何だかんだでどうにか電話をかけてみると、クリーオウは未だ帰っていないということだった。
ポケットに携帯電話をしまいながら、ハーティアが言ってくる。
「……キリランシェロ、持ってくれとは言わないけど初めて触ったとかいうのはやめにしてくれないか……」
「うるせ。必要のないものをわざわざ触っておかなくちゃならない決まりはねえだろ」
「友人として悲しいよ、キリランシェロ……」
何やら勝手に嘆かれているが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「しかし、どこいったんだあいつは……」
「なぁ、やっぱり奴らに連れ去られたとかいうのは?」
「人質か? 脅すにしたって相手はディープ・ドラゴンだぞ。クリーオウを捕まえた瞬間に自分だけチリになるのがオチだ」
「そうだよな……でも校内は大方探したし……」
そうなのだ。
すでにこの時間帯では、校舎のほとんどに鍵がかかっていて出入りはできない。
もし中に誰かいたならば、曲がりなりにもセキュリティシステムが働いて知らせが入るはずである。
その中で動ける者と言えば、よほどそこらへんの知識に熟練した者か――
「……職員室」
「あ」
「見てなかった、そういや」
「ぼくもだ。あ、でも小等部は完全に締まってたから先生もいないはず。中等部は……いるな、この時間なら」
「よし、俺は高等部の方をもう一回見てくる。ハーティアお前はそっちを頼む」
「わかった!」
再度、俺たちは走り出した。