第57回全日本吹奏楽コンクール 平成21年10月24日(土)/東京・普門館 |
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中学・前半の部 |
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1 | 西関東 群馬県 伊勢崎市立第一中学校 (指揮/桑原裕章) ※初出場 | |
4/交響詩「ドン・ファン」 (R.シュトラウス/森田一浩、M.ハインズレー) | ||
マーチのファンファーレは緊張したでしょうか、すっぽ抜けた感じで決まりませんでした。全体的にサウンドが硬く、こじんまりしてしまったようで、なかなかエンジンがかからないまま課題曲が終わってしまったのが残念。自由曲では一転し、同じバンドとは思えないほど広がりのある伸びやかなサウンドに変化。特に中間部での積極的な歌い方は素晴らしいものがありました。Tuttiでのサウンドは豊かでしたが、音の薄いところが不安定だったのが惜しまれました。 | ||
2 | 九州 沖縄県 沖縄市立美里中学校 (指揮/横田裕一) ※2年ぶり3回目 | |
2/朝鮮民謡の主題による変奏曲 (J.B.チャンス) | ||
大変クリアですっきりしたサウンドです。マーチの演奏にも余裕が感じられ、特にトリオの美しさは見事だったと思います。自由曲では細かいミスやズレが気になりました。全体的に抑揚が希薄でメリハリに欠けていたなという印象です。オーボエ・トランペットのソロはもっと積極さがほしいと感じましたが、緊張する中で無難にまとめたのは見事です。ラストの金管セクションのテーマは非常に明るく美しいサウンドで感動的に終曲しました。「朝鮮民謡〜」っていいなぁと感じさせてくれる好演だったと思います。 | ||
3 | 北海道 旭川地区 旭川市立緑が丘中学校 (指揮/南裕一) ※初出場 | |
4/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/佐藤正人) | ||
中学バンドには珍しく透明感のあるサウンドです。楽器の発音が美しく、Tuttiでの安定感も十分あります。自由曲は出だしに戸惑いを感じたものの、終始美しいサウンドでよくまとまっていたと思います。逆にバルトークを表現するにはスピード感やキレが不足していたようで、綺麗にまとめすぎの印象を受けました。各ソリストは好演だったと思います。今後も北海道代表として常連になりそうな予感がしました。 | ||
4 | 中国 山口県 防府市立桑山中学校 (指揮/中村武司) ※10年ぶり7回目 | |
2/組曲「仮面舞踏会」より (A.ハチャトゥリャン/川上修一) | ||
輪郭のはっきりしたクリアなサウンドを持ったバンドです。マーチは隅々まで気配りがされていて、小細工の無い伸びやかな表現が素晴らしいです。自由曲でもアナリーゼが行き届いており、きちんと整理整頓された演奏だったと思います。Tuttiになっても破綻しない安定したサウンドはバンドの実力を十分に示していたと思います。 | ||
5 | 四国 徳島県 徳島市国府中学校 (指揮/藤本澄代) ※2年連続2回目 | |
3/ディオニソスの祭り (F.シュミット) | ||
課題曲の冒頭から実に重厚なサウンドが響き渡りました。音楽が積極的に前に進んでいましたし、サックスとファゴット、シロフォンのソロは堅実なアンサンブルで秀逸。自由曲でも各楽器が良く鳴っていて、積極的な表現が秀逸です。楽器の発音がクリアでTuttiの安定感はかなりのものだったと思います。「ディオニソス」を演奏するに十分な実力を要したバンドでした。初の金賞受賞で、四国代表としては5年ぶりの朗報です。 | ||
6 | 関西 奈良県 香芝市立香芝東中学校 (指揮/本村公玄) ※10年ぶり2回目 | |
2/カントゥス・ソナーレ (鈴木英史) | ||
演奏直前までバスクラ奏者の椅子の高さ調整がうまくいかなかったようで心配しました。課題曲は中学生とは思えない明瞭な発音でクリアなサウンドを響かせました。躍動感に溢れ表現も豊かであり、心地よいマーチだったと思います。自由曲では普門館の大きい空間の雰囲気を変えてしまうほどのシンフォニックな響きが印象的。フリューゲルホルン、オーボエのソロも実に安定感があります。立体的な演奏は前半の部では随一と思いました。初の金賞受賞おめでとうございます。 | ||
7 | 北陸 富山県 高岡市立芳野中学校 (指揮/橘 恭幸) ※9年ぶり4回目 | |
4/バレエ音楽「シバの女王ベルキス」より 戦いの踊り、ソロモンの夢、狂宴の踊り (O.レスピーギ/小長谷宗一) |
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課題曲はファンファーレが決まらず不安な出だしでした。管楽器と打楽器が微妙に合っていなくて、どこかストレスの残るマーチになりました。自由曲では一転して非常に伸びやかな音楽になりました。E♭クラリネットのソロは堂々たるもので見事ですね。細部に対してのツメが甘く、全体的には雑然とした印象です。中盤から終曲に向けては本来のこのバンドの目指すものが爆発したようで、輝かしいサウンドを聞かせてくれました。 | ||
8 | 東京 東京都 小平市立小平第三中学校 (指揮/中村睦郎) ※3年連続7回目 | |
3/「スペイン狂詩曲」より マラゲーニャ、祭り (M.ラヴェル/中村睦郎) | ||
ホーム会場での演奏ということもあってか、落ち着きのある整然とした演奏です。課題曲は全体的に金管が押さえ過ぎとも思いましたが、これは好みの問題でしょうか。木管は美しいアンサンブルを聞かせてくれます。中間部のシロフォン奏者、ブラボーですね! 自由曲はアンサンブルの歯車のかみ合わない箇所があったのと、イングリッシュホルンのソロは音の抜けがよく無かったところが残念ではありましたが、全体的には透明感のあるサウンドで色彩豊かなラヴェルに仕上がっていました。3年連続6回目の金賞です。 | ||
9 | 東関東 千葉県 習志野市立第五中学校 (指揮/織戸弘和) ※3年連続4回目 | |
4/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より パントマイム、全員の踊り (M.ラヴェル/織戸弘和) | ||
マーチはファンファーレが決まりませんでした。Tuttiサウンドが若干不安定で、マーチの躍動感に乏しい印象を受けました。自由曲では「パントマイム」での中学生離れしたフルートソロが見事。バンドのサウンド的にはこちらのほうが相性が良いようです。「全員の踊り」でのE♭クラリネットも流暢なソロを聞かせました。全体的には表現がおとなしめで安全運転な印象があり、バンド全体の更なる積極性がほしいと感じました。 | ||
10 | 東北 秋田県 秋田市立山王中学校 (指揮/木内 恒) ※3年連続29回目 | |
4/「幻想交響曲」より 第5楽章「サバトの夜の夢」 (L.H.ベルリオーズ/天野正道) | ||
名門バンドの登場で客席もざわざわしていました。厚いサウンドできっちり構成された課題曲でしたが、冒頭のファンファーレが決まらなかったり、ミスもいくつかあったりしてマイナス要素が目立ったのが残念。自由曲はこの大曲をよく吹ききりました。重厚なサウンドがこの曲によくマッチしています。細部まで研究されており、各奏者がきっちりと役割を果たしていたようです。カリヨンベルも印象的な存在感がありましたし、終曲に向かってのバンド全体のエネルギーは凄まじいものがありました。 | ||
11 | 東海 三重県 鈴鹿市立千代崎中学校 (指揮/中山かほり) ※2年連続5回目 | |
4/歌劇「西部の娘」より (G.プッチーニ/大橋晃一) | ||
40数名の編成で管楽器が少ないなと感じました。多くのバンドが課題曲4のファンファーレに苦心している中、堅実に美しいファンファーレを聞かせました。全体的にも楽器の発音が明瞭で、よく整理されてまとまっています。自由曲は初めて聞く曲で新鮮でした。強奏になってもサウンドが破綻せず美しさが保たれていました。ハープが単なる飾りやハッタリではなく、バンドの中できっちりと音楽を奏でていて存在感がありました。決して派手さはないものの、要所要所をきっちりと押さえた堅実な演奏は実力あってのことでしょう。2年連続4回目の金賞です。 | ||
12 | 九州 沖縄県 沖縄市立山内中学校 (指揮/花崎由美子) ※2年ぶり2回目 | |
4/喜歌劇「伯爵夫人マリツァ」セレクション (E.カールマン/鈴木英史) | ||
落ち着きのあるファンファーレがよく響きました。マーチはエンジンがかかってくると多くのバンドが直線的なサウンドになっていくのに対して、山内中は終始柔らかい響きを崩すことはありませんでした。自由曲でもそのサウンドは健在で、美しく温かみのある音楽を作りあげています。途中で拍手が入ってしまいましたが、動揺することなくしっかりと演奏できていたようで良かったです。 | ||
13 | 東関東 千葉県 松戸市立第四中学校 (指揮/犬塚禎浩) ※6年ぶり2回目 | |
4/ウインドオーケストラのためのマインドスケープ (高昌帥) | ||
見事なファンファーレでスタートし躍動感のあるマーチでした。非常にクリアで美しいサウンドをもったバンドです。自由曲ではさらにエンジン全開で、スピード感溢れたキレのある演奏でした。ソプラノサックスのソロ、アルトサックスとのソリの部分も流暢でハイレベル。前半のカットは違和感がありましたが、中間のオーボエを中心とした木管アンサンブルは陶酔感漂う美しさ、そして最後は畳み掛けるような勢いの見事な終曲でした。終始積極的な表現で安定感もあるので聞き手としては至福の12分間。6年ぶり2回目の金賞です。 | ||
14 | 中国 岡山県 津山市立北陵中学校 (指揮/中山秀治) ※3出休み明け5回目 | |
4/喜歌劇「チャルダッシュの女王」セレクション (E.カールマン/鈴木英史) | ||
美しくまとまったファンファーレでした。マーチの最初はクラリネットセクションの音がまとまらず、バンド全体もなかなかエンジンがかかってこなかったようです。自由曲は期待通りの柔らかく深いサウンドが見事。楽器をもったままの手拍子や足踏みは楽器を落とさないのか…とヒヤヒヤしましたが。音に伸びがあり、強奏になってもサウンドが安定していました。 | ||
15 | 東北 福島県 相馬市立向陽中学校 (指揮/北野英樹) ※2年連続2回目 | |
1/パリのアメリカ人 (G.ガーシュウィン/真島俊夫) |
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43人という小さい編成を活かした透明感のあるサウンドが秀逸です。課題曲では良い表情、ニュアンスを出していて上質な音楽だったと思います。自由曲でも透明感に加えて色彩豊かなサウンドで魅了されました。イングリッシュホルン、サックス、フルートのソロも表情豊かな演奏で存在感がしっかりあります。銅賞でしたが、このバンドの音楽性・独自性はもっと評価されても良いのかなと感じました。普門館ではなく、ちゃんとしたコンサートホールで聞いてみたいと思う秀演の一つでした。 | ||