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┃☆┃「著作権」と上手につき合おう
横藤 雅人@活法研
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学校で,インターネットを活用する機会も増えてきました。それに伴って,「著作権」を巡るトラブルも多くなっているようです。
本論では,この「著作権」と上手につき合うということを考えてみたいと思います。
1.これは「著作権」侵害?
まず,次の5つの例で考えてみましょう。著作権を侵害していると思うものに×,これは大丈夫と思うものに○をつけてみてください。
(1)ネットサーフィンしていたら,授業で使えそうなサイトに出会いました。「これは,使える!」と,何か所かダウンロードしてCD−Rに保存しました。
(2)1年生が,パソコンでピカチューの絵を描きました。1年生が描いた絵なので,あまり上手ではありませんが,せっかくなので,ホームページに掲載しようとしました。
(3)音楽会で5年生が歌った歌がすばらしかったので,会場で録音したものをホームページ上に数秒だけ掲載しようとしました。
(4)集会で,今流行している歌の替え歌を発表したら,大好評でした。そこで,それを学校のホームページで紹介しようと思います。
(5)教師が自作した学級歌を児童といっしょに歌いました。よい出来映えだったので,その録音をったデータをHPにのせることにしました。児童も喜びました。
さあ,いかがでしたか? どれが○で,どれが×でしょうか。
2.著作権とは
解答を述べる前に,「著作権」とはどのようなものかを押さえておきましょう。
1970年,「著作権法」が全面改定されました。レコードやビデオのレンタル店が出現したこと,そしてそれらの音楽や映像をコピーすることが半ば公然と行われるようになったことがきっかけでした。それによると,著作権をもつものとは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(2条1項1号)。
この「著作権」をめぐっては,その後音楽CD,ゲームソフト,そしてコンピュータのプログラムなど,時代の変化に伴っていろいろな問題が発生し続けています。
そこで,上の問題のような例が出てくるわけですね。
3.問題の解答と解説
では,問題の解答と解説をお届けします。
(1)は,○です。
必要なところをダウンロードして授業に活用するところまでは許されます。しかし,それを「こんないいのがあるよ。」などと,同僚の先生に配布するのは,「著作権」の侵害(目的外使用)になりますので,注意が必要です。
(2)は,×です。
"ピカチュー"についての著作権を所有している会社から掲載を断られ(例外も含めて,掲載を許可するケースは無いそうです)たという実例があります。
(3)は,×です。
(社)日本音楽著作権協会から著作権料を求められたとのことです(5年生が歌っている楽曲に対する著作権料を払えば,掲載できます)。
(4)は,×です。
「既存の著作物を脚色したり,映画化するなどの翻案」(2条1項11号)にあたり,替え歌は「二次的著作物の作成」となるため,元の著作物(この場合は流行歌)の著作権所有者の許可なくしては掲載はできません。
(5)は,○です。
自作の曲ですから,著作権はその教師にあります。また,演奏についての著作権は,教師と児童にありますが,承諾されていますから問題はないのです。
【資料提供】
(1)は,都城市立明和小学校ホームページ「著作権Q&A」を参考にさせていただきました。
http://www.miyakonojo-myz.ed.jp/meiwa-e/index.htm
(2),(3)は,(株)旺文社デジタルインスティテュート様のメールマガジン「エデュぷらネット」に掲載されたものです。問題の事例は,東京都大田区立雪谷小学校の先生からお伺いしたものだそうです。
旺文社デジタルインスティテュート http://www.kidswave.co.jp/
エデュぷらネット http://www.eduplan-net.com/
東京都大田区立雪谷小学校 http://www.ota-yukigaya-e.ed.jp/
4.「著作権」と上手につき合うコツ
今後,インターネットを活用しようとすれば,この「著作権」の問題に必ず突き当たることでしょう。最後に,無用なトラブルを避けるための「コツ」を考えてみましょう。
(1)作者の思いや取り組みを尊重する
それは何よりまず,「情報や作品の後ろにいる,その作者の思いや取り組みを尊重すること」だと思います。「これは,使える!」と思う情報や作品は,作者の熱い思いや地道な取り組みがあって,そのような形として表れているのです。それに対して「利用してやろう」という,自分中心の考え方で臨む心がトラブルを招きます。
「利用させていただこう」という姿勢があれば,自然に利用の認可を求めたり,元の作品のイメージや品位を著しく損ねたりするようなことはなくなるのではないでしょうか。
(2)手続きを踏む
原典や元の作者名を明記する,作者や版権所有者に利用認可を申し出る,使用後の感想を届ける等の手続きをきちんと踏むことを,怠りなくしたいものです。作者が,例え受け持ちの子供であっても「これを使わせてもらってもいいですか?」と確認することが必要です。
(3)「コピー」は慎重に
デジタルデータは,コピーが容易です。アプリケーションのコピーが違法であることは広く知られていますが,文章の一部や画像なども,コピーは慎重に行いたいものです。コピーは,コピーを呼び,コピーしたあなたが知らないうちに広まる可能性も高いのですから。 (了)