三平方の定理の授業
1 三平方の定理の授業のねらい
中学校学習指導要領解説数学編p97に三平方の定理について以下のように書かれてい
ます。
○ 三平方の定理について理解し,それを用いることができるようにする。
ァ 三平方の定理を見いだし,それが証明できることを知ること。
イ 三平方の定理の意味を理解し,それを利用できること。
また,次のページには「・・・指導に当たっては,様々な図形の性質を証明することの延長
として,三平方の定理を扱うのではなく,直角三角形の三辺の長さの関係としてその美しさ
に触れられるような工夫と配慮が望まれる。」と書かれています。
さらに小中学校教育課程実施状況調査報告書−中学校数学−(国立教育政策研究所)
の中で,質問紙調査の結果について触れられていますが,三平方の定理は教師が「生徒に
とって理解しやすい」,「生徒が興味を持ちやすい」と思っているほど生徒は肯定的な回答を
しなかったとのことです。報告書では以下のようなことに関して再考が必要であると述べられ
ています。
@ この内容は「生徒にとって理解しやすい」あるいは「生徒にとって理解しにくい」,「生徒が
興味を持ちやすい」あるいは「生徒が興味を持ちにくい」という教師の思い込みで指導して
いることはないか。
A こうした教師の意識が,教師にとって「教えやすい」とか,「教えにくい」とか感じていること
と関連してはいないか。
B 「生徒にとって理解しやすい」あるいは,「生徒が興味を持ちやすい」という思いから,教材
提示や授業展開において工夫することを怠っていることはないか。
このことからも,三平方の定理の授業展開では,何を教えるのか,ねらいを明確にし指導に
あたると共に,この定理にまつわる数学史を通して,生徒の興味・関心を引き出したり,観察
や操作・実験を通して,三平方の定理をより身近なものとして捉えさせる工夫が大切です。
2 三平方の定理の授業の流し方の一例
(1)最小の直角二等辺三角形のそれぞれの辺を一辺とする3つの正方形の面積の間だの関
係を調べる。(教材は「図形の性質>三平方の定理0」を利用)
(2)最小の直角二等辺三角形を段々大きくし,大きい直角二等辺三角形のそれぞれの辺を一
辺とする3つの正方形の面積の関係を調べる。(教材は「図形の性質>三平方の定理0」を利用)
(3) (1)(2)から直角二等辺三角形の大きさによらず,小さい2つの正方形の面積の和は大
きい正方形の面積に等しいことが分かる。
(4) (3)が成り立つのは三角形が二等辺三角形だからか,直角三角形だからかを調べる。
(教材は「図形の性質>三平方の定理2」及び「図形の性質>三平方の定理1」を利用)
以上により,直角三角形のそれぞれの辺を一辺とする正方形の面積の間だの関係を調べることができます。