「クリーオウ?」
「……あ、オーフェン」
石段の上に腰掛けたクリーオウがこちらを振り仰ぐ。膝の上には眠ったままのディープドラゴンがいた。
こちらに向けた視線をまた自分の膝に落として、少女が続ける。
「……レキ、起きないの。いつも昼間は起きてるのに……」
「夜に猫とか虫とか追いかけてたりして、寝てないんだろ」
「ううん。最近ずっとこうなの。休み時間とかも、ほとんど眠ってばっかりで」
どうやら、クリーオウはわざわざ休み時間ごとにここまで来ているらしかった。
高等部の校舎からこの体育館裏まで、それなりに距離がある。
移動教室なんぞあれば、棟が違う為にかなりの労力を必要とするはずである。
(……全く、こいつって奴は)
心配そうにそっとディープ・ドラゴンの背を撫でる少女の頭に、ぽんと手を乗せ、そして言う。
「大丈夫だ。単に……そーだな、冬眠みたいなもんかもしれねぇじゃねぇか」
「まだ冬じゃないわよ」
「だからそーゆーもんかもしれねぇっつってるだろ。まだディープ・ドラゴンの生態なんてほとんど解明されちゃねぇんだ」
「……」
「だから、そう心配することもねぇよ。何かあるなら、先生とかが気付いて対処してるさ。監視はしてるはずだから」
「……うん」
小さく頷くものの、それでもクリーオウはその表情から影を消さなかった。
「……」
(ったく、どうしたもんかね)
注:体験版(何が)なので、↑どちらを選んでも同じです。