緊急発言

総合的な学習〜一貫性・発展性のある「学校の顔」づくりを

1.これで良いのか?

■総合の実践が,あちこちで始まっている。平成12年度5月段階で,「うちでは,もう年間80時間を総合に充てている」という学校もある。本校(札幌市立北野平小学校)では,平成12年度はわずか30時間の配当。しかも,ほとんどの学年が夏休み中に指導計画を立て,本格実施は2学期から,という実態である。
 だから,「年間80時間」などという話を聞くと,思わずいろいろ聞きたくなる。
「地域教材の開発は,どのようにしたのですか?」
「学期毎の活動,学年毎の活動の配列は,どのように組み立てたのですか?」等。
 すると,多くの場合とたんにお茶を濁すような対応に変わる場合が多い。
「いや,それはこれから…」
「とりあえず,今まで児童会の行事でやってきたことを総合として取り組めないかって,模索しているところで…」等のように。
(時間は確保したが,内容はテキトー?)と感じてしまう。

 もちろん,意欲にあふれた回答が得られる場合も少なくない。
「地域の老人ホームに子供たちで行って,ふれ合いを深めている」
「ウチは,地域のお年寄りを招待して昔遊びのゲストティーチャーになっていただいた。」
「EMを使って,堆肥を作って,全学年の教材園に埋め戻している」
 なるほどと思って,ふと気づく。
「その実践,先生が以前生活科でやられたのと同じですね。地域のお年寄りと遊んだのは何年生ですか?」すると,これが6年生だったりするのである。何年生を受け持っても,EMの実践をする先生もいる。「何でもあり」という感じがする。

■それが,全面的に悪いというのではない。1年生から6年生まで(時には大人までも)が,とても喜ぶ活動というのは存在するし,担任の「わざ」を発揮することができるのが総合だという側面もある。しかし,次の問いに答えられなければやはり問題がある。

その総合実践は,その学校の教育活動全体の中でどこに位置付けられるものなのか。
その総合実践は,そこからどうつながるのか。

 こうした問いは,持つに値しないものなのか?
 これに応えられなくて,21世紀の教育につなげられるのか。
 私はそうは思わない。

2.総合は,学校の顔である

 「総合は,学校の顔である」と言われる。新しい指導要領で,総合が「総則」で扱われ,学校に下駄を預けた格好で示された。これを,その学校が,そして一人一人の教師がどのように受け止めるかが問われている。
 本校では,今年度各学年30時間の総合に取り組むに当たって次のような確認をした。(骨子のみ) 

基本的な押さえ

■「6つの原則」を再確認する。(この原則は,平成10年に示された。)
6つの原則
1.子供発信の問題解決であること
2.一人一人の問題解決を保証すること
3.内容知(これを知りたい)は,活動を推進するバネであること
4.ねらいは指導要領のねらいを受けた,上記の能力や態度であること
5.教師の役割は,子供が達成感や成就感を持てるようにするための支援者であること
6.活動のきっかけづくりは,教師であること(特に,試行期間は)
 (教師は,子供の実態を熟知した上でロマンをぶつけること)

■目指す力
○自己選択や自己判断,自己決定する力
○自己洞察を深め,自己を高めようとする力
 ・企画力,情報活用力,論理的・多面的に考える力
 ・コミュニケーション力,表現力
 ・目標を立て,見通しを持ち,実行する力
 ・自己コントロール力
○自己への自信や楽しむ力
 ・最後までやりとげようとする意欲 

■総合のテーマを「ふれあい」とする。「ふれあい」が,3年以上の4年間で一貫性を持ち,豊かに発展していくカリキュラムをつくろう。
 発展のプロセスは,おおまかに「低学年〜ひたる」「中学年〜生かす」「高学年〜働きかける」と押さえる。これは,本校の「目指す力」実現の活動構成論・仮説である。

■今年の総合は30時間。この30時間は,今後105,110時間と増えていく総合の中核となるものである。「北野平の6つの原則」を満たす,2002年を見据えた30時間でなくてはならない。単年度計画ではない。

■30時間であるから,サブテーマは2本とする。1つのテーマは,15時間前後(10〜20時間程度)のものとする。今年度は「地域の自然とのふれあい」「地域社会,教科の発展としての社会とのふれあい」で構成する。このサブテーマは,各学年の発達段階・実態を押さえた上で,一貫性・発展性が明確なものでなくてはならない。生活科の体験活動との連続・発展も視野に入れる。子供にとって,生活科から総合や教科に自然につながる計画を立てたい。

■「おもしろ発見タイム」(紹介はこちら)と内容的に重なりがあってもかまわない。

 まだ,見直す余地がたくさんあることと思うが,こうした確認を,学校全体で行うことが大切なことと考える。学校によっては,児童活動への取り組みや学習発表会の劇の練習を総合と称してやっているとも聞いた。ねらいや枠組みの確認がないからである。学校の顔がバラバラでは,保護者にも説明がつかないではないか。

3.一貫性と発展性のある「仮キュラム」を

 上の骨子で,重要なのはテーマを持ち,一貫性・発展性を求めたことである。それは,親学問のある従来教科で言われてきた「系統性」とは少し違う。かつての系統主義は,「内容知」を積み上げ型の構造でとらえ,教え込むものであった。しかし,総合で求める一貫性・発展性は「方法知」を変化のある繰り返し型の構造としてとらえるものである。子供の発達,実態を物差しとして,ねらいを設定し,本校として,目指すべき力を積み上げ,方向を指し示すものなのである。
 この押さえを元に,各学年で「仮キュラム」(柔軟に,年度途中でも何度でも修正する)作成に取り組む。その際は,下のような「活動例」を示した。こうした,具体的な目安を示すことも学校としての取り組みをまとまりあるものにするのに有効である。これを参考にして各学年で30時間の計画を立てるわけである。 

自然とのふれあいを深める総合的な学習の活動構成(15時間前後)・基本方針と活動例
1,2年 3年 4年 5年 6年
ねらい ひたり,ふれ合う
(生活科のねらい)
自分の興味や関心のあるものを見つけ,調べていく 環境保全・豊かな地域づくりのために背景をとらえ,働きかけていく〜調査・追求
環境保全・豊かな地域づくりのために背景をとらえ,働きかけていく〜追求・奉仕
厚別川 ・水遊び
・河原で遊ぶ
・生き物を探し,飼う
・探検,発見
・川の生き物図鑑を作る
・雨の日の川を見に行く
・護岸工事
・川の上流,下流をたどる
・橋の歴史
・川の生物
・土木事業所の方,地域の方に学ぶ
・顕微鏡で微生物を調べる
・流れの速いところ,遅いところ
・カヌーで川下り
・水質を検査する
・ホタルプロジェクト等
・世界の川を巡る問題を調べる〜水と生命
・厚別川クリーン作戦
動植物 ・飼育舎,水槽,花壇,校区の自然
・アサガオ,教材園
・野菜収穫パーティ〜保護者,幼稚園の先生,お年寄り等
・野菜収穫パーティ〜地域の方
・厚別川水族館
・清田公園等のバードウォッチング
・鈴虫
・北野畑探検・野菜収穫パーティ〜地域の方
・顕微鏡標本づくり(花粉,微生物)
・野鳥図鑑づくり
・野菜収穫パーティ〜地域の方
・森林の減少
・水田を作ろう
・巣箱を作ろう
・堆肥を作ろう
・野菜収穫パーティ〜地域のお年寄りを招いて
・絶滅動物について
その他 ・ネイチャーゲーム
・雪は,どうして降るの?
・ネイチャーゲーム ・交通量と大気の汚染
・酸性雨


人とのふれあいを通して,文化への理解を深める総合的な学習の活動構成(15時間前後)・基本方針と活動例
1,2年 3年 4年 5年 6年
ねらい ふれ合い,温かみを感じる(生活科のねらい) 遊びを中心に,いろいろな人と交流する中で,日本・北海道の文化を見つめ,考える。遊び・調査・追求 相手の立場を理解し,共に生きるための方法を考え,実践する。追求・企画・奉仕
外国の文化 (現行カリキュラムでは,特に設定していないが,地域にいる外国の方とのふれ合いなどはどんどん取り入れたい)
・雪祭りでの外国人との交流
・外国の遊びや歌を覚えよう
・外国の学校の様子を聞いてみよう
・簡単なあいさつの言葉を覚えよう
・外国の人に聞きたいことをまとめ,質問してみよう
・あいさつをいろいろな外国語で言ってみよう
・JICAの方と交流しよう
・外国について調べたことを発表しよう
・世界の料理を調理して,世界レストランを開こう
・外国の人が困っていることを聞いてみよう
・領事館に行こう
・ユニセフの活動を知ろう
・伝統工芸について地域で調べよう
・日本の習慣と外国の習慣を比べてみよう
・外国語のことわざから学ぼう
・外国の方を招いて,日本の小学校のよさを伝えるパーティを開こう
・NGO,NPOの活動を知ろう
地域・日本の文化 ・おじいちゃん,おばあちゃんと昔の遊びをする。
・遊びランドを作る。
・札幌博士になろう
・地域の方から昔の北野の話を聞こう
・うどんを作ろう
・日本の遊びを外国の人に教えてあげよう
・北海道博士になろう
・沖縄の学校と交流しよう
・北海道の郷土料理を作ろう,食べよう
・火起こし,昔の食事に挑戦しよう
・小樽の町探検を通して,北海道をもっと知ろう(地理・歴史・味覚・観光)
・地域の方と芸術してみよう
・お米料理博士になろう
その他 ・障害をもつ方の話を聞こう ・手話であいさつしてみよう
・点字を読もう
・老人ホーム訪問
・点字で書いてみよう
・盲導犬に学ぼう(1)
・独居老人宅への訪問
・老人介護の方法を学ぼう
・盲導犬に学ぼう(2)


4.「仮キュラム」説明会,交流と授業研究を通す

 総合に限らず,学校の取り組みは「絵に描いた餅」になりがちである。そこで,次の手だてを年間計画に位置付けて実施している。
○「仮キュラム」説明会〜2学期はじめ,各学年から2枚の実践計画を元に提案。一貫性・活動の妥当性等を検討する。
○小刻みな交流〜ブロック研修,職員会議や研修会等を利用して,実践の進捗状況や悩みなどを交流し合う。
○授業研究〜全員研究授業の中で,子供の問題解決を支援する方法について具体的に検討する。

 このような手だてをとる中で,職員の意識が向上し,共通理解が捗り,実践がレベルアップする。正に総合は「学校の顔」である。

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