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■基本原理の確認
原理確認のための弾性リングの試作と変形テスト円筒状の弾性金属材の外周に複数個の斜めスリットを成型した円筒体(弾性リング)を試作し、トルクを加えたときの変形量の測定を行い、弾性リングの変形量はトルクに比例する事を確認している(図4参照)。■有限要素法による弾性リングの変形解析
弾性リングをモデル化し有限要素法を用いて変形計算を行ない、上記変形試験結果と対応し、計算と実験がほぼ一致することを確認し、モデルの妥当性を確認した。図2にその計算モデルと結果の1例を示す。 これにより、任意のトルクを測定するための弾性リングの形状が計算により決定でき、設計手法の確立を計ることができた。■弾性リングの半径方向変形量の検出法に関する検討
弾性リングの半径方向の変形量の非接触測定方法としては、静電容量方式、渦電流方式、光学式、磁気抵抗方式など種々の方法が考えられるが、ここでは、図3に示す磁気抵抗式変位計測法について検討を行った。■微小な穴工におけるドリルの折損を防止するには、切削トルクを検出するには回転するスピンドル側にトルクセンサーを設ける必要があること、及び検出したトルクと予め設定したしきい値との比較と、検出トルクがしきい値を越えたときにオーバロードを出力する検出システム並びに、オーバロード信号に基づいてドリルの切り込みを停止し、引き戻し切り屑を排出した後再び切り込み点まで、早送りし、切り込み送りにて切削を再会するステップフィードを行う切り込み制御が必要である。
切り込みの制御は、市販の穴加工機では、送りねじとサーボモータの組み合わせで行われている。しかしこの方式では、サーボモータと送りねじの回転慣性モーメントがかなり大きく、トルクがしきい値を越えオーバロード信号を出力してから、サーボモータの回転が停止し、切り込みがストップするまでにかなりの時間が掛かる。その間にドリルが切り込んで、トルクが上昇しすぎて折損に至る場合がある。また、切り込みが行き過ぎても折損しないようにするには、しきい値を低く設定する必要があり、この場合、頻繁にオーバロード信号が出力され、加工能率が低くなる等の問題があり、オーバロード信号が出力されてから、停止するまでの時間が短い高速応答の切り込み機構が求められた。
そこで、本研究では以下で述べる摩擦駆動による切り込み機構を考案している。
■ドリルの折損を防止するための重要な要素技術としてオーバロードを検出してから、瞬時に切込みを停止し、ドリルを引き戻さなけらばならないが、このため図5に示す摩擦円盤による主軸駆動法を考案している。
これは回転する主軸の側面に摩擦円盤を押し当て、主軸の軸方向への移動を可能にするものである。原理は図5に示すように、主軸の中心軸に対し摩擦円盤の回転中心軸を上方にオフセットして摩擦円盤を主軸に押し当てると、主軸には摩擦円盤との接触点において摩擦力が働く。この摩擦力は摩擦円盤の半径に対する中心位置のオフセットの量の比だけ、その方向が主軸の軸方向に傾く。主軸には接線力と軸方向推力が働き(図5(b))、推力は主軸を軸方向へ移動させる。主軸の移動を停止するには摩擦円盤と主軸の接触を解除するだけでよい。また主軸を引き戻すには、摩擦円盤の接触位置を左から右に移すだけ(図5(c))でよく、この移動量は極わずかであり、極めて短時間に移動することが可能であるので、高速応答で切り込みの停止及び後退ができる。
また、切り込みの推力は摩擦円盤の摩擦力の軸方向分力に等しいため、過大なスラスト力が掛かったとき摩擦円盤と主軸がスリップし切り込みがそれ以上行われないという安全機構にもなっている。そして摩擦円盤の主軸への押しつけ力を変化させることにより、推力の制御が可能である。
ただし、摩擦力を利用しているので、大きな推力は得られず加工できる穴径に限界がある。
■ドリル折損防止機能付き微小穴加工機の試作
上記した弾性リング方式のトルクセンサーと摩擦駆動切り込み機構を有するドリル折損防止機能付き微小穴加工機を試作した。写真1及び図6にその概要を、表1にその仕様を示す。項 目 | 仕 様 |
対象ドリル直径 | 0.1〜1.0mm |
主軸回転数 | 6000rpm |
主軸全ストローク | 100mm |
主軸切込ストローク | 40mm |
検出トルク | 10N・cm |
早送り速度 | 〜300mm/min |
切り込み速度 | 10〜50mm/min |
ドリルコレットチャック径 | 3.175mm |
ワーク側 | 回転スピンドル, XYテーブル |
■トルク検出ドリル折損防止穴加工実験
1) 高巣周平他3:微小穴加工機の開発(第1報)-摩擦駆動方式の切込み装置:
1998年度精密工学会春期大会学術講演開講演論文集 P233
2) 高巣周平他3:微小穴加工機の開発(第2報)-微小トルク検出装置:
1998年度精密工学会春期大会学術講演開講演論文集 P234
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