生活科「冬を楽しもう」を中心に国際理解
「世界の人とこんにちは!」

1.実践の構想
・生活科「冬を楽しもう」では,例年大通会場の雪祭りを,グループ単位で見学している。11丁目の国際広場では,外国の方からサインをもらったりする子も多い。98年度は,公共交通機関を使う活動も取り入れ,見学を2回設定した。2回目は真駒内会場にいくこととし,子供にとって冒険心あふれる活動にしたいと考えたのである。さらに,見学の中で外国や国内のいろいろな地域の方とのふれ合いをより豊かなものにすることで,2年生なりの「国際理解・地域理解」を図りたいと考えた。
・活動のきっかけとしては,国語「せかいのあいさつ」(教育出版・説明文)から入ることにした。この説明文は,世界のいろいろなあいさつの身振りを紹介し,「どのみぶりも,あいさつのことばと同じように,自分の気もちをつたえる大切なほうほうです。しかし,どのみぶりがいちばんいいとか,わるいとか,いうことはありません。そこでは,そのあいさつのしかたがいちばんいいあいさつなのです。」と締めくくるものである。ここから,世界の国や習慣,言葉などへの興味や関心を引きだし,調べ学習や雪祭り見学へとつなげたいと考えた。
・さらに,3学期の図工の単元がほとんど工作であることから,外国の人と仲良くなるために名刺を作るなどの工夫をしたり,音楽で季節の歌を歌うところを国名に留意して歌うことなども取り入れることとした。
・このように各教科・領域の学習をつなげ,「世界の人とこんにちは」と名付けた。合い言葉は,「子供にとって価値のある学習を,柔軟に」である。

「世界の人とこんにちは!」〜クロスカリキュラム内容・要素一覧

国語 「せかいのあいさつ」
生活 「冬を楽しもう」〜雪祭り見学(大通,真駒内)
             〜発展 「世界の1月」
図工 「名刺・旗を作ろう」 (発展)
道徳 「相手の立場になって」
音楽 「世界の歌」                      

2.実践から
@国語〜発展の調べ学習〜掲示板やクイズ形式の交流へ
 国語「せかいのあいさつ」の読みとりでは,いろいろな挨拶の動作化を取り入れるなどして,楽しく学習を進めることができた。世界の国名にも興味をもっているようすが伺えたので,「みんなの知っている国は何?」と投げかけ,発表させたり,家庭にある写真や図鑑などを持ち寄ったりして紹介しあう活動へとつなげた。
 さらに,図書室でいろいろな国について調べたり,グループごとに子供の要望に応えながら,教師がパソコンを操作してCD−ROM「エンカルタ百科事典」や「ちりちりランド世界編」などにアクセスできるようにした。
 やがて,子供たちの中から「調べたことをクイズにしてみんなに出したい」という要望が出た(こうした調べ学習をクイズにした先行経験があった)。そこで,国語の時間や給食時間などにクイズ形式の交流をもったりもした。また,調べたことは,カードに書いて廊下の掲示板に貼って自由に見合えるようにした。この掲示板には,雪祭りのパンフレットや,インターネットで取り寄せた雪祭り情報,市の観光部からFAXしてもらった会場鳥瞰図なども貼った。また,Aで述べる名刺なども貼った。
 これらの工夫により,子供たちの興味や関心は日を追おうごとに高まっていったようである。また,教師の方からも給食時などに折に触れて外国の話題を提供したりもした。スキー学習のバスの中でイタリアのじゃんけん(ビン,ブン,バン)などをしたりもした。

A名刺・旗・名札づくり
この単元のミソは,雪祭りに実際に外国の人とふれ合うという具体的な活動を入れていることである。そこで,「雪祭りで外国の方と仲良しになるための,いい工夫はないかな?」と投げかけると,1年生の時の学校探検などの想起であろうか,「名刺を作る」「旗を作る」「プレゼントを作る」「名札を作る」などのアイディアが出された。
 そこで,まず国語の時間に1年生の学習である50音表の復習をしてから,自分の名前をローマ字で書く練習をした。(なお,ローマ式にするかヘボン式にするか迷ったが,外国の方に正しく発音してもらった方がよいと判断して,ヘボン式を採用した。そのため,いくつかの音に関しては,50音表の原則説明にプラスして,別に指導した。さらに万全を期して一人一人にローマ字でその子の氏名表記を手渡した。)さらに図工の時間に2時間かけて名刺や旗,名札を作った。

B見学(真駒内では,あまり外国の方が多くなく,むしろ地下鉄に乗ることに重点があったので,ここでは大通会場での様子をお伝えする。)

サインしてください
「あのお,ハ,ハロー」
「オー,私日本語ペラペラデ〜ス」
「な〜んだ。話せるのかあ…」
(ほっと安心。ちょっとがっかり)

多い子は,この日20人以上のサインを集めた










3.実践を終えて
@子供たちの声から
○いろいろな外国人にサインをもらったよ。雪まつりって楽しいんだなあと思いました。すごく楽しかったよ。Sちゃんがしゃしんをたくさんとってくれたし,すごくさいこうな一日だったよ。…あ,いろいろな人はやさしんだなーと思いました。教えてもらったとき,教えてあげたとき,いろいろな楽しみでした。(Y.A)
○言うときは「マイネーミズ○○」とゆったら,わかってくれたよ。それにいろんなものをもらったからうれしかったよ。そのもらったものを大切にするよ。(中略)  もう少しちがう国の人ともなかよくなりたかったよ。(U.A)
○名しをあげたら,「ワンダフル!」って言ってくれたよ。そして,本ものの名しをくれました。うれしかった。Aくんが「レッツテイクアピクチャ」と言って,いっしょにしゃしんをとりました。みんなで「イエーイ」って言ってとったよ。外国の人も同じなんだな,と思ったよ。外国の人はみんなやさしかったよ。日本のおばさんとも「どこの学校?」とか聞かれてなかよしになったよ。(S.M)

A保護者の声(連絡帳)から
○懇談で聞いていたとおり,子供たちが自分で計画したたんけんは,すばらしいものになったと思いました。帰ってきたときの満足そうな顔が印象的でした。
○大通,真駒内と子供たちだけで行くことに,子供以上に親の方に不安がありました。でも,ふだんはあまり学校のことを聞かないと話さないこともあるのですが,この2日間は,外国の人がとてもやさしかったこと,最初話しかけるのがすごくドキドキしたこと,切符を買うとき「大人になったみたい」だったことなどなど,次から次へと話がわいてくるようで,思わず「過保護になっていたんだなあ。」と反省させられました。

B担任の反省〜成果と課題
【成果】
・今年度は,まず生活科を中心にした横断的な取り組みをしてみたが,そこに2年生なりの「国際理解」というテーマ性をもたせた。教科や領域の枠を越えることに,子供たちはまったくとまどいを見せなかった。子供にとって興味や関心のあることならば,かなり主体的に,自由に調べ学習や具体的な活動に集中し,交流することができるこの姿はキラリ輝く学習像である。。
・ほとんどの子供たちにとって未知の世界である「外国」には,どの子供たちも興味と関心をもって取り組むことができた。また,地域の特色であり,子供たちがよく知っている「雪祭り」を学習の舞台に取り入れたことも,子供たちにとって「世界」がより身近に感じられ,学習意欲が高まったのではないかと考える。
・総合的な活動を取り入れることで,一つの教科ごとに学習が完結することなく,子供たちの「外国の人と仲良くなりたい」という願いがずっとつながっていた。そのことで,子供たちから次のめあて「仲良くなるためにこんなことをしてみたい,こんなことを知りたい」ということが次々と出てきた。
・総合的な学習を取り入れていくためにと考えていくよりは,子供の願いを自然に取り入れていくと学習が自然に広がりをもっていったという感じがした。
・作文の学習では,書くことが苦手な子供がすらすらと雪祭りの題材について書き始め,手を休まず黙々と書いている姿を見ることができた。その子が,いつも感じていた「書くことがない」「何を書いたらいいのか分からない」という思いから解き放たれ,「書きたい」「書きたいことが次々と出てくる」ということが感じられた時間だったのではないか。
・こういう力を引き出すことが新教育課程のねらいであると感じた。「総合的な学習の時間」は,3年生以上の設定であるが,低学年においても,より積極的に生活科などを中心に,子供の側にたった柔軟で楽しい活動を構成していきたいものである。

【課題】
・音楽の学習では,今回は「子供たちが良く知っている曲の中にも外国の曲がたくさんある」という紹介にとどまってしまったが,もっと活動に広がりをもたせられたのではないか?さらに世界に目を向けるという意欲付けにはなっていたようには思うが,音楽の学習としてどこまで広げられるか,広げていいかが疑問に残った点である。
・また,国語の説明文の扱いも,「内容の読みとり」は広げられたが「作者の述べ方の工夫の読みとり」などに踏み入ることは,子供の思いや願いの流れに沿わせづらく,あまり深く入ることができなかった。扱いを総合的にする際は,「厳選」つまり思い切った切り捨てが求められるであろうが,何を基準に厳選するのか,切り捨てた部分はいつ,どこで扱うのかなどを長いスパンで考えていく必要がある。
・総合的な学習の質を決定するのは,「話し合い」であると感じた。教師の呼びかけに子供が応える「呼応の関係性」が確立されているか,教師の子供への呼びかけは子供の知的好奇心をくすぐるものであるか,子供の本音が出されているか,新たなアイディアが次々と湧いているかなどがポイントになるであろう。
・特に,「呼応の関係性」は,重要な概念である。子供主体ということと,何でも子供 まかせにすることは違う。
・また,特に調べ学習では,ワークシートを与えたり,本を紹介したり,CD−ROMを提示したりと,積極的に情報を与えるべきである。子供の思いや願いを大切にするためには,原則的にはあまり教師はサービスしない方がよいが,調べ学習においては往々にして子供は,情報が得られないために無駄な時間を費やすことに陥りがちである。その意味で,図書室やパソコンルームの整備は,重要である。
・パソコンの活用は,非常に効果的である。(子供たちの要望に,かなり効率的に応えてくれる)できれば,子供たちの見ているところでインターネットに接続したい。
・調べ学習をやらせっぱなしにするのでなく,自然な形での交流を図ったり,挨拶の言葉を実際に言ってみたり,身ぶりを動作化してみたり,遊びを取り入れたりなど,具体的な活動を通すことが大切である。
・保護者の理解を得ることで,思いがけない情報が得られたりもする。今回は,懇談会でくわしくねらい等を伝えることができてよかった。


4.さらなる発展
ブラジルの方と  この後,懇談でこの学習の報告をした。その際ある保護者の方から,「知り合いにブラジルの方がいるので,学習をさらに発展させるのなら声をかけてあげてもいいですよ。」という話をいただいた。この学年には中国からいらしている保護者の方もおり,そちらの方と連絡もとって,3月にお二人を招いて子供たちと交流する会を持つことになった。
 会は,お二人にスライド映写やサンバの実演などを交えて子供たちに外国の文化を紹介していただいた後,質問したり一緒にゲームをしたりする内容だった。子供たちは,じゃんけん一つとっても世界にはいろいろなものがあること,学校教育もかなり違うことなどを驚きを持って学んでいた。
 楽しく,実りの多いひとときだった。

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