大魯句会  戦争学の思考

 

 いかついタイトルとは裏腹に、今回の話題は『桃太郎』です。
 何故、桃太郎とそのひ弱な一行(しかも、この主従は、たかだか吉備団子1個のつながりにすぎません)が、鬼たちに勝利できたのでしょうか。
 それを考えます。考える、といってもいつものごとくですが。

 鬼ヶ島自衛軍司令本部。
「司令長官!」
 索敵オペレーターの声が室内を駆けめぐった。司令長官が小さくうなずくと、副官が「どうした?」と上官の言葉を代弁する。
「敵軍を捕捉しました」
「数は?」と、副官。
「それが・・・」
「どうした」
「敵軍・・・その数、4!」
「・・・4だと!」
「はっ」
「そんなバカなことがあるか!」
 副官は、オペレーターに怒鳴った。いわれのない怒声に、オペレーターは自尊心を傷つけられたようだ。
「間違いありません!」
「よろしい」
 微動だにせず、長官が言った。
「引き続き索敵を続行せよ」
「はっ」
「副官」
 長官は、副官に声をかけた。
「ここにいるのは、全員己の仕事に矜持を持ち、かつそれに見合うだけの能力を持った者たちだ。彼らを信用せずに、何を信用せよというのか」
 副官は、深々と頭を下げた。長官に、次に先ほどのオペレーターに。
「だが・・・敵軍の数があまりにも少ないのには、疑問を抱かざるをえない。参謀長、貴官はどう思う?」
「考えられるのは、別ルートから進行してくる別働隊の存在です。ですが・・・」
 参謀長は、敵軍の所有する兵器一覧をディスプレイに表示させた。
「この鬼ヶ島は、四方を海に囲まれてます。当然、この島に侵攻するには船を使わねばなりません。しかし、敵軍の保持する艦艇は、小型漁船が1艘だけです」
「その漁船のデータは?」
「武器は搭載されてません。乗員数は20名ほどです」参謀長は答える。
「20名・・・やはり4人というのは少ないな」
「はい」
「貴官はどう思う?」長官は、副官に尋ねた。
「敵軍の戦術を疑います」
「では貴官ならどう攻める」
「私なら、まず最強の精兵20名を送り込みます。船はすぐ陸に戻り、第2渡海部隊を収容します。最初に送り込んだ20名は防戦に徹し、第2渡海部隊の上陸を援護、40名で橋頭堡を確保して、陸から兵力を送り込みます」
「うむ。参謀長、貴官はどう思う」
「船が1艘しかないという圧倒的戦術的不利の状況下です。無謀と言うよりも、成功を希望するだけ無駄な、そのような作戦しか取れないでしょう」
 参謀長の言葉に、副官は息巻いて言った。
「では、参謀長殿ならばどう攻めるのかお聞きしたい」
「攻めない」
「はっ・・・」副官は呆気にとられた。
「もしくは逃げる」
「そんなのありですか」
「私は男だ。勝てない喧嘩をしなければならないときはある。ただ、司令官としては、勝てない戦争に自軍の兵士を送り込むことはできない。自分一人の問題ではないのだから。そんな重大な責任、私のなで肩ではとても背負いきれないな」
「・・・・・・」
 副官の見せた真摯な顔に、長官はわずかながら顔をほころばせた。
「話を現実に戻そう。我らはどう防衛するかを考えねばならん」長官は言った。
 参謀長が答える。
「防衛する我が軍からすれば、一番簡単なのはその漁船を沈めてしまうことですが・・・」
「専守防衛が絶対の我が軍には不可能だ」
 困ったような顔を長官は見せたが、言葉には誇りがこもっていた。
「副官、敵軍の現在の位置は?」
 副官が答える。
「この島に到着するまでちょうど1日、というところですか」他人事のように参謀長が言った。
「敵から絶対に目を離さぬように」
 長官は、副官に言った。参謀長がため息をつく。
「相手の出方を待つしかありませんな」
 長官は、無言でうなずいた。

 1時間後。
「敵軍の構成が判明しました」
 索敵オペレーターが言った。
「報告せよ」と副官。
「総数4。うち、人間1、犬1、猿1、キジ1」
「別働隊の存在は?」参謀長が言った。
「未だ確認されていません」
 長官は、参謀長を見た。
「どう思うかね」
「動物とは考えましたね。重量の軽い動物なら、人間の3倍は船に収容できます。また、鳥なら船を使わずに島にたどり着くことができます」
「うむ。ただ、動物が戦力になるであろうか」
「犬には小型のロケット砲を背負わせ移動砲台とし、キジは空中からの爆弾投下および偵察。猿ならば、マシンガンくらい撃てるでしょう。ただし・・・」
「兵力が少なすぎる」
「ええ。動物を使う利点は、数的優位を作り出せることです。兵数が4では個々の戦力が人間より低い動物を使う意味がありません」
 長官は、声をひそめて言った。
「奇策があるのであろうか」
「かもしれません。ただ、敵に艦艇が1艘しかないのは間違いありません。その漁船さえ見失わなければ、奇襲を受ける可能性は皆無です」
「敵が造船したということはないのか」
「情報部からの報告では、そのような事実はありません」
 副官は言った。
「ならば!」長官はデスクを叩いた。「我が軍は負けはせん。今のうちに、兵士に交替で休憩をとらせるように。ただし、敵から目を離すなよ」
「はっ!」
 副官は敬礼した。

 

 この先。(・・・まだ続くの?)
 はたしてどうなるのでしょうか。(・・・別に気にならないよ)
 それは、次回のお楽しみ。(・・・楽しい、という日本語の意味知ってる?)