鉛筆の持ち方指導案
1年生の指導の中で,責任重大なのが「鉛筆の持ち方」。保護者も巻き込んで,楽しくしっかりと指導しましょう。これは,4月上旬に初めての授業参観がある学校ならば,定番の授業にしてよいと思います。(開発者は,私です。よかったら,どうぞ使ってください。)
はじめて1年生を担任するとき,鉛筆の持ち方を指導しようとして,教材研究をしました。いろいろな本を読んでみて,本によって鉛筆の持ち方がばらばらなことに気づきました。
ある本には「鉛筆は人差し指と親指で持ち,下から中指で支える」とありました。別の本には「3本で軽く持つ」とありました。また別の本には「中指と親指で支え,人差し指を添える」とありました。
人生を通して,ずっと持ち続ける鉛筆なのに,きちんとした研究がされていないことに気づきました。そこで,知り合いの外科医に,医学的な見地からはどう考えるかを聞きました。彼は「考えたこともなかった」と言いました。ベテランの教師に聞いても明解な答えは出ませんでした。
その年,よく分からないままに形で「3本で持つんだよ」と教え,お茶を濁して教えた苦い思い出が,その後の研究につながりました。図書館で解剖学の本も読み,やっと自信を持って指導できるようになったのです。
おおむね次のような指導です。
(0)準備の例
・はさみ
・包丁,カッター
・ホチキス
・ボタンの付いている服
・習字の筆
・手の骨の発達を示すレントゲン写真(懇談用)
・線書きのプリント(書写の練習ノートなど)
(1)一番長い指は?
まず,子供たちに,そして参観の保護者に質問します。
「手の5本の指で,一番長いのは何指でしょう?」
子供たちは,「お兄さん指!」。保護者も「中指…。」
そこで,にっこり笑って「残念でした!」
「指は,先から3番目の関節が手のひらについているのです。お兄さん指の関節を上から数えてみましょう。1,2,3で手のひらに着くね。お母さん指はどうかな?」(というように数えていく。)
「では,最後に親指の関節を数えてみましょう。1,2,3,おや?3番目はどこかな?」
関節の数を数えると分かるのですが,親指は第3関節が手首のところにあるのですね。ここを確認します。
「だから,正解は親指だったんですね。」
(2)強い2本の指で持つんだよ
次に長い指は中指です。そこで,「神様は,一番長い指の親指と次に長い指の人差し指で,いろいろなものが使えるようにしてくれたんだよ。」と言いながら,はさみや包丁,指パッチン,ホチキス,ボタンのかけしめ等の例を見せます。親指と曲げた中指の協力で,うまく道具が使えることを一つ一つ確認します。
そして,人差し指は親指と中指で保持した道具の方向をさす働きをしていること,中指と小指は軽く握って手首を安定させる働きをしていることを知らせます。
ここは,鉛筆を持つ手の絵を板書して,それぞれの指から吹き出しを出して,役割を押さえると子供たちは喜びます。
親指「がっちり鉛筆を持つぞう!」
中指「軽く曲げて,横っちょで鉛筆を支えま〜す!」
人差し指「軽く当てて,進む方を教えるね。」
薬指,小指「紙をそっと押さえてあげるね。」
(3)いよいよ練習,おうちの人の協力で
そして,いよいよ鉛筆を使います。「親指と曲げた中指をうまく使って持つのですよ。」と,やって見せます。板書の指の声の通りかどうか確かめます。そして,保護者の方に協力していただいて,一人一人の持ち方を指導し,横の直線,縦の直線に挑戦するのです。
教師は,一人一人の手に触れながらほめたり,そっと直したりして歩きましょう。保護者が来ていない子には,近くの保護者に一緒に見てくれるように頼みます。
早くプリントができた子には,ホチキスやはさみなどに挑戦させてもいいでしょう。保護者の協力を得て,教卓で包丁やカッターに挑戦させてもいいですね。
(4)懇談の話題
懇談では,まず授業への協力のお礼をします。
そして,「これから長い学生生活で,子供たちが鉛筆や他の道具をきちんと使えることがとても大切です。しかし,それ以上に大切なのは,今日のような話を驚きをもって受け入れること,素直にやってみようとする前向きな気持ちです。それと今後正しい持ち方を続ける意志を育てることだと考えています。それにはおうちの方のご理解とご協力が必要です。よろしくお願いします。」と挨拶します。
さらに,シャープペンやボールペンについても説明します。高学年を受け持つと必ず子供たちは「シャープペンは使ってもいいですか?」と聞きます。その時,私はNHKの「驚異の小宇宙人体」所収の子どもの手の骨の発達を示すレントゲン写真を示しながら,筆圧と正しい持ち方の関係を説明するようにしています。保護者の中にも,低学年でも使わせて構わないと考えている方もいますので,その辺りを説明してやります。すると,クレヨンや絵の具などの柔らかい素材を使うことの大切さや,工作や粘土遊びなどが手の発達にとても重要なことなどもわかってくれます。
そして,鉛筆を正しく持つのと同様に,鉛筆を手で削るのもよいことだと話し,教卓の中の肥後守を休み時間には使ってもよいとするのです。