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ポトチャリポラパ/コミック/2008年
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2008年/2月
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2008年/2月/17日
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「世間を騒がせたTV業界スキャンダルの真相」VA.(コアマガジン)

・ふと気がつくとコンビニのコミック棚はほんの少しの例外を除いて500円のムック本に占領されてしまいましたね。

・タイトルでおわかりのようにいわゆる裏モノ系の本です。一時期はそうとう大好物でしたし、書店でもよくみかけましたが、ネットでかなりまかなえるということで、手が出なくなりました。どうやらみんなも同じ意見のようで。

・本書は、芸能界のスキャンダルネタをマンガにしたもので、「マンガ」というところに活路を見出しているタイプのモノですね。タレントさんを中心にテレビに頻繁に登場する有名人のことをマンガ化したものです。

・すべてにおいて「安さ」を楽しむのがこういう本の真髄でして、感動の涙をおでんといっしょに500円で買った本で得てどうするということにもなりますしね。おでん食べながらさらさらと読んで「へー」という、ちょいゲスな好奇心もいっしょに満腹させればOKでしょ。

「安い」と書いておいてなんですが、マンガの質は高い。本書のいいところですね。マジで読み応えがあります。こういうところのセオリーなのかもしれませんが、その場限りのペンネームな人が多く、判別が難しいのですが、有名なマンガ家か、あるいはそのアシスタント?って感じのものもありました。なんたって、亜乱炭志なんてペンネームもありますからね。

参照: [アラン・スミシー - Wikipedia]

・マンガにすることによって、活字中心のスキャンダル本より、有名人を似せたり、好き勝手に動かせたりするという利点はあります。ま、正直あまり似て描いている人がいなくて、似顔絵マンガの難しさを知ることになりますが、そういうものと割り切って読むんでしょうな。

・マンガとしておもしろかったのをいくつかピックアップ。

「スタイリストは見ていた! '07-'08熱愛、デキ婚 総決算!」花山十也&天露九剣
・スタイリストとヘアメイクの噂話で去年と今年のタレントの下の噂をまとめるというもの。途中なぜか「ク*バタ*ハラ」が乱入してくるのが謎ではあるのだけど(ネタ提供だから?)、長いところをダレさせず読ませる構成力と画力は、さすがトップを飾るだけあるなと感心。
「あ*る優」がパイパンだってことと「深*恭*」が芸能界1のヤリマン(これは別のムックにもあったね)だってことを知りました。

「沢*エ*カが辿る女王への道」高橋良夫&亜乱炭志
・原作のデキは1番ですね。エ*カさまの半生はエロマンガなストーリーそのままですね。あ、書き忘れてましたが、全体的にけっこうエッチですよこの本。コンビニに置いてもいいのか?と思うくらい。本作も濡れ場が豊富でエッチです。
・エ*カさまが学校生活に小*美奈子にイジメに遭い、それを男に抱かれ、そのチカラを利用することで芸能界でのしあがっていくという、立身出世なストーリー。エ*カさまのアヘ顔がけっこうグッときました。

「その*んま東に伴う下半身事情」青山みさお&ナカヤマダユキ
・宮崎県知事のタレント時代からの半生。現在もエロエロな性格は直ってないんじゃないの?って話。
・本作は絵が1番好きです。ちゃんと「その*んま東」というキャラを自分のモノにしてます。たとえるなら、コージー冨田氏のタモさんのモノマネくらい。デフォルメし、自分のマンガキャラとして溶かし込み、様々な表情をつけ、マンガ内で自在に動かしております。やっぱ、似顔絵マンガだとネックになるのは表情のバリエーションと動きですよね。

「秋田連続児童殺害事件」W.ヴェローチェ&人間はち公
・上記の「沢*エ*カ」と対象的なのが、秋田の彼女ですね。一応有名人ってことで、事件の実録風に描かれてます。というか、彼女の場合実名ですね。犯罪者だからってことか。
・絵がまた寒々としていて、不遇な人生が、どんどん転落していくのを淡々と描いてます。濡れ場シーン付で(どうもノルマみたいね)。

・あとは、覚せい剤ネタ。「飯*愛」を狂言まわしに突如芸能界から消えたタレントの噂。「亀*父」の半生。女子アナスキャンダルまとめ(すごくスキャン画像のマンガ。こういうのって逆に似ないのが不思議ね)。「G*折*会長」のネタ。ここでも「あ*る*」が大活躍。相撲界ネタ。中国オリンピック(このネタにエロをぶっこむ職人芸よ)。「ジ*ニーズ」にいる破局屋の手口(じゃあ、キム*クはなぜ逃げ切ったんだ?)。

・と、まあ、しばし、「へえそうだったんだ」と楽しむことはできます。ただ、あまりこういうのトクイぶって語ると痛い人になる可能性はありますのでそこはとりあえず注意を。経験者は語るです。

[世間を騒がせたTV業界スキャンダルの真相/アンソロジー [4862522733] - 500円 : コアブックス, コアマガジン直営オンライン書店]

[Amazon.co.jp: まんが世間を騒がせたTV業界スキャンダルの真相 (コアコミックス 102): 本: BUBKA編集部]
(13:52)

「鳥男VSスクール侍」見ル野栄司(コアマガジン)

・初見ル野です。はじめて知ったのはテレビ番組と、たぶん、同様の人も多いと思われます。
・その後、ピョコタン氏のエッセイマンガなどでよく登場され(たぶん、写真付でも登場されてるはず)、ああがんばってるんだと思ったり、小学館で連載されているのをスゲエなどと思いましたが、やや距離を置いてました。
・それはテレビ番組での作風が原因なのかもしれませんし、実際読んだあとでもそう思いましたが、基本、シュールなギャグを描く方なんですね。おれはそっち方面、ある時期大量に摂取しすぎたおかげでちょっと食傷気味で気がついたら10年って感じなのです。ごく1部の「スキ」な作家以外のシュールは避けています。

・まあ、それを少しだけ反省しようかと思ったほどおもしろかった。ま、「少しだけ」ですが。

・本書は「ヤングジャンプ」に連載されていた「スクール侍」をベースにいろいろとくわえた、大盛り幕の内なボリュームになっているギャグマンガです。

「スクール侍」は戦国時代から冷凍保存された侍が現代日本で解凍され、天下をとるべく学校に入ったという、前フリのもと、あと仲間内でふざけているギャグマンガ。


「矢印にしたがい、自由きままに読んでください」


・最初はフローチャートマンガといいますか、本線(太い矢印)があって、そのワキにそれて終わるって感じ(細い矢印)の、アドベンチャーゲームみたいな構造のマンガになってます。バッドエンディングにあたる寄り道に1ギャグあるって感じ

・学校に行くと机にパンダが座っている。後ろにまわりこむとジッパーがついている。それを下ろすと中から人の手が出てあげる。もうひとつの矢印だと中から吸ったあとのタバコが飛んでくる。本線にいくと、パンダは野球部に入っているってストーリーが進行する。

・おもしろいココロミだと思います。ちょっと読みづらいのと、ギャグの質からして、こういう知性がにじむのはむいてないなと思いましたけど。
・編集か作者か読者投票でもそう思われたのか、後半はオーソドックスな展開のショートギャグの「スクール侍」がありました。

「スクール侍」に関しては、「稲中」時の古谷実というのが近いように思われます。バカ同士が仲良く真剣にバカやってる感じがおもしろさを通り越してナツカシさや心地よさまで感じられます。前記のピョコタン氏や、渡辺電機(株)氏、押切蓮介氏なんかにも通じるかね。

・そういうバカをやるときにところどころ「知」が見え隠れするんですよね。「バカ」と「知」は「ボキャ天」でも相反するパラメータとして描かれてましたが、本書ではバカの上塗りのカゲからちらほらと知が見え隠れするのがおもしろい。

・たとえば、水のないプールに運動会なんかで使うテントを設置して不法に住んでいるスクール侍。そこに水泳部がきて、いうことをきかないスクール侍(ちなみに学ランにチョンマゲ+ヒゲの織田信長風)に対してプールに水を入れるという手段で対抗。おぼれかけるスクール侍、そこに神風が吹き、テントごと舞い上げられる。飛びついた先には?ってオチも含めて、すごくきちんとした構造。理系的。ギャグマンガだからってぶっ飛び具合をかなり抑えてます。そういうコントロールのところから知を感じさせます。あるいは、ヤンジャン編集の押さえ込みの強さ。

・また、そこいらをきちんと成立させる画力も侮っていたことをおわびします。校長に媚びを売ろうと、クルマのエンジンを温めておこうとばかり、キーをまわした瞬間に暴走して前の壁にぶつかり大破するクルマってギャグで笑いを生むには、クルマがちゃんとクルマとして描けていないと成立しないからね。

・あと、女子がかわいいのが最大の誤算でした。1種しかないようですが、大丈夫です。いしかわじゅん氏など1種しか描けないマンガ家は多いですから。

・最大のサプライズは、タイトル作で描き下ろしの「鳥男vsスクール侍」と、「スナック鳥男」ですね。どちらもギャグとしては長編でありながら、即興演奏のようなナンセンスギャグにみせかけて、綿密な計算をしているかのようにみせかけて、その実、やっぱり即興演奏のようなフリー具合は、かなり久しぶりな感じで読ませていただきましたし、その完成度の高さにはマジで舌を巻きました。

・作者のあとがきによると、「人間の変なエネルギーの集合体」として鳥男を描いているのですが、たしかに、予測不能な動きで暴れてますね。鳥顔のミノタウロスみたいな風貌のとおり、無表情で珍奇な動きをし、スクール侍がまともにみえるくらいの大暴れをしてます。

・とくに作者のサイト [ピヨピヨコミック]で1コマづつ連載されていた50ページにもおよぶ「スナック鳥男」のでたらめぶりはすごいですね。吊り天井のギャグにはマジで驚いた

・不条理系ギャグの最大の弱点は効果範囲の狭さではあります。とどのつまりは好き嫌いにいたる。だからこそ語るのが難しくなるんですね。で、いきおい、技術論にながれがちです。と、みると、不条理の効果をいろいろなもので補うということで考えると、実に女子の可愛さだったりするんですね。「鳥男vsスクール侍」でのツクネちゃん(美少女キャラ。魔女っ子ではない)が1番タマシイこめられてるもんな(とくに14pのツクネちゃんはすごくカワイイ)。あと、作者あとがきのとおりの異様なエネルギーね。なんかよくわからんけどすごい熱を感じさせはしました。それはよくありますが。

・正直に書きますと、本書と、上の「世間を騒がせたTV業界スキャンダルの真相」はコアマガジンから紹介することを前提としてもらった本です。買うと1300円という本書の価値はおれ的には微妙です。

・ただ、おれに課しているオキテとして、読んで声を出して笑ったマンガ家は慕うというモノに則ると、実は何回か笑ってしまったことも正直に書いておきたいところです。

・ほんのちょっとしたことで第2のしりあがり寿になれそうな気がしないでもないですが、その「ほんのちょっとしたこと」がなにかはよくわかりません。

[鳥男VSスクール侍/見ル野栄司 [4862522214] - 1,365円 : コアブックス, コアマガジン直営オンライン書店]

[Amazon.co.jp: 鳥男VSスクール侍: 本: 見ル野 栄司]
(16:06)

2008年/2月/13日
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「相思相愛ノート」フクダーダ(コアマガジン)

・氏の第2作品集にして、最高傑作です。それでいて、ひょっとしたらこれからのキャリアすべて鑑みても最高傑作になる可能性があります。

・エロマンガです。

・ラブラブな男女、学生さんたちが、成年コミックしている短編マンガです。


オッパイに
ふれてください。


・なんてオビにあり、本作にもたわわな方が多く登場されてますし、それが売りのひとつではありますが、フクダーダ氏の売りであり、とくに本作の最大の売りは、コトをいたすまでのムードの盛り上げですね。

「風が吹く」なんて思いました。2人の間にエロの風がそよと吹いてはじまる感じがとても上手い。
・しかも、各話相当バリエーションに富んでます。そら、リアルで考えても、いろいろな男女の関係や進行度があるわけでして、それに即しているってコトで考えると自然ではあります。

「いつのまにか二人は」では、昔はラブラブだったけど、妙に距離をおいた2人。学校のプリントを渡す兼看病に向かう男。
・ひととおり話して帰ろうとする。
男「おれがいると眠れないだろ」
女「寝られるよ」
・女は布団から彼の手をつかみ、みつめる。←ココ。

「あおいクロッキー」では、美術部の数合わせにムリヤリ入部させられた男。今日も石膏クロッキーをしているがどうにもこうにも。そのヘタなのをからかう部長(女)。
男「おれは実戦向きなんだって。あんな石膏じゃ感じがつかめないよ」
女「してみる? 実戦」
・と、部長さんが下着姿になるわけです。←ココ。

「ハルはこれから」では、「あおいクロッキー」とつながっている。すでに1ページ目でいたしてる後輩2人。美術部の先輩同士(あおい〜でいたした2人ね)がいい感じになってることを知る。男は以前部長に告って玉砕している。男の彼女はそれを知っている。
・帰ろうとしている男の手をつかみ、「また愛してほしくなっちゃったんだもん」←ココ。

・と、3例をみていただいて気づいた方、いますか? そう、本作ではすべてエロの風は女性発信なんですね。
・前作「恋におちよう」では、混合です。男性発信のほうが多いかな。

・フクダーダ氏は、いつも変化をしていく作風なことも前作との対比で伺うことができます。で、本作はたまたまなのか意図的なのか微妙なんですが、女性が誘う作品がまとまったと。そういった意味で、「女性が誘う」シチュエーションがツボの人には、冒頭のように氏のなかでも1番の作品になるんじゃないかなと思ったのです。正直にいうとおれはツボです。

・バトルシーンそのものよりも、そこにいたるまでのほうがいい感じだし、武器になるなと思います。
・というか、次の課題はバトルシーンでしょうかね。かなり迫力はありますし、ラブラブな2人の最中のやりとりとかすごくいい感じですが、そこに関してはマスタークラスモンスターがたくさんひしめいてらっしゃるのですから大変です。しかも、男女のラブラブというパターンが多いから、あまりにもアブなコトはしにくいですからね。3pすらないですし。そういったバリエーションも込みでそこでガーンといく余地はまだ少し残ってらっしゃる気がするんですが。

・オッパイ属性に目覚めたようで、そっちのほうも全開ではありますね。ただ、フィギュアっぽい質感だよなとは思いました。固くてピンと張ってつやつやしてる感じ。そういうことも含めて、ファンタジーよりのエロシーンに、リアルな男女のやりとりって感じですかね。

・やっぱり学生時代に彼女がいると人生は豊かだよなと思わせる作品集ではありました。
(10:19)
[Amazon.co.jp: 相思相愛ノート (メガストアコミックス 153): ホーム: フクダーダ]

「こいのり」しらんたかし(ティーアイネット)

・氏の第2作品集。3本の作品から構成されてます。エロマンガですよ。

・昭和初期を舞台として、人気のない別荘で暮らす、盲目のお嬢様と使用人との関係を描いた「目線」
・薬品会社の事故で、母親が自分より若返ってしまい欲情してしまう「ハハワカガエリ」
・下着ドロをしている変態を調教する女子学生の「興味アリ」

・どれも濃厚なストーリーです。もちろん成年コミックなストーリーですね。それぞれの設定からのエッチにいたるまでの展開と、その後に広がるストーリーがいいです。

「目線」の続編である「目線2」では、盲目のお嬢様の姉が登場して波乱を起こします。
「ハハワカガエリ2」では、いっしょに薬を浴びて若返ったトナリの未亡人が登場。
「興味アリ2」は奴隷行為がエスカレート。本作に収録されてない「3」では着地点が用意されていてこれがまたいいんだ。

・ここいらの構成力と、あくまでエロを推していくスタイルはとてもステキです。多少のゴリ押しやトンデモも許容できるくらいの魅力を持ち合わせていると思います。
・テンポはよく、チャラくないですね。「ハハワカガエリ」なんかはコメディタッチなんだけど、あまりギャグやコメ配合を強くしすぎてエロをシラケさせることを避けてます。反面、「興味アリ」などは、重くなるのを避けてますね。バランス感覚いいです。個人的にはギャグ強めでも全然OKなんですがね。

・エロのほうはややロリでして、発育途中っぽいナマナマしさがあります。3Pはありますが基本ノーマルですかね。根本の作画はそうでもないのに、ディティールがリアルタッチでナマナマしいってのに好みが別れますかね。あばら骨が浮いて出ているところとか。

・キャラ、話、展開、それにエロをまぶす技術は、かなり独自のものだし、強い武器だなと思います。
「目線」は、お嬢さんが盲目なことをいいことに、のぞいたり、いろいろしてましたけど、お嬢さんにはダダ漏れだったと、そして、「こんなワタシを女としてみてくれる」とね。

・すごい長編が描けそうです。しかも、成年コミックじゃなくて、「青年誌」のほうで。ヤンジャンとかスピリッツとか。ま、ヤングキングあたりでも、チャンピオンREDあたりでもいいのかな。意外に第2の山本直樹に近い位置につけらっしゃったりして。

・次回作に大期待です。
(11:18)
[Amazon.co.jp: こいのり: ホーム: しらん たかし]
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2008年/2月/11日
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「のの美捜査中!」5巻 重野なおき(白泉社)

・刑事4コマ完結巻。
・本作が先だったか「うちの大家族」が先だったかはサダカではないのですが、初重野なおきであり、ファンになった作品でもあり、思い出深い作品ではあります。

・小学生に紛れるくらいチビッコだけど頭脳明晰なのの美さんと、ユカイな刑事たちの活躍を描いたものです。1話1事件というスタンスで毎回、謎をといたりしてます。

・ちゃんと4コマとして機能して、なおかつ、連続して話も続くという、昔と今のハイブリッドなスタイルでらして、おれが好きなパターンです。というより、4コマとしてオチてないマンガはキライなパターンといったほうが正直か。

・20年前といっても通用するシンプルな絵ながら、実は、話と同様の、緻密さを兼ね備えており、何人か登場する女性のしっかりした設定と描き分けは相当レベルが高いと思われます。

・重野氏の弱点は、その普遍性かと思われます。かなり広い読者層だとおみうけしますし、前記のとおり、20年前でも20年後でも古くも新しくもない、中点に存在しているような作風は、広く受け入れられるけど、「熱狂」を生み出しにくい。

・実際問題、おれは「うちの大家族」と本作以外の重野作品を知らない。でも、なぜか知ったような気持でいる。たぶん、他作品もその予想を大きく覆すことはない「おもしろい」マンガであるはず。そして、そうだからこそ、今まであえて買おうと思わなかったりする。

・本作を連載していたマンガ雑誌で読んでいる人が、「おもしれえ」と雑誌を読んだタイミングで思っていながらも、コミックになったときに買うことがないって感じ。世の中には不幸にもそういうマンガやそういう作風のマンガ家はけっこう存在する。

・ブレイクスルーとなる作品が1作あるとちがうんですよね。たとえば、いがらしみきお氏だと「ぼのぼの」。みずしな孝之氏だと、「幕張サボテンキャンパス」など。これまでとも同じクオリティなんだけど、ガーンと突き抜けている作品。
・ま、そんなの指摘されるまでもないとは思いますけどね。みなさん、それを目指して切磋琢磨されてるものね。それは重野氏も例外じゃないでしょ。

・個人的には、「ふたりごと自由帳」という小坂俊史氏との合作での同人誌作にヒントがあると思います。非4コマ(4コマでもいいか)で、こじれてぐじょぐじょのラブストーリー(小池田マヤばりの)を、あの絵柄で描いていただくと、うまくいけばハマるんじゃないかなーって。あるいは、わたせせいぞう的なシュッとしてるショートラブストーリー。いずれにせよ、1回でいいから、かなり正面きったラブストーリーを描くべきだと思いますよ。

・本作のほのぼの刑事4コマにあるまじきドラマチックなクライマックスはそれを夢見させてくれます。
・そして、作品最後の1コマのオチのミゴトさ。これぞ4コママンガの最終回の模範。
・いい仕事をなされてると思います。でも、ブレイクスルーではないかなと。

・ま、わたくし、個人的に、「うちの大家族」だけじゃ重野成分が切れるおそれがあるので、なにかシリーズを新たに買おうとは思ってます。「たびびと」あたりかなー。あるいは、次に新しく出る1巻かな。
(15:25)
[Amazon.co.jp: のの美捜査中! 5 (5) (ジェッツコミックス): 本: 重野 なおき]

2008年/2月/3日
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「岳」6巻 石塚真一(小学館)

・全国的なものかどうかはよくわかりませんが、地元じゃ人気な山岳救助マンガです。近くの書店では特設の平台があるくらいです。
・たぶん、見上げればすぐ舞台となる山がみえるからだろうなとは思います。

・三歩は日本アルプスで山岳救助ボランティアをしている。山を愛し、山を愛する人を愛し、今日も山にいます。そんな三歩の活躍を描いた読みきりオムニバス。

・山岳マンガってのはすごく分が悪いジャンルなんですよね。

[Amazon.co.jp: 岳人(クライマー)列伝: ホーム: 村上 もとか]

・この偉大すぎる作品が立ちはだかってます。

[Amazon.co.jp: K(ケイ) (Action comics): 本: 谷口 ジロー,遠崎 史郎]

・そして、谷口ジロー氏による諸作品が続いております。名作の宝庫なワケです。

・石塚氏の山岳マンガでもっとも分が悪かったのは画力です。それもこの2作品のタチの悪いところですね。この作品群は山を描いてしまったんですよね。しかも、マンガ界でもトップクラスの筆力で。
・だから、暗黙の了解ってことでもないですが、「山マンガは画力がないとダメ」って刷り込まれてしまったんですよね。

・で、「岳」。1巻はそこが本当残念なところでした。ところが、2巻からはずっと右上がりで絵がスゴイことになってます。6巻の「ルート」という作品で雪崩のシーンがあります。これ、1巻だと、雪崩に見えず、杏仁豆腐をぶちまけた厨房みたいになってました。それが逆にインパクトが強かったくらいでしたが、6巻のそれはちゃんと雪崩です。恐ろしくて、寒そうな、雪崩です。
・というか、つまり、そういうことでひっかかりは皆無でした。「上手い絵」と評価することができるほどのものです。

・そして、1巻のときから他の山マンガと張り合えたストーリーがまた6巻でスゴイことになっている。

・これまでは山での「死」ってのが大きかった気がしますが、本作では「生きて帰る」ということにとくに焦点を合わせているように思えましたし、それがまたこれまでと同じくらい感動をもたらしていることが最高にすばらしい。

・結婚前に父娘で登山したときに鉄砲水に遭う。足をくじいた親友のため思うように動けず往生する。学生時代の恩師が遭難する。これら助かります。ぶっちゃけてますが大丈夫。それでもちゃんとおもしろいことは保証します。

・おれがおもしろかったのは他の2編。

「僕にとっての山」。
・登山シーンのない、山小屋に殺人で少年院にいた少年が働く話。

「山男」
・道に迷い捜索隊を呼び、すごい数の人が自分を探していることにビビる話。

・これらの視点、とくに「山男」は山マンガとしては画期的な気がした。つまり、迷った自分を探してくれるたくさんのヘッドライトに恐怖を感じるんですよ。金の件もあるし、たいしたことじゃないのにあれだけを動かしたプレッシャーで、ガチガチ震えるんですよ。
・そして、それが感動につながる風に「落ち着く」んですよ。ここいらの上手さ。

・いいマンガ。もとからそうだけど、さらにいいマンガになっていきます。まだ頂上がみえない感じがあるのもいい。

[Amazon.co.jp: 岳 6 (6) (ビッグコミックス): 本: 石塚 真一]

(17:06)

「おまたせ!ピース電器店」能田達規(JIVE)

・いまやサッカーマンガの人ってことになってるのでしょうか、おれにとっては未だに「おまピー」の人のまんまなので、おれにとっては「久しぶり」の最新作です。

・都内のどこかの私鉄沿線の商店街の1画にある「ピース電器店」はすべてがオリジナルで、従来のメーカー品よりもスゴイ家電を売ってます。その長男ケンタローは発明バカでいつも新発明をしてはまわりを巻き込む大騒ぎになる。って作品の新作が2編。ほか、SF(すこし不思議)な作品が収められた短編集。

・これがビックリするくらいのクオリティの高さ。どれも連載途中なのをカット&ペーストして貼り付けたような。だから、短編集というより、シングルを集めたベストみたいな感じです。あんまりにも自然。

・超常現象を謎解く「科学探偵ムー」。
・ヘリコプターの墜落事故によりサイボーグになった中学生「絶対安全大作」
・ルパンやインディージョーンズにもタメ張れるトレジャーハンターな、「マッドレイダース」

・などなど、そのまま、どこかで連載してもまったくおかしくないものです。
・ただ、その自然こそが弱点でもあるのかしらね。あまりにもスーッと入り込んで心地いいまま終わってしまうんですよね。

・そして、でも、やっぱりありがたかった。久しぶりに読む「おまピー」は相変わらず最高だった。どこかで切に連載してほしいとも思った。いや、「おまピー」じゃなくてもいいから、サッカーじゃない能田マンガ。

・って、おれはサッカーマンガに手を出せばいいんだな。そうするとすごく楽しむことができる。そして、本作で「おまピー」に触れた、サッカーマンガ家としての能田ファンは本作を読んで、秋田書店から出ている「おまピー」を買うと至福のときを過ごすことができるのな。

[ポトチャリポラパ/コミック/2006年11月 / 「時間救助隊TIMER(タイマー)3」 能田達規(講談社)]

・さしあたってサッカーマンガから入った能田ファンはこれをどうぞー。

・みんなで能田マンガを読んでシアワセになりましょう。

オススメ

[Amazon.co.jp: おまたせ!ピース電器店―能田達規作品集 (CR COMICS): ホーム: 能田 達規]

(19:34)


・[
ケージバン]