありますね。もう、おれの生まれる前からやっていて今も続いてるやつ。これって1回完結です。1度、前後編をやったときに抗議の電話が殺到したそうです。
・来週生きてるかわからなく、前後にすると後編みられないのが心残りで死んでも死に切れないとの理由です。だから、水戸黄門は1回完結で延々と続いてるそうです。

・この逸話を持ち出したのは、つまり、おれはもはやどこに向かうかわからないマンガにつきあうことはできないってことですよ。キミらより長くは生きることができないんじゃ。

・絵はカワイイし、ほのぼのした雰囲気もいいし、随所のギャグもいい。話の組み立ても骨太なものを感じるし、キャラもしっかり描けており見失うことはない。おっぱい成分が足りないなと思ったけど、作者はそっちのほうに進む気はない感じだしまあいい。

・だから、ほのぼのでいくんならそういきますって決意表明みたいのがほしいなってことなんですよ。そういわれてみれば「NHKにようこそ」も同じような愚痴を書き連ねていたな。あれは5巻くらいまでつきあったかな。あの小説版って、中学生の夏休み感想文用の推奨図書になってるんだぜ。知ってた?

・そういうことでモヤっとした1巻でした。「地味だけどさりげなく好き」って評価の方が多いんですかね。その気持ちは理解できますが、なにかもうひとつふたつ突き抜けたものがほしいかなと。こちとらほのぼのや地味はすごく間に合ってるから。
(19:13)amazon

「上京一週間」一丸(小学館)

・1話完結の読みきりで9話収録のヒューマンドラマ。
・タイトルどおり、地方からいろいろな理由で上京してきた人の話。

・離婚してずっと会ってない娘に会いに山形からくる男。
・ミュージシャンになりたくてギター抱えて北海道からくる女。
・大阪から「大きいこと」をやりにきた男が居酒屋でオッサンにからまれる。

・一丸氏は双葉社の「団子坂ストーリー」以来でした。小学館になってからはあまり縁がなく、「おかみさん」などの代表作は読んでいない状態で、かなりの空白があります。本書は1巻完結だから「どらどら」ってためしに手を出してみたのです。

・やや劇画よりではありますが、やわらかさや親しみやすさを醸している「まるい」絵は、当時のイメージのままですし、小学館、ビッグコミック系列の、ひきの真二氏や、佐藤智一氏や、高井研一郎氏あたりの、ほのぼの人情マンガのライン上にもいますね。

・ひいたときの小さいコマでのマンガ的なデフォルメ処理のかわいさは、けっこうハッとするくらいいいです。ドタバタお色気系のマンガを描いていた(上記の団子坂〜はそうだった記憶が)ときをホーフツとさせるようなギャグ処理がいい。

・東京にくる地方人というネタも効いていて、人はさまざまな理由で東京に足を運ぶのだなと思いました。ま、基本、誰かに会いにくるってのはあります。そうしないとドラマははじまりにくいし、終わりにくいからね。

・音楽で一旗あげるため。受験。修学旅行。白眉は、第二次世界大戦時のアメリカ人が、自分をかくまってくれた娘に会いにくるって話ですかね。東京オリンピックとか、まだ、ネタがありそうだけど、一足飛びでそこまでいったかと思ったり。

・基本ハッピーエンドで、上記のビッグコミック系列の中にあるクオリティだと思います。「だから」、おもしろかったです。

・それらの中で飛びぬけていいのは登場人物の笑顔ですかね。一丸氏の描く人物の笑顔はいいですね。老若男女、アップでもロングでも、シリアスでもデフォルメでもいい。物語の最後笑って終わるのもいい。

・なんか、旅に向かうとき、キオスクで買って読むといい感じかも。
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2007年/7月/14日
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「夕日ロマンス」カトウハルアキ(フレックスコミックス)

・あの「夕日ロマンス」を描いたカトウハルアキの新作「ヒャッコ」って紹介されているのをよくみました。
・そりゃあ「ヒャッコ」でカトウハルアキを知ったものとしては「夕日ロマンス」が気になるじゃないか。そしてタイミングよく発売されるからそりゃあ買うじゃないか。

・美人の姉は変態で弟ヒトスジ。

・おお、短いあらすじ。

・そして、姉が必死にアプローチしてるのに弟は意に介さない、ほぼ2人しか登場しない1話目の衝撃がすごかった。すんげえおもしろい。
・スタバで弟と2人でお茶しながら、「私にも好きな人がいる」ってテンパって話をして、お互い顔をみながらカーっと赤くなるあたりの「ウギャー!」と叫びたくなる感じはすんげー久しぶり。

・ま、その後、キャラがドカンドカン増えて、徐々に落ち着いていくんだけどね。この作者は回を重ねるごとにキャラを増やさなければならないってな強迫観念でもあるんかね。毎回1人以上新キャラが増えていく。
・2回目では姉のトモダチ。3回目では保健室の先生。4回目では母親。そして5回目では設定の根幹を揺るがしかねない「妹」が登場。6回目では妹のトモダチと、そらまあ、人間普通に生きてればそれくらいのつきあいもあろうもんさね。

・だけど、問題は、キャラが増えるたびに、「姉の弟が好き」ってテーマがどんどんボヤけていくってことなんですよね。というか、最終的にはテーマというより、単なる「そういう設定」になるってのが、妙にだまされた気分になるんですよ。

・ただ、「そういうもの」と思えば、姉の恋心に進展がないのは残念だけど、そういうおかしな姉弟を軸としたユカイな日常スケッチなマンガではありますね。はじまらないし、終わらない。時間は過ぎているようだけど。

・そして、それがおもしろい! ちょっとキャラが多いけど、見失うことはないし、女子ばっかでカワイイカワイイだし。ただ、1話目の姉にかなうものがいない。もう何千回転かしてこの言葉が適切で新鮮。「萌え〜」です。2話の「バキューン」発言もよかったですが。

・なるほど「夕日ロマンスのカトウハルアキ」と呼ばれるわけがわかりました。

・んーぎりぎりオススメに足らないということで。1話目のクオリティがもう1話分あったらなあと。

・カトウハルアキは覚えました。たぶん、近いうちに本作以上の名作をモノにされると思われます。
(14:55)amazon

2007年/7月/13日
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「ふたりごと自由帳」小坂俊史&重野なおき(芳文社)

・同人誌で発表したものを商業出版するという例のアレですが、一読して同人誌っぽいなあと思いました。こう、同人誌として発表するというものはどことなくユルさが漂う気がします。たとえとして適切ではないかもしれませんが、おれ的にはもっともフィットしてるので記しておきますが、ビートルズの「レボリューション」という曲。このシングルとアルバムの収録バージョンの差というとピッタリなんですよね。同人誌はアルバムのほう。ホワイトアルバムでしたっけ。

・現在の4コママンガ界を牽引されてる2人の同人誌発表のショート集です。とくに笑いにこだわるでなく、そして、とくに非4コマにこだわるでなく、いろいろな話を描いておられます。

・これが、2人の個性が表れていて大変興味深い。


いつもと違う顔を見せようという事で
本業の4コマ漫画を離れ
笑いを意識しないものを目指した結果が
このしみったれたショート集です。


・この「笑いを意識しないものを目指した」結果の2人の方向性のちがいがおもしろい。

・本書の構成は完全に分離して、最初の半分が小坂氏のパートで、次が重野氏。この構成がすばらしいんだよね。2人のコントラストがくっきりと現れていて、おもしろさを倍増させてます。

・小坂氏は「書式」や「形式」や「作風」「芸風」をけっこう変えておられます。コマ形式の4pのショートや、4コマで話が続くストーリー4コマパターン。4コマ1エピソードでオチがない形式のもの。すごく細かく景色を描きこんだもの。逆に太い線でざらりと描かれたものなど。
・4コマではほとんどみかけない、「別離〜死」をテーマにしたとくにオチのない4コマ1エピソードの連作が圧巻だったね。恋人との破局の別れから、死に別れ、そいで、大事な人の死の1年後とか。とくに笑いもないけど、スパッとカット&ペーストしたような鮮やかなエピソードが続く。

・ショート連作では「銀の匙」の話が印象深かったか。どこかにふらりと出かけてはそこの書店に入り、中勘助の「銀の匙」という文庫を買って帰る女性の話。
・描き下ろしの会社を休んで、小学校の修学旅行にいけなかった場所にいってみる話、会社を辞めて旅行にいった北海道に衝動的に移住する話とかも。

・重野氏はショートで統一されてまして、ズバーン!と剛速球がキャッチャーミットにおさまるときの音のようにキレイに決まるオチが印象的な話を連発してます。
・学校の桜の木を切らない運動をはじめた女子中学生の話。
・10年後に今日また会おうという約束を偶然思い出したけど、すでにその日が過ぎていた話。
・日記をつけようと思ったけど長続きしない。で、気がついたことを書くメモにしようと思ったらいつの間にか、大学の同級生の女の子の観察日記になった話。
・そして、圧巻の連作連作連作で畳み掛けるショートの大河ドラマ「サブリミナル」
・どれもズバーン!でした。
・内容的には恋愛モノが多かったですね。

「笑いを意識しない」の結果、小坂氏は、余韻を重視し、読み終えたあとにココロにねばるようなモノを目指し、重野氏は、より大きい音のズバーン!を追求しているような気がする。笑いのズバーン!より、大きい音。笑いのオチってのは実はそんなでもないんですよね。たとえば、漫才、落語のオチって意外と静かなものです。それは本来の意味で、「コレで終わり」という意味の合図ですからね。
・つまり、どちらも「笑い」から開放された末に目指している地平、立って眺めていた視点が全然ちがうってのがくっきりしてるのがおもしろい。

・そして、本書、余韻を残す小坂氏の作品から、ズバーン!の重野氏って構成がおもしろい。最終的にはだからズバーン!で終わってしまうんですよね。

・あと、両者のちがいというか、小坂氏の作品は「わかってほしい」ってキャラが登場し、重野氏は「わかりたい、知りたい」ってキャラが登場しますね。
・彼氏に親友をとられた女性が、自分のほうがあんたにふさわしいのにってがんばる話が小坂氏。毎日ポストに投函する女性のことを知りたいと思う話が重野氏。

・ビターな小坂氏、スイートな重野氏って感じでもいいか。ハッカ味の飴をなめると中にチョコレートが入っていたって感じが近いかな。

・何度も読み返したくなる味わいがあります。長く読むことができそう。

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「つぶらら」2巻 山名沢湖(双葉社)

・待望の2巻ですが、1巻より輪をかけてすげえことになってました。

・つぶらさんは田舎の女子高生。クール&ビューティーなルックスなのに天然さん。夕方5時にやっているアイドルグループがやっている「夕☆キャラ」が大好きで、いつも授業が終わったらそそくさと帰る毎日。
・ところが、いろいろあってさあ大変。ってのが1巻。

・2巻はその大変がいよいよ大変なことになるんですよ。つぶらさんアイドルデビューです。アイドルユニットの名前は「つぶらら」。そう!タイトルです。2巻にしてタイトルのイミがわかります。

・つぶらさんとつららさんのユニットだから「つぶらら」です。

・で、なんと「夕☆キャラ」の裏番組の生放送を担当することになります。ますますみることができなくなります。

・そいでもって、今後、 [きらりん☆レボリューション]みたいな話になるのかというとさにあらず。ここがなにげに画期的。

・彼女らはローカル情報ニュース番組内のアイドルなんですねえ。この設定のマンガって実は史上初じゃね? 大昔、鈴木保奈美氏がケーブルテレビの女子アナやったとかそういう話はあったけどさ。

・しかも、そのうえ、ボーイ・ミーツ・ガールまであります。すごく波乱万丈! ジェットコースター! ってならない、ゆる〜いリズムは1巻から健在。ゆるいなあと思いながら振り返ると波乱万丈になってるというマジックです。まあ、つぶらさんのキャラによるところが大きいんでしょうけどね。

・3巻も展開が予想つきそうでつかないの。これって作品によっちゃあ不安になるけど(例:NHKにようこそ)、本作はそれを上回って楽しみ。

・つぶらさんは2巻でもかわいかったなあ。意外に肉感的でナイスバディだけど、なんかそういう目では全然みることができなくて普通に保護者の目になってるなあ。

・しかし、山名沢湖氏は、つぶらが崇拝するアイドルグループの元ネタであろう、あのグループが昨今引き起こすスキャンダルの嵐をどう思ってらっしゃるのだろう?

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「たくらまかん展覧会」田倉まひろ(ヒット出版)

・価値あるエロマンガです。完成度の高いエロマンガです。
・どう「価値がある」のかというと、エロマンガを普段読まない方にも買う価値があるということで、「完成度が高い」とは、エロマンガを積極的に読まない人にも「おもしろい」と思える完成度を持ち合わせているということです。「エロいのはいけません」という層は、裸=ダメ、自民党はダメ=社民党みたいな感じだから、もう女子はあっちでリリアン編んでろ。

・エロマンガにおける「完成度が高い」ってのは実はすごくむずかしい。なぜなら、エロマンガのエロのところは100人いれば100通りの当たりのカタチがあるから。ある人に100点でもある人には0点ってのはざらにあることだしね。
・だから、「すごくエロい」って評価は、その評価を下したものに通用するけど、万人のそれではないと。そんなこといえばすべての評価はそうなんだけど、エロはとくに個人の嗜好がはっきりくっきりする傾向にあります。

・そういうことで、ぶっちゃけ、「完成度が高い」ってのは、エロマンガのマンガのところの完成度が高いということです。エロマンガのフォルダの階層をひとつ上げた「マンガ」全体で評価しても、2007年度ではかなり上位じゃないかと思うくらい高い。

・エロマンガは読みきりの形態で雑誌に掲載され、それが何回かたまったのをコミックにまとめるという方式が主流です。大河連載みたいのもたまにはあるんでしょうが、多くは短編集という形式になります。
・そいで、基本、他のコミックに比べても1冊の単価が高いのがエロマンガです。いまや、冷静に考えると、エロメディアで考えてもDVDの価格下落がすごいので必然的に割高なモノになりつつあります。
・そこでというか、けっこうエロマンガは手を加えてあります。描き下ろしをつけたり、カラーを多用したりと、おもしろいことに表紙すら、雑誌に載ったのを転載する少年マガジンなんかの単行本より、「商品」としての完成度が高かったりします。ま、全然そうじゃないのも多いですけど。

・そういう感じが、雑誌に掲載時の作品を「シングル」として、そのシングルを集めたアルバムという感じがしてコミックのエロマンガはスキなんですよね。
・往々にして「直し」が多いですしね。それがまたリマスター&リミックスって感じもしますし。

・本作はそのシングルの「アルバムver.」が多いのもステキ。本編に後日談的なものを足していておもしろい。
・そのほかに、カバーをめくったギャグ、あいさつ、作品のセルフ解説など、1冊の本としての完成度も相当高いことになっている。

・で、肝心の内容がまたおもしろいんだ。それぞれの作品にそれぞれヒトコトフタコト口をはさみたくなるおもしろさというかね。基本、ギャグめかした、エロコメで、登場する女性も非リアリティなマンガやアニメから生成されたモノでありまして、そういった3次元の女子からのリアリティがない分、思い切り、フックのきいた、立ったキャラが多数登場しますし、その多彩さと、それぞれに気の利いた独自のアクセントを効かせてる味付けからも、非常に腕があるなと感じさせてくれます。

・エロのほうも多彩ではあるが、基本ノーマルで、ちょっとペドロリ風味ですかね。巨乳も人妻もウサ耳も猫耳も縦ロールも三白眼も登場します。それぞれが小道具だけになっていないは前述のとおり。

・すごくハードなことはしませんが、それにしても一通りいろいろとありますね。

・そう、エロマンガにおいて、いろいろあるってのは実はマイナス評価につながりますね。だって、多彩ってことは必ず自分のストライクから外れるってことにもなりますもんね。むしろ、なにを描いても誰を描いてもいっしょって感じの作風の人のほうが実用的にはなります。

・ただ、そのマイナス評価が些細でしかないくらい他の評価が高いと。マンガの完成度や、ギャグのキレ、キャラのかわいさ、エロシーンでのスペクタクル。

・そいで1番なのは「おもしろ」を提供しようとする作者のアグレッシブで誠意ある姿勢と情熱でしょうかね。マンガの随所から感じ取ることができますし、ちゃんと「おもしろい」というカタチで十二分に還元されてます。

・個人的には表紙にもなった三白眼のゆづさんが登場する話「三白眼の彼女」がいいですね。この話もおまけ後日談のと相まってすごくいいです。
・愛想の悪い三白眼の彼女に告白したら、どう返事していいかわからんから脱いで対応したって話。徹頭徹尾男視点のドリーミンな展開です。

・あとは、ツルペタで天然のんびりキャラのバンパイアの話「偉大なる一歩」もステキ。なぜか日本茶飲んで渋がるって本編とあまりにもカンケイないシーン(あるいはおれの知らないなにかのパロディとかかもしれないけどさ。それはそれとして)がステキ。

・と、この「いろいろ」な作風で思い出すのはZERRY藤尾氏なんですが、彼の「扉をこじあけて」のような1本まるまるエロ長編って感じのがすごい読みたいなと思いました。もちろん、これまでどおりのマンガでもいいし、非エロになられてもそれはそれで名作をモノにされるような気がします。ともかく、「田倉まひろ」という名前を忘れてはいけないなと思いました。

オススメ
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2007年/7月/9日
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「不安の種+」1巻 中山昌亮(秋田書店)

・週刊少年チャンピオン連載のホラーオムニバスショートコミックです。以前はヤングチャンピオンかなんかで連載されていて、版型がデカイもので「不安の種」で3巻まで発売されてましたが、「+」のほうは、普通の少年週刊誌コミックのサイズです。
・大手出版社がデカイ版型のコミックを出さなくなってきてますね。やっぱ売れないからでしょうかね。いわゆる「完全版」だけデカイですね。こっちとしては、そうすると必然的にデカイ版型の「当たり」率が高くなるのでありがたいところです。

・さて本作。 ショートコミックとさきほど紹介しましたが、どちらかというとショートスケッチのほうが正しいですね。
・様々な「やおい」な恐怖をカット&ペーストしてコミカライズしているものえす。コミカライズというよりコレクションですかね。ヤマなし、オチなし、イミなしの「やおい」ね。

・恐怖においての「やおい」ってのは「新耳袋」なんかそうですね。そういうのだと思っていただけると大きく間違ってないですが、本作はさらにスケッチ度が高いです。
・たとえば、誰もみていないコンビニ内のカメラにおかしなものが横切るってのは、「誰もみてない」んですからね。「新耳袋」がまだ実話体験談の体裁を整えてあるのにそれすら飛び越えてますからね。

・そして、そのおかしなものがこわくあらわれるって「やおい」な話を成立させるのに、中山氏の絵の力がものすごく大きいことを思い知ると。

・それは前作から変わってないところで、本作も大きく変わることはないんです。相変わらず、中山氏はすごく「楽しそう」にこわい絵を描いておられてますし、相変わらず「こわい」と思います。相変わらず「この物語は8割がフィクションです」というコピーも健在ですし。

・ショートショートチックな話が逆に興味深かったですかね。
・何も描いていない女性が笑っているポスターの済みにぽつんとあるQRコードを撮ってみたら?「ポスター」
・久しぶりに帰ったアパートの自室から異臭が。警察を呼んだけど異常はなかった。しかし、数日後。「黒い人」

・ま、版型ちいさくなったのが残念だけどその分安くなったのでラッキーかなということで。
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「彼岸島」20巻 松本光司(講談社)

・本作と「カイジ」が、おれが続巻を買っているマンガでも群を抜いて読み進むのが速いね。1冊3分くらいで読んでしまうね。

・延々と化け物と戦ってるバトルマンガ。主人公はなんでも切れる剣ですぱすぱなんでも切ってるぞ。実の兄も切ったぞ。

・と、どんどんゲームっぽい展開になってきてますが、ここにきて、5つのステージと、ボスをクリアして、大ボスにたどり着くって、もんのすげえゲームな展開が提示され、1ステージ目のボス戦になってきてます。クモババアです。

・と、なんで、こんなコストパフォーマンスの悪いマンガを買っているかというと、そのアクションがみょうにハマるんですよね。バトルマンガはバトってる間がおもしろかったらOKじゃないですか。それですよ。ホント、開き直ったかのような舞台設定や化け物設定がもう何回転かしておもしろくなっているんですよ。
・だから、3分で終わっても「あーおもしろかった」って感じではあります。ただし、読み返したりもないんで、もったいないって感じもつきまとってます。そのバランスが逆転したら買うのを止めると思います。

・と、「彼岸島」はずっとそう思って(3巻くらいから)買い続けて20巻なんで、たいしたもんだなあと思うのでした。
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2007年/7月/8日
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「誰かがカッコウと啼く」1巻 イダタツヒコ(小学館)

・そうだ思い出した。おれはイダタツヒコ作品が苦手だったんだ。

・くわしい履歴を知ってるほどのファンではないんですが、ヤンマガ時代のころからホラー系列の作品が多く、それらはおれにはイマイチピンとこないものが多かったのです。
・でも、「どれ久しぶり」と手に取った「美女で野獣」がおもしろかった。だから、またホラーになった本作はどういったもんかしら?と思ったのですが1行目の感想。

・と、ここで定石ならあらすじを書くべきなんですが、よくわからないんですよね。あらすじを書くことができるほどおれの中でまとまってないんですよ。だから「よくわからない」と。

・作者は、最初にビジュアルありきで、そのビジュアルを描きたいがゆえに物語をつむぐタイプじゃないかなと推測。
・それにしても以前のよりはかなりこなれていると思いますが、おれは本作で1番気に入ったビジュアルは、山岸先生のパイオツ描写ですので。

・作者の脳内イメージはちゃんとビジュアル化されており、よくわからない物語の随所に、様々な感情を揺さぶる描写は、以前のものより上回っていると思います。その感情は恐怖というより奇妙ってのがおれ内では正確なところなんですが。

・火男。向こう側にいくときの儀式。保健室に軟禁。笑顔しかない顔。村田郁美。

・ただ、それらに意味をもたせるためのストーリーが「なんだかなあ」状態なんですね。少なくともおれにはよくわからないし、理解しようと思えない。

・こういう狭い範囲の因果がいつの間にか世界の滅亡とかの広さにつながるって話はもうぼくはいいです。こういうのは意外に若いもんのための話だってことに最近気がつきました。

・だから、すごくハマってる方がいる可能性はわかりますので、どうぞ、「けっ、ジジイが」と、本作のよさがわからないワタクシメを辱めておいてください。

・それこそ、オビで警告されておられる、「ひぐらしのなく頃に」の竜騎士07氏のとおり「あなたには、とてもお勧めできません。」に従えばよかったなあとちょっと思いました。

・じゃあ、また、イダさんがすちゃらかギャグを描いたら教えてください。
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「わにとかげぎす」4巻 古谷実(講談社)

・完結しちゃったよ。なーんか、「投げました」感が漂ってるんですがどうなんでしょ?

・4コマでいうところの起承転結がありますよね。これ、本作、1巻づつ当てはめると、起承転まではそのままだけど、最後は「結」って感触が薄いですよ。
・今度小説になるらしい「ヒミズ」からの古谷作品はそういう結らしい結を用意しないで終わらせてまして、それでもまあまあ「終わったか」ってのはありましたがが、さすがに、今回のはさっぱりしすぎで、「なーんかなあ」という気がします。

・30歳すぎてずっとひとりぼっちだった主人公はさびしくなったのでトモダチを望みました。そうしたらトモダチじゃなくて彼女ができました。そして、彼女と結婚しました。さびしくなくなりました。メデタシメデタシ。

・と、ざっくりあらすじを書くとこういうことです。本作のテーマとしては、結婚する意義とかでしょうかね。その結論は「さびしいのはイヤだから」ということです。すごく真理。ザックリです。

・4巻ではそれを主人公は考えています。で、結婚になります。結婚ってのはやっぱりでかいイベントなんだよなあと思います。

・古谷作品は年代別にみていくと、どんどん主人公が歳をとっていくような気がします。この「歳」は実年齢でもわりとそうですけど、精神的な面というかね。
・そういった意味では、本作の主人公は、気弱で自信がまったくないながらも前向きでいいですね。見習いたいところです。

・もうひとつ、本作にある裏のテーマみたいなものもまた興味深いところです。

「因果応報」といいますか、「人にやさしく」といいますか。主人公は物語中、善行を積んでます。1巻では浮浪者の借金を肩代わりしました。2巻では後輩を命を顧みず助けました。4巻では軟禁された女性を助けました。

・その結果どうなったか。ウソっぽい運のよさとともにリアルでありそうな運もありました。これが善行の結果かどうかはよくわかりませんが、そうじゃないかなと思いたいところです。

・ただ、それはそれとしてあっさりしてるなあと思いました。なんか、古谷氏、マンガ描くのに飽きたのかしら?って思うくらいあっさりした感じが不安をあおります。まだ古谷作品は読みたいところですが。
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2007年/7月/7日
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「ONE PEACE」46巻 尾田栄一郎(集英社)

・46巻です。「ドラゴンボール」が全42巻ですから、いかに長いかってことですよね。というか、連載10周年か。

・46巻では、大きな話と、ルフィたちの新しい船と、お化けの島に上陸した話の3本立てですかね。

・この3つの話の収拾のつかなさはすごいですね。あふれるアイディアをどう処理してまとめていいのか作者自身も苦悩してそうな気がします。連載10年目にして全力疾走で、「抜く」という発想がまったくないのはすごいけど、10年のキャリアをつんでいくうちに、飛躍的に技術などがアップしているというのに、全力疾走のままで、その熱量の多くを情報量に変換して「そのまま」詰め込んでいる印象が、毎巻強くなります。

・だから、異常な量の書き込み、異常な量のアイディアが、圧縮されてつめこまれているんですね。単行本1巻時にはCD-Rだったのが、今やDVD-Rになっているって感じですかね。

・正直なところ、新しい船の新しい機能や中の紹介なんかみじんも興味がないんですよ。それは、お化けの島やドクトル・ホグバッグの館のディティールもシカリ。
・結果、コマがちまちましたり、ネームが多くて、読みづらかったりってレベルまでいってるからねえ。それだとけっこう本末転倒気味だけど、小学生や小学生の気持ちを忘れてない中学生あたりには、この「細かさ」が楽しくてしょうがないってのも、小学生の気持ちをわりと忘れてないボクにはわかるのです。

・この期におよんで、まだ、絵にブレを感じますね。どうなりたいんだろう。
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2007年/7月/6日
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「ピューと吹く!ジャガー」13巻 うすた京介(集英社)

・アニメDVD化で、実写映画化だそうで。かなり安定しておもしろいままです。

・今回、「ジュライ」ネタがとにかくツボに入りまくりで腹が痛かったことを書いておきたかった。

・うすた京介氏にぞっこんになったのは、「セクシーコマンドー外伝 すごいよマサルさん」にあった、助けを求めるマシーンが4文字しか入力できないってことで、「ボスたすけて」を「ボスケテ」にするって、こうやって書くとおもしろくもなんともない文章ネタで腹が痛かったからのことです。
・今回の「ジュライ」はそれを想起せずにはいられませんでしたし、そのときより全ての点でレベルアップしているのがすばらしいことです。魔法も全部覚えて、薬草なんかスペースとられるから捨ててしまえってくらい高レベルになったって感じ。

・そういうことで、うすた京介作品は、文か絵かというと、文のほうでよくわらっている自分です。

・ビジュアル面では高菜さんの「ぶちまけ祭り」ですかね。ま、これにしても「ぶちまけ祭り」というコトバありきだもんなあ。

・そいで単行本1巻にひとつくらいのペースで入ってる番外編的なのは、今回もダメでした。「ちょいワル ウルトラのじじい」ですか。うーん、ダメ。そして、このダメだなと思うところも含めてすごく安定しておもしろいです。

・おれはネプチューンの堀内健という芸人が好きですが、たぶん、彼のやってること40%くらいしか理解できません。しかし、その40%での腹が痛くなる打率はものすごいものがあります。

・つまり、アグレッシブに笑いを追及する姿勢です。そのための実験的な作風だったりするのは今大流行のコトバでいうと「しょうがない」とは思います。英訳するとノー・ジンジャー。だから、13巻の「ウルトラのじじい」はノージンジャー。おれにはね。

・ということで、アニメも映画もみない気がしますが、マンガはずっと読み続けますのでがんばってください。
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2007年/7月/5日
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「ベクター・ケースファイル」1巻 藤見泰高&カミムラ晋作(秋田書店)

・虫博士でクーデレの女子高生・稲穂さんが昆虫がらみの事件を解決する1話完結の「美味しんぼ」スタイルのあれ。というか、秋田書店だし、「ブラックジャック」スタイルってほうがいいか。

・全4話で、子供だけが食中毒になる謎。スズメバチに襲われる。白アリに占拠された家。虫を使ったテロ。で、虫の謎などを通して、人間関係も直すって定番の展開です。

・なかでは、スズメバチに襲われる話が迫力がありました。小さな姉弟が家に救ったスズメバチを退治してホメてもらおうとして大惨事になるって展開は、本当に「あわわわ」って気持ちになるくらい迫力がありました。ま、リアルのハチに刺されたり、バスケットボール2つ重ねたくらいのスズメバチの巣を至近距離でみたことあるからなんだろうな。

・もうひとつ、虫を使ったテロの話は、4話中で唯一、エロがうまくかみあってる内容だと思いました。

・本作、表紙もそうだけど、なんか知らんけどお色気を売りにしてるきらいがあります。昆虫とエロったら、そう相性は悪いものじゃないので狙いもいいとは思うのですが、本作は、ムリからのアプローチが目立つ感じがして、「うーん」と思うところが多数。主人公からして、白衣にぼさぼさアタマで顔が隠れているけど、美人でナイスバディの「あるある」キャラではありますが、そのところどころ垣間見ることができる美人でナイスバディのところが下手。山田花子氏がよしもと新喜劇等で、「ホテるわぁ〜」って服を脱ぐギャグと同等なくらい。
・そこいら、4話は、必然的なエロという感じでよかったです。

・問題はっていうと、オマケのマンガが意味不明なところかしら。「サイカチ」ってなんだろう? そのキャラとの合同入浴シーンでの反省会みたいの。「サイカチ」を読んでないと楽しめない感じがいや。くわえて、連載しているらしい「チャンピオンRED」のオマケもなんか意味不明。この疎外感は不快。「チャンピオンRED」もしくは「サイカチ」を知らないおれは客じゃねえってか? って気分になる。

・こういう雑誌との連動企画は、せいぜいで連載誌の最新号からすぐつづきが読めるってやつ止まりにしてほしい。

・虫ネタの数々はおもしろかったですし、今後にもちょっと期待。
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「地平線でダンス」1巻 柏木ハルコ(小学館)

・ふと思い起こすと、わりと、毎回、ちがったジャンルの話の柏木ハルコ氏はすごく器用な人か、あるいは、まだ「これ」って強力な武器を持ってない人か。
・そういうことでおれも買ったり買わなかったりなお付き合いです。ベストは「よいこの星」。ワーストは読まないか途中で購読を停止するからわからない。

・そういう柏木氏の最新作はタイムマシンモノって感じだったので、時間跳躍モノに弱いおれとしては買ってみたわけです。

・2016年。タイムマシンの研究中、死んでしまった主人公(女性)。身体は燃えて灰になってしまったが、意識だけ、3年後の世界にタイムスリップする。
・いっしょに研究していた意中の人は実験の責任をとらされ学会を追われコンビニでバイトしてる。
・幽霊みたいな状況で、なんとかその意中の人に「タイムスリップに成功した」自分の意思を知らせようとする彼女がとった行動は?

・ということで、1話目はその意中の男の主観で物語がハードSFチックに進行していったかと思ったら、2話以降、いきなり意識だけの女性主観に移行。これって「ハクバノ王子サマ/朔ユキ蔵」っぽいね。
・そいで、2話以降、いきなり、ハードな設定をぶっ飛ばす超展開も、なんつーか、「逆にSF?」って感じがして「まだ」大丈夫かも。あくまで「まだ」ね。ま、作者がゴリゴリのハードSFなんか描きたいと思ってないことはすごくよくわかるんだけどさ。それまで妙にそれっぽい用語をちりばめといて、いきなり幽霊ってなあ。そいで、その後もなあ。別にサイアクとか、「そんなんじゃクラーク先生が浮かばれない!」ってヒステリックに騒ぐってことでもないんだけど、「あ、そうなんだ…」ってややトーンダウンするというか。

・つーか、回を重ねるごとにSFカンケイない度が高くなるなあ。それが、「結局、どこに向かうのかしら?」って不安をあおるというか。

・この先どうなるんだろ? って興味はあります。2巻は買います。
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2007年/7月/3日
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「ごてんばチアリーダーズ」1巻 宗我部としのり(少年画報社)

・へえ、宗我部氏って河合克敏氏のアシスタントだったんだとオビで情報を得た、宗我部としのり最新作はタイトルどおりチアリーダーものだったのです。

・1人でがんばる応援団員に目をつけ、男女混合のチアリーダーズを目指そうとしますが、なにぶん、応援団ということで質実剛健の堅い男。でも、彼女らのがんばりに少しづつ男の気持ちもほぐれていって…っていうか女子寮にいっしょに住んだりしてますしね。
・そういう健康的なお色気と、健康的じゃないちょっと淫靡なお色気もあるチアリーダーラブコメです。

・少年画報社というのがカンケイあるのでしょうか? すごく吉田聡節がきかせてあります。
・かわいい女性とパッツンパッツンのボディはそのままで、ユニークな応援団OBや主人公の祖母などのキャラ、ケンカシーンなどのヤンキーっぽいところ、随所に細かく混ぜ込んでいる「コメ」など、やはり、吉田聡氏はマンガ界に偉大な影響を与え続けているなあと思いました。ま、昨今、おれは読んでないんですがね。

・宗我部氏、一時期、すべてのキャラの顔のりんかくが「円」になっていたことの反動で、今回、妙に丸くない(細面ではない)のが逆に気になりましたね。あと、主要キャラ、とくに主人公とヒロインがいい意味でも悪い意味でも普通ですね。他キャラもちゃんと個性はついてますが飛びすぎてない。だから、名前やキャラの区別が今のところつきづらい。コーチの先生と上級生の部長のちがいもよくわからんくらいでさ。

・宗我部氏、どうも、今回はお尻描写に命を削っておられるようで、パンチラできるところはもれなくさせてるし、乳首も解禁ですが、それよりお尻を売り出してますね。成年コミックなどでは開脚が多かったけど、逆にうつぶせが多いのでバックスタイルでお尻からのアングルってのがポイントの方はたまらないことになってるんじゃないでしょうか。

・個人的には、えらいアクが抜けてるなと、そのサービスたっぷりな内容のわりにさっぱりした読後感でした。

[ポトチャリポラパ/コミック/「Yell」羽田としのり(FOX出版)成]

・ちなみに羽田としのり名義の成年コミックにはチアリーダーといたす話がありますので、本作読んでビビビときた方はどうぞ。
(11:01)

「成城紅茶館の事情」スエカネクミコ(少年画報社)

・オビにある「ド変態漫画」ってことで買いました。ま、「ド」かどうかは微妙として、変態なマンガではありました。

・親友に仲を取り持つようにたのんだ彼女をとられ、成城紅茶館でケーキをやけ食い。そして、紅茶を飲んだら、巨乳の美女に変身。そいで、紅茶館でウエイトレスとして働くってマンガ。他の店員も紅茶を飲むと変身するキャラだったりします。そういった意味で「変態」マンガ。昆虫がサナギから成虫に変態するの変態の意味もあるね。

・男子の性欲を甘くみてるのがちょっと気になりましたかね。この展開ならもっとグジュグジュのヌトヌトになりそうな気がしましたが、妙にお行儀よく展開していきます。まあ、成年コミックにするのが本意じゃないんだろうからいいんですが、それでも随所にヌルいなあって。

・主人公、紅茶を飲んで女子に変身するとモテモテで、告白しようとした彼女はレズでぞっこんLOVEになるし、その彼女を略奪した親友にもモテるようになる。そいで、それぞれに襲われるわけですが、どっちでもなんかヌルいんだよなああ。
・それでいて、紅茶館のマスターとケーキ職人(どっちも男)のほうに話がシフトしたりするとさらに「んんん?」って感じにねえ。
・主人公の三角関係の恋愛模様か、紅茶館のメンバーのドタバタか、描きたいものが分離していた気がする。主人公がいっしょで2つの話になってる。
・うまく混ぜるか、きっちりどっちかにフォーカスしていたほうがよかったような気がします。たとえば、主人公の恋仲の二人も喫茶店で働くとか、喫茶店の紅茶占いの人をレズにしたりとか。

・絵はきれいだし、裸なんかはちゃんとエロいんですが、ドタバタのほうを強調させるあまりにテンション高くしすぎの若手漫才コンビみたいな感じがあちこちでみられるんですよね。空回り感というか。そこいらにもう1本くらい芯をかませたらよりしっかりしたモノになったんじゃないかしら。ストーリーの方向性とか。

・しかし、コーフンして鼻血ブーってのはそろそろ昭和の遺産としてそっとしておくわけにはいかないか。
(13:36)amazon

「ガントライブ」四万十曜太(オークス)

・長編ガンアクションエロマンガです。
・鬼畜賞金稼ぎのドライブがインディアンな褐色少女の性奴隷とともに珍道中の西部劇風の舞台に、ズコバコバンバンと展開していくわけです。

・3つ思ったことを。最初けなしておいて後でホメるパターンで。

・1つ。まず、エロマンガとして、オッパイ大きい目の彼女らをぐりぐりと陵辱気味に犯して、女性のほうも「ウォーン」と咆哮してアクメに達する迫力のエロシーンに比べるとアクションが弱いかな。やや「なにやってるかわからない」現象が起こります。
・つなぎのコマの使い方がもうひとつこなれてないのが原因のひとつかしらね。

・あと、設定過多かしら。いろいろな要素が入り込んで困惑する。物語前に詳細な登場人物。物語後にこれまた詳細な設定資料があるくらい、いろいろなネタがある。正直、覚えられない。エロにもアクションにもどっちの要素をかんがみても多すぎだと思ったり。
・そいで、ぶっちゃけ、「この設定が100%生きるような展開になるには、コミック何巻必要なんだ?」と思ったりします。
・ガントライブの謎。7丁あるっていわれてますが?
・インディアン娘の目的、中ごろから登場する保安犬でガントライブ保持の娘の目的、組織のボス、そいで、主人公の目的とか。謎が多いよなあ。

・2つ。ガンアクションエロマンガということですが、比率でいうと、成年コミックマークはダテじゃねえぞってことで、エロがたっぷりです。そいで、前も書きましたが陵辱系のマンガ家さんです。
・よって、普通のアクションマンガでは、レイプされそうなヒロインを危機一髪で助ける主人公という図式が、一通り輪姦&陵辱されて、なおかつ、丸太をつっこまれてヒーヒーいってる状態で主人公参上になるような感じになってます。
・エロとアクションもなかなか融合されており、1話目は、性奴隷のインディアンといたしてる最中に夜討ちに遭い、挿入状態のまま立ち回ったりします。
・ここはもっときわめて欲しいし、2巻以降も楽しみにしたいところです。

・3つ。2話目にあったんですが、チラリズムのこと。
・性奴隷のインディアンとの契約に「2人のときには必ず全裸になりいつでも身体を差し出すこと」というのがありましたが、インディアンが「チラリズムのほうが萌えるんじゃねえの?」的な疑問を提示するんですよね。


「俺は慎ましい高級娼婦が欲しいんじゃない!
命令があれば往来でも股をひらく肉奴隷が
欲しいんだ!」

「なんだそれはたわけるなっ
自分の財産の奴隷くらい大事にする器を持てっ!!」

「俺は自分のチンポの声に素直なんだよっ」

「一人でチンコとしゃべってろっ!!」



・なんてやりとりをしたり、お互いにののしりあいながら、全裸で往来で、ズコンバコンしてるんですよね。そのダイナミックで大味なところが、実は1番ウエスタンっぽいイメージをかもし出しているんですよね。太陽のギラギラと照ってたりする感じとか。逆に夜にフクロウが鳴いている中、焚き火の前でズコバコとか。

・さて、2巻以降はどうなるんでしょうね。というか収拾つくのかしら。
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2007年/7月/2日
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「メガネxパルフェ!」きづきあきら&サトウナンキ(スクウエアエニックス)

・なぜか、ピンとくるものがあったので買いました。作者の前知識はありません。SEEDコミックできづきあきら氏の名前はよくみかけまして気にはなってましたが縁がありませんでした。

・白衣メガネ部というのがある学校。科学部の軒下を借りている部で、実験するために白衣を着るのではなく、白衣を着たいから実験をする部です。
・そこの部長にホレたみさおさんは、「実験体」になるという条件で入部を許可。その実験とは、「人間は条件が揃えば恋愛感情が芽生えるのか」。かくしてラブコメはスタートするのです。

・キャラが全員基本的にカワイイ。愛らしい。愛嬌がある。絵にホレていたことに気がつきました。たぶん、気になったのもそこだと思います。描画としてやや不安定なところもあるけど、描きたいものを描きたいように描いている絵だと思いました。自転車に2人乗りで暴走なんて絵とかすごくツラそうでしたが、上手く乗り切ってましたしね。

・話もいいんですよ。これが、1巻で完結しているところがいい。これ、2巻以上だと大河少女漫画ラブストーリーになってしまいそうだし。

・白衣高血圧って、白衣を着た男子がいるとテンパってなにがなんだかわからなくなる病気のみさおさんがすごくカワイイんですね。ヒザに座ったりとびかからないと落ち着かなくなるんだそうですよ。なんてステキな設定。
・ただ、彼女の胸が大きいのはキャラ的にどうか?と思ったですけどね。女性キャラはメリハリのためかみんなバイーンって感じの身体なんですけどね。

・でも、どっちかというと、カワイイの比重が重いのは男子のほうなんでしょうね。

・この白衣の先輩LOVEではじまった話は「恋愛実験」というプロジェクトでおかしなほうに流れていくんですよね。で、いつしか、主人公はみさおさんから、そのプロジェクトに参加している相手役の同級生になるんですよね。その流れもたくみだし、メイン男子3人の関係もステキ。というか、恋愛より、そっちのほうがいい感じ。ということはつまり女子向け?ってことになります。つーか、描き下ろしのおまけマンガみればモロだわな。せっかくの入浴シーンが男子3人って!

・なんか釈然としてないもやもやした終わり方も含めて、意外なほど楽しむことができました。この話はもやもやエンドのほうがいいですしね。

・あー、苦言として、表紙はちょっとおもしろくないな。

・おれはきづき氏の絵が好きなんだなとわかりました。太くてしっかりしている主線に豊かな表情がとくに。
「メイド諸君!」も買うべきなのかと思いました。こっちも気になっていたし。
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「ニコイチ」3巻 金田一蓮十郎(スクウエアエニックス)

・母親を求める息子のために女装していたら、引っ込みがつかなくなり、ずっと息子の前で女装し続けることになったサラリーマンの二重生活を描いたラブコメ。

・ポイントはその二重生活の不便さと、それをカミングアウトするタイミングを逃してやきもきする主人公のヘタレさなどでしょうが、3巻では2つのピークを向かえますね。

・1つは、女装姿にホレている女性とSEXをしてしまうこと。2つは3巻ラスト。
・女性と思っていた女性とSEXすることで、性別を偽っていたことがわかる。女性はそれを受け入れる。そして、「ニューハーフ」ということで了承する。そして、3巻のラストではノーメイクで彼女と会うというところまで。

・ここで、おれとは「重き」をおいてるポイントがズレたなあと思うのです。もちろん、おれが重きを置いていたのはSEXです。
・それをすごくあっさり処理したよなあと思いました。一応の濡れ場もありましたけどさ。

・いや、成年コミックなみの盛りだくさん具だくさんにしろ!ってことじゃないんですが、「恋人が女装のときの自分が好き。じゃあ彼女とSEXするときはどうする?」って葛藤や謎みたいのがあっさり解決されたのがもったいなく、しかも、解決したのはSEXのところだけってのがまたどうなの?って思ったりするんですよね。
・ここいら、性差なんでしょうかね。

・あと残っているポイントって、彼女に男性のときの姿をみせるって1点のみだからねえ。それは物語を引っ張るには弱いし(おれの価値観では)、いろいろと新キャラ(ガキのガールフレンドとか、弟の彼女とか)も増えたけど、それぞれ魅力は薄いしなあと。

・とはいえ、男性の姿をカミングアウトするって3巻のラストは4巻を買わないと納得できないので買うのですが、その後、物語をおもしろく展開できるのかしら?と不安が残りました。
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・[ケージバン]