自己練習のあり方
C級指導員の資格を取りに,東京で合宿したとき,講師の先生からクイズを出されました。
「太極拳で一番使うのは,体のどの部分か?」
「太極拳で一番難しいのは,どんなことか?」
参加していた人,みんなが首をひねりました。講師の先生は,破顔一笑次のように解答を示されました。
「一番使うのは,頭。理解するのが大変なんや。」
「一番難しいのは,続けること。」
これには,みんな爆笑でした。
しかし,この答えは本当に含蓄のある言葉です。そして,「理解と継続」の鍵は,自己練習にあると思います。教室の練習だけでは,理解も十分なものにならず,続ける意欲もだんだん失せがちになるでしょう。
さて,私が生徒として在籍しているのは,札幌朝日カルチャー教室です。毎週土曜日の午後1時間50分の教室なのですが,2000年3月から5月第2週まで,私はまったくこれに参加できませんでした。会議が入ったり,地域行事に6年生担任として出席したり,来客があったり,体調を崩したりしたためです。約2か月半行けなかったのです。しかし,その間も自己練習は本当に少しずつですがしていました。5月の中旬に久しぶりに教室に出た際,小寺先生から「自己練習が効いていますね。ブランクが感じられません。」と言っていただき,とてもほっとしました。
しかし私は自宅ではほとんど教室でするような套路練習をしません。私が自宅や学校ですきま時間を見つけてする練習は,次のようなものです。
・体軸の確認(呼吸を緩やかにしながら,片足で立ったり,転身したりしながら軸を確認します。) ・站椿(足を肩幅に開き,腰を落として立ち続けます。短いときは3分くらい。長いときで30分くらい。) ・歩行練習(運足のみ繰り返して練習します。) ・壁押し(壁に掌を押し当て,脚部や腰の力が伝わるか確かめます。) ・素振り(太極剣の練習です。ねらったところに,剣先まで意識が通るように繰り返し素振りします。) ・ストレッチ(呼吸をゆるやかにしながら,脚部や肩甲骨を押し広げます。) |
套路も,場所と時間があるときはするようにしていますが,それ以上に重要なのは「ゆるめること」「意識を通す」ことではないかと思い,上のような自己練習を取り入れています。例えば,站椿は3年前くらいから取り入れていますが,はじめのうちは大腿四頭筋の強化だと思ってやっていましたが,今はむしろ「軸をとぎすまし,全身の細胞の調和を創っていく」という意識で,大腿四頭筋をどれだけゆるめられるかと考えるようになりました。
壁押しでは,まだ肩の力で押している感じがありますし,剣の素振りでは,剣先がフラフラしている状態です。剣先まで意識が通らないからです。しかし,時々「腰で押せた!」という瞬間や,剣先を通り越して遠くまで意識が到達する瞬間もあります。そういうときは,体の軸が通り,首が伸び,重心は腰に落ち,肩などがゆるんでいるときです。この瞬間を,いつでも,そしてどんな流れの中でも出せるようになったら達人の域に入るのではないかと思っています。