写真は米軍の化学兵器関係の報告書に掲載されている火焔放射戦車である。この車輌については試製火焔発射戦車カホ車として模型も発売されているが、名称の根拠は不明である。この車輌を調査した米軍の報告書では試製九七式火焔放射戦車となっているが、これも米軍が付けた名前だと思われる。この車輌については色々なことが言われているが、未だに確かなことが分からないので、ここで小生の意見を述べてみたいと思う。
陸軍の火焔放射戦車については以下のような二種類のものが知られている(「九七式中戦車シリーズ」竹内昭)。この中で、(その2)は図面が発表されたカイ車Ⅱ型のことだと思われる。
しかし、いずれも前方機銃を火焔発射機に置き換えたもので、この車輌のように車体の左右に火焔発射機を2基取り付けたものは知られていない。しかし、これと同様に左右に斜め前に向けて火焔発射機を搭載したものがある。それは装甲作業機である。
陸軍では万能型の装甲作業機に代わって、それぞれの機能に特化した専用車輌の開発を行っている。以下に工兵機材の開発を行っていた第3陸軍技術研究所の昭和18年度の研究計画から一部を掲載する。この中の超壕作業車というのはTG機の事だと思われる。また、爆薬作業車というのは、以前、日本戦車記事で紹介した工兵用特殊車輌の事だと思われる。→
工兵用特殊車輌
この表の中に火焔作業車というのがある。これがどんな車輌だったのか詳しいことは不明だが、中戦車の車体を使用して火焔放射を行う車輌だったと考えられる。装甲作業機から分化した車輌なら、装甲作業機と同様の火焔発射機の取り付け方をしていても不思議ではない。この火焔作業車が写真の車輌だと考えるのが、私には最も筋が通っているように思われる。あの車輌は火焔放射戦車ではなく、工兵車輌だと言うのが私の意見である。