学力とは何か?
1 学力をめぐる問題点
学力低下?論争がマスコミを中心に大きな話題になっています。例えば,国際学力比較調査
などでも日本の子どもは読解力が低下しており,成績の分布が二極化しているとか,学習意欲
の低下が顕著であるとかが言われています。しかし,一方で今回の教育課程実施状況調査で
は前回の調査と比較して,同一問題においては「有意に上回る,有意に差がない」問題数は全
体の約82%になっており,一概に学力が低下しているとは言えないと思います。
こうなると日本の子どもたちの学力は向上しているのか,低下しているのかはっきりしません。
ただ,現場の実感としては家庭学習時間は減少し,算数や数学への意欲・関心等が薄くなって
きている,成績の分布が二極化していることは実感できます。何とかしなくてはいけない状況に
は変わりがありません。
2 学力とは何か?
学力とは何か?については,様々な立場の機関や企業,人々がその定義を示していますが,
結構その捉え方には差があるように思います。(当然,学力を何に利用するかで捉え方も変わ
ると思います。例えば,受験,検定,生涯学習,生きる力等)ただ,これからの国際社会や未来
を生きる子どもたちに必要な学力について,しっかりとした議論をすることが必要だと思います。
そこで,現在私が考える学力とは何かについて述べてみます。
まず,「学力とは何か」と言った時に,どの教科等にも当てはまる捉え方だと具体的ではなく,
あまりにも漠然としているので「算数・数学の学力とは何か」で考えてみます。そうすると,すぐ
に浮かんでくるのが,学習指導要領の目標に明示されている資質,能力です。これを観点別
に表現すると「関心・意欲・態度」「数学的な(見方)考え方」「表現・処理」「知識・理解」となりま
す。この最低4つが子どもたちの身につけなくてはいけない算数・数学の学力です。さらに,上
を望めば,これに例えば「直観力」「IT活用力」などが付け加えられてもよいと思います。これは
生徒の実態によって,各学校で考え,設定されるべきものだと思います。
3 観点別学力と観点別評価
「学力とは何か」といった時に,漠然としてよく分からないということではなく,まずは,観点別の
学力を高めることが,算数・数学の総合的な学力を高めることになると思います。したがって,
指導がしやすく評価もしやすいということから,「表現・処理」や「知識・理解」のみの学力を高め
た場合には算数・数学の総合的な学力を高めたことにはなりません。(もっとも,表現・処理や
知識・理解の学力すら高められないのは論外ですが・・・)重要なことは年間を通して,4つの観
点をバランスよく評価し,4つの観点別学力をしっかりと身につけさせることです。