第58回全日本吹奏楽コンクール 平成22年10月31日(日)/東京・普門館 |
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高校・後半の部 |
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1 | 東海 長野県 長野県長野高等学校 (指揮/松井深之) ※2年ぶり4回目 | |
4/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/松井深之) | ||
柔らかいサウンドで爽快感のあるマーチでした。トリオのサックスは甘い音色で秀逸。ピッコロ、ユーフォニアムとのアンサンブルも非常にスムーズで見事。後半からのノリの良さドライブ感が素晴らしい演奏でした。自由曲、「夜明け」でも柔らかいサウンドで幻想的な雰囲気が良くでていました。中音域の充実がバンド全体を支えているようでした。「全員の踊り」では直線的過ぎた感もありましたが、一体感もあり好演だったと思います。 | ||
2 | 関西 奈良県 天理高等学校 (指揮/吉田秀高) ※3年連続35回目 | |
1/交響三章より 第3楽章 (三善晃/天野正道) | ||
冒頭のアンサンブルは安定しており、全体的にも重厚なサウンドで表情豊かな課題曲はレベルの高いものだったと思います。特に中間部での優美さは見事。自由曲では緊張感のある曲をしっかりと演奏できていたと思います。シンフォニックで理知的なサウンドは「交響三章」によく合っており、細かいアンサンブルも上手でしたが、全体的にはこじんまりとまとまり過ぎだったかもしれません。個性的なバンドがひしめく部門においては、もう一つ存在感を示すことができなかった印象でした。 | ||
3 | 北海道 旭川地区 北海道旭川商業高等学校 (指揮/佐藤淳) ※2年連続9回目 | |
4/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より (P.マスカーニ/宍倉晃) | ||
キレのあるクリアなサウンドで、明るく推進力・躍動感に長けたマーチでした。旋律群のユニゾンの素晴らしささ、歌い方の一体感は秀逸。聞かせどころを心得た演奏で感銘度の高い課題曲だったと思います。自由曲での木管セクションの甘美なサウンドが秀逸。トランペットのオフステージソロは美しい音と余裕のある歌い方が素晴らしかったです。コーラスの部分も委縮することなくしっかりと音楽にしており、もちろん楽器によるTuttiでの深く雄大なサウンドは群を抜いており、ドラマティックな演奏に魅了されました。2回目の金賞受賞です。 | ||
4 | 東関東 千葉県 習志野市立習志野高等学校 (指揮/石津谷治法) ※3年連続25回目 | |
2/バレエ音楽「火の鳥」より (I.ストラヴィンスキー/R.アールズ) | ||
柔らかいサウンドで心地よいテンポと推進力のあるマーチ。メロディの歌い方、オブリガードの美しさ等は素晴らしいものがありましたが、このマーチが求める曲想とは少し違和感を感じたのは事実です。自由曲の「王女たちのロンド」ではオーボエがひな壇の下段に移動。さながらオーケストラのような雰囲気で目を引き、美しいアンサンブルは習志野らしさが出ていました。「カスチェイの踊り」は終始柔和な感じだったのは残念。その後、「間」を取ることなく終曲に入ってしまったのには魅力半減といったところでした。 | ||
5 | 東海 愛知県 愛知工業大学名電高等学校 (指揮/伊藤宏樹) ※2年連続34回目 | |
4/三つのジャポニスム (真島俊夫) | ||
骨太なサウンドで全体的に重かったように思います。躍動感はあるのですが「汐風」という曲想には力が入りすぎたかもしれません。自由曲では楽章を入れ替えて第2・1・3楽章の順番で演奏。個人的にこの楽章入れ替えは好きではなく非常に違和感を覚えました。「雪の川」でのソプラノサックスのソロは秀逸で、全体を通してもサックスが音楽をよく引っ張っていたようです。「祭り」での一体感や高揚感は素晴らしく大きな音楽を作り上げていました。 | ||
6 | 四国 高知県 高知県立高知西高等学校 (指揮/中山直之) ※2年連続4回目 | |
5/リベレーション 〜我を解き放ち給え〜 (D.マスランカ) | ||
課題曲ではサウンドがまとまらないまま曲が進んでいきました。テクニカルな部分は吹けているのでしょうが、収拾がつかないまま雑然とした演奏となったようで、バンドのエネルギーを伝えることができませんでした。自由曲は一転、集中力が素晴らしくサウンドにエネルギーがありました。評価を受けにくい作品のように思いますが、終曲への高揚感は素晴らしいものを感じました。 | ||
7 | 西関東 群馬県 前橋市立前橋高等学校 (指揮/山本佳弘) ※初出場 | |
3/「舞踏組曲」より (B.バルトーク/山本教生) | ||
数えたところ32名だったと思いますが、実力バンドひしめく西関東からこの編成で代表入りしたことは特筆ものだと思います。大きい空間に戸惑いもあったでしょうか、課題曲では必要以上に頑張ってしまいバランスを欠いたり、荒っぽくなったりしたのは残念です。自由曲では柔軟なアンサンブルで好演だったと思います。Tuttiでのサウンドが雑然となることが多く、バルトーク作品でのキレが足りなかったと思います。 | ||
8 | 東関東 茨城県 常総学院高等学校 (指揮/本図智夫) ※4年ぶり15回目 | |
5/バッハの名による幻想曲とフーガ (F.リスト/田村文生) | ||
課題曲では譜面を正確に音にしていたと思います。艶のある重厚なサウンドは健在、明らかに他のバンドとは違う音がしていました。チューバをはじめとする各ソロも秀逸でしたし、各セクションの歯車がしっかりとかみ合ったレベルの高い演奏だったと思います。自由曲でもシンフォニックなサウンドで、実にうまいアンサンブルを披露しました。弱奏部分でも音楽が停滞せず安定感が抜群ですね。4年ぶりの復活&本図先生の「長年出場指揮者表彰」を13回目の金賞で飾りました。 | ||
9 | 北陸 石川県 石川県立小松明峰高等学校 (指揮/斉藤忠直) ※2年連続2回目 | |
4/ディオニソスの祭り (F.シュミット) | ||
輪郭のはっきりしたクリアなサウンドで、躍動感のある立派なマーチでした。ユニゾンが美しく、音楽の流れが秀逸でしたが、トリオはもっと表情が欲しかったと感じました。自由曲は骨太なサウンドでの熱演が光りました。サリュソホーンも編成に入っていましたね。ダイナミックでアグレッシブな演奏ではありましたが、紙一重で荒っぽさも存在していたのは事実。2年連続の金賞は逃しましたが、十分に会場を沸かせた演奏となりました。 | ||
10 | 中国 広島県 修道高等学校 (指揮/大咲司朗) ※2年連続4回目 | |
5/歌劇「トゥーランドット」より (G.プッチーニ/後藤洋) | ||
男子校らしく力強さとダイナミックさを兼ね備えたサウンドです。激しさの中でにも理性をしっかりもった演奏で、似たりよったりの課題曲を新鮮に聞くことができます。自由曲でも力強く熱く歌いあげた演奏でした。全体的には強奏に偏ってしまい、また熱くなるとバランスを欠くところもあって聴いていて疲れを感じます。聞かせどころが不明瞭になってしまったのが残念でした。 | ||
11 | 九州 鹿児島県 原田学園鹿児島情報高等学校 (指揮/屋比久勲) ※3年連続3回目 | |
2/アルプスの詩 (F.チェザリーニ) | ||
重厚なサウンドと落ち着きのあるテンポでオーソドックスな作りの課題曲でした。作為的でなく自然な歌い方で心地よい演奏です。自由曲でも重厚なサウンドで一糸乱れぬ集中力は見事。情景描写も素晴らしく色彩感に富んだ演奏を披露してくれました。過去のこのバンドのTuttiはホールが割れんばかりの力強い(強すぎる)サウンドだったように思いますが、今年は8割ぐらいのボリュームで余力を感じさせるようなTuttiでした。ラストのコードはまさにパイプオルガンのような響きで、このサウンドにいつまでも包まれていたいと感じました。3出を初の金賞で飾りました。 | ||
12 | 関西 大阪府 大阪桐蔭高等学校 (指揮/梅田隆司) ※2年連続4回目 | |
3/「レクイエム」より (G.ヴェルディ/福田洋介) | ||
後半の部での白眉。クリアで柔和なサウンドはこの課題曲にベストマッチ。表情豊かな演奏でこの曲の魅力を十分に引き出せていたと思います。ソロ群もレベルが高く、各セクションのまとまりは群を抜いていました。自由曲ではソロのレベルの高さ、アンサンブルの巧さはかなりのものでしたし、メリハリのある構成と色彩感豊かな演奏で聴衆をぐいぐい引き込んでいったと思います。木管の艶のあるサウンドに加え、トランペットセクションの素晴らしさは特筆ものです。2年連続2回目の金賞受賞です。 | ||
13 | 東北 山形県 山形県立山形中央高等学校 (指揮/佐藤誠基) ※初出場 | |
2/アルプス交響曲より (R.シュトラウス/森田一浩) | ||
堅実なマーチではありましたが、音に推進力が無く音楽の流れを妨げていました。聞かせどころも不明確で、曲の中での重心が感じられない課題曲になってしまったのが残念です。自由曲は大曲を持ってきました。サウンドが直線的でブレンドすることなくストレートに客席に届きました。バンドの音としてステージでのまとまりが無かったように感じます。個々の奏者はかなりのレベルにあると感じましたが、奏者としての主張ができていなかったかもしれません。 | ||
14 | 東京 東京都 東京都立片倉高等学校 (指揮/馬場正英) ※2年連続8回目 | |
5/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/甘粕宏和) | ||
情熱的でアグレッシブな課題曲でした。全体的には整理できていなく雑然とした箇所もありましたが、バンド全体の一体感は素晴らしかったと思います。自由曲の「夜明け」ではサウンドの質が良いので色彩感はよく出ていましたが、幻想的で密やかな表情にはもう一歩と思いました。「全員の踊り」ではダイナミックで熱い演奏を聞かせてくれました。指揮者の音楽性を十分に引き出して奏者がしっかり応えていたようで見事な高揚感でした。今年のコンクールの大トリを飾るに相応しい演奏だったと思います。2年連続4回目の金賞です。 | ||
※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。 |